ぶっきらぼう魔女は育てたい

桜乱捕り

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268話、初めての親孝行

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 ベルラザさんという人が、ほんの少し分かり、私とアルビスが無事に契約を済ませた後。私と出会ってから数分で、アルビスの妹になった事を深く感謝してくれて。
 私よりも遥か先の未来を見据えてくれていて。アルビスの敵討ちを取るべく、凍てついた憎悪を向けて殺そうとしてきて。
 愛して止まない孫だからと、母性に満ち溢れた笑顔を見せてくれたベルラザさんに、力加減を大いに間違えた愛の鉄槌を下されて、私は全身を縦に裂かれて殺された。
 何をされたのか分からないまま、景色が勝手に左右へ広がりながら途切れていく様は、生き返った後でも鮮明に覚えている。

 なんでも、私に致命傷を負わせた攻撃は、不死鳥の姿に戻ったベルラザさんが放った、魔法攻撃ではなく、超圧縮した物理攻撃による鋭利な『不死鳥の息吹』らしい。
 どうやら、火を司る大精霊に生まれ変わった事により、火属性の物理攻撃と魔法攻撃が飛躍的に向上した事を計算に入れておらず。
 アカシックなら堪え切れるだろうと踏んだベルラザさんが、本気で『不死鳥の息吹』を放った所。『怨祓あだばらいの白乱鏡びゃくらんきょう』を容易に貫通してしまい、そのまま私も巻き込まれたとのこと。
 生き返った時。アルビスと一緒になって、ベルラザさん号泣していたなぁ。何度も何度も私に謝り、困惑していたイフリート様に八つ当たりしていたっけ。

 一応、愛の鉄槌は決闘方式で行われた。私も抵抗していいし、ベルラザさんに攻撃してもよかったものの。私は掌握領域を広げる事に専念し、攻撃は一切せず、防戦だけしていたのだが……。
 ベルラザさんの攻撃方法は、フローガンズとほぼ同じで、有り得ないほど破壊力を持った近接攻撃に、デタラメな超火力の火属性魔法を織り交ぜた物だった。
 そう。いくら掌握領域を広げて、火属性魔法を制限したとしても、無意味に終わり。瞬時に間合いを詰めてきたベルラザさんに、『怨祓いの白乱鏡』を拳や蹴りで何回も破壊され。
 最後は、物理攻撃として放たれた『不死鳥の息吹』を真正面から食らい、ベルラザさんに殺されてしまった訳だ。

 正直、私は本気を出してベルラザさんに挑んでも、絶対に勝てないと断言出来る。目視が出来ない移動速度。私が覚えている魔法壁の中で、最硬度を誇る『怨祓いの白乱鏡』を、まるで紙の如く破る物理攻撃と魔法攻撃。
 最上位の水属性魔法、氷属性魔法を瞬時に蒸発させてしまう、不利な相性を火力で黙らせる火属性魔法。おまけに、相手は不老不死。
 ベルラザさんの天敵は、ウンディーネのはずだけれども。たぶんベルラザさんなら、難なく勝ててしまうだろう。
 それほどまでに、圧倒的だったんだ。ベルラザさんは。唯一、勝ち筋があるとすれば。拘束系、または封印系の魔法を当てるのみだと思う。

 さてと、火のマナの結晶体を採取しに行くという目的は、ベルラザさんから最上位の火のマナの結晶体を貰った事によって済んだ。ベルラザさんも、三人の私に対して言いたい事を全て言い終えて、満足した。
 あとは、沼地帯に居るみんなに、ベルラザさんとイフリート様を紹介しないと。ベルラザさんは、どう紹介しようかな。
 私のお母さんって紹介すると、みんなとサニーが驚くだろうし。とりあえず話を合わせて、私の仲間の一人だと紹介しておこう。










「いやぁ~、日の光を浴びるなんて何十年振りだあ? あったけぇ~」

 火山地帯から沼地帯へ戻り、家の近くにある広場まで来たベルラザさんが、まったりした表情をしながら、上体をグイッと伸ばした。

「『アルシェライ領』は雪が降り続けていたから、太陽は一度も拝めなかったもんな」

「だな。っと、そうだ。なあ、アカシック」

「はい、なんでしょう?」

「本当に、私がお前の家に住んじまってもいいのか? まあまあ広いってのは知ってっけど、私が居たら邪魔になるんじゃないか?」

 火山地帯で、ある程度の説明はしていたものの。遠慮しがちに問い掛けてきたベルラザさんが、腕を組んだ。
 邪魔になるなんて、とんでもない。ベルラザさんは、本来なら成し得る事なんて不可能な再会を、アルビスと果たせたんだ。
 ならば、私がやるべき事は、ただ一つ。アルビスと共にゆっくり過ごせる環境を、ベルラザさんにも提供する事。
 時の穢れさえ無ければ、今も二人は『アルシェライ領』で暮らせていたというのに。生まれ変わってまで再会を果たせたんだ。それで終わりにするなんて、淋しいにも程がある。

「はい。せっかく、アルビスと再会出来たんです。これからずっと一緒に居て欲しいと強く願ってますので、全然構いません」

「はあ。サニーは、大丈夫なのか? あいつにとって、私は完全に赤の他人だろ? そんなのがいつまでも一緒に居たら、流石に嫌がるんじゃねえか?」

「サニーだったら嫌がらず、逆に大喜びするだろうな」

 新たに芽生えたベルラザさんの懸念材料を、ほくそ笑みながら一蹴するアルビス。

「だな。ベルラザさんとイフリート様を、私の仲間だと紹介すれば、サニーは目を輝かせて飛びついてきます。たぶん、二日三日は離れずに喋りかけてくるでしょう」

「間違いない。絵を描かせてくれだとか、アカシックとどんな旅をしてきたのかとか、質問攻めされるだろうな」

「ああ~。確かシルフ様も、好奇心旺盛で、まったく怖がらずに近づいて来て、質問攻めを食らったって言ってたなあ」

「もしかして、俺もなのか?」

 シルフとレムさんから聞いた話を、ベルラザさんが思い出している最中。
 変身魔法を使い、筋肉隆々の褐色肌で、どこか不愛想な表情ながらも優しそうで、紅蓮色の長髪をした人間に変身したイフリート様が続く。

「ええ、しばらくは離れてくれないでしょう」

「マジか。じゃあ暇だし、俺も絵ってヤツを描いてもらうか」

「ふ~ん、なるほどなあ……」

 そよ風に乗り、流れていってしまいそうな声量で呟いベルラザさんが、口角を緩やかに上げた顔で空を仰いだ。

「まさか、アルビスと暮らせる日が、また来るだなんてなあ。もう二度と無いとばかり思ってたぜ」

「ああ、余もだ。内心、泣きそうなほど喜んでいるぞ」

「はっはっはっ、私もだ」

 柔らかい笑みを浮かべたベルラザさんが、アルビスの肩に腕を回し、体をそっと引き寄せた。

「アルビス。お前の妹、ほんっと出来た奴だなあ。あんな事をしちまったばかりだってのに、もう私とお前を想ってくれてんだぞ? 母さん泣いちまいそうだぜ」

「なんて言ったって、誰にでも自慢が出来る余の可愛い妹だからな。最初の親孝行だと思って、受け取っておけ」

 親孝行か、良い捉え方だな。だったら、私の母親になってくれたベルラザさんへ、もっともっと親孝行をしてみよう。
 最初は何でもいい。些細な事も積極的に聞いて、叶えられるお願いは全部叶えてみせるんだ。喜んでくれているベルラザさんを見ると、きっと私も嬉しくなる。
 しかし、聞き過ぎるのも良くない。アルビスとの時間を過ごして欲しいから、数日間は二人を見守っていよう。
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