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第九章:魔界の盟主と対天使兵器
第44話:希望の鍛冶場
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「では、こちらへ」
ザグラムに案内され、俺たちは魔王城の地下深くに広がる、巨大な工房へと足を踏み入れた。
その瞬間、むせ返るような熱気と、カン!カン!と響き渡る無数の槌音、そして、威勢のいい掛け声が、俺たちを包み込んだ。
そこは、巨大な洞窟を丸ごとくり抜いて作られたような、広大な鍛冶場だった。
中央では、地底のマグマを利用した巨大な溶鉱炉が、ゴオオオと音を立てて真っ赤な炎を燃え盛らせている。壁や床には、血管のように青白い光を放つ魔術回路が張り巡らされ、天井からは巨大な鎖やクレーンが吊り下がっていた。
熱せられた金属の匂い、石炭の燃える匂い、そして魔力を含んだ鉱石の独特な匂いが混じり合い、この場所の活気を物語っている。
工房の中心に立ったティアナは、静かに目を閉じ、額の第三の目に意識を集中させた。
すると、彼女の額から放たれた光が、工房の中央の空間に、複雑怪奇な立体構造物を描き出していく。無数のパーツが、芸術的なまでに精密に組み合わさった、見たこともない兵器の設計図だった。
『これが、かつて我ら古の民が作り上げた、対調律者用殲滅兵装…その理論構造だ』
その、あまりに高度で美しい設計図に、アリーシアやルーナは息をのむ。
「ふむ…」
ザグラムは、腕を組みながら興味深そうにそれを眺めると、一つ頷いた。
「この構造…これならば、我が魔界が誇る『魔鋼石』と『闇の魔力結晶』を使えば、再現可能かもしれん」
彼はそう言うと、工房の奥で作業をしていた、ひときわ屈強な職人たちを呼び集めた。地上のドワーフよりもさらにがっしりとした体躯を持つ、魔族の鍛冶師(魔工技師)たちだ。
「だが、これだけのものを組み上げるには、我らの魔術的技術だけでは足りん。もう一つ、別の視点からの叡智が必要だ」
ザグラムがそう言うと、空間に巨大な転移ゲートを開いた。
ゲートの向こうから、聞き覚えのある怒鳴り声と共に、一人の老人が転がり出てきた。
「なんじゃい!人が気持ちよく昼寝しとったというのに!」
天空都市の飛空挺技師、ギデオン爺さんだ。
しかし、彼の文句は、すぐに驚愕と、そして歓喜の叫びに変わった。
「な、な、な、なんじゃこりゃああああああ!」
ギデオンは、空中に浮かぶ古代兵器の設計図と、魔族たちが運んできた魔鋼石を見るやいなや、少年のように目を輝かせ、興奮のあまり、盛大に鼻血を噴き出した。
「この構造!この素材!神か!あんたは神なんか、姫さん!これなら!これならわしの生涯をかけた、最高のオモチャが作れるぞい!」
こうして、古代の叡智、魔界の魔術、そして人間の科学、三つの力が、この魔界の地下工房に集結した。
だが、当然、すんなりとはいかない。
「こんな叩き方じゃ、素材の良さが死んでしまうわい!なっておらん!」
ギデオンが、魔族の鍛冶師の仕事にケチをつける。
「人間のひ弱な力と、チャチな道具では、この神聖な魔鋼石は扱えんわ!」
魔族の鍛冶師も、ギデオンの持ち込んだ蒸気機関の工具を見て、鼻で笑う。
一触即発。そんな雰囲気の中、ギデオンは「ほれ、見とれ!」と蒸気ハンマーで寸分の狂いもなく金属を加工する技術を見せつけ、対する魔族の鍛冶師も「これぞ我が一族の秘技!」と魔力を込めて叩くことで、金属の性質そのものを変化させる神業を披露した。
「「…………やるな、お主」」
互いの技術の粋を目の当たりにした二人は、数秒見つめ合った後、がっしりと肩を組み、どこからか持ってきた酒樽で、豪快に酒を酌み交わし始めた。職人同士の友情に、言葉はいらないらしい。
それからというもの、工房は昼夜を問わず稼働し続けた。
古代、魔術、科学。
異なる三つの叡智がぶつかり、火花を散らし、そして見事に融合していく。
カン!カン!カン!
希望の槌音が、魔界の地の底から、世界中に響き渡るかのように、力強く、そしてどこまでも鳴り響いていた。
ザグラムに案内され、俺たちは魔王城の地下深くに広がる、巨大な工房へと足を踏み入れた。
その瞬間、むせ返るような熱気と、カン!カン!と響き渡る無数の槌音、そして、威勢のいい掛け声が、俺たちを包み込んだ。
そこは、巨大な洞窟を丸ごとくり抜いて作られたような、広大な鍛冶場だった。
中央では、地底のマグマを利用した巨大な溶鉱炉が、ゴオオオと音を立てて真っ赤な炎を燃え盛らせている。壁や床には、血管のように青白い光を放つ魔術回路が張り巡らされ、天井からは巨大な鎖やクレーンが吊り下がっていた。
熱せられた金属の匂い、石炭の燃える匂い、そして魔力を含んだ鉱石の独特な匂いが混じり合い、この場所の活気を物語っている。
工房の中心に立ったティアナは、静かに目を閉じ、額の第三の目に意識を集中させた。
すると、彼女の額から放たれた光が、工房の中央の空間に、複雑怪奇な立体構造物を描き出していく。無数のパーツが、芸術的なまでに精密に組み合わさった、見たこともない兵器の設計図だった。
『これが、かつて我ら古の民が作り上げた、対調律者用殲滅兵装…その理論構造だ』
その、あまりに高度で美しい設計図に、アリーシアやルーナは息をのむ。
「ふむ…」
ザグラムは、腕を組みながら興味深そうにそれを眺めると、一つ頷いた。
「この構造…これならば、我が魔界が誇る『魔鋼石』と『闇の魔力結晶』を使えば、再現可能かもしれん」
彼はそう言うと、工房の奥で作業をしていた、ひときわ屈強な職人たちを呼び集めた。地上のドワーフよりもさらにがっしりとした体躯を持つ、魔族の鍛冶師(魔工技師)たちだ。
「だが、これだけのものを組み上げるには、我らの魔術的技術だけでは足りん。もう一つ、別の視点からの叡智が必要だ」
ザグラムがそう言うと、空間に巨大な転移ゲートを開いた。
ゲートの向こうから、聞き覚えのある怒鳴り声と共に、一人の老人が転がり出てきた。
「なんじゃい!人が気持ちよく昼寝しとったというのに!」
天空都市の飛空挺技師、ギデオン爺さんだ。
しかし、彼の文句は、すぐに驚愕と、そして歓喜の叫びに変わった。
「な、な、な、なんじゃこりゃああああああ!」
ギデオンは、空中に浮かぶ古代兵器の設計図と、魔族たちが運んできた魔鋼石を見るやいなや、少年のように目を輝かせ、興奮のあまり、盛大に鼻血を噴き出した。
「この構造!この素材!神か!あんたは神なんか、姫さん!これなら!これならわしの生涯をかけた、最高のオモチャが作れるぞい!」
こうして、古代の叡智、魔界の魔術、そして人間の科学、三つの力が、この魔界の地下工房に集結した。
だが、当然、すんなりとはいかない。
「こんな叩き方じゃ、素材の良さが死んでしまうわい!なっておらん!」
ギデオンが、魔族の鍛冶師の仕事にケチをつける。
「人間のひ弱な力と、チャチな道具では、この神聖な魔鋼石は扱えんわ!」
魔族の鍛冶師も、ギデオンの持ち込んだ蒸気機関の工具を見て、鼻で笑う。
一触即発。そんな雰囲気の中、ギデオンは「ほれ、見とれ!」と蒸気ハンマーで寸分の狂いもなく金属を加工する技術を見せつけ、対する魔族の鍛冶師も「これぞ我が一族の秘技!」と魔力を込めて叩くことで、金属の性質そのものを変化させる神業を披露した。
「「…………やるな、お主」」
互いの技術の粋を目の当たりにした二人は、数秒見つめ合った後、がっしりと肩を組み、どこからか持ってきた酒樽で、豪快に酒を酌み交わし始めた。職人同士の友情に、言葉はいらないらしい。
それからというもの、工房は昼夜を問わず稼働し続けた。
古代、魔術、科学。
異なる三つの叡智がぶつかり、火花を散らし、そして見事に融合していく。
カン!カン!カン!
希望の槌音が、魔界の地の底から、世界中に響き渡るかのように、力強く、そしてどこまでも鳴り響いていた。
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