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違和感
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残業終わりにふらっと立ち寄ったのは住んでいるアパートの向かい側にあるコンビニだった。
普段は酒を飲まない僕だが、その日は先週から山積みだった資料を全て片付け気分が良かった事もあり、久し振りにビールを数本と煙草を買うと、颯爽と家に帰った。
家に着きシャワーを浴びると、火照った身体にビールを流し込んだ。
ちょうど夏も終わり、秋に差し掛かる季節だ。
僕は窓際まで歩くとベランダへ出た。
部屋の中では煙草は吸わない様にしている。
このアパートももうじき出て行くつもりだ。
そう思うと何だか数年前、上京して来たばかりのまだガキだった自分を思い出し、僕はふっ…と、笑った。
煙草の火種が根元まで進んだあたりで、僕はアパートの前の道路で妙な女が立っているのを見つけた。
首をしきりに傾けながら、ふらふらと歩き、徘徊している。
その時少し妙な違和感を感じたが、僕はただの酔っ払った女だと思い、しばらく眺めた後部屋に戻った。
数分後、小腹が空いたのでピザの出前を頼み、その後友人を一人呼んだ。
友人は十分も経たないうちに部屋へ来た。
「おい。アパートの前の道路に酔っ払った女が居たろ?」
僕は友人に尋ねた。
「ああ、アレか。でも、アレ男だったろ?」
男?どう考えても女だった。黒髪の長髪をざらりと下げ、よたよたと歩き、服装もワンピースを着ていた。
「あれはどう考えても女だろ?よく見てないんじゃないのか?」
「いや、あんな馬鹿でかい女見た事ねえよ。2m以上はあったぞ。」
いまいち会話が弾まない僕はもう一度ベランダから見る事にした。
その女はまだうろついていた。
たしかに最初見た時は酔いもあって気付かなかったが、女は信じられないくらいの高身長だった。
そしてとうとう両手をつき、ペタペタと犬の様に歩く様は身長と相まってとてつもなく不気味だった。
ふと、女が歩くのをやめ、こちらを向いた途端
…!
僕はあまりの禍々しさに気を失いそうになった。
長い黒髪から覗いたソレは女の顔でも人の顔でもなくどす黒く血に濡れた犬の様な顔だった。
しきりに舌を出しながらこちらを一瞥すると、アパートの方へペタペタと歩きながら向かってきた。
「おい!こっち来るぞ!電気消せ!静かにしてろ!」
何が起こったのか分からない友人を黙らせ、僕は部屋の電気を消し、鍵を閉め、押入れに友人と共に入り、息を殺した。
カンカンカンカンカン
階段を登る音と共に、はあ…はあ…はあ…
鈍い吐息の様な音がだんだん部屋へと近づいて来る。
何なんだアレは。
僕は全身から汗が吹き出し、震えが止まらなくなった。
女は暫く部屋の前を徘徊した後、音も無く気配を消した。
二時間ほど経ち、疲れ果てた僕達は押入れの扉を開くと部屋を見て絶句した。
無数に散らばる長い黒髪、血、肉片。
あの女はさっきまで部屋の中に居たんだ。
普段は酒を飲まない僕だが、その日は先週から山積みだった資料を全て片付け気分が良かった事もあり、久し振りにビールを数本と煙草を買うと、颯爽と家に帰った。
家に着きシャワーを浴びると、火照った身体にビールを流し込んだ。
ちょうど夏も終わり、秋に差し掛かる季節だ。
僕は窓際まで歩くとベランダへ出た。
部屋の中では煙草は吸わない様にしている。
このアパートももうじき出て行くつもりだ。
そう思うと何だか数年前、上京して来たばかりのまだガキだった自分を思い出し、僕はふっ…と、笑った。
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その時少し妙な違和感を感じたが、僕はただの酔っ払った女だと思い、しばらく眺めた後部屋に戻った。
数分後、小腹が空いたのでピザの出前を頼み、その後友人を一人呼んだ。
友人は十分も経たないうちに部屋へ来た。
「おい。アパートの前の道路に酔っ払った女が居たろ?」
僕は友人に尋ねた。
「ああ、アレか。でも、アレ男だったろ?」
男?どう考えても女だった。黒髪の長髪をざらりと下げ、よたよたと歩き、服装もワンピースを着ていた。
「あれはどう考えても女だろ?よく見てないんじゃないのか?」
「いや、あんな馬鹿でかい女見た事ねえよ。2m以上はあったぞ。」
いまいち会話が弾まない僕はもう一度ベランダから見る事にした。
その女はまだうろついていた。
たしかに最初見た時は酔いもあって気付かなかったが、女は信じられないくらいの高身長だった。
そしてとうとう両手をつき、ペタペタと犬の様に歩く様は身長と相まってとてつもなく不気味だった。
ふと、女が歩くのをやめ、こちらを向いた途端
…!
僕はあまりの禍々しさに気を失いそうになった。
長い黒髪から覗いたソレは女の顔でも人の顔でもなくどす黒く血に濡れた犬の様な顔だった。
しきりに舌を出しながらこちらを一瞥すると、アパートの方へペタペタと歩きながら向かってきた。
「おい!こっち来るぞ!電気消せ!静かにしてろ!」
何が起こったのか分からない友人を黙らせ、僕は部屋の電気を消し、鍵を閉め、押入れに友人と共に入り、息を殺した。
カンカンカンカンカン
階段を登る音と共に、はあ…はあ…はあ…
鈍い吐息の様な音がだんだん部屋へと近づいて来る。
何なんだアレは。
僕は全身から汗が吹き出し、震えが止まらなくなった。
女は暫く部屋の前を徘徊した後、音も無く気配を消した。
二時間ほど経ち、疲れ果てた僕達は押入れの扉を開くと部屋を見て絶句した。
無数に散らばる長い黒髪、血、肉片。
あの女はさっきまで部屋の中に居たんだ。
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