悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。

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27話

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「……まぁ、この門、さきほども通ったような……?」

帝都の南側に位置する古城――かつて要塞として使われていた歴史ある城跡に、ルゥナ=フェリシェの姿があった。  
石畳を歩きながら、三度目となる同じ門の前に立ち止まり、しばし首を傾げる。

「……いえ、似たような門が三つあるのかもしれませんわ。そういう設計も趣がございますものね」

だが、通ってきた道には、彼女が落とした花飾りがぽつりと転がっていた。  
間違いなく“同じ場所”である。

実のところ、ルゥナは一時間前にこの城を訪れ、偶然迷い込んだ中庭を“静かで風が通る”と気に入り、散歩がてら抜けようと裏門を選んだ。  
しかし進めど進めど、なぜか再び表門に戻ってしまう。

その間に出会ったのは、警備兵たち数名。

「また……お戻りになられたのですか?」

「……あら、ごきげんよう。お変わりありませんこと?」

「はい……いえ、あの……お嬢様、先ほどは裏門から出られたはずでは……?」

「まぁ、風がこちらへ吹いておりましたので、つい……」

「……風……なるほど」

護衛兵たちは顔を見合わせた。  
“迷った”という可能性は即座に却下された。  
なぜなら、彼女があまりにも堂々と、しかも優雅に歩いていたから。

「方向感覚に乱れなし……つまりこれは“何か意味のある巡り”……?」

「“城の気脈を巡る聖なる踏査”では?」

「本日、風は南から吹いていたはず……ああ、我らは何かを見落としていたのでは……!」

小さな兵舎の片隅で、突如始まる解釈会議。

その頃、ルゥナは再び中庭のベンチに腰を下ろしていた。

「猫さん、三度目ですわよ。どうやらこの城とは、縁が深いのかもしれませんわね」

「にゃあ」

「わたくし、たぶん……風が導いておりますの」

そう言って微笑んだルゥナの姿に、通りすがった兵士たちは思わず直立不動となった。

「お導きのお言葉を賜ったぞ!」

「“風が導く”……これが聖なる巡回の核心では……!」

この日以降、城の警備記録にはこう残される。

【某日某時、巡回中に“風の巫女”と三度遭遇。  
出現箇所はいずれも気流の集中地点であり、霊的な整地の可能性あり。  
今後、定期的な風向観測と聖域指定を検討するべし】

その記録が、皇帝の目に留まるのは、また別の日の話。

ルゥナ本人はといえば、ベンチでお茶を飲みながら、次の出口を目指していた。

「こんどこそ……西門の方角へ進んでみましょうか」

三歩進んで、また同じ門へ。  
だが、それを見守る兵たちは、誰ひとりとして“迷っている”とは思わなかった。
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