ぶっきらぼう魔女は育てたい

桜乱捕り

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37話、新しい贈り物で気を逸らす作戦

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 砂漠地帯でサニーが駄々をこね始めてから、半年以上が経過した。四歳になってからも、あの日以来ずっと魔法を教えろとせがんでくる。
 絵を描いている時も。勉学を教えている合間にも。ご飯を食べている最中にも。一緒にお風呂に入っている時すらも。
 そして極めつけは、サニーの寝息が『スゥ、スゥ』ではなく、『まほぉ、まほぉ』になる始末。一体どうすれば、そんなに器用な寝息を立てられるのだ……?

 最早、四六時中無意識の内に発する洗脳である。いい加減止めないと、左胸の痛みに屈する前に心が折れてしまう。
 なので私は考えた。サニーが四歳になった時の贈り物をまだ渡していないので、それをあげて気を逸らしてしまおうと。
 そして贈り物の内容を決めた私は、サニーが眠りに就いた隙を突き、ゴーレム達に家の守りをお願いし、あらゆる地帯へ飛び回っている。










「やっと完成したか……」

 サニーへの贈り物を決めてから、七日以上が経っただろうか。あれから一睡もしていないので、目を瞑ろうもならば、すぐにでも眠れてしまいそうだ。
 私が作っていたのは、一度サニーに作ってあげた事がある色棒。それも、前にあげた色棒よりもかなり細く、色の数を五十色まで追加した。
 前の色棒は二cmぐらいの太さがあったが、今回の色棒の太さは七mm前後と細めにしてある。これでより繊細に、表情豊かな絵が描けるだろう。

 作り方は簡単。溶けない氷で型を作り、その中に染色を施した固まる性質がある土を入れる。次に限界まで押し込み、半日ほど寝かせれば完成だ。
 サニーを驚かしてやりたかったので、作業は主に深夜帯に音を立てず進めていた。一睡も出来なかった原因はこれのせいである。
 太陽が顔を出してきたのか。ずっと耳に入り込んでいた、『まほぉ……』という洗脳染みた寝息がピタリと止んだ。
 そろそろ起きるだろうと思ってベッドに顔を向けると、サニーは丁度上体を起こし、体をグイッと伸ばしている最中だった。

「ふわぁぁ~……」

「おはようサニー」

「おはよぉ~……」

 寝ぼけ眼を擦って頭が覚醒すれば、サニーの『魔法を教えろ』攻撃が始まる。だがその前に、私が贈り物という先手を打つ。

「よしっ! ママ、魔法をおしえ―――」

「その前に、ちょっとこっちへ来い」

 やや出遅れでしまったが、サニーを呼ぶ事に成功。いつもと違う反応をしたせいで、サニーは目をぱちくりとさせつつ、私の方へと歩んで来た。

「なに?」

「椅子に座ってみろ」

 あえて風魔法の『ふわふわ』を使わず、更なる指示を出す私。サニーはもう四歳。身長は一m前後になっているので、やや高めの椅子だろうとも一人で座れるようになった。
 不思議に思ったのか首をかしげたサニーが、木の椅子をよじ登って座った。よし、準備は万端だ。これでサニーの気を逸らせるといいのだが。

「テーブルの上を見てみろ。私からの贈り物だ」

「贈り物? ……うわぁ~っ!」

 テーブルの上を眺めてみたサニーが、新しい玩具を見つけた子供の様な、歓喜に震えた声を上げた。とてもいい反応だ。これなら大丈夫だろう。
 目を朝日よりも眩く輝かせ、沢山ある色棒を舐める様に見ていたサニーが、私にその瞳を移してからテーブルに戻し、また私に向けた。

「いっぱいある! こんなにいいの!?」

「四歳になった時の贈り物がまだだったから、沢山用意したんだ。どうだ? 気に入ったか?」

「うん、うんっ! ありがとう、ママっ!」

 弾けた満面の笑みを浮かべ、私に元気のあるお礼を言ってくるサニー。私は「そうか」と返し、安堵の篭ったため息を漏らした。
 いいぞ。これで当分は、頭から魔法が離れてくれるに違いない。その証拠に、サニーは椅子から下りて画用紙を用意している。これから絵を描くのだろう。
 ひとまず、贈り物作戦は大成功だ。このまま気が逸れたままならいいのだが。しばらくは絵に夢中になるだろうし、ゆっくりと朝食の準備をしよう。

 半年の時を経て『魔法を教えろ』攻撃から解放された私は、サニーに目を配りつつ台所へ向かう。まだ日が登り始めたばかりだし、シチューを作るか。
 サニーのわがままを叶えてやらなかったんだ。そことなく罪悪感も残っているので、美味しいシチューを作ってやらないと。

 水は、クロフライムから貰った精霊の泉の水を使う。これを使って作ると、なぜかコクと旨味が格段に増し、最高のシチューが出来上がるのだ。
 当然、私も気に入っている。サニーもそう。ヴェルインも舌を唸らせながら食べている程だ。
 おまけに、マナが含まれているので魔力も回復する。世界にまたとないシチューになった。

「ママ、あまり動かないで!」

「む?」

 風魔法で野菜を切っている途中、すぐ近くでサニーの声が聞こえてきた。目線を下に持っていくと、真剣な眼差しで絵を描き、私に顔を合わせては画用紙に戻しているサニーが居た。

「私を描いてるのか?」

「うんっ。新しい色棒、すごく描きやすいからスラスラ描けるよっ」

「そうか、よかったな。色を沢山使って描いてくれ」

「わかった!」

 私が切なるお願いをすると、サニーは了承して黙り込んだ。よし、これでようやく一色の私とおさらば出来る。何色使うんだろうか? あわよくば三十色以上は使ってほしい。
 そして絵が完成したら、ヴェルインに見せびらかせてやろう。思いっ切り自慢して、完膚なき勝利を掴み取ってやるのだ。
 確か、あいつは三色だったな。他愛もない。来て早々、色彩豊かな私で打ちのめしてやる。覚悟していろよ、ヴェルイン。
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