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第九章:魔界の盟主と対天使兵器
第43話:利害の一致
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魔王ザグラムが語った、世界の真実。
そのあまりに壮大な物語に、俺たちは、ただ言葉を失っていた。
静まり返った玉座の間。古書の香りと、魔道具の放つ柔らかな光だけが、そこにある。
やがて、ザグラムは、その理知的な瞳で、俺たち一人ひとりを見つめると、静かに告げた。
「世界の理の外にある者たちよ。もし君たちに、偽りの神…『調律者』を討つ覚悟があるのなら、我ら魔族は、協力を惜しまない。再び、天の意思に抗う戦いを始めよう」
その言葉に、最初に立ち上がったのは、アリーシアだった。
彼女は、一行の代表としてザグラムの前へと進み出ると、まっすぐにその瞳を見返し、きっぱりと言い放った。
「元王女として、いえ、この世界に生きる一人の人間として、その提案、謹んでお受けいたします。我々の目的は一つ。ドクター・ヴェルギリウスの狂気を止め、天使の理不尽から、私たちの世界を解放することです」
アリーシアが手を差し出すと、ザグラムも静かにそれに応じる。
二人の手が固く握られた瞬間、まるで祝福するかのように、玉座の間の魔道具が一斉に輝きを増し、その場を荘厳な光で満たした。
今、ここに、種族を超えた、歴史的な同盟が結ばれたのだ。
と、そんな感動的な雰囲気を、けたたましい物音と、野蛮な声が、盛大にぶち壊した。
「魔王様!例の帝国の忍びの処遇、いかがいたしますか!」
「離せ!俺たちに手荒な真似をしてみろ、ただじゃおかねえぞ!」
玉座の間の巨大な扉が乱暴に開け放たれ、数人の魔族の兵士に引きずられるようにして、三人の男女が転がり込んできた。
その姿には、見覚えがあった。いや、ありすぎた。
黒装束は破れ、ボロボロになったその三人は、帝国の隠密忍者衆「黒風」。リーダーのカゲリと、ライガ、フウマだった。
カゲリは、引きずり出された勢いで顔を上げると、魔王であるザグラムと、その前で談笑(?)している俺たちの姿を認め、あんぐりと口を開けた。
そして、俺の顔を見ると、心底嫌そうな、まるでゴキブリでも見たかのような顔で、叫んだ。
「げっ…!あんたらか!」
魔族の兵士曰く。
彼らは、帝国で俺が天変地異(のようなもの)を起こした後、皇帝に見切りをつけて逃走したが、その道中で、運悪く魔界の斥候に捕縛されたらしい。ご愁傷さまである。
「さて」
ザグラムは、わざとらしく顎に手を当てると、芝居がかった口調で言った。
「この者たちは、あの忌々しい帝国の手先。どうしたものか…。このまま、魔界の牢獄で、一生を終えさせるべきか…」
その言葉に、カゲリが、血相を変えて弁明を始めた。
「ま、待ってくれ!俺たちは、もう奴らとは関係ない!それに、ドクター・ヴェルギリウスには、俺たちも貸しがあるんだ!」
彼女は、必死の形相で、自分たちの過去を語り始めた。
彼らの故郷である忍びの里もまた、ヴェルギリウスの非道な実験によって、多くの仲間を失っていたのだ。
「あいつのせいで、俺たちの仲間も、里も、めちゃくちゃにされたんだ!この落とし前は、必ずつけさせてやる!」
そこまで言うと、彼女は、はっと我に返り、少しだけ本音を漏らした。
「そ、それに…!あんな化け物(天使)やキメラがそこら中をうろついてちゃ、俺たちの仕事(裏稼業)も、商売上がったりなんでね…!」
その、あまりに人間臭い本音に、ザグラムは、フッと、口元を綻ばせた。
「なるほど。利害は、一致している、か」
彼は、にやりと笑うと、兵士たちに命じて、忍者衆の拘束を解かせた。
「よかろう。貴様らの力、見込んでやろう。我々の戦いに、その技を貸す名誉をくれてやる」
「へ…?あ、ありがてえ…」
こうして、俺たちの意思とは全く関係のないところで、予期せぬ戦力が、なし崩し的に合流することになった。
ただでさえカオスな俺たちのパーティに、裏稼業のプロまで加わるとは。
俺は、これから起こるであろう、さらなる面倒事を予感し、誰にも気づかれないように、そっと、深いため息をついた。
そのあまりに壮大な物語に、俺たちは、ただ言葉を失っていた。
静まり返った玉座の間。古書の香りと、魔道具の放つ柔らかな光だけが、そこにある。
やがて、ザグラムは、その理知的な瞳で、俺たち一人ひとりを見つめると、静かに告げた。
「世界の理の外にある者たちよ。もし君たちに、偽りの神…『調律者』を討つ覚悟があるのなら、我ら魔族は、協力を惜しまない。再び、天の意思に抗う戦いを始めよう」
その言葉に、最初に立ち上がったのは、アリーシアだった。
彼女は、一行の代表としてザグラムの前へと進み出ると、まっすぐにその瞳を見返し、きっぱりと言い放った。
「元王女として、いえ、この世界に生きる一人の人間として、その提案、謹んでお受けいたします。我々の目的は一つ。ドクター・ヴェルギリウスの狂気を止め、天使の理不尽から、私たちの世界を解放することです」
アリーシアが手を差し出すと、ザグラムも静かにそれに応じる。
二人の手が固く握られた瞬間、まるで祝福するかのように、玉座の間の魔道具が一斉に輝きを増し、その場を荘厳な光で満たした。
今、ここに、種族を超えた、歴史的な同盟が結ばれたのだ。
と、そんな感動的な雰囲気を、けたたましい物音と、野蛮な声が、盛大にぶち壊した。
「魔王様!例の帝国の忍びの処遇、いかがいたしますか!」
「離せ!俺たちに手荒な真似をしてみろ、ただじゃおかねえぞ!」
玉座の間の巨大な扉が乱暴に開け放たれ、数人の魔族の兵士に引きずられるようにして、三人の男女が転がり込んできた。
その姿には、見覚えがあった。いや、ありすぎた。
黒装束は破れ、ボロボロになったその三人は、帝国の隠密忍者衆「黒風」。リーダーのカゲリと、ライガ、フウマだった。
カゲリは、引きずり出された勢いで顔を上げると、魔王であるザグラムと、その前で談笑(?)している俺たちの姿を認め、あんぐりと口を開けた。
そして、俺の顔を見ると、心底嫌そうな、まるでゴキブリでも見たかのような顔で、叫んだ。
「げっ…!あんたらか!」
魔族の兵士曰く。
彼らは、帝国で俺が天変地異(のようなもの)を起こした後、皇帝に見切りをつけて逃走したが、その道中で、運悪く魔界の斥候に捕縛されたらしい。ご愁傷さまである。
「さて」
ザグラムは、わざとらしく顎に手を当てると、芝居がかった口調で言った。
「この者たちは、あの忌々しい帝国の手先。どうしたものか…。このまま、魔界の牢獄で、一生を終えさせるべきか…」
その言葉に、カゲリが、血相を変えて弁明を始めた。
「ま、待ってくれ!俺たちは、もう奴らとは関係ない!それに、ドクター・ヴェルギリウスには、俺たちも貸しがあるんだ!」
彼女は、必死の形相で、自分たちの過去を語り始めた。
彼らの故郷である忍びの里もまた、ヴェルギリウスの非道な実験によって、多くの仲間を失っていたのだ。
「あいつのせいで、俺たちの仲間も、里も、めちゃくちゃにされたんだ!この落とし前は、必ずつけさせてやる!」
そこまで言うと、彼女は、はっと我に返り、少しだけ本音を漏らした。
「そ、それに…!あんな化け物(天使)やキメラがそこら中をうろついてちゃ、俺たちの仕事(裏稼業)も、商売上がったりなんでね…!」
その、あまりに人間臭い本音に、ザグラムは、フッと、口元を綻ばせた。
「なるほど。利害は、一致している、か」
彼は、にやりと笑うと、兵士たちに命じて、忍者衆の拘束を解かせた。
「よかろう。貴様らの力、見込んでやろう。我々の戦いに、その技を貸す名誉をくれてやる」
「へ…?あ、ありがてえ…」
こうして、俺たちの意思とは全く関係のないところで、予期せぬ戦力が、なし崩し的に合流することになった。
ただでさえカオスな俺たちのパーティに、裏稼業のプロまで加わるとは。
俺は、これから起こるであろう、さらなる面倒事を予感し、誰にも気づかれないように、そっと、深いため息をついた。
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