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中部編
第12話『樹海の道標』
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夏の終わりが、その気配を色濃く残す八月の夜。まとわりつくような湿気を孕んだ空気が、木々の葉を揺らし、僕たちの肌をじっとりと撫でていた。ここは、文明の光が届かぬ樹海の奥深く。かつてモノとして生を受け、役目を終え、あるいは無残に捨てられた者たちが眠る、広大な墓場だ。月光は厚い雲に遮られ、闇だけが支配するこの場所に、僕の声はあまりにも場違いに、そして冒涜的に響き渡った。
「ここにいる付喪神たち…つまり、このガラクタどもを全部拾い集めて、俺たちのバンを改造する」
僕、藤原悠人(ふじわら ゆうと)の、あまりにも突拍子のない、というか正気の沙汰とは思えない宣言は、夏の終わりの湿った空気にゆっくりと吸い込まれていった。一瞬、森が、世界が、絶対的な沈黙に陥った気がした。風の音も、虫の声も、そして今まで僕たちを取り囲むようにざわめいていた、数多の付喪神たちの怨嗟とも諦観ともつかない気配すら、ピタリと止まった。まるで、映画のワンシーンで突然音声が消えたかのように。
「……は?」
最初にその完全なる静寂を破ったのは、やはりと言うべきか、僕の隣に立つ天才ハッカー少女・水瀬莉奈(みなせ りな)だった。彼女の薄い唇から漏れたのは、疑問でも反論でも、あるいは呆れでもない。ただただ純粋な、あらゆる感情を削ぎ落とした「理解不能」を意味する、たった一音の響きだった。その声は、乾いた小枝が折れるように、夜の静寂に小さな亀裂を入れた。
「ちょ、ちょっと待ってください、悠人さん。今、なんておっしゃいました?私のオーディオインターフェースに何か致命的なバグでも発生しましたか?聞き間違いですよね?こいつらの魂、つまりスクラップの山に埋もれたガラクタを拾い集めて、私たちの、あのオンボロのバンを改造する、と聞こえたのですが」
莉奈は、細い指で自身のこめかみをぐりぐりと押さえながら、いつもの調子でマシンガンのように言葉を紡ぎ始めた。その目は大きく見開かれ、僕の正気度をスキャンしているかのようだ。
「正気ですか?いいですか、落ち着いて聞いてください。まず第一に、物理的に不可能です。異なるメーカー、異なる年代、異なる規格のパーツを寄せ集めて、一つのヴィークルとして機能させるなんて、それはもうエンジニアリングの領域を超えています。魔術か何かですよ。第二に、仮に、仮にですよ、100万歩譲って形になったとして、安全性はどう担保するんですか?走行中に空中分解でもしたらどうするんです?私たちはただでさえ訳アリの逃避行中なんですよ?これ以上リスクを増やすなんて、自殺行為以外の何物でもありません!理論上、構造力学的にも、電子制御的にも、ありとあらゆる側面から見て、この計画の成功確率はゼロ、限りなくゼロです!私のスーパーコンピューター『イドゥン』でシミュレーションするまでもなく、結果は明白です!」
まくし立てる彼女の隣で、チームの筋肉担当である巨漢、田中猛(たなか たける)は、スクラップの山をうっとりと見上げ、その口からは恍惚のため息が漏れていた。
「最高の……ポンコツ……。なんて、なんてロマンのある響きなんだ……」
キラキラとした少年のような瞳で、彼は廃車となったバイクの錆びついたエンジンブロックを、愛おしそうに撫でている。ああ、こいつはもうダメだ。議論のテーブルにすら着いていない。僕の提案した狂気を、彼はその純粋すぎる魂で、すでに至高のエンターテイメントとして受け入れてしまっている。
そして、もう一人。黒髪を長く垂らした巫女の少女、月読栞(つくよみ しおり)は、驚きにわずかに目を見開きながらも、その深い湖のような黒い瞳で、じっと僕の顔を見つめていた。彼女は、僕の言葉の表面ではなく、その奥底にある真意、僕自身も気づいていないかもしれない心の叫びを探ろうとしているかのようだった。彼女の沈黙は、莉奈の饒舌よりも、猛の恍惚よりも、雄弁に僕の心を揺さぶった。
この狂気の提案に、常識的な思考回路を持つ人間が乗るはずがない。僕自身、それが一番よくわかっていた。これは、追い詰められた末に口から出た、ほとんど支離滅裂な妄言にすぎない。だが、僕の計算違いが一つだけあった。この場には、常識という物差しから著しく逸脱した男が、もう一人存在していたのだ。
「面白え」
地の底から響くような、低く、それでいて確かな熱を帯びた声だった。闇の中からぬっと現れたその巨躯は、まるで冬眠から覚めた熊のようだった。油と汗に汚れた作業着を纏い、口元には無精髭。鋭い眼光だけが、暗闇の中でギラリと光っている。この辺り一帯を縄張りとする孤高の整備士、佐藤健吾(さとう けんご)。彼は、油に汚れた口の端をニヤリと吊り上げ、僕の目を見て獰猛に笑った。
「やってやろうじゃねえか。最高のポンコツ、上等だ。久しぶりに血が騒ぐ。俺の腕が、いや、ここに眠るコイツらの魂が、鳴ってるぜ」
健吾のその一言で、場の空気は決定的に、そして不可逆的に変わった。それは、絶望的な状況を打開するための、狂気の号砲だった。もはや、後戻りはできない。
「いや、だから理論的に!健吾さんまで何を言ってるんですか!あなたはこの道のプロでしょう!?こんな無謀が通るはずないって、一番分かってるはずじゃないですか!」
莉奈が悲鳴に近い声で最後の抵抗を試みる。しかし、健吾は彼女の方をちらりと見るでもなく、ガラクタの山から無骨な鉄パイプを一本拾い上げると、肩でトントンと叩きながら、問答無用の一言を放った。
「できるかできねえかじゃねえ。やるんだよ、お嬢ちゃん。理屈は後からついてくる。てめえのそのすごいパソコンとやらで、俺の腕についてこれるように、せいぜい頑張りな」
その言葉は、どんな理論武装も打ち砕く、絶対的な職人の矜持に満ちていた。莉奈は「ぐっ……」と呻き、ぐうの音も出ずに押し黙ってしまった。悔しそうに唇を噛む彼女の瞳の奥には、しかし、ほんのわずかに挑戦的な光が宿っているのを、僕は見逃さなかった。
こうして、僕たちの、そして忘れ去られたモノたちの、前代未聞の大改造プロジェクトが、その幕を開けた。舞台は、夜の闇に包まれたサトウモーター。文明の光から見放されたような、古びた整備工場だ。主役は、僕たち訳アリの一行と、スクラップの山に眠る、何百、いや何千ものモノたちの魂だ。これは、単なる車の修理ではない。鎮魂であり、再生であり、そして僕たち自身の未来をこじ開けるための、壮大な儀式の始まりだった。
◇
健吾の工場「サトウモーター」に、煌々と数台の投光器の光が灯された。それはまるで、これから世紀の大手術を執り行うオペ室の無影灯のようだ。天井の梁から吊るされた裸電球が、無数の工具が壁にかかった様を不気味に照らし出し、床に染み付いたオイルの黒いシミは、まるで古代の祭壇に描かれた紋様のようにも見えた。僕たちは、月明かりすらない樹海の墓場と、この光溢れる工場とを、夜が明けるまで何度も往復することになった。
猛がどこからか調達してきた電動の運搬車に、使えそうなモノ…いや、栞が「この子はまだ、走りたがっています」と告げたモノたちを次々と積み込んでいく。その光景は、さながらハイテク機材を駆使するアリの行列だ。ヘッドライトの光に照らされて、錆びついたバイクのフレーム、ひしゃげた耕運機のエンジン、液晶の割れたワープロ、扉だけになった冷蔵庫などが、次々と手術室へと運び込まれていく。それぞれのモノが放つ、悲しみと怒りが入り混じった重い気配が、工場の空気を満たしていく。
プロジェクトは、驚くべきチームワークで進んでいった。いや、チームワークという洗練された言葉は、この混沌には似合わない。個々の突出した能力と、剥き出しの個性がぶつかり合い、火花を散らしながら、奇跡的な相互作用を起こしている、と言うべきか。それは、まるで制御不能な核融合反応のようだった。
設計及び電子制御担当は、もちろん莉奈だ。彼女は最初こそ「無茶です!」「不可能です!」と金切り声を上げていたが、いざ始まると、そのプログラマーでありハッカーである魂に、猛烈な火がついたらしい。ポータブルの三次元レーザースキャナーを片手に、運び込まれた廃材の山を、まるで戦場のカメラマンのように駆け回り、次々とデータ化していく。
彼女のノートパソコンの画面には、即座にパーツの立体モデルが構築されていく。赤外線センサーが金属疲労の度合いをスキャンし、超音波センサーが内部の亀裂を探り出す。解析されたデータは瞬時に色分けされ、強度、劣化度、そして残された機能が、誰の目にも分かる形で表示された。
「このホンダ・スーパーカブのエンジンは、シリンダーヘッドに致命的なクラックが入ってますが、ピストンとクランクシャフトはまだ生きてますね。驚異的な耐久性です。こっちのヤンマー製耕運機のエンジンブロックとニコイチにすれば…トルクだけは無駄にある、意味不明なモンスターが生まれるかもしれません……。無茶苦茶だ、このアセンブリ、AIに食わせたら絶対エラー吐いてフリーズしますよ!」
文句を言いながらも、その目は子供のようにキラキラと輝いている。彼女は、キーボードを打つ指を止めると、タブレットにスタイラスペンを走らせ始めた。異なるメーカー、異なる規格のパーツを物理的に繋ぎ合わせるための、特殊なアダプターの設計図を、彼女はものの数分で描き上げてしまう。それは、もはやハッキングというより、神が作りたもうた世界のバグを修正し、新たな法則を創造しているかのようだった。神の領域のパズルを、彼女は不敵な笑みを浮かべながら解き明かしていく。
そして、その神の設計図、理論上の怪物、莉奈の脳内から吐き出された電子の塊を、現実世界に具現化するのが、執刀医、佐藤健吾だ。彼は、莉奈が「はい、できました!健吾さん、これ、いけますか!?」と突きつけたタブレットを一瞥すると、ただ「なるほどな」とだけ低く呟き、壁一面にかけられた無数の工具の中から、迷うことなく最適な一本を手に取る。それは、彼の腕の延長であり、魂の一部であるかのようにしっくりと馴染んでいた。
ギャイイイイン!
耳をつんざくような金属音が響き渡り、健吾が握るディスクグラインダーから、眩いばかりの火花が滝のように流れ落ちる。それは、古いバイクのフレームが、僕たちのバンの新たな骨格となるために、産声を上げているかのようだった。
バチバチッ!
アーク溶接の青白い閃光が、闇を焦がし、僕たちの顔に奇妙な影を落とす。彼は、莉奈が「理論上は可能」としただけの無茶苦茶な設計を、その神業のような技術と、長年培ってきたであろう経験と勘で、次々と形にしていく。完全に固着して回らなくなったボルトを、彼はバーナーで炙り、ハンマーで絶妙な衝撃を与え、まるで生き物に言い聞かせるように優しく、しかし確実に緩めていく。赤錆に覆われたパーツを、ワイヤーブラシで丹念に磨き上げ、オイルを差し、新たな命を吹き込んでいく。その姿は、黙々と機械と対話する、孤高の職人そのものだった。莉奈のデジタルな精密さと、健吾のアナログな職人技が、ここで奇跡的な融合を果たしていた。
その二人の天才を、純粋な物理力で支えるのが、重機担当、猛だ。
「うおおおおお!道を開けろおおおおい!」
彼は、事故でひしゃげ、歪みきってしまった僕のバンのフレームを、なんと一人で担ぎ上げ、健吾がチョークで記した位置に、寸分の狂いもなく設置する。軽トラックから降ろされた、大人二人でも持ち上げるのが困難なエンジンブロックを、「せいやっ!」という気合一閃の掛け声と共に、クレーンも使わずに軽々と持ち上げてしまう。彼の、常識から逸脱した規格外の怪力がなければ、このプロジェクトは一日かかってもエンジン一つ載せられなかっただろう。彼は、滝のように流れる汗をTシャツの袖で拭いながらも、自分がこの途方もない祭りの、重要な歯車の一つであることに、心からの喜びを感じているようだった。その顔は、泥だらけの子供のように無邪気で、輝いていた。
そして、この狂気の作業を、単なるスクラップの再利用ではなく、神聖な「儀式」へと昇華させているのが、巫女、栞の存在だった。
彼女は、健吾が解体するパーツの一つ一つに、そっとその白い手を触れ、目を閉じて静かに祈りを捧げる。その姿は、まるで戦場で息絶えた兵士を弔う聖女のようだった。
「お疲れ様でした。トラックの荷台を支え続けたあなた。たくさんの家族の笑顔を運んできたのですね。あなたの力強い魂は、決して無駄にはなりません。次に繋がります」
「あなたは、持ち主の少年に乱暴に扱われて、悲しかったのですね。でも、風を切って走ったあの日の喜びを、私は知っています。もう一度、走りましょう」
彼女のその行為に、法的な意味も、物理的な意味も、もちろんない。ただの自己満足だと言われればそれまでだ。だが、不思議なことに、彼女が祈りを捧げたパーツは、健吾が言うには「驚くほど素直に、言うことを聞く」のだそうだ。固着したボルトが、まるで自ら緩むかのように回り、叩いても抜けなかったベアリングが、スッと静かに滑り落ちる。彼女の祈りは、モノたちの魂に宿った怒りや悲しみを鎮め、次の生へと旅立つための、道標となっているのかもしれない。彼女がいるからこそ、僕たちはただの墓荒らしではなく、魂の運び手でいられるのだ。
じゃあ、この前代未聞のプロジェクトの発起人である僕、藤原悠人は何をしていたかというと、まあ、分かりやすく言えば監督だ。いや、もっと正確に言うなら、一番好き勝手に無茶を言う役だ。
「健吾さん、そこのハーレーダビッドソンだったもののサイドミラー、こっちのドアにつけてくれ。視認性より、ロマンが圧倒的に大事だ。左右非対称でいこう」
「莉奈、計器類のパネルだけどさ、ファミコンのコントローラーっぽくデザインできねえか?スピードメーターは十字キーの形で、タコメーターはAボタンとBボタンで」
「猛、そこの古いナショナルの冷蔵庫のドア、頑丈そうだな。なんかうまいことサイドボックスに改造できねえか?冷えないけど」
僕がそう言うたびに、莉奈が「ふざけないでください!これ以上、訳の分からない要求を実装するのはやめてください!私の美学に反します!」とヒステリックに怒鳴り、健吾が「……やってみる」と無表情で返し、猛が「冷蔵庫!最高じゃないすか!飲み物じゃなくて、夢と希望を詰め込むんすね!」と目を輝かせる。そんな混沌としたやり取りが、僕たちの作業のBGMだった。
◇
夜が更け、時計の針が真夜中をとうに過ぎた頃、作業は佳境に入っていた。
ツギハギの車体が、パズルのピースが埋まっていくように、少しずつ一つの形を取り戻していく。その過程で、僕たちは、これからこの車の血肉となるモノたちの、ささやかで、しかし確かな物語に触れていった。
「おい、悠人。このスピードメーター、どこから持ってきたやつか分かるか?」
健吾が、古ぼけたアナログの計器をウエスで丹念に磨きながら、僕に問いかけた。黒い文字盤に、オレンジ色の針。最大時速は180キロまで刻まれている。
「さあな。どっかの走り屋が乗ってたスクーターか何かだろ?」
「ちげえねえ。こいつはな、俺がガキの頃、駅前のゲームセンターにあったレースゲームの筐体から引っこ抜いてきたやつだ。俺が子供の頃、擦り切れるほど遊んだ『アウトラン』だよ。何千人、いや何万人もの子供たちの、なけなしの百円玉と、いつか本物のフェラーリに乗るっていう甘酸っぱい夢を乗せて、こいつの針はずっと振り切られ続けてきたんだ」
そう言って笑う健吾の横顔は、いつもの仏頂面とは違う、遠い日を懐かしむ少年のような顔をしていた。彼の指が、メーターのガラスについた小さな傷を優しくなぞる。それはきっと、興奮した誰かが叩きつけた拳の跡なのだろう。
栞は、古いカーステレオから取り外した一対のスピーカーを、まるで壊れ物を扱うかのように、慈しむように撫でていた。布製のネットは破れ、コーン紙には茶色いシミが浮いている。
「このスピーカーは、きっと、駅前の小さな純喫茶のカウンターの隅に、ずっと置かれていたんですね。たくさんの恋の始まりと、そして、たくさんの恋の終わりを、この子は静かに見つめてきた。流れていた音楽は、いつも同じだったみたいです。マスターのお気に入りだったんでしょうか。優しいメロディーが、今もこの子の奥で鳴っています」
彼女がそう言ってそっと目を閉じると、どこからか、あのラジカセが流していた懐かしい八十年代のアイドルの歌声が、ふわりと聞こえたような気がした。甘く切ないメロディーが、オイルと鉄の匂いに満ちた工場を、一瞬だけ感傷的な色に染め上げた。
電車のロングシート、バスの降車ボタン、郵便ポストの投函口、黒電話のダイヤル。一つ一つのパーツが、それぞれの物語を携えて、僕たちのバンに集まってくる。僕たちのバンは、もはや単なるガラクタの寄せ集めではなかった。それは、無数の名もなきモノたちが懸命に生きた証、その記憶と想いを詰め込んだ、過去と未来を繋ぐための、走るタイムカプセルへと生まれ変わりつつあった。
その光景を眺めながら、僕は、奇妙で、そしてひどく苦しい感覚に囚われていた。
彼らは、死んでいくのだ。
個としての「洗濯機」や「バイク」や「ワープロ」としての生は、健吾のグラインダーの火花と共に、ここで終わりを迎える。だが、彼らは、その魂ともいえる機能や部品を、僕のバンに託すことで、「次」へと繋がっていく。それは、僕には決して与えられない、あまりにもまっとうで、そして尊い「死に様」だった。
僕の旅は、僕にこの呪いをかけた神様を見つけ出して殺し、この永遠に続く呪われた生を「終わらせる」ためのものだった。死ぬための旅だ。だが、目の前で繰り広げられているのは、終わるためではなく、「もう一度、走り出す」ための、再生の儀式だ。終わりと始まりが、ここでは同義だった。
「お前たちは、いいよな」
僕は、誰に言うでもなく、そう呟いた。声は、けたたましい作業音にかき消されて、誰の耳にも届かなかった。
「壊れて、捨てられて、怒って、悲しんで……。でも最後は、こうして誰かの一部になって、ちゃんと前に進めるんだから」
僕の体は、壊れない。傷つけられても、瞬時に再生する。
僕は、忘れられない。どれだけ時が経とうと、過去の過ちは鮮明なまま、僕の心を蝕み続ける。
だから、終われない。終わらせてもらえない。
僕の、たった一人だけ止まってしまった時間を、目の前で繰り広げられる生命の循環が、まるで嘲笑っているかのようだった。孤独感が、冷たい水のように、心の底から満ちてくる。
◇
東の空が、深い藍色から、紫へ、そして徐々に白み始めていく。樹海の木々のシルエットが、朝靄の中にくっきりと浮かび上がってきた。夜明けだ。僕たちの、狂気の儀式もまた、その終わりを告げようとしていた。
「……できた」
健吾の、一晩中作業を続けたとは思えないほど力強い、しかしどこかかすれた声が、静まり返った工場に響いた。投光器の光と、差し込み始めた朝の光が混じり合う中に、ついに、そいつは堂々たる姿を現した。
それは、車と呼ぶには、あまりにも異形だった。
色はバラバラ、形はちぐはぐ。右のドアは、明らかに錆びついた軽トラックから剥ぎ取ってきたもので、「最大積載量350kg」の文字がかすかに残っている。左のフェンダーは、流線形のスクーターのカウルが、無理やりリベットで無数に留められていた。ボンネットは、なぜかカーボンのように黒光りしていたが、これは莉奈がどこぞのデータセンターから廃棄されたサーバーラックの扉を加工したものらしい。屋根には、ドラム式洗濯機の丸いガラスのフタを改造した、手動式のサンルーフが鎮座している。
まるで、移動する現代アート。あるいは、走るスクラップ置き場。フランケンシュタインの怪物、という陳腐な表現が、これほど似合う乗り物を、僕は後にも先にも見たことがない。
仲間たちが、息を呑んでその異形を見守っている。莉奈は呆然と立ち尽くし、猛は感涙にむせび、栞は慈愛に満ちた表情で微笑んでいた。僕は、ゆっくりと運転席に乗り込んだ。シートは、破れた部分をガムテープで無造作に補修した、電車のロングシートだった。独特のスプリングの感触が、尻に伝わる。ハンドルは、やけに細くて大きい。古い路線バスのものだろうか。目の前のコンソールには、莉奈がデザインしたファミコン風の計器パネルが、無機質な光を放っている。
そして、キー。それは、健吾が作業場の奥から見つけてきた、古いジュークボックスの鍵だった。七色に輝くプラスチックの飾りが付いている。
僕は、その鍵を、手作り感満載のキーシリンダーに差し込み、静かに、祈るように回した。
カチリ、と小さなリレーの音がする。
一瞬の沈黙。まるで世界中の時間が止まったかのような、永遠にも思える静寂。
キュルル……。
セルモーターの、あまりにも頼りない、か細い音が、静まり返った工場に響く。
ダメか。誰もがそう思った、その瞬間だった。
ヴォンッ!
ババババババババッ!
腹の底に響くような、猛烈な爆音と共に、ツギハギのエンジンが目を覚ました。それは、調和とは程遠い、だが、ありったけの生命力をぶちまけたような、荒々しい咆哮だった。耕運機のトルクと、バイクの回転数が、奇跡的なバランスで融合し、不協和音のシンフォニーを奏でている。車体が、ブルブルと喜びに震えているのが、シートを通してダイレクトに伝わってきた。生まれたての赤ん坊の、力強い産声だった。
その咆哮に応えるかのように、僕たちがモノたちを運び出してきた樹海の墓場の方から、ふっ、と夜通し僕たちを包んでいた重苦しい気配が消え去った。まるで、成仏を遂げた魂たちが、一斉に天に昇っていくように。朝日が、浄化された森を、静かに、そして美しく照らし出していた。
「……走るぞ」
僕が言うと、仲間たちが、待ってましたとばかりに、その怪物に乗り込んできた。
見た目とは裏腹に、車は驚くほど快調だった。いや、快調という言葉の定義を考え直さなければならない。それぞれの部品が「俺が!」「私が!」と自己主張を繰り返しているような、ガタガタ、ギシギシという不協和音の塊。だが、それが不思議なバランスの上で成り立っている。莉奈の完璧すぎるデジタル設計と、健吾の神業的なアナログ技術が、奇跡の調和を生み出していた。
出発の時。僕が礼を言おうと健吾の方を向くと、彼は僕の言葉を遮るように、当たり前のような顔で、自分の巨大な工具箱を荷台に放り込んだ。
「俺も行く」
「え?」
あまりに当然のように告げられた言葉に、僕は思わず聞き返した。
「こいつの最期を見届けるのは、俺の責任だ。産婆としてな。それに」
健吾は、僕の顔をじっと見て、初めて僕を「修理対象」として見る整備士の顔で言った。
「あんたみたいな、直しがいのあるオンボロ、そうそうお目にかかれねえからな」
その目は、僕の、永遠に動き続ける壊れない体と、その実、ボロボロに壊れきった心を、最高の修理対象として、完全にロックオンしていた。
こうして、口は悪いが腕は超一流の整備士、佐藤健吾が、僕たちの旅に加わった。
僕たちは、数多の魂を受け継ぎ、最高のポンコツへと生まれ変わったバンに乗り込む。次の目的地、雪女の伝説が残る、冬の気配が迫る長野の山村へと、僕はバスのハンドルを大きく切った。
車内に取り付けられた、あの喫茶店のスピーカーからは、やはりと言うべきか、この状況には場違いなほど陽気な八十年代のアイドルソングが、ノイズ混じりに流れ始めた。
後部座席では、猛が「うおっ!これ、俺の十八番っすよ!」と、致命的に音程の外れた熱唱をすでに繰り広げている。
莉奈が「この騒音の中でデバッグ作業なんて無理です!思考がまとまりません!」と頭を抱えてキレて、栞がその全てを包み込むように「ふふふ」と楽しそうに笑っている。
僕は、ルームミラー…いや、ハーレーのサイドミラーに映るその最高にやかましい光景を見ながら、ほんの少しだけ、本当に久しぶりに、心の底から笑みがこぼれた。
僕の、死ぬための旅は、どうやらまだ、当分終わりそうにない。それでいい、と今は思えた。朝日の中、僕たちの走るタイムカプセルは、新たな物語を刻むために、力強くアスファルトを蹴った。
「ここにいる付喪神たち…つまり、このガラクタどもを全部拾い集めて、俺たちのバンを改造する」
僕、藤原悠人(ふじわら ゆうと)の、あまりにも突拍子のない、というか正気の沙汰とは思えない宣言は、夏の終わりの湿った空気にゆっくりと吸い込まれていった。一瞬、森が、世界が、絶対的な沈黙に陥った気がした。風の音も、虫の声も、そして今まで僕たちを取り囲むようにざわめいていた、数多の付喪神たちの怨嗟とも諦観ともつかない気配すら、ピタリと止まった。まるで、映画のワンシーンで突然音声が消えたかのように。
「……は?」
最初にその完全なる静寂を破ったのは、やはりと言うべきか、僕の隣に立つ天才ハッカー少女・水瀬莉奈(みなせ りな)だった。彼女の薄い唇から漏れたのは、疑問でも反論でも、あるいは呆れでもない。ただただ純粋な、あらゆる感情を削ぎ落とした「理解不能」を意味する、たった一音の響きだった。その声は、乾いた小枝が折れるように、夜の静寂に小さな亀裂を入れた。
「ちょ、ちょっと待ってください、悠人さん。今、なんておっしゃいました?私のオーディオインターフェースに何か致命的なバグでも発生しましたか?聞き間違いですよね?こいつらの魂、つまりスクラップの山に埋もれたガラクタを拾い集めて、私たちの、あのオンボロのバンを改造する、と聞こえたのですが」
莉奈は、細い指で自身のこめかみをぐりぐりと押さえながら、いつもの調子でマシンガンのように言葉を紡ぎ始めた。その目は大きく見開かれ、僕の正気度をスキャンしているかのようだ。
「正気ですか?いいですか、落ち着いて聞いてください。まず第一に、物理的に不可能です。異なるメーカー、異なる年代、異なる規格のパーツを寄せ集めて、一つのヴィークルとして機能させるなんて、それはもうエンジニアリングの領域を超えています。魔術か何かですよ。第二に、仮に、仮にですよ、100万歩譲って形になったとして、安全性はどう担保するんですか?走行中に空中分解でもしたらどうするんです?私たちはただでさえ訳アリの逃避行中なんですよ?これ以上リスクを増やすなんて、自殺行為以外の何物でもありません!理論上、構造力学的にも、電子制御的にも、ありとあらゆる側面から見て、この計画の成功確率はゼロ、限りなくゼロです!私のスーパーコンピューター『イドゥン』でシミュレーションするまでもなく、結果は明白です!」
まくし立てる彼女の隣で、チームの筋肉担当である巨漢、田中猛(たなか たける)は、スクラップの山をうっとりと見上げ、その口からは恍惚のため息が漏れていた。
「最高の……ポンコツ……。なんて、なんてロマンのある響きなんだ……」
キラキラとした少年のような瞳で、彼は廃車となったバイクの錆びついたエンジンブロックを、愛おしそうに撫でている。ああ、こいつはもうダメだ。議論のテーブルにすら着いていない。僕の提案した狂気を、彼はその純粋すぎる魂で、すでに至高のエンターテイメントとして受け入れてしまっている。
そして、もう一人。黒髪を長く垂らした巫女の少女、月読栞(つくよみ しおり)は、驚きにわずかに目を見開きながらも、その深い湖のような黒い瞳で、じっと僕の顔を見つめていた。彼女は、僕の言葉の表面ではなく、その奥底にある真意、僕自身も気づいていないかもしれない心の叫びを探ろうとしているかのようだった。彼女の沈黙は、莉奈の饒舌よりも、猛の恍惚よりも、雄弁に僕の心を揺さぶった。
この狂気の提案に、常識的な思考回路を持つ人間が乗るはずがない。僕自身、それが一番よくわかっていた。これは、追い詰められた末に口から出た、ほとんど支離滅裂な妄言にすぎない。だが、僕の計算違いが一つだけあった。この場には、常識という物差しから著しく逸脱した男が、もう一人存在していたのだ。
「面白え」
地の底から響くような、低く、それでいて確かな熱を帯びた声だった。闇の中からぬっと現れたその巨躯は、まるで冬眠から覚めた熊のようだった。油と汗に汚れた作業着を纏い、口元には無精髭。鋭い眼光だけが、暗闇の中でギラリと光っている。この辺り一帯を縄張りとする孤高の整備士、佐藤健吾(さとう けんご)。彼は、油に汚れた口の端をニヤリと吊り上げ、僕の目を見て獰猛に笑った。
「やってやろうじゃねえか。最高のポンコツ、上等だ。久しぶりに血が騒ぐ。俺の腕が、いや、ここに眠るコイツらの魂が、鳴ってるぜ」
健吾のその一言で、場の空気は決定的に、そして不可逆的に変わった。それは、絶望的な状況を打開するための、狂気の号砲だった。もはや、後戻りはできない。
「いや、だから理論的に!健吾さんまで何を言ってるんですか!あなたはこの道のプロでしょう!?こんな無謀が通るはずないって、一番分かってるはずじゃないですか!」
莉奈が悲鳴に近い声で最後の抵抗を試みる。しかし、健吾は彼女の方をちらりと見るでもなく、ガラクタの山から無骨な鉄パイプを一本拾い上げると、肩でトントンと叩きながら、問答無用の一言を放った。
「できるかできねえかじゃねえ。やるんだよ、お嬢ちゃん。理屈は後からついてくる。てめえのそのすごいパソコンとやらで、俺の腕についてこれるように、せいぜい頑張りな」
その言葉は、どんな理論武装も打ち砕く、絶対的な職人の矜持に満ちていた。莉奈は「ぐっ……」と呻き、ぐうの音も出ずに押し黙ってしまった。悔しそうに唇を噛む彼女の瞳の奥には、しかし、ほんのわずかに挑戦的な光が宿っているのを、僕は見逃さなかった。
こうして、僕たちの、そして忘れ去られたモノたちの、前代未聞の大改造プロジェクトが、その幕を開けた。舞台は、夜の闇に包まれたサトウモーター。文明の光から見放されたような、古びた整備工場だ。主役は、僕たち訳アリの一行と、スクラップの山に眠る、何百、いや何千ものモノたちの魂だ。これは、単なる車の修理ではない。鎮魂であり、再生であり、そして僕たち自身の未来をこじ開けるための、壮大な儀式の始まりだった。
◇
健吾の工場「サトウモーター」に、煌々と数台の投光器の光が灯された。それはまるで、これから世紀の大手術を執り行うオペ室の無影灯のようだ。天井の梁から吊るされた裸電球が、無数の工具が壁にかかった様を不気味に照らし出し、床に染み付いたオイルの黒いシミは、まるで古代の祭壇に描かれた紋様のようにも見えた。僕たちは、月明かりすらない樹海の墓場と、この光溢れる工場とを、夜が明けるまで何度も往復することになった。
猛がどこからか調達してきた電動の運搬車に、使えそうなモノ…いや、栞が「この子はまだ、走りたがっています」と告げたモノたちを次々と積み込んでいく。その光景は、さながらハイテク機材を駆使するアリの行列だ。ヘッドライトの光に照らされて、錆びついたバイクのフレーム、ひしゃげた耕運機のエンジン、液晶の割れたワープロ、扉だけになった冷蔵庫などが、次々と手術室へと運び込まれていく。それぞれのモノが放つ、悲しみと怒りが入り混じった重い気配が、工場の空気を満たしていく。
プロジェクトは、驚くべきチームワークで進んでいった。いや、チームワークという洗練された言葉は、この混沌には似合わない。個々の突出した能力と、剥き出しの個性がぶつかり合い、火花を散らしながら、奇跡的な相互作用を起こしている、と言うべきか。それは、まるで制御不能な核融合反応のようだった。
設計及び電子制御担当は、もちろん莉奈だ。彼女は最初こそ「無茶です!」「不可能です!」と金切り声を上げていたが、いざ始まると、そのプログラマーでありハッカーである魂に、猛烈な火がついたらしい。ポータブルの三次元レーザースキャナーを片手に、運び込まれた廃材の山を、まるで戦場のカメラマンのように駆け回り、次々とデータ化していく。
彼女のノートパソコンの画面には、即座にパーツの立体モデルが構築されていく。赤外線センサーが金属疲労の度合いをスキャンし、超音波センサーが内部の亀裂を探り出す。解析されたデータは瞬時に色分けされ、強度、劣化度、そして残された機能が、誰の目にも分かる形で表示された。
「このホンダ・スーパーカブのエンジンは、シリンダーヘッドに致命的なクラックが入ってますが、ピストンとクランクシャフトはまだ生きてますね。驚異的な耐久性です。こっちのヤンマー製耕運機のエンジンブロックとニコイチにすれば…トルクだけは無駄にある、意味不明なモンスターが生まれるかもしれません……。無茶苦茶だ、このアセンブリ、AIに食わせたら絶対エラー吐いてフリーズしますよ!」
文句を言いながらも、その目は子供のようにキラキラと輝いている。彼女は、キーボードを打つ指を止めると、タブレットにスタイラスペンを走らせ始めた。異なるメーカー、異なる規格のパーツを物理的に繋ぎ合わせるための、特殊なアダプターの設計図を、彼女はものの数分で描き上げてしまう。それは、もはやハッキングというより、神が作りたもうた世界のバグを修正し、新たな法則を創造しているかのようだった。神の領域のパズルを、彼女は不敵な笑みを浮かべながら解き明かしていく。
そして、その神の設計図、理論上の怪物、莉奈の脳内から吐き出された電子の塊を、現実世界に具現化するのが、執刀医、佐藤健吾だ。彼は、莉奈が「はい、できました!健吾さん、これ、いけますか!?」と突きつけたタブレットを一瞥すると、ただ「なるほどな」とだけ低く呟き、壁一面にかけられた無数の工具の中から、迷うことなく最適な一本を手に取る。それは、彼の腕の延長であり、魂の一部であるかのようにしっくりと馴染んでいた。
ギャイイイイン!
耳をつんざくような金属音が響き渡り、健吾が握るディスクグラインダーから、眩いばかりの火花が滝のように流れ落ちる。それは、古いバイクのフレームが、僕たちのバンの新たな骨格となるために、産声を上げているかのようだった。
バチバチッ!
アーク溶接の青白い閃光が、闇を焦がし、僕たちの顔に奇妙な影を落とす。彼は、莉奈が「理論上は可能」としただけの無茶苦茶な設計を、その神業のような技術と、長年培ってきたであろう経験と勘で、次々と形にしていく。完全に固着して回らなくなったボルトを、彼はバーナーで炙り、ハンマーで絶妙な衝撃を与え、まるで生き物に言い聞かせるように優しく、しかし確実に緩めていく。赤錆に覆われたパーツを、ワイヤーブラシで丹念に磨き上げ、オイルを差し、新たな命を吹き込んでいく。その姿は、黙々と機械と対話する、孤高の職人そのものだった。莉奈のデジタルな精密さと、健吾のアナログな職人技が、ここで奇跡的な融合を果たしていた。
その二人の天才を、純粋な物理力で支えるのが、重機担当、猛だ。
「うおおおおお!道を開けろおおおおい!」
彼は、事故でひしゃげ、歪みきってしまった僕のバンのフレームを、なんと一人で担ぎ上げ、健吾がチョークで記した位置に、寸分の狂いもなく設置する。軽トラックから降ろされた、大人二人でも持ち上げるのが困難なエンジンブロックを、「せいやっ!」という気合一閃の掛け声と共に、クレーンも使わずに軽々と持ち上げてしまう。彼の、常識から逸脱した規格外の怪力がなければ、このプロジェクトは一日かかってもエンジン一つ載せられなかっただろう。彼は、滝のように流れる汗をTシャツの袖で拭いながらも、自分がこの途方もない祭りの、重要な歯車の一つであることに、心からの喜びを感じているようだった。その顔は、泥だらけの子供のように無邪気で、輝いていた。
そして、この狂気の作業を、単なるスクラップの再利用ではなく、神聖な「儀式」へと昇華させているのが、巫女、栞の存在だった。
彼女は、健吾が解体するパーツの一つ一つに、そっとその白い手を触れ、目を閉じて静かに祈りを捧げる。その姿は、まるで戦場で息絶えた兵士を弔う聖女のようだった。
「お疲れ様でした。トラックの荷台を支え続けたあなた。たくさんの家族の笑顔を運んできたのですね。あなたの力強い魂は、決して無駄にはなりません。次に繋がります」
「あなたは、持ち主の少年に乱暴に扱われて、悲しかったのですね。でも、風を切って走ったあの日の喜びを、私は知っています。もう一度、走りましょう」
彼女のその行為に、法的な意味も、物理的な意味も、もちろんない。ただの自己満足だと言われればそれまでだ。だが、不思議なことに、彼女が祈りを捧げたパーツは、健吾が言うには「驚くほど素直に、言うことを聞く」のだそうだ。固着したボルトが、まるで自ら緩むかのように回り、叩いても抜けなかったベアリングが、スッと静かに滑り落ちる。彼女の祈りは、モノたちの魂に宿った怒りや悲しみを鎮め、次の生へと旅立つための、道標となっているのかもしれない。彼女がいるからこそ、僕たちはただの墓荒らしではなく、魂の運び手でいられるのだ。
じゃあ、この前代未聞のプロジェクトの発起人である僕、藤原悠人は何をしていたかというと、まあ、分かりやすく言えば監督だ。いや、もっと正確に言うなら、一番好き勝手に無茶を言う役だ。
「健吾さん、そこのハーレーダビッドソンだったもののサイドミラー、こっちのドアにつけてくれ。視認性より、ロマンが圧倒的に大事だ。左右非対称でいこう」
「莉奈、計器類のパネルだけどさ、ファミコンのコントローラーっぽくデザインできねえか?スピードメーターは十字キーの形で、タコメーターはAボタンとBボタンで」
「猛、そこの古いナショナルの冷蔵庫のドア、頑丈そうだな。なんかうまいことサイドボックスに改造できねえか?冷えないけど」
僕がそう言うたびに、莉奈が「ふざけないでください!これ以上、訳の分からない要求を実装するのはやめてください!私の美学に反します!」とヒステリックに怒鳴り、健吾が「……やってみる」と無表情で返し、猛が「冷蔵庫!最高じゃないすか!飲み物じゃなくて、夢と希望を詰め込むんすね!」と目を輝かせる。そんな混沌としたやり取りが、僕たちの作業のBGMだった。
◇
夜が更け、時計の針が真夜中をとうに過ぎた頃、作業は佳境に入っていた。
ツギハギの車体が、パズルのピースが埋まっていくように、少しずつ一つの形を取り戻していく。その過程で、僕たちは、これからこの車の血肉となるモノたちの、ささやかで、しかし確かな物語に触れていった。
「おい、悠人。このスピードメーター、どこから持ってきたやつか分かるか?」
健吾が、古ぼけたアナログの計器をウエスで丹念に磨きながら、僕に問いかけた。黒い文字盤に、オレンジ色の針。最大時速は180キロまで刻まれている。
「さあな。どっかの走り屋が乗ってたスクーターか何かだろ?」
「ちげえねえ。こいつはな、俺がガキの頃、駅前のゲームセンターにあったレースゲームの筐体から引っこ抜いてきたやつだ。俺が子供の頃、擦り切れるほど遊んだ『アウトラン』だよ。何千人、いや何万人もの子供たちの、なけなしの百円玉と、いつか本物のフェラーリに乗るっていう甘酸っぱい夢を乗せて、こいつの針はずっと振り切られ続けてきたんだ」
そう言って笑う健吾の横顔は、いつもの仏頂面とは違う、遠い日を懐かしむ少年のような顔をしていた。彼の指が、メーターのガラスについた小さな傷を優しくなぞる。それはきっと、興奮した誰かが叩きつけた拳の跡なのだろう。
栞は、古いカーステレオから取り外した一対のスピーカーを、まるで壊れ物を扱うかのように、慈しむように撫でていた。布製のネットは破れ、コーン紙には茶色いシミが浮いている。
「このスピーカーは、きっと、駅前の小さな純喫茶のカウンターの隅に、ずっと置かれていたんですね。たくさんの恋の始まりと、そして、たくさんの恋の終わりを、この子は静かに見つめてきた。流れていた音楽は、いつも同じだったみたいです。マスターのお気に入りだったんでしょうか。優しいメロディーが、今もこの子の奥で鳴っています」
彼女がそう言ってそっと目を閉じると、どこからか、あのラジカセが流していた懐かしい八十年代のアイドルの歌声が、ふわりと聞こえたような気がした。甘く切ないメロディーが、オイルと鉄の匂いに満ちた工場を、一瞬だけ感傷的な色に染め上げた。
電車のロングシート、バスの降車ボタン、郵便ポストの投函口、黒電話のダイヤル。一つ一つのパーツが、それぞれの物語を携えて、僕たちのバンに集まってくる。僕たちのバンは、もはや単なるガラクタの寄せ集めではなかった。それは、無数の名もなきモノたちが懸命に生きた証、その記憶と想いを詰め込んだ、過去と未来を繋ぐための、走るタイムカプセルへと生まれ変わりつつあった。
その光景を眺めながら、僕は、奇妙で、そしてひどく苦しい感覚に囚われていた。
彼らは、死んでいくのだ。
個としての「洗濯機」や「バイク」や「ワープロ」としての生は、健吾のグラインダーの火花と共に、ここで終わりを迎える。だが、彼らは、その魂ともいえる機能や部品を、僕のバンに託すことで、「次」へと繋がっていく。それは、僕には決して与えられない、あまりにもまっとうで、そして尊い「死に様」だった。
僕の旅は、僕にこの呪いをかけた神様を見つけ出して殺し、この永遠に続く呪われた生を「終わらせる」ためのものだった。死ぬための旅だ。だが、目の前で繰り広げられているのは、終わるためではなく、「もう一度、走り出す」ための、再生の儀式だ。終わりと始まりが、ここでは同義だった。
「お前たちは、いいよな」
僕は、誰に言うでもなく、そう呟いた。声は、けたたましい作業音にかき消されて、誰の耳にも届かなかった。
「壊れて、捨てられて、怒って、悲しんで……。でも最後は、こうして誰かの一部になって、ちゃんと前に進めるんだから」
僕の体は、壊れない。傷つけられても、瞬時に再生する。
僕は、忘れられない。どれだけ時が経とうと、過去の過ちは鮮明なまま、僕の心を蝕み続ける。
だから、終われない。終わらせてもらえない。
僕の、たった一人だけ止まってしまった時間を、目の前で繰り広げられる生命の循環が、まるで嘲笑っているかのようだった。孤独感が、冷たい水のように、心の底から満ちてくる。
◇
東の空が、深い藍色から、紫へ、そして徐々に白み始めていく。樹海の木々のシルエットが、朝靄の中にくっきりと浮かび上がってきた。夜明けだ。僕たちの、狂気の儀式もまた、その終わりを告げようとしていた。
「……できた」
健吾の、一晩中作業を続けたとは思えないほど力強い、しかしどこかかすれた声が、静まり返った工場に響いた。投光器の光と、差し込み始めた朝の光が混じり合う中に、ついに、そいつは堂々たる姿を現した。
それは、車と呼ぶには、あまりにも異形だった。
色はバラバラ、形はちぐはぐ。右のドアは、明らかに錆びついた軽トラックから剥ぎ取ってきたもので、「最大積載量350kg」の文字がかすかに残っている。左のフェンダーは、流線形のスクーターのカウルが、無理やりリベットで無数に留められていた。ボンネットは、なぜかカーボンのように黒光りしていたが、これは莉奈がどこぞのデータセンターから廃棄されたサーバーラックの扉を加工したものらしい。屋根には、ドラム式洗濯機の丸いガラスのフタを改造した、手動式のサンルーフが鎮座している。
まるで、移動する現代アート。あるいは、走るスクラップ置き場。フランケンシュタインの怪物、という陳腐な表現が、これほど似合う乗り物を、僕は後にも先にも見たことがない。
仲間たちが、息を呑んでその異形を見守っている。莉奈は呆然と立ち尽くし、猛は感涙にむせび、栞は慈愛に満ちた表情で微笑んでいた。僕は、ゆっくりと運転席に乗り込んだ。シートは、破れた部分をガムテープで無造作に補修した、電車のロングシートだった。独特のスプリングの感触が、尻に伝わる。ハンドルは、やけに細くて大きい。古い路線バスのものだろうか。目の前のコンソールには、莉奈がデザインしたファミコン風の計器パネルが、無機質な光を放っている。
そして、キー。それは、健吾が作業場の奥から見つけてきた、古いジュークボックスの鍵だった。七色に輝くプラスチックの飾りが付いている。
僕は、その鍵を、手作り感満載のキーシリンダーに差し込み、静かに、祈るように回した。
カチリ、と小さなリレーの音がする。
一瞬の沈黙。まるで世界中の時間が止まったかのような、永遠にも思える静寂。
キュルル……。
セルモーターの、あまりにも頼りない、か細い音が、静まり返った工場に響く。
ダメか。誰もがそう思った、その瞬間だった。
ヴォンッ!
ババババババババッ!
腹の底に響くような、猛烈な爆音と共に、ツギハギのエンジンが目を覚ました。それは、調和とは程遠い、だが、ありったけの生命力をぶちまけたような、荒々しい咆哮だった。耕運機のトルクと、バイクの回転数が、奇跡的なバランスで融合し、不協和音のシンフォニーを奏でている。車体が、ブルブルと喜びに震えているのが、シートを通してダイレクトに伝わってきた。生まれたての赤ん坊の、力強い産声だった。
その咆哮に応えるかのように、僕たちがモノたちを運び出してきた樹海の墓場の方から、ふっ、と夜通し僕たちを包んでいた重苦しい気配が消え去った。まるで、成仏を遂げた魂たちが、一斉に天に昇っていくように。朝日が、浄化された森を、静かに、そして美しく照らし出していた。
「……走るぞ」
僕が言うと、仲間たちが、待ってましたとばかりに、その怪物に乗り込んできた。
見た目とは裏腹に、車は驚くほど快調だった。いや、快調という言葉の定義を考え直さなければならない。それぞれの部品が「俺が!」「私が!」と自己主張を繰り返しているような、ガタガタ、ギシギシという不協和音の塊。だが、それが不思議なバランスの上で成り立っている。莉奈の完璧すぎるデジタル設計と、健吾の神業的なアナログ技術が、奇跡の調和を生み出していた。
出発の時。僕が礼を言おうと健吾の方を向くと、彼は僕の言葉を遮るように、当たり前のような顔で、自分の巨大な工具箱を荷台に放り込んだ。
「俺も行く」
「え?」
あまりに当然のように告げられた言葉に、僕は思わず聞き返した。
「こいつの最期を見届けるのは、俺の責任だ。産婆としてな。それに」
健吾は、僕の顔をじっと見て、初めて僕を「修理対象」として見る整備士の顔で言った。
「あんたみたいな、直しがいのあるオンボロ、そうそうお目にかかれねえからな」
その目は、僕の、永遠に動き続ける壊れない体と、その実、ボロボロに壊れきった心を、最高の修理対象として、完全にロックオンしていた。
こうして、口は悪いが腕は超一流の整備士、佐藤健吾が、僕たちの旅に加わった。
僕たちは、数多の魂を受け継ぎ、最高のポンコツへと生まれ変わったバンに乗り込む。次の目的地、雪女の伝説が残る、冬の気配が迫る長野の山村へと、僕はバスのハンドルを大きく切った。
車内に取り付けられた、あの喫茶店のスピーカーからは、やはりと言うべきか、この状況には場違いなほど陽気な八十年代のアイドルソングが、ノイズ混じりに流れ始めた。
後部座席では、猛が「うおっ!これ、俺の十八番っすよ!」と、致命的に音程の外れた熱唱をすでに繰り広げている。
莉奈が「この騒音の中でデバッグ作業なんて無理です!思考がまとまりません!」と頭を抱えてキレて、栞がその全てを包み込むように「ふふふ」と楽しそうに笑っている。
僕は、ルームミラー…いや、ハーレーのサイドミラーに映るその最高にやかましい光景を見ながら、ほんの少しだけ、本当に久しぶりに、心の底から笑みがこぼれた。
僕の、死ぬための旅は、どうやらまだ、当分終わりそうにない。それでいい、と今は思えた。朝日の中、僕たちの走るタイムカプセルは、新たな物語を刻むために、力強くアスファルトを蹴った。
10
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