悋気

悋気

見ろよあの女、堪らないね。誘ってんだろ。

時刻は23時17分、勤め先から友人のカナコとレストランで食事を済ませた後、馴染みのバーでジントニックを少し口に含んだ時に、後ろから品のない会話が聞こえてきた。

私はゴクリと嚥下すると、はあっと溜息をついた。
ゆっくり振り向くと、髪を七、三に分けた小綺麗な格好をした若い男2人が私の身体を下から上へ舐めるように一瞥していた。
私はスッと立ち上がり彼らの元へ向かうと、こう囁いた。

あのね、貴方達より私の方が経験は多いわよ。背伸びしてこんな高い所で飲まないで場末のスナックでも行ってれば？

男達は相変わらずヘラヘラ笑いながら

小柄なあんたなんか簡単にホテルに連れ込めるんだぜ。
優しくしてるうちに付いてきなよ。

本当、嫌になるわ…

私はジントニックを飲み干すと、3人で店を後にした。

時刻は1時23分、窓際でシャンパンを飲んでいた私はゆっくりとカーテンを閉めると改めて部屋を眺めた。

白かったシーツは紅く、壁には所々に彼らの体液が付着していた。
バラバラになった彼らのピースで満たされた部屋はさっきまでの無機質な色合いより、生命を感じる色合いで、私はうっとりしながらまた太ももに蜜を垂らしていた。

数分後、すべての片付けを終えた私は部屋を後にした。
大きい荷物が鞄二つ分。　
欲張るとロクな事は無いって分かってるのに、いつも後先考えずにやってしまう。

この街ももうお別れね。
私はこれからも満たされたいの。
邪魔なんて野暮な事は無しにして頂戴。

煙草を加え、火をつけ、煙を燻らせると、私は車を走らせた。