68 / 105
第14章:エルフの森と銀色の車
第68話:氷の心と、焚き火のような沈黙 〜誇りという名の鎧は、溶ければ同じ命の滴に還る冬の氷である〜
しおりを挟む
夏の夜風が、レースのカーテンを大きく孕ませていた。 窓の外からは、リリリという虫の声と、遠くの街の灯りが放つ微かな喧騒が、波のように押し寄せては引いていく。 部屋の中は、月明かりだけが頼りだった。青白い光が、ベッドの上に横たわる少女の金色の髪を、冷ややかに照らし出している。
エルフの少女、アリアが目を覚ましたのは、そんな静寂の只中だった。
「……っ!」
意識が浮上した瞬間、彼女は弾かれたように身を起こした。 全身を走る鋭い痛み。だが、それ以上に彼女を襲ったのは、生理的な恐怖と嫌悪だった。 ここが、見知らぬ場所であること。 そして、鼻をつく匂い――土と鉄と、そして「人間」の匂いが充満していることに気づいたからだ。
「……ここ、は……」
アリアは周囲を見回した。 王城の地下牢ではない。木製の家具、清潔なシーツ、窓辺に飾られた野花。 だが、彼女にとってそこは「牢獄」以外の何物でもなかった。
ガチャリ、とドアが開く音がした。 アリアは反射的に身構え、枕元にあった花瓶を掴んだ。
「あ、目が覚めましたか? お水を持ってきま……」
入ってきたのは、メイだった。 彼女がお盆を持って近づこうとした瞬間、アリアの喉から獣のような咆哮がほとばしった。
「来るなッ!!」
ガシャーン!! 投げつけられた花瓶が壁に当たって砕け散り、水と花が床にぶちまけられる。 メイが小さく悲鳴を上げて立ち止まる。
「汚らわしい人間! 私に近づくな! 触れれば殺す!」
アリアは叫んだ。声は枯れ、体はガタガタと震えているが、その翠(みどり)色の瞳には、決して消えない殺意の炎が燃え盛っていた。 彼女にとって、人間とは対話する相手ではない。森を焼き、同胞をさらい、世界を汚す「害獣」だ。その害獣の巣に連れ込まれたという事実は、彼女のプライドをズタズタに切り裂いていた。
騒ぎを聞きつけて、廊下からドタドタと足音が近づいてくる。 ゼイクが剣の柄に手をかけて飛び込み、エリーゼが杖を構え、最後に瞬(シュン)がのんびりと顔を出した。
「おいおい、なんだよ。……あーあ、花瓶が。これ高かったんだぞ? アリスに請求書回されるなぁ」
瞬は、床に散らばった破片を見て、大げさに頭を抱えた。 その緊張感のなさが、逆にアリアの神経を逆撫でする。
「ふざけるな! 私を辱めるつもりか! 捕虜になるくらいなら、舌を噛んで死んでやる!」
アリアは割れたガラス片を拾い上げ、自分の細い首筋に押し当てた。 一筋の血が滲む。 その目は本気だった。誇りを汚されるくらいなら、命など惜しくはない。
ゼイクが一歩踏み出そうとするが、瞬が手で制した。
「わかった、わかったから。石頭、みんなを連れて出てってくれ」 「しかし、彼女は……」 「いいから。メイも、ありがとな。後は俺が見とく」
瞬に促され、ゼイクたちは渋々部屋を出て行った。メイが心配そうに振り返るが、瞬は「大丈夫」とウィンクしてみせる。
パタン、とドアが閉まる。 部屋には、瞬とアリア、二人だけが残された。
「……貴様も出て行け。さもなくば……」 アリアがガラス片を握りしめる手に力を込める。
だが、瞬は彼女を見ようともしなかった。 彼は、部屋の隅にある椅子を引きずってくると、ベッドから少し離れた場所にどかりと腰を下ろした。 そして、懐から一冊の雑誌を取り出し、パラパラとめくり始めたのだ。
「…………は?」
アリアの思考が停止する。 怒鳴られると思った。組み伏せられると思った。あるいは、甘い言葉で懐柔しようとしてくると思った。 だが、この男は。 まるで、自分の部屋でくつろぐように、足を組んで雑誌を読んでいる。
「な、何をしている……?」 「ん? 読書。……へぇ、今年の夏はサンダルが流行んのか。歩きにくそうだな」
無視された。 アリアは屈辱と混乱で顔を赤くした。 「私を……無視するな! 殺すなら殺せ!」
「殺さねぇよ。めんどくさい」 瞬は言った。 「それに、お前が自分で死ぬのも勝手だけどさ。……せっかくメイが作ったスープ、冷めちまうともったいないだろ?」
彼は顎でサイドテーブルをしゃくった。 そこには、メイが置いていったお盆があった。湯気を立てる野菜スープと、柔らかそうなパン。そして、綺麗に剥かれたウサギ型のリンゴ。
「毒が入っているに決まっている!」 「入ってねぇって。疑り深い奴だな」
瞬は、雑誌を片手に、もう片方の手でリンゴを一切れつまみ、パクリと口に入れた。 「ん、甘い。……ほら、俺が食っても平気だろ?」
アリアは、ガラス片を持ったまま固まった。 攻撃してこない。要求してこない。 ただ、そこにいる。 まるで、森の中にどっしりと構える岩のように。あるいは、静かに燃える焚き火のように。
外の嵐に心を乱されず、静かな湖面のように落ち着いている状態のことだ。 相手が怒りの炎を燃やしていても、こちらも同じように燃え上がっては、火災になるだけだ。 瞬は、アリアの激情を、ただ「そういう現象」として受け流し、自分のペース(静寂)の中に引きずり込もうとしていた。
沈黙が落ちた。 一分、五分、十分。 瞬はページをめくる手を止めない。時折、「ふーん」とか「まじか」とか呟くだけ。 アリアは、振り上げた拳の降ろしどころを見失っていた。 敵意を向ける相手が、暖簾(のれん)のように反応しないと、怒りを持続させるのは難しい。緊張の糸が、プツリと切れる。
カラン。 アリアの手から、ガラス片が滑り落ちた。 彼女は、糸が切れた人形のようにベッドに崩れ落ち、荒い息を吐いた。
「……なぜ」 アリアが、掠れた声で問うた。
「なぜ、私を放置するの。……私はエルフよ。あなたたち人間を蔑み、憎んでいるのよ。隙があれば、その喉を掻っ切ってやるつもりなのよ」
「そう思いたきゃ、思えばいいさ。頭の中は自由だ」 瞬は、雑誌から目を離さずに答えた。
「でもな。お前が俺を嫌いでも、俺がお前に『腹減ってんだろ、食えよ』って思うのは、俺の自由だろ?」
見返りを求めない。 「お前が態度を改めるなら、優しくしてやる」という取引ではない。 相手がどうあろうと、自分は自分のなすべきこと(善意)を行う。 それは、アリアがこれまでの人生で受けてきた、計算高い人間たちの態度とは、決定的に異なっていた。
ぐぅぅ……。 不意に、アリアのお腹が小さく鳴った。 彼女は顔を真っ赤にして、腹を押さえた。
瞬は、聞こえなかったふりをして、ページをめくった。 その配慮が、アリアには少しだけくすぐったかった。
彼女は、震える手でスプーンを手に取り、スープを一口すくった。 毒見のつもりだった。 だが、口に含んだ瞬間、野菜の甘みと、丁寧にとられた出汁の旨味が、乾いた体に染み渡った。 ――美味しい。 悔しいけれど、涙が出るほど美味しかった。
「……変な奴」 アリアは呟きながら、二口、三口とスプーンを運んだ。 空っぽだった胃袋が満たされていくにつれ、冷え切っていた心にも、少しずつ熱が戻ってくる。
瞬が、パタンと雑誌を閉じた。 彼は窓の方を向き、夜空に浮かぶ月を見上げて言った。
「なあ。お前さ、『エルフ』っていう看板、背負いすぎじゃね?」
「……何よ」
「誇りとか、種族の対立とか、そういう重たい看板だよ。……そんなの背負ってたら、肩凝るだろ?」
瞬は、椅子をキコキコと揺らした。
「俺にはさ、お前が『高貴なエルフのお姫様』には見えねぇんだよ。……ただの、『怪我して、腹減らして、心細くて震えてる女の子』にしか見えない」
アリアの手が止まる。 ただの、女の子。 そんなふうに言われたのは、生まれて初めてだった。 常に「長老の娘」として、「エルフの代表」として振る舞うことを求められてきた。弱音を吐くことも、人間に隙を見せることも許されなかった。 「私」という個人は、いつだって「種族」という大きな枠組みの中に埋没していた。
「看板を下ろしてさ、ただの自分に戻って深呼吸してみなよ。……ここの空気は、エルフのものでも人間のものでもない、ただの空気だぜ?」
瞬の言葉は、シンプルで、乱暴で、そして驚くほど優しかった。 アリアは、深く息を吸い込んだ。 夏の夜の匂い。草の匂い。スープの匂い。 そして、目の前にいる男の、飾り気のない日向のような匂い。 それらは、何の区別もなく、ただそこにあった。
「……ふん」 アリアは、空になった器をテーブルに置いた。 カチャリ、という音が、静かな部屋に響く。
「……味付けは、悪くなかったわ。人間にしてはね」
精一杯の強がり。 だが、その声には、先ほどまでの刺々しさは消えていた。
瞬は立ち上がり、ニカっと笑った。 「そりゃよかった。メイに伝えとくよ」
彼は出口へと向かった。 ドアノブに手をかけ、背中越しにひらひらと手を振る。
「おやすみ。……明日は晴れるといいな」
ドアが閉まる。 部屋には再び静寂が戻った。 だが、それは以前のような「孤独な静寂」ではなかった。 お腹の中にある温かさと、不思議な安堵感が、アリアを包み込んでいた。
(変な……人間)
アリアは、窓から見える月を見つめた。 氷のように固まっていた心が、焚き火の熱に当てられて、一滴だけ溶け出したような気がした。 その夜、彼女は王城の地下牢で見ていた悪夢を見ることなく、泥のように深く眠った。
エルフの少女、アリアが目を覚ましたのは、そんな静寂の只中だった。
「……っ!」
意識が浮上した瞬間、彼女は弾かれたように身を起こした。 全身を走る鋭い痛み。だが、それ以上に彼女を襲ったのは、生理的な恐怖と嫌悪だった。 ここが、見知らぬ場所であること。 そして、鼻をつく匂い――土と鉄と、そして「人間」の匂いが充満していることに気づいたからだ。
「……ここ、は……」
アリアは周囲を見回した。 王城の地下牢ではない。木製の家具、清潔なシーツ、窓辺に飾られた野花。 だが、彼女にとってそこは「牢獄」以外の何物でもなかった。
ガチャリ、とドアが開く音がした。 アリアは反射的に身構え、枕元にあった花瓶を掴んだ。
「あ、目が覚めましたか? お水を持ってきま……」
入ってきたのは、メイだった。 彼女がお盆を持って近づこうとした瞬間、アリアの喉から獣のような咆哮がほとばしった。
「来るなッ!!」
ガシャーン!! 投げつけられた花瓶が壁に当たって砕け散り、水と花が床にぶちまけられる。 メイが小さく悲鳴を上げて立ち止まる。
「汚らわしい人間! 私に近づくな! 触れれば殺す!」
アリアは叫んだ。声は枯れ、体はガタガタと震えているが、その翠(みどり)色の瞳には、決して消えない殺意の炎が燃え盛っていた。 彼女にとって、人間とは対話する相手ではない。森を焼き、同胞をさらい、世界を汚す「害獣」だ。その害獣の巣に連れ込まれたという事実は、彼女のプライドをズタズタに切り裂いていた。
騒ぎを聞きつけて、廊下からドタドタと足音が近づいてくる。 ゼイクが剣の柄に手をかけて飛び込み、エリーゼが杖を構え、最後に瞬(シュン)がのんびりと顔を出した。
「おいおい、なんだよ。……あーあ、花瓶が。これ高かったんだぞ? アリスに請求書回されるなぁ」
瞬は、床に散らばった破片を見て、大げさに頭を抱えた。 その緊張感のなさが、逆にアリアの神経を逆撫でする。
「ふざけるな! 私を辱めるつもりか! 捕虜になるくらいなら、舌を噛んで死んでやる!」
アリアは割れたガラス片を拾い上げ、自分の細い首筋に押し当てた。 一筋の血が滲む。 その目は本気だった。誇りを汚されるくらいなら、命など惜しくはない。
ゼイクが一歩踏み出そうとするが、瞬が手で制した。
「わかった、わかったから。石頭、みんなを連れて出てってくれ」 「しかし、彼女は……」 「いいから。メイも、ありがとな。後は俺が見とく」
瞬に促され、ゼイクたちは渋々部屋を出て行った。メイが心配そうに振り返るが、瞬は「大丈夫」とウィンクしてみせる。
パタン、とドアが閉まる。 部屋には、瞬とアリア、二人だけが残された。
「……貴様も出て行け。さもなくば……」 アリアがガラス片を握りしめる手に力を込める。
だが、瞬は彼女を見ようともしなかった。 彼は、部屋の隅にある椅子を引きずってくると、ベッドから少し離れた場所にどかりと腰を下ろした。 そして、懐から一冊の雑誌を取り出し、パラパラとめくり始めたのだ。
「…………は?」
アリアの思考が停止する。 怒鳴られると思った。組み伏せられると思った。あるいは、甘い言葉で懐柔しようとしてくると思った。 だが、この男は。 まるで、自分の部屋でくつろぐように、足を組んで雑誌を読んでいる。
「な、何をしている……?」 「ん? 読書。……へぇ、今年の夏はサンダルが流行んのか。歩きにくそうだな」
無視された。 アリアは屈辱と混乱で顔を赤くした。 「私を……無視するな! 殺すなら殺せ!」
「殺さねぇよ。めんどくさい」 瞬は言った。 「それに、お前が自分で死ぬのも勝手だけどさ。……せっかくメイが作ったスープ、冷めちまうともったいないだろ?」
彼は顎でサイドテーブルをしゃくった。 そこには、メイが置いていったお盆があった。湯気を立てる野菜スープと、柔らかそうなパン。そして、綺麗に剥かれたウサギ型のリンゴ。
「毒が入っているに決まっている!」 「入ってねぇって。疑り深い奴だな」
瞬は、雑誌を片手に、もう片方の手でリンゴを一切れつまみ、パクリと口に入れた。 「ん、甘い。……ほら、俺が食っても平気だろ?」
アリアは、ガラス片を持ったまま固まった。 攻撃してこない。要求してこない。 ただ、そこにいる。 まるで、森の中にどっしりと構える岩のように。あるいは、静かに燃える焚き火のように。
外の嵐に心を乱されず、静かな湖面のように落ち着いている状態のことだ。 相手が怒りの炎を燃やしていても、こちらも同じように燃え上がっては、火災になるだけだ。 瞬は、アリアの激情を、ただ「そういう現象」として受け流し、自分のペース(静寂)の中に引きずり込もうとしていた。
沈黙が落ちた。 一分、五分、十分。 瞬はページをめくる手を止めない。時折、「ふーん」とか「まじか」とか呟くだけ。 アリアは、振り上げた拳の降ろしどころを見失っていた。 敵意を向ける相手が、暖簾(のれん)のように反応しないと、怒りを持続させるのは難しい。緊張の糸が、プツリと切れる。
カラン。 アリアの手から、ガラス片が滑り落ちた。 彼女は、糸が切れた人形のようにベッドに崩れ落ち、荒い息を吐いた。
「……なぜ」 アリアが、掠れた声で問うた。
「なぜ、私を放置するの。……私はエルフよ。あなたたち人間を蔑み、憎んでいるのよ。隙があれば、その喉を掻っ切ってやるつもりなのよ」
「そう思いたきゃ、思えばいいさ。頭の中は自由だ」 瞬は、雑誌から目を離さずに答えた。
「でもな。お前が俺を嫌いでも、俺がお前に『腹減ってんだろ、食えよ』って思うのは、俺の自由だろ?」
見返りを求めない。 「お前が態度を改めるなら、優しくしてやる」という取引ではない。 相手がどうあろうと、自分は自分のなすべきこと(善意)を行う。 それは、アリアがこれまでの人生で受けてきた、計算高い人間たちの態度とは、決定的に異なっていた。
ぐぅぅ……。 不意に、アリアのお腹が小さく鳴った。 彼女は顔を真っ赤にして、腹を押さえた。
瞬は、聞こえなかったふりをして、ページをめくった。 その配慮が、アリアには少しだけくすぐったかった。
彼女は、震える手でスプーンを手に取り、スープを一口すくった。 毒見のつもりだった。 だが、口に含んだ瞬間、野菜の甘みと、丁寧にとられた出汁の旨味が、乾いた体に染み渡った。 ――美味しい。 悔しいけれど、涙が出るほど美味しかった。
「……変な奴」 アリアは呟きながら、二口、三口とスプーンを運んだ。 空っぽだった胃袋が満たされていくにつれ、冷え切っていた心にも、少しずつ熱が戻ってくる。
瞬が、パタンと雑誌を閉じた。 彼は窓の方を向き、夜空に浮かぶ月を見上げて言った。
「なあ。お前さ、『エルフ』っていう看板、背負いすぎじゃね?」
「……何よ」
「誇りとか、種族の対立とか、そういう重たい看板だよ。……そんなの背負ってたら、肩凝るだろ?」
瞬は、椅子をキコキコと揺らした。
「俺にはさ、お前が『高貴なエルフのお姫様』には見えねぇんだよ。……ただの、『怪我して、腹減らして、心細くて震えてる女の子』にしか見えない」
アリアの手が止まる。 ただの、女の子。 そんなふうに言われたのは、生まれて初めてだった。 常に「長老の娘」として、「エルフの代表」として振る舞うことを求められてきた。弱音を吐くことも、人間に隙を見せることも許されなかった。 「私」という個人は、いつだって「種族」という大きな枠組みの中に埋没していた。
「看板を下ろしてさ、ただの自分に戻って深呼吸してみなよ。……ここの空気は、エルフのものでも人間のものでもない、ただの空気だぜ?」
瞬の言葉は、シンプルで、乱暴で、そして驚くほど優しかった。 アリアは、深く息を吸い込んだ。 夏の夜の匂い。草の匂い。スープの匂い。 そして、目の前にいる男の、飾り気のない日向のような匂い。 それらは、何の区別もなく、ただそこにあった。
「……ふん」 アリアは、空になった器をテーブルに置いた。 カチャリ、という音が、静かな部屋に響く。
「……味付けは、悪くなかったわ。人間にしてはね」
精一杯の強がり。 だが、その声には、先ほどまでの刺々しさは消えていた。
瞬は立ち上がり、ニカっと笑った。 「そりゃよかった。メイに伝えとくよ」
彼は出口へと向かった。 ドアノブに手をかけ、背中越しにひらひらと手を振る。
「おやすみ。……明日は晴れるといいな」
ドアが閉まる。 部屋には再び静寂が戻った。 だが、それは以前のような「孤独な静寂」ではなかった。 お腹の中にある温かさと、不思議な安堵感が、アリアを包み込んでいた。
(変な……人間)
アリアは、窓から見える月を見つめた。 氷のように固まっていた心が、焚き火の熱に当てられて、一滴だけ溶け出したような気がした。 その夜、彼女は王城の地下牢で見ていた悪夢を見ることなく、泥のように深く眠った。
10
あなたにおすすめの小説
『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので
eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」
勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。
しかし、勇者たちは気づいていなかった。
彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。
アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。
一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。
そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……?
一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。
「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」
これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。
散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。
アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。
それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。
するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。
それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき…
遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。
……とまぁ、ここまでは良くある話。
僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき…
遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。
「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」
それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。
なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…?
2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。
皆様お陰です、有り難う御座います。
無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件
fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。
実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。
追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。
そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。
これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。
ゲームの悪役貴族に転生した俺、断罪されて処刑される未来を回避するため死ぬ気で努力したら、いつの間にか“救国の聖人”と呼ばれてたんだが
夏見ナイ
ファンタジー
過労死した俺が転生したのは、大好きな乙女ゲームの悪役貴族アレン。待つのはヒロインたちからの断罪と処刑エンド!?冗談じゃない!
絶対に生き延びて平穏な老後を送るため、俺はゲーム知識を総動員して破滅フラグ回避に奔走する。領地を改革し、民を救い、来るべき災厄に備えて血の滲むような努力を重ねた。
ただ死にたくない一心だったのに、その行動はなぜか周囲に「深謀遠慮の聖人」と勘違いされ、評価はうなぎ登り。
おまけに、俺を断罪するはずの聖女や王女、天才魔導師といったヒロインたちが「運命の人だわ!」「結婚してください!」と次々に迫ってきて……!?
これは、破滅を回避したいだけの悪役貴族が、いつの間にか国を救う英雄に祭り上げられ、ヒロインたちに溺愛される勘違い救国ファンタジー!
最強すぎて無職になりましたが、隣国の姫が勝手に嫁入りしてきました
eringi
ファンタジー
平凡なサラリーマン・佐藤亮は、満員電車で謎の光に包まれ異世界へ転移する。神様から「世界最強の力」を授かったはずが、本人はただの無職ニートとしか思っていない。冒険者ギルドで雑用を請け負う日々。そんな亮の周囲に、冷徹な騎士姫、天才魔導士、元盗賊の少女、竜人族の戦士など個性豊かな美少女たちが自然と集まってくる。一方、彼を「ただの運のいい凡人」と侮る貴族や悪徳商人たちは次々と痛快なざまぁ展開に。亮は「俺なんて大したことないのに」と呟きながら、気づけば国を揺るがす陰謀を解決し、世界を救うことに――。無自覚最強主人公による、爽快ハーレムファンタジー開幕!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~
eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」
王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。
彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。
失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。
しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。
「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」
ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。
その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。
一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。
「ノエル! 戻ってきてくれ!」
「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」
これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる