ぶっきらぼう魔女は育てたい

桜乱捕り

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328話、鳥かご籠城戦

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「ん、晴れたか」

 辺りを警戒しつつ、漆黒の空間が『天翔ける極光鳥』達で満たされていく様を眺めていた最中。
 止めた『永久とわの大石柱』が、ようやく消えたらしく。黒に支配されていた視界に、気持ち程度の薄暗さが戻ってきた。

「フローガンズの時よりも、倍以上の領域を掌握出来たようだな」

 『永久の大石柱』が、相当な距離を飛んでくれたお陰で、掌握領域のふちに設置した『風護陣』がまったく見えない。
 確認出来ていなかった高度も、申し分無し。下のどこを見渡せど、目が痛くなるような純白の雪原しか拝めないけれども。地平線の彼方で、仄暗い空と交わっている様子が伺える。

『これか。ウンディーネを負かした『奥の手』と、ノームが大苦戦した虹色の鳥ってのは』

 頭の中から、フラウの『伝心でんしん』が響いてきたということは、たぶん掌握領域外に居るな。

『おお~、本当に魔法が発動しねえ。こりゃ厄介だな。……ああ、? あたしの瞑想場に、ずいぶん堅牢な城を築いてくれたじゃねえか』

 試したということは、容易に『風護陣』を突破したと。一応あれ、鋼鉄ぐらいなら易々と切り裂けるんだがな。

「寒いのが苦手なんでな。暖を取れる場所が欲しかったんだ」

『なら、もっと早く言ってくれりゃあよかったのに。あたしの布団は、心地良く眠れるぞ?』

「生憎、万年氷の一部になるつもりは無い」

『そんな寂しいこと言うなよ。添い寝ぐらいはしてやるぜ?』

 予定に無い永眠の付き添いを約束してきたフラウが、『さってと』と続ける。

『そろそろ城の主に、挨拶入れに行かねえとな』

 そうフラウが呟いた瞬間。前後左右から、微弱ながらも精霊独特の魔力が、ふっと湧いてきた。感知出来る魔力は、一つずつ。間違いなく分身体を四体出したな。

「連れは四人だけか?」

『四人は四人でも、優秀な四人だぜ。なんて言ったって完全乖離させた、正真正銘四人のあたしだからな』

 完全乖離。そういえば、前にベルラザさんも言っていたっけ。普通の分身体ですら、よく分かっていないというのに。何がどう違うんだ?

「分身体について何も知らないから、そう言われてもピンと来ない」

『ああ? ったく、しっかり勉学しろよな。……まあ、そうだな。簡単に説明すると、普通の分身体は、あたし自ら操る感じで。完全乖離させた分身体は、そいつら独自に行動が出来るって感じだな。要は、あたしが四人増えたって思ってくれりゃあいい』

「ああ、教えてくれるのか」

 ただの分身体は、本体自らが操り。完全乖離させた分身体は、その手間が省けると。つまり単純に、フラフが五人に増えた訳か。
 説明を受けて、やっと危機感を持ててきた。初手で完全乖離させた分身体を出されていたら、私は数に翻弄されて、高高度に行けないまま負けていたかもしれない。

『眠りに就いたお姫様に言ったって、つまんねえからな。どうだ? 自分が置かれた状況を理解出来ただろ?』

「そうだな。召喚獣の数を四倍に増やせばいいってことだろ?」

『正解だ。賢くて頭の悪いやり方、あたしは大好きだぜ? んじゃま』

 茶番の終わりを告げる合図に、私はすっと息を浅く吸い込み、精霊独特の魔力を感じる方面へ、素早く横目を流した。

『邪魔するぜェッ!』

『全“天翔ける極光鳥”に告ぐ! フラウは五人に増えた! 各々魔力を感じる方角へ分かれて、光芒の雨を降らせてくれ!』

 辺りで滞空していた数多の『天翔ける極光鳥』に指示を出すと同時、太い光芒群が前後左右の四方向へ流れて始めていった。
 どうやら『天翔ける極光鳥』達も、五人目の魔力は感知出来ていないらしい。私も、未だ魔力を感知出来ていないから、相当上手く隠れているようだ。ならば……。

『半数の“極光蟲”に告ぐ! 敵は五体の内、一体がどこかに隠れている! 見つけ次第、集中砲火を浴びせてくれ!』

 無反応を示し、その場でふよふよと浮き続けていた『極光蟲』に新たな指示を出すも、動き出す気配は無し。索敵が出来ていないのか、それほどまでに五体目は遠くに居るのか。はたまた───。

「……おい。まさか、お前も『天翔ける極光鳥』とやり合えるのか?」

 先陣を切った『天翔ける極光鳥』達が、フラウと接敵したのだろうが……。先頭部分だと思われる場所で、激しく乱暴な火花が散り舞いながら、光芒化した『天翔ける極光鳥』がほぼ直角に曲がっていっている。
 嘘だろ? ノームですら、大戦鎚で光芒を弾き返したというのに。まさかフラウは、素手でやり合っているのか?

「ノームといい……。防御不可能なはずの『天翔ける極光鳥』とやり合うのは、正直勘弁して欲しいな」

 しかもこっちは、足止めにすらなっていない。絶えぬ火花が、私の方へとんでもない速度で近づいて来ている。
 このまま棒立ちしていたら、五分とも掛からず、私の元に着いてしまうだろう。ならば、手数を増やしていくまで!

『十二体の“竜の楔”に告ぐ! 三位一体となり、四方向から迫る敵を撃墜してくれ!』

 次なる者へ合図を出すと、頭上から轟音と強烈な突風が巻き起こった矢先。三体並んだ『竜の楔』を、一瞬だけ視認。一秒にも満たない時間で、火花散る最前線に激突。
 が、すぐさま返り討ちにあって砕かれたのか。最前線を貫くまでには至らず、火花と共に大小様々な残骸が四散していくだけだった。
 けれども、『竜の楔』が激突していた間だけ、私に向かって来る速度が著しく低下していた。三体だけで速度が低下するのであれば、『竜の楔』も『天翔ける極光鳥』同様、出し続けてしまえばいい。

『“竜の楔”に告ぐ! 私の魔力が続く限り、召喚を維持してくれ!』

 『天翔ける極光鳥』にはお馴染みのなりつつある指示を、『竜の楔』にも出してみれば。太い光芒群の上に、途切れることを知らない『竜の楔』の腹部分が、変わり映えしない空を一直線に覆い隠していった。

「……流石に、止まったか」

 だが、進行が止まっただけに過ぎない。『天翔ける極光鳥』と『竜の楔』は、共に最上位の召喚魔法だというのに。その二つを永続的にぶつけて、足止めだけしか叶わないなんて。

「けど、まだ魔力に余裕があるな」

 一昔前だと、『天翔ける極光鳥』を出し続けることすら不可能だったのだが。
 火、水、風、土、光、この五つの『最上級のマナの結晶体』が、私の魔力を回復してくれているお陰で、消費よりも回復の方がなんとか上回っている。つまり、まだ無茶が出来るということだ。

「防御不可能を弾き返すというのなら、触れたらマズイ召喚獣を送りつけるまでよ」

 そう決めた私は、圧倒的物量による暴力を、より強力な物へをするべく、風の杖を空にかざした。
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