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192話、気になる映画の続きと、届いた荷物
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「……はぁ~っ、終わっちゃった。まさか、自分が自分を助けるなんてね」
「ちょっと淋しい展開だけど、それがまたアツいんだよね~。いやぁ~、やっぱ何回観ても面白いなぁ」
『ハリーポルターとアズバンカの囚人』。私の予想を何度も裏切る怒涛の展開が、胸を熱くさせるほど面白かった。
リーマス・ルーペンとシリウス・ブラッディの二人組が、これまた良いキャラをしているのよ。あの二人が、本当の裏切り者を追い詰めた時、思わず声が出ちゃったわ。
「一回観るとキリがないわね。もう次を観たくなってきちゃったわ」
「分かる! 次の『獄炎のゴブレット』と『フェニックスの騎士団』も、めっちゃくちゃ面白いよ!」
ポップコーンよりも弾けた声で、無邪気に豪語してきたハルが、固いガッツポーズをしてきた。……観たい、本当にものすごく観たい。
けれども、時間はもう夜の七時半を過ぎているのよね。一作品の再生時間が、おおよそ二時間半前後なので、連続で観るのは流石に厳しいわ。
「んん~っ……。これ、平日の夜に観ない方がいいわね。続きが気になり過ぎて、今日は眠れないかもしれないわ」
「だったら、布団に入りながら先に観ちゃえばいいじゃん」
「それだと、あんたが観れないじゃない。私はね、あんたと一緒にハリーポルターを観たいのよ」
「お、おおう……。急に嬉しいこと言ってくれるじゃないの」
サラリと本音を明かしてみると、ハルははにかみながら、赤らめた頬を指でポリポリと掻いた。そう。ハリーポルターシリーズは、ハルと一緒じゃなければ、逆に観たくない。
だって、観終わった後。一緒に深い余韻に浸れないし、感想を言い合えないからね。一人で観るなら、二週目以降だけでいいわ。
「で、ハル。日中に荷物が届いたでしょ? あれって、何が入ってるの?」
「え? ああ、アレね。……ふっふっふっ。私達の夏を彩るのに、必要不可欠な物だ」
話の流れをぶった切る質問を、するや否や。スネイブ先生みたいなキャラになったハルが、ゆらりと立ち上がり、段ボールがある所へ歩んでいく。
映画を観終わったばかりだから、なんとなく影響されているんだろうけど、喋り方の特徴を正確に捉えていたせいで、ちょっと笑いそうになっちゃった。
「刮目せよ、ハーマイメリー。これが、我輩と貴様が夏に着る服である!」
面立ちまでスネイブ先生に寄せたハルが、段ボールに貼ってあったガムテープを綺麗に剥がし。中に入っていた物を取り出し、バッと広げた。
「あっ! 妙に軽いと思ってたけど、中身は甚平だったのね」
ハルが勢いよく広げた物は、ついこの前。ハルがプレゼントと言って私に選ばせてくれた、『流水』という一種類から二種類の和柄を、ほどよく混ぜた甚平だった。
「その通りだ、ハーマイメリー。注文してからすぐに届くとは、我輩も少々驚かされた」
「……あんた、いつまでスネイブ先生になってるの?」
「無論、貴様にツッコまれるまで」
「ああ、そう……」
淡々とスネイブ先生に徹していたハルが、いつもの緩い表情に戻り、楽しそうにしている笑みをこぼした。
「しっかし、ヤバいなぁ。実際に甚平が届くと、なんだか超ワクワクしてこない?」
「そうね。早く夏祭りに行きたくなってきたわ」
そして、届いたばかりの甚平を試着したくなってきた。
サイズは、事前に私達の寸法を巻尺で入念に測っておいたから、まず問題無い。私はSサイズで、ハルは動きやすさを重視したMサイズ。
甚平の着心地って、どんな感じなのかしらね? 見た目は、生地が厚そうな印象がある。これは、インターネットで画像を見ていた時の印象と変わりない。
「ねえ、メリーさん? 洗う前に、ちょっと試着してみない?」
甚平をあらゆる角度から眺めていたハルが、さり気なく私に聞いてきた。どうやらハルも、私と同じく着たくなっていたようね。すごく分かるわ、その気持ち。
「ええ、いいわよ。ちょうど、私も着てみたいと思ってたからね」
「ああ、メリーさんもだったんだ。うっし! じゃあ、早速着てみましょうぜ」
そう嬉しそうに言ったハルが、有言実行と言わんばかりに、私の目の前で上着を脱ぎ始めた。ハル以外、誰も居ないし。私も、ここで脱いじゃおっと。
「ちょっと淋しい展開だけど、それがまたアツいんだよね~。いやぁ~、やっぱ何回観ても面白いなぁ」
『ハリーポルターとアズバンカの囚人』。私の予想を何度も裏切る怒涛の展開が、胸を熱くさせるほど面白かった。
リーマス・ルーペンとシリウス・ブラッディの二人組が、これまた良いキャラをしているのよ。あの二人が、本当の裏切り者を追い詰めた時、思わず声が出ちゃったわ。
「一回観るとキリがないわね。もう次を観たくなってきちゃったわ」
「分かる! 次の『獄炎のゴブレット』と『フェニックスの騎士団』も、めっちゃくちゃ面白いよ!」
ポップコーンよりも弾けた声で、無邪気に豪語してきたハルが、固いガッツポーズをしてきた。……観たい、本当にものすごく観たい。
けれども、時間はもう夜の七時半を過ぎているのよね。一作品の再生時間が、おおよそ二時間半前後なので、連続で観るのは流石に厳しいわ。
「んん~っ……。これ、平日の夜に観ない方がいいわね。続きが気になり過ぎて、今日は眠れないかもしれないわ」
「だったら、布団に入りながら先に観ちゃえばいいじゃん」
「それだと、あんたが観れないじゃない。私はね、あんたと一緒にハリーポルターを観たいのよ」
「お、おおう……。急に嬉しいこと言ってくれるじゃないの」
サラリと本音を明かしてみると、ハルははにかみながら、赤らめた頬を指でポリポリと掻いた。そう。ハリーポルターシリーズは、ハルと一緒じゃなければ、逆に観たくない。
だって、観終わった後。一緒に深い余韻に浸れないし、感想を言い合えないからね。一人で観るなら、二週目以降だけでいいわ。
「で、ハル。日中に荷物が届いたでしょ? あれって、何が入ってるの?」
「え? ああ、アレね。……ふっふっふっ。私達の夏を彩るのに、必要不可欠な物だ」
話の流れをぶった切る質問を、するや否や。スネイブ先生みたいなキャラになったハルが、ゆらりと立ち上がり、段ボールがある所へ歩んでいく。
映画を観終わったばかりだから、なんとなく影響されているんだろうけど、喋り方の特徴を正確に捉えていたせいで、ちょっと笑いそうになっちゃった。
「刮目せよ、ハーマイメリー。これが、我輩と貴様が夏に着る服である!」
面立ちまでスネイブ先生に寄せたハルが、段ボールに貼ってあったガムテープを綺麗に剥がし。中に入っていた物を取り出し、バッと広げた。
「あっ! 妙に軽いと思ってたけど、中身は甚平だったのね」
ハルが勢いよく広げた物は、ついこの前。ハルがプレゼントと言って私に選ばせてくれた、『流水』という一種類から二種類の和柄を、ほどよく混ぜた甚平だった。
「その通りだ、ハーマイメリー。注文してからすぐに届くとは、我輩も少々驚かされた」
「……あんた、いつまでスネイブ先生になってるの?」
「無論、貴様にツッコまれるまで」
「ああ、そう……」
淡々とスネイブ先生に徹していたハルが、いつもの緩い表情に戻り、楽しそうにしている笑みをこぼした。
「しっかし、ヤバいなぁ。実際に甚平が届くと、なんだか超ワクワクしてこない?」
「そうね。早く夏祭りに行きたくなってきたわ」
そして、届いたばかりの甚平を試着したくなってきた。
サイズは、事前に私達の寸法を巻尺で入念に測っておいたから、まず問題無い。私はSサイズで、ハルは動きやすさを重視したMサイズ。
甚平の着心地って、どんな感じなのかしらね? 見た目は、生地が厚そうな印象がある。これは、インターネットで画像を見ていた時の印象と変わりない。
「ねえ、メリーさん? 洗う前に、ちょっと試着してみない?」
甚平をあらゆる角度から眺めていたハルが、さり気なく私に聞いてきた。どうやらハルも、私と同じく着たくなっていたようね。すごく分かるわ、その気持ち。
「ええ、いいわよ。ちょうど、私も着てみたいと思ってたからね」
「ああ、メリーさんもだったんだ。うっし! じゃあ、早速着てみましょうぜ」
そう嬉しそうに言ったハルが、有言実行と言わんばかりに、私の目の前で上着を脱ぎ始めた。ハル以外、誰も居ないし。私も、ここで脱いじゃおっと。
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