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第1部:養成所編
第10話:足し算にならない力
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チーム結成から数日が経過した、ある夏の朝。前夜に降り注いだ雨の残り香をたっぷりと吸い込んだ朝霧が、広大な模擬戦闘訓練場を乳白色のベールで覆い隠していた。その霧の向こうには、先の大戦の爪痕を生々しく残す廃墟の街並みが、まるで打ち捨てられた巨人たちの墓標のように、重々しい沈黙の中に横たわっている。アスファルトの裂け目にできた水たまりが、気まぐれに顔を覗かせる灰色の空を鈍く反射し、遠くで聞こえるカラスのしゃがれた鳴き声が、やけに明瞭に鼓膜を震わせた。肌を撫でるひやりとした空気は、死んだ世界の呼気のようだ。これから始まる「戦い」という名の演習を前にした、不気味なほどの静寂が、その場に満ち満ちていた。
ここは、対異形存在戦闘要員育成機関、通称「アカデミー」が所有する第7演習フィールド。かつて市街地だったこの場所は、今では士官候補生たちの能力と協調性を試すための、巨大な実験場と化している。
フィールドの各所に配置された他のチームは、それぞれのリーダーを中心に円陣を組み、最後のブリーフィングに余念がない。あるチームは、リーダーがホログラムで投影された立体マップの一点を指し示し、メンバーたちが真剣な表情で頷き合っている。また別のチームでは、重装備の少年が檄を飛ばし、仲間たちが拳を突き上げて士気を高めていた。そのどれもが、これから始まる試練に組織として立ち向かうという、明確な意志と健全な緊張感に満ち溢れていた。彼らは一つの生命体のように、共通の目的意識という神経で結ばれているのだ。
対照的に、我らが「チームJ」は、訓練開始を告げるブザーが鳴るまで残り数分というこの期に及んで、見事なまでに、そしてある種、芸術的なまでに、完璧にバラバラだった。彼らを繋ぐ神経は存在せず、それぞれが独立した孤島として、同じ場所にただ「存在」しているに過ぎなかった。
リーダーに任命されたはずの赤城剛は、チームメイトに背を向け、一人で黙々と腕立て伏せを繰り返している。アスファルトに滴り落ちる汗が、小さな染みを作っては乾いていく。その背中の筋肉は、まるで鎧のように隆起し、一回一回の動作が地面をわずかに揺らした。時折、彼は動きを止め、鋭い呼気と共に拳を空に突き出すシャドーボクシングに移行する。その口からは、恨み言とも決意表明ともつかない、低く唸るような言葉が途切れ途切れに漏れていた。
「俺一人で十分だ……俺の力さえあれば、あんなハリボテの怪物ども……過去の俺とは違う……誰にも、もう二度と……」
その瞳には、目の前の訓練ではなく、過去の何らかの屈辱か、あるいは拭い去れない後悔の色が宿っているように見えた。彼にとって、チームとは頼るべき仲間ではなく、己の力を証明するための足枷でしかないのかもしれない。
そんな剛の独り舞台には一切の関心を示すことなく、神楽院玲奈は、崩れかけたコンクリートの壁に寄りかかり、静かに腕を組んでいた。プラチナブロンドの髪が、湿った風に優雅に揺れる。彼女の耳には、外部の音を完全に遮断する最新鋭のノイズキャンセリングイヤホンが装着されており、そこから漏れ聞こえるのは、繊細なピアノの旋律。それは、これから始まる戦闘のBGMとしては、あまりにも不似合いな、静謐で、どこか物悲しいクラシック音楽だった。目を閉じ、音楽の世界に没入するその姿は、まるで戦場に迷い込んだ孤高の芸術家のようであり、周囲の張り詰めた空気とは完全に無縁の、自分だけの聖域に籠っていた。彼女の白い指先が、自分の腕を規則正しく叩いている。それは、彼女が極度の退屈を感じている時の、無意識の癖だった。
そして、この絶望的なチームの三番目の構成員、小林誠くんは、相変わらずフィールドの隅っこで体育座りをし、膝を抱えていた。小動物のように小刻みに震えるその体は、戦意の欠片も見いだせない。彼の視線は、自分の汚れたスニーカーのつま先と、地面から健気に生える雑草との間を、不安げに行き来している。
「うう……おうちに帰りたい……なんで僕がこんなところに……お母さんの作った、あの、ちょっと甘い卵焼きが食べたい……ふわふわのやつ……」
もはや戦意とは程遠い、あまりにも具体的で切実な願望が、震える唇から嗚咽と共に漏れ出す。彼にとってこの場所は、成長のための試練の場などではなく、ただただ理不尽な暴力が支配する恐怖の空間でしかなかった。
最後に、この機能不全に陥った集団の中で唯一、状況を客観的に把握し、打開しようと試みる男がいた。宮沢譲である。彼は、他の三人を交互に見やり、深いため息を押し殺しながら、手にしたタブレット端末の画面を睨みつけていた。画面には、訓練場の詳細な3Dマップ、敵と目される擬似怪物の予想初期配置データ、そして各メンバーの能力パラメータと過去の訓練データに基づいた戦闘シミュレーションの結果が、目まぐるしく表示されている。
(赤城剛、身体能力S、協調性Eマイナス。神楽院玲奈、特殊能力SS、チーム貢献意欲Eマイナス。小林誠、潜在索敵能力A、精神的耐久力Eマイナス……そして僕、宮沢譲、情報分析能力Aプラス、直接戦闘能力D。なんて見事なまでに凸凹なチームだ。これじゃあパズルのピースどころか、粘土とガラスと鉄屑を無理やり一つの箱に詰め込んだようなものじゃないか)
譲の脳は、この絶望的な手札で勝利という名のポーカーゲームに挑むべく、高速で回転を続けていた。
「あのさ、一応、本当に一応でいいから聞いてもらえないかな」
譲は、ほとんど祈るような気持ちで、このてんでんばらばらな個人主義者たちの集団に声をかけた。その声は、朝霧に吸い込まれてしまいそうなほど、か細く響いた。
剛の腕立て伏せが、ぴたりと止まる。玲奈は、目を開けない。小林くんは、ビクリと肩を震わせた。
譲は、わずかながらの注意を引けたことに勇気づけられ、言葉を続けた。彼はタブレットの画面を三人に向け、ホログラム映像を空中に投影する。
「僕の分析によれば、敵の初期配置は、エリア中央のA地区にある旧発電所跡に集中している。おそらく、そこが今回のミッションにおける制圧目標だ。そして、僕たちの初期位置からそこへ向かう最短ルートは、敵の監視網とトラップが最も集中している危険地帯でもある。だから、単純な正面突破は自殺行為に等しい」
譲は、マップ上に赤い警告エリアを点滅させながら説明する。
「そこで、僕が提案したい作戦はこうだ。まず、僕と小林くんで陽動部隊として動く。僕のハッキング能力で、B地区の倉庫街にある古い警報システムを誤作動させ、同時に小林くんの潜在的な索敵能力で、僕らが安全に移動できるルートを確保する。そこで派手に音を立てて、敵の注意をB地区に引きつけるんだ」
譲は、小林くんの方をちらりと見た。彼は「ひっ」と小さな悲鳴を上げて、さらに体を小さくする。譲は構わず続けた。
「敵の主力がB地区に向かい、A地区の守りが手薄になった瞬間がチャンスだ。その隙に、玲那さんがC地区の給水塔の上から、特殊能力である『時空間固定』を使って、A地区に残った敵の動きを数秒間だけ完全に停止させる。広範囲をカバーできる玲那さんの能力なら、それが可能なはずだ」
玲奈の眉が、ほんのわずかにピクリと動いた。
「そして、敵の足が止まったその数秒の間に、剛くんが本命のA地区に突入して、司令塔となっているであろう大型の擬似怪物を一撃で仕留める。これが、現時点で考えられる最もリスクが低く、最も成功確率の高い作戦だと思う。どうだろうか……?」
一縷の望みを託した譲の言葉は、しかし、無慈悲な現実の壁に叩きつけられた。
最初に反応したのは、やはり剛だった。彼は、汗まみれの顔を上げ、土埃を払うと、譲を心底馬鹿にしたような、侮蔑と苛立ちが入り混じった目でにらみつけた。
「うるせぇな、ガリ勉が!」
剛が吐き捨てた言葉は、譲の立てた緻密な作戦を一瞬で木っ端微塵に破壊した。
「作戦? シミュレーション? そんなもんは、てめぇみたいな弱ぇ奴らが、自分たちの弱さを誤魔化すためにやるお遊びだろうが! グダグダと机上の空論を並べてんじゃねぇよ! いいか、よく聞け。戦いってのはな、もっとシンプルなんだ。強い奴が、弱い奴を、正面から叩き潰す! ただそれだけだ! ガタガタ言ってねぇで、俺様が真正面から全部ぶっ潰してやっから、お前らはそこで指でもしゃぶって見とけ!」
その言葉は、彼の揺るぎない信念であると同時に、他者との協力を拒絶する、硬い硬い心の壁でもあった。
玲奈は、依然としてイヤホンを外すそぶりすら見せない。だが、譲が彼女に視線を送ったその瞬間、閉じられていた瞼がゆっくりと持ち上がり、冷たい空色の瞳が、一瞬だけ譲を捉えた。そして、その薄い唇の端が、ほんのわずかに、しかし明確な侮蔑の形に歪んだのを、譲は見逃さなかった。その表情は、言葉以上に雄弁に語っていた。「あなた程度の分析で、私の能力を語らないで。そして、あの単細胞生物と私を一緒にしないでちょうだい」と。彼女は再び目を閉じ、音楽という名の城壁の内側へと帰っていった。
「ひぃっ! よ、陽動なんて、僕には絶対に無理ですぅ! 敵の注意を引くなんて、死んでくださいって言ってるようなものじゃないですかぁ!」
小林くんが、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を上げ、全力で首を横に振る。その姿は、もはや兵士候補生ではなく、迷子になった幼児そのものだった。
その、あまりにも完璧すぎる不協和音。四つの音が、それぞれ全く別の方向を向いて鳴り響き、不快なノイズしか生み出さない。譲は、力なく天を仰いだ。乳白色の霧が、まるで自分たちの未来を暗示しているかのように、重く垂れ込めている。
(だめだ、こりゃ。意思の疎通という、生物が進化の過程で獲得したはずの、基本的なコミュニケーション機能が、このチームには最初から実装されていない。これはもう、OSの根本的な欠陥だ)
その時だった。
『全チームへ通達。これより、演習を開始する。健闘を祈る』
フィールド全体に、感情の欠片も感じられない無機質なアナウンスが響き渡り、直後、けたたましいブザーが鼓膜を切り裂いた。
戦いの始まりを告げる合図。
その瞬間、それまで溜め込んでいたエネルギーを爆発させるかのように、剛は、まるで檻から解き放たれた猛獣のごとき、凄まじい雄叫びを上げた。
「うおおおおおおおおっ! 俺に続けぇぇぇぇぇぇ!(誰も続かない!)」
その声は、濃い朝霧を切り裂いて、廃墟の街に虚しく響き渡る。もちろん、彼の後ろには誰も続いていない。たった一人で戦場へ駆け出していくその巨大な背中。そのあまりに悲壮で、滑稽で、そして寂しい光景に、一瞬だけ、本当にほんの一瞬だけ、譲は彼に同情しそうになった。
「ああ、もう! 行っちゃったよ、あの単細胞! あの筋肉バカ!」
譲が、自分の髪を掻きむしりながら頭を抱える。緻密に計算したはずの作戦が、開始わずか1秒で根底から崩壊した。
「ひっ!」
小林くんは、常軌を逸した剛の勢いに完全に呑まれ、短い悲鳴を上げると、ぷつりと糸が切れた操り人形のように、その場にへたり込んでしまった。
チームJ、訓練開始わずか3秒で、リーダーが単独で敵陣に突入し、一人が戦意を喪失。実質的に活動可能なメンバーが、譲と、そして高みの見物を決め込んでいる玲奈の二人になるという、アカデミー史上でも類を見ないであろう、前代未聞の快挙を成し遂げた瞬間だった。
剛の突進は、まさに猪武者という言葉を具現化したかのようだった。遮蔽物に身を隠すことも、周囲の警戒を怠らない歩き方(いわゆるコンバットウォーク)をすることも、味方との連携を意識することもなく、ただ一直線に、廃墟のど真ん中を貫く大通りを、凄まじいスピードで突っ走っていく。その速度は、並の兵士では到底追いつけないだろう。しかし、それは同時に、あらゆる方向から「私を撃ってください」と的を晒しているのと同じことだった。
譲は、タブレットに次々と表示される赤い危険予測エリアのアラートを見ながら、口元に装着されたインカムに向かって必死に叫んだ。
「待って、剛くん! 聞こえるか!? そのルートは危険すぎる! データ上、そこは対人感圧式トラップの密集地帯だ! 今すぐ進路を変更して、右手のデパート跡のビルに迂回してくれ!」
しかし、譲の冷静な分析に基づく警告は、興奮状態にある剛の耳には届かない。インカムから返ってきたのは、獣のような荒い息遣いと、自信に満ち溢れた怒声だった。
「黙ってろガリ勉! ごちゃごちゃうるせぇんだよ! 俺の野生の勘が、こっちへ行けと、まっすぐ行けと、そう叫んでんだよ!」
「君の野生の勘は、致命的なまでにポンコツなんだよ! それは勘じゃなくて、ただの願望だ!」
譲の魂の叫びも虚しく、剛は廃ビルの角を、ドリフトでもするかのような勢いで猛スピードで曲がった。その瞬間だった。
カチリ、と。
戦場の喧騒の中では掻き消されてしまうような、しかし、静寂の中でははっきりと聞こえる、小さな、乾いた金属音がした。
「ん?」
剛が、自らの足元で鳴ったその音に気づき、足を止めた。その直後だった。
プシューーーーーッ!
という、いささか間の抜けた、しかし抗いがたい圧力を持った噴射音と共に、彼が踏み抜いたアスファルトの偽装パネルの下から、粘着性の高い、目にも鮮やかなショッキングピンクのペンキが、間欠泉のように勢いよく噴出した。
「ぐわぁぁぁぁぁ!? なんだこのベトベトは!? 目が、目がぁぁぁぁ!」
奇襲を受けた剛は、反応する間もなく、頭からピンク色の液体を浴び、視界を完全に奪われた。勢いを殺しきれなかった彼の体は、粘性の高いペンキを潤滑剤にして、見事なまでに派手なスライディングで、そのまま地面を滑っていく。その様は、まるで失敗した前衛的なアートパフォーマンスか、あるいはB級ホラー映画のワンシーンのようだった。
ピンクまみれになり、手足の自由を奪われてもがく剛の前に、物陰から、あるいはマンホールの中から、ぬるり、ぬるりと複数の擬似怪物が姿を現す。蜘蛛のような多脚を持つもの、蛇のようにしなやかな体を持つもの、人型に近いが関節があらぬ方向に曲がっているもの。それらは、最新鋭の戦闘AIによって統率された、一切の無駄がない滑らかな動きで、剛を嘲笑うかのように包囲する。そして、それぞれの腕や頭部に取り付けられた銃口を一斉に剛へと向けた。
次の瞬間、パン! パン! パン! パン! と、小気味良い破裂音が連続して鳴り響く。擬似怪物の銃口から発射されたのは、実弾ではない。被弾した対象のバイタルデータを記録し、戦闘不能と判定するための、特殊なペイント弾だ。黄色いペンキ弾が、剛の全身へと正確無比に着弾していく。ピンク色の体に、次々と黄色の斑点が咲いていく。
「ぎゃああああ! やめろ! やめてくれぇぇぇ! この、鉄くずどもがぁぁぁ!」
プライドの高い剛にとって、この一方的な蹂躙は、肉体的なダメージ以上に、精神的な屈辱だった。ピンクと黄色の美しいマーブル模様に彩られた彼は、もはや一人の戦士ではなく、ただの巨大な的と化していた。
その阿鼻叫喚の地獄絵図を、遙か上空、高層ビルの屋上から、一人の少女が冷ややかに眺めていた。神楽院玲奈である。彼女はいつの間にか、チームの初期位置から最も見晴らしの良いこの場所まで移動していたのだ。風が彼女の髪をなびかせ、その横顔は氷の彫刻のように無表情だった。
「……馬鹿じゃないの。私の『クロノ・ロック』を使うまでもないわね」
そう小さく呟くと、彼女は再びイヤホンに意識を集中させ、眼下で繰り広げられる一方的なショーから完全に興味を失った。
譲は、タブレットに表示される剛のバイタルサインが急速に危険水域に達していくのを見て、半狂乱でインカムに叫び続けた。
「玲奈さん、聞こえているんだろう!? 援護を! お願いします! 今ならまだ間に合う! 剛くんが完全に戦闘不能になる前に!」
「小林くん、しっかりして! 今、僕がそっちへ行くから、隠れていてくれ!」
しかし、玲奈からの応答はない。静寂だけが、譲の焦りを増幅させる。
そして、最後の頼みの綱である小林くんはと言えば、剛の絶叫と、それに続く最初のペイント弾の破裂音を聞いた瞬間に、彼の脆弱な精神のキャパシティは完全に限界を超えた。
「あ……お、お母さん……」
幸せそうな、どこか安らかな表情で白目をむくと、彼は静かに、そしてゆっくりと横に倒れ、完全に気絶していた。
万事休す。
チームJ、再起不能。
剛の絶叫が途絶えたことで、擬似怪物たちの注意は、このエリアに残る唯一の活動的なターゲット、すなわち譲へと向けられた。複数の赤いセンサーライトが、一斉に譲を捉える。
「まずい……!」
譲が身を翻して物陰に隠れようとしたが、時すでに遅し。前後左右から回り込んできた擬似怪物に、あっという間に包囲されてしまった。
青、緑、オレンジ、紫。まるで悪趣味な花火のように、色とりどりのペンキ弾が、四方八方から彼へと集中砲火される。一発目が肩に、二発目が足に、そして三発目が胸に。衝撃と共に、冷たい液体の感触が全身に広がる。視界が、次々と塗りつぶされていく。
(ああ、これが、僕のチームの、僕たちの、最初の戦い……)
意識が遠のいていく中、譲は、自分がまるで誰かがめちゃくちゃに絵の具をぶちまけた、失敗した現代アートのオブジェのようになったのだろうと、ぼんやりと思った。
『チームJ、全メンバーのバイタルサイン停止を確認。訓練失敗。タイム、4分52秒。総合評価、歴代最低記録を大幅に更新する、Eマイナス』
戦闘不能になった譲の耳に、訓練終了を告げる無慈悲なアナウンスが、がらんとした訓練場に、ただ虚しく響き渡っていた。
***
訓練後、司令室。
シャワーを浴びても完全には落ちきらないペンキの匂いを体にまとわせた四人は、鬼の形相をした総教官、鬼瓦源十郎の前に、直立不動で立たされていた。床に滴り落ちる雫が、彼らの惨めさを際立たせている。
「貴様ら、やる気があるのか!!」
鬼瓦教官の怒声が、最新鋭の機材が並ぶ静かな司令室に、雷鳴のごとく響き渡った。その声の圧力だけで、部屋の空気がビリビリと震えるようだった。
「赤城! 貴様は作戦協調性ゼロ! チームリーダーとしての自覚も責任感も皆無! ただの猪だ! いや、猪の方がまだマシかもしれんぞ! 奴らは危険を察知すれば群れで身を守るという知恵を持っているからな! 貴様にあるのは、根拠のない自信と、破滅的なまでの自己顕示欲だけだ!」
「ぐっ……!」
剛は、唇を強く噛み締めて、反論の言葉を必死に飲み込んだ。その拳は、屈辱にブルブルと震えている。
「神楽院! 貴様はチームへの貢献意欲ゼロ! アカデミー始まって以来の逸材と謳われるその高い能力を、なぜ仲間のために使おうとしない! これは個人競技ではないと、入学式の日に私が言ったはずだ! その耳は飾りか!」
「…………」
玲奈は、無表情を崩さない。しかし、生まれてこの方、おそらく他人からこれほど直接的に厳しい評価を下されたことはなかったのだろう。その完璧な仮面の下で、わずかに動揺の色が揺らめいているのを、隣に立つ譲は感じ取っていた。
「小林! 貴様は論外だ! 恐怖で気絶するなど、兵士以前に人間として失格だ! 戦場では気絶することも許されん! 死ぬだけだ! 次はないと思え!」
「ひっ……うぅ……すみません……」
小林くんは、教官の言葉の一つ一つにビクつきながら、ただただ、しくしくと泣いていた。
「そして、宮沢!」
最後に、名前を呼ばれ、譲は体を強張らせた。
「貴様の立てた作戦と、赤城への警告は、後で戦闘ログを確認したが、全て正しかったようだ。状況分析能力と予測精度は、評価に値する。だがな!」
鬼瓦教官は、ドン、とコンソールを拳で叩いた。
「それをチームに実行させられなければ、何の意味もない! 机上の空論を並べるだけなら、誰にでもできるんだ! リーダーを説得することも、他のメンバーを動かすこともできんのなら、貴様のその頭脳は、ただの自己満足のための飾り物だ! 分かったか!」
「……はい」
譲は、ぐうの音も出なかった。全て、反論のしようもない、厳しい事実だったからだ。
「全員、一週間の奉仕活動を命じる! 訓練場の清掃だ! その汚れた体で、汚れたフィールドをピカピカに磨き上げろ! 解散!」
解散を命じられ、四人は重い足取りで司令室を出た。誰も、一言も口を利かない。気まずい沈黙が、長い廊下に満ちる。剛は、抑えきれない悔しさと怒りを隠しもせず、廊下の壁を力任せに殴りつけた。ゴッ、という鈍い音と共に、壁に亀裂が入る。彼は、誰に言うでもなく「クソが……」と吐き捨てると、一人でズカズカと去っていった。
玲奈は、そんな剛を一瞥すると、氷のように冷たい声で「時間の無駄だったわ」と呟いた。その言葉は、剛だけでなく、この場にいる全員に向けられたものだった。彼女もまた、一人でさっさと反対方向へと歩き去っていく。
小林くんは、譲の顔を申し訳なさそうに見上げると、ぺこりと頭を下げ、泣きながら逃げるようにその場を後にした。
一人残された譲は、その場に立ち尽くし、夕日が差し込む司令室の巨大な窓から、眼下に広がる訓練場をぼんやりと眺めていた。ペンキでカラフルに汚れた廃墟の街並みが、物悲しくオレンジ色に染まっている。自分たちが残した、あまりにも無様な戦いの痕跡だ。
彼は、かつてアカデミーに入る前に独学で読んだ、複雑系の科学の本の一節を思い出していた。
『個々の要素(エージェント)が、それ単体でいかに優れた能力を持っていたとしても、それらの間に適切な相互作用(インタラクション)を生み出すルールがなければ、システム全体として優れた機能は創発しない。全体は、部分の総和以上になることもあれば、総和以下になることもあるのだ』
今の自分たち、チームJは、まさに後者の典型例だった。
100の力を持つ猪(剛)と、おそらく120の力を持つ孤高の女王(玲奈)、そして1の力しか持たない臆病な兎(小林くん)と、同じく1の力しかない自分。単純に足し算すれば222になるはずのポテンシャルが、互いに反発し、足を引っ張り合い、憎しみ合い、マイナスのエネルギーしか生まないせいで、結果は限りなくゼロ、いや、今回の結果を見る限り、マイナス100にだってなりうるのだ。
どうすれば、この最悪な要素の集まりを、一つの「チーム」として機能させることができるのか。
どうすれば、この足し算にすらならない現状を、個々の力が掛け算となって爆発するような、奇跡の方程式を導き出すことができるのか。
その答えは、まだどこにも見つからない。
夕日が、ボロボロになった訓練場の機材と、そして、今日、音を立てて砕け散ったチームの心を、等しく、静かに照らしていた。
譲は、この絶望的な状況をひっくり返すための、最初の「ルール」、メンバー間に「適切な相互作用」を生み出すための、ほんの小さな最初のきっかけを見つけ出さなければならないと、燃えるような夕日の中で、静かに、そして固く、決意した。それは、あまりにも無謀で、途方もない挑戦の始まりだった。
ここは、対異形存在戦闘要員育成機関、通称「アカデミー」が所有する第7演習フィールド。かつて市街地だったこの場所は、今では士官候補生たちの能力と協調性を試すための、巨大な実験場と化している。
フィールドの各所に配置された他のチームは、それぞれのリーダーを中心に円陣を組み、最後のブリーフィングに余念がない。あるチームは、リーダーがホログラムで投影された立体マップの一点を指し示し、メンバーたちが真剣な表情で頷き合っている。また別のチームでは、重装備の少年が檄を飛ばし、仲間たちが拳を突き上げて士気を高めていた。そのどれもが、これから始まる試練に組織として立ち向かうという、明確な意志と健全な緊張感に満ち溢れていた。彼らは一つの生命体のように、共通の目的意識という神経で結ばれているのだ。
対照的に、我らが「チームJ」は、訓練開始を告げるブザーが鳴るまで残り数分というこの期に及んで、見事なまでに、そしてある種、芸術的なまでに、完璧にバラバラだった。彼らを繋ぐ神経は存在せず、それぞれが独立した孤島として、同じ場所にただ「存在」しているに過ぎなかった。
リーダーに任命されたはずの赤城剛は、チームメイトに背を向け、一人で黙々と腕立て伏せを繰り返している。アスファルトに滴り落ちる汗が、小さな染みを作っては乾いていく。その背中の筋肉は、まるで鎧のように隆起し、一回一回の動作が地面をわずかに揺らした。時折、彼は動きを止め、鋭い呼気と共に拳を空に突き出すシャドーボクシングに移行する。その口からは、恨み言とも決意表明ともつかない、低く唸るような言葉が途切れ途切れに漏れていた。
「俺一人で十分だ……俺の力さえあれば、あんなハリボテの怪物ども……過去の俺とは違う……誰にも、もう二度と……」
その瞳には、目の前の訓練ではなく、過去の何らかの屈辱か、あるいは拭い去れない後悔の色が宿っているように見えた。彼にとって、チームとは頼るべき仲間ではなく、己の力を証明するための足枷でしかないのかもしれない。
そんな剛の独り舞台には一切の関心を示すことなく、神楽院玲奈は、崩れかけたコンクリートの壁に寄りかかり、静かに腕を組んでいた。プラチナブロンドの髪が、湿った風に優雅に揺れる。彼女の耳には、外部の音を完全に遮断する最新鋭のノイズキャンセリングイヤホンが装着されており、そこから漏れ聞こえるのは、繊細なピアノの旋律。それは、これから始まる戦闘のBGMとしては、あまりにも不似合いな、静謐で、どこか物悲しいクラシック音楽だった。目を閉じ、音楽の世界に没入するその姿は、まるで戦場に迷い込んだ孤高の芸術家のようであり、周囲の張り詰めた空気とは完全に無縁の、自分だけの聖域に籠っていた。彼女の白い指先が、自分の腕を規則正しく叩いている。それは、彼女が極度の退屈を感じている時の、無意識の癖だった。
そして、この絶望的なチームの三番目の構成員、小林誠くんは、相変わらずフィールドの隅っこで体育座りをし、膝を抱えていた。小動物のように小刻みに震えるその体は、戦意の欠片も見いだせない。彼の視線は、自分の汚れたスニーカーのつま先と、地面から健気に生える雑草との間を、不安げに行き来している。
「うう……おうちに帰りたい……なんで僕がこんなところに……お母さんの作った、あの、ちょっと甘い卵焼きが食べたい……ふわふわのやつ……」
もはや戦意とは程遠い、あまりにも具体的で切実な願望が、震える唇から嗚咽と共に漏れ出す。彼にとってこの場所は、成長のための試練の場などではなく、ただただ理不尽な暴力が支配する恐怖の空間でしかなかった。
最後に、この機能不全に陥った集団の中で唯一、状況を客観的に把握し、打開しようと試みる男がいた。宮沢譲である。彼は、他の三人を交互に見やり、深いため息を押し殺しながら、手にしたタブレット端末の画面を睨みつけていた。画面には、訓練場の詳細な3Dマップ、敵と目される擬似怪物の予想初期配置データ、そして各メンバーの能力パラメータと過去の訓練データに基づいた戦闘シミュレーションの結果が、目まぐるしく表示されている。
(赤城剛、身体能力S、協調性Eマイナス。神楽院玲奈、特殊能力SS、チーム貢献意欲Eマイナス。小林誠、潜在索敵能力A、精神的耐久力Eマイナス……そして僕、宮沢譲、情報分析能力Aプラス、直接戦闘能力D。なんて見事なまでに凸凹なチームだ。これじゃあパズルのピースどころか、粘土とガラスと鉄屑を無理やり一つの箱に詰め込んだようなものじゃないか)
譲の脳は、この絶望的な手札で勝利という名のポーカーゲームに挑むべく、高速で回転を続けていた。
「あのさ、一応、本当に一応でいいから聞いてもらえないかな」
譲は、ほとんど祈るような気持ちで、このてんでんばらばらな個人主義者たちの集団に声をかけた。その声は、朝霧に吸い込まれてしまいそうなほど、か細く響いた。
剛の腕立て伏せが、ぴたりと止まる。玲奈は、目を開けない。小林くんは、ビクリと肩を震わせた。
譲は、わずかながらの注意を引けたことに勇気づけられ、言葉を続けた。彼はタブレットの画面を三人に向け、ホログラム映像を空中に投影する。
「僕の分析によれば、敵の初期配置は、エリア中央のA地区にある旧発電所跡に集中している。おそらく、そこが今回のミッションにおける制圧目標だ。そして、僕たちの初期位置からそこへ向かう最短ルートは、敵の監視網とトラップが最も集中している危険地帯でもある。だから、単純な正面突破は自殺行為に等しい」
譲は、マップ上に赤い警告エリアを点滅させながら説明する。
「そこで、僕が提案したい作戦はこうだ。まず、僕と小林くんで陽動部隊として動く。僕のハッキング能力で、B地区の倉庫街にある古い警報システムを誤作動させ、同時に小林くんの潜在的な索敵能力で、僕らが安全に移動できるルートを確保する。そこで派手に音を立てて、敵の注意をB地区に引きつけるんだ」
譲は、小林くんの方をちらりと見た。彼は「ひっ」と小さな悲鳴を上げて、さらに体を小さくする。譲は構わず続けた。
「敵の主力がB地区に向かい、A地区の守りが手薄になった瞬間がチャンスだ。その隙に、玲那さんがC地区の給水塔の上から、特殊能力である『時空間固定』を使って、A地区に残った敵の動きを数秒間だけ完全に停止させる。広範囲をカバーできる玲那さんの能力なら、それが可能なはずだ」
玲奈の眉が、ほんのわずかにピクリと動いた。
「そして、敵の足が止まったその数秒の間に、剛くんが本命のA地区に突入して、司令塔となっているであろう大型の擬似怪物を一撃で仕留める。これが、現時点で考えられる最もリスクが低く、最も成功確率の高い作戦だと思う。どうだろうか……?」
一縷の望みを託した譲の言葉は、しかし、無慈悲な現実の壁に叩きつけられた。
最初に反応したのは、やはり剛だった。彼は、汗まみれの顔を上げ、土埃を払うと、譲を心底馬鹿にしたような、侮蔑と苛立ちが入り混じった目でにらみつけた。
「うるせぇな、ガリ勉が!」
剛が吐き捨てた言葉は、譲の立てた緻密な作戦を一瞬で木っ端微塵に破壊した。
「作戦? シミュレーション? そんなもんは、てめぇみたいな弱ぇ奴らが、自分たちの弱さを誤魔化すためにやるお遊びだろうが! グダグダと机上の空論を並べてんじゃねぇよ! いいか、よく聞け。戦いってのはな、もっとシンプルなんだ。強い奴が、弱い奴を、正面から叩き潰す! ただそれだけだ! ガタガタ言ってねぇで、俺様が真正面から全部ぶっ潰してやっから、お前らはそこで指でもしゃぶって見とけ!」
その言葉は、彼の揺るぎない信念であると同時に、他者との協力を拒絶する、硬い硬い心の壁でもあった。
玲奈は、依然としてイヤホンを外すそぶりすら見せない。だが、譲が彼女に視線を送ったその瞬間、閉じられていた瞼がゆっくりと持ち上がり、冷たい空色の瞳が、一瞬だけ譲を捉えた。そして、その薄い唇の端が、ほんのわずかに、しかし明確な侮蔑の形に歪んだのを、譲は見逃さなかった。その表情は、言葉以上に雄弁に語っていた。「あなた程度の分析で、私の能力を語らないで。そして、あの単細胞生物と私を一緒にしないでちょうだい」と。彼女は再び目を閉じ、音楽という名の城壁の内側へと帰っていった。
「ひぃっ! よ、陽動なんて、僕には絶対に無理ですぅ! 敵の注意を引くなんて、死んでくださいって言ってるようなものじゃないですかぁ!」
小林くんが、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を上げ、全力で首を横に振る。その姿は、もはや兵士候補生ではなく、迷子になった幼児そのものだった。
その、あまりにも完璧すぎる不協和音。四つの音が、それぞれ全く別の方向を向いて鳴り響き、不快なノイズしか生み出さない。譲は、力なく天を仰いだ。乳白色の霧が、まるで自分たちの未来を暗示しているかのように、重く垂れ込めている。
(だめだ、こりゃ。意思の疎通という、生物が進化の過程で獲得したはずの、基本的なコミュニケーション機能が、このチームには最初から実装されていない。これはもう、OSの根本的な欠陥だ)
その時だった。
『全チームへ通達。これより、演習を開始する。健闘を祈る』
フィールド全体に、感情の欠片も感じられない無機質なアナウンスが響き渡り、直後、けたたましいブザーが鼓膜を切り裂いた。
戦いの始まりを告げる合図。
その瞬間、それまで溜め込んでいたエネルギーを爆発させるかのように、剛は、まるで檻から解き放たれた猛獣のごとき、凄まじい雄叫びを上げた。
「うおおおおおおおおっ! 俺に続けぇぇぇぇぇぇ!(誰も続かない!)」
その声は、濃い朝霧を切り裂いて、廃墟の街に虚しく響き渡る。もちろん、彼の後ろには誰も続いていない。たった一人で戦場へ駆け出していくその巨大な背中。そのあまりに悲壮で、滑稽で、そして寂しい光景に、一瞬だけ、本当にほんの一瞬だけ、譲は彼に同情しそうになった。
「ああ、もう! 行っちゃったよ、あの単細胞! あの筋肉バカ!」
譲が、自分の髪を掻きむしりながら頭を抱える。緻密に計算したはずの作戦が、開始わずか1秒で根底から崩壊した。
「ひっ!」
小林くんは、常軌を逸した剛の勢いに完全に呑まれ、短い悲鳴を上げると、ぷつりと糸が切れた操り人形のように、その場にへたり込んでしまった。
チームJ、訓練開始わずか3秒で、リーダーが単独で敵陣に突入し、一人が戦意を喪失。実質的に活動可能なメンバーが、譲と、そして高みの見物を決め込んでいる玲奈の二人になるという、アカデミー史上でも類を見ないであろう、前代未聞の快挙を成し遂げた瞬間だった。
剛の突進は、まさに猪武者という言葉を具現化したかのようだった。遮蔽物に身を隠すことも、周囲の警戒を怠らない歩き方(いわゆるコンバットウォーク)をすることも、味方との連携を意識することもなく、ただ一直線に、廃墟のど真ん中を貫く大通りを、凄まじいスピードで突っ走っていく。その速度は、並の兵士では到底追いつけないだろう。しかし、それは同時に、あらゆる方向から「私を撃ってください」と的を晒しているのと同じことだった。
譲は、タブレットに次々と表示される赤い危険予測エリアのアラートを見ながら、口元に装着されたインカムに向かって必死に叫んだ。
「待って、剛くん! 聞こえるか!? そのルートは危険すぎる! データ上、そこは対人感圧式トラップの密集地帯だ! 今すぐ進路を変更して、右手のデパート跡のビルに迂回してくれ!」
しかし、譲の冷静な分析に基づく警告は、興奮状態にある剛の耳には届かない。インカムから返ってきたのは、獣のような荒い息遣いと、自信に満ち溢れた怒声だった。
「黙ってろガリ勉! ごちゃごちゃうるせぇんだよ! 俺の野生の勘が、こっちへ行けと、まっすぐ行けと、そう叫んでんだよ!」
「君の野生の勘は、致命的なまでにポンコツなんだよ! それは勘じゃなくて、ただの願望だ!」
譲の魂の叫びも虚しく、剛は廃ビルの角を、ドリフトでもするかのような勢いで猛スピードで曲がった。その瞬間だった。
カチリ、と。
戦場の喧騒の中では掻き消されてしまうような、しかし、静寂の中でははっきりと聞こえる、小さな、乾いた金属音がした。
「ん?」
剛が、自らの足元で鳴ったその音に気づき、足を止めた。その直後だった。
プシューーーーーッ!
という、いささか間の抜けた、しかし抗いがたい圧力を持った噴射音と共に、彼が踏み抜いたアスファルトの偽装パネルの下から、粘着性の高い、目にも鮮やかなショッキングピンクのペンキが、間欠泉のように勢いよく噴出した。
「ぐわぁぁぁぁぁ!? なんだこのベトベトは!? 目が、目がぁぁぁぁ!」
奇襲を受けた剛は、反応する間もなく、頭からピンク色の液体を浴び、視界を完全に奪われた。勢いを殺しきれなかった彼の体は、粘性の高いペンキを潤滑剤にして、見事なまでに派手なスライディングで、そのまま地面を滑っていく。その様は、まるで失敗した前衛的なアートパフォーマンスか、あるいはB級ホラー映画のワンシーンのようだった。
ピンクまみれになり、手足の自由を奪われてもがく剛の前に、物陰から、あるいはマンホールの中から、ぬるり、ぬるりと複数の擬似怪物が姿を現す。蜘蛛のような多脚を持つもの、蛇のようにしなやかな体を持つもの、人型に近いが関節があらぬ方向に曲がっているもの。それらは、最新鋭の戦闘AIによって統率された、一切の無駄がない滑らかな動きで、剛を嘲笑うかのように包囲する。そして、それぞれの腕や頭部に取り付けられた銃口を一斉に剛へと向けた。
次の瞬間、パン! パン! パン! パン! と、小気味良い破裂音が連続して鳴り響く。擬似怪物の銃口から発射されたのは、実弾ではない。被弾した対象のバイタルデータを記録し、戦闘不能と判定するための、特殊なペイント弾だ。黄色いペンキ弾が、剛の全身へと正確無比に着弾していく。ピンク色の体に、次々と黄色の斑点が咲いていく。
「ぎゃああああ! やめろ! やめてくれぇぇぇ! この、鉄くずどもがぁぁぁ!」
プライドの高い剛にとって、この一方的な蹂躙は、肉体的なダメージ以上に、精神的な屈辱だった。ピンクと黄色の美しいマーブル模様に彩られた彼は、もはや一人の戦士ではなく、ただの巨大な的と化していた。
その阿鼻叫喚の地獄絵図を、遙か上空、高層ビルの屋上から、一人の少女が冷ややかに眺めていた。神楽院玲奈である。彼女はいつの間にか、チームの初期位置から最も見晴らしの良いこの場所まで移動していたのだ。風が彼女の髪をなびかせ、その横顔は氷の彫刻のように無表情だった。
「……馬鹿じゃないの。私の『クロノ・ロック』を使うまでもないわね」
そう小さく呟くと、彼女は再びイヤホンに意識を集中させ、眼下で繰り広げられる一方的なショーから完全に興味を失った。
譲は、タブレットに表示される剛のバイタルサインが急速に危険水域に達していくのを見て、半狂乱でインカムに叫び続けた。
「玲奈さん、聞こえているんだろう!? 援護を! お願いします! 今ならまだ間に合う! 剛くんが完全に戦闘不能になる前に!」
「小林くん、しっかりして! 今、僕がそっちへ行くから、隠れていてくれ!」
しかし、玲奈からの応答はない。静寂だけが、譲の焦りを増幅させる。
そして、最後の頼みの綱である小林くんはと言えば、剛の絶叫と、それに続く最初のペイント弾の破裂音を聞いた瞬間に、彼の脆弱な精神のキャパシティは完全に限界を超えた。
「あ……お、お母さん……」
幸せそうな、どこか安らかな表情で白目をむくと、彼は静かに、そしてゆっくりと横に倒れ、完全に気絶していた。
万事休す。
チームJ、再起不能。
剛の絶叫が途絶えたことで、擬似怪物たちの注意は、このエリアに残る唯一の活動的なターゲット、すなわち譲へと向けられた。複数の赤いセンサーライトが、一斉に譲を捉える。
「まずい……!」
譲が身を翻して物陰に隠れようとしたが、時すでに遅し。前後左右から回り込んできた擬似怪物に、あっという間に包囲されてしまった。
青、緑、オレンジ、紫。まるで悪趣味な花火のように、色とりどりのペンキ弾が、四方八方から彼へと集中砲火される。一発目が肩に、二発目が足に、そして三発目が胸に。衝撃と共に、冷たい液体の感触が全身に広がる。視界が、次々と塗りつぶされていく。
(ああ、これが、僕のチームの、僕たちの、最初の戦い……)
意識が遠のいていく中、譲は、自分がまるで誰かがめちゃくちゃに絵の具をぶちまけた、失敗した現代アートのオブジェのようになったのだろうと、ぼんやりと思った。
『チームJ、全メンバーのバイタルサイン停止を確認。訓練失敗。タイム、4分52秒。総合評価、歴代最低記録を大幅に更新する、Eマイナス』
戦闘不能になった譲の耳に、訓練終了を告げる無慈悲なアナウンスが、がらんとした訓練場に、ただ虚しく響き渡っていた。
***
訓練後、司令室。
シャワーを浴びても完全には落ちきらないペンキの匂いを体にまとわせた四人は、鬼の形相をした総教官、鬼瓦源十郎の前に、直立不動で立たされていた。床に滴り落ちる雫が、彼らの惨めさを際立たせている。
「貴様ら、やる気があるのか!!」
鬼瓦教官の怒声が、最新鋭の機材が並ぶ静かな司令室に、雷鳴のごとく響き渡った。その声の圧力だけで、部屋の空気がビリビリと震えるようだった。
「赤城! 貴様は作戦協調性ゼロ! チームリーダーとしての自覚も責任感も皆無! ただの猪だ! いや、猪の方がまだマシかもしれんぞ! 奴らは危険を察知すれば群れで身を守るという知恵を持っているからな! 貴様にあるのは、根拠のない自信と、破滅的なまでの自己顕示欲だけだ!」
「ぐっ……!」
剛は、唇を強く噛み締めて、反論の言葉を必死に飲み込んだ。その拳は、屈辱にブルブルと震えている。
「神楽院! 貴様はチームへの貢献意欲ゼロ! アカデミー始まって以来の逸材と謳われるその高い能力を、なぜ仲間のために使おうとしない! これは個人競技ではないと、入学式の日に私が言ったはずだ! その耳は飾りか!」
「…………」
玲奈は、無表情を崩さない。しかし、生まれてこの方、おそらく他人からこれほど直接的に厳しい評価を下されたことはなかったのだろう。その完璧な仮面の下で、わずかに動揺の色が揺らめいているのを、隣に立つ譲は感じ取っていた。
「小林! 貴様は論外だ! 恐怖で気絶するなど、兵士以前に人間として失格だ! 戦場では気絶することも許されん! 死ぬだけだ! 次はないと思え!」
「ひっ……うぅ……すみません……」
小林くんは、教官の言葉の一つ一つにビクつきながら、ただただ、しくしくと泣いていた。
「そして、宮沢!」
最後に、名前を呼ばれ、譲は体を強張らせた。
「貴様の立てた作戦と、赤城への警告は、後で戦闘ログを確認したが、全て正しかったようだ。状況分析能力と予測精度は、評価に値する。だがな!」
鬼瓦教官は、ドン、とコンソールを拳で叩いた。
「それをチームに実行させられなければ、何の意味もない! 机上の空論を並べるだけなら、誰にでもできるんだ! リーダーを説得することも、他のメンバーを動かすこともできんのなら、貴様のその頭脳は、ただの自己満足のための飾り物だ! 分かったか!」
「……はい」
譲は、ぐうの音も出なかった。全て、反論のしようもない、厳しい事実だったからだ。
「全員、一週間の奉仕活動を命じる! 訓練場の清掃だ! その汚れた体で、汚れたフィールドをピカピカに磨き上げろ! 解散!」
解散を命じられ、四人は重い足取りで司令室を出た。誰も、一言も口を利かない。気まずい沈黙が、長い廊下に満ちる。剛は、抑えきれない悔しさと怒りを隠しもせず、廊下の壁を力任せに殴りつけた。ゴッ、という鈍い音と共に、壁に亀裂が入る。彼は、誰に言うでもなく「クソが……」と吐き捨てると、一人でズカズカと去っていった。
玲奈は、そんな剛を一瞥すると、氷のように冷たい声で「時間の無駄だったわ」と呟いた。その言葉は、剛だけでなく、この場にいる全員に向けられたものだった。彼女もまた、一人でさっさと反対方向へと歩き去っていく。
小林くんは、譲の顔を申し訳なさそうに見上げると、ぺこりと頭を下げ、泣きながら逃げるようにその場を後にした。
一人残された譲は、その場に立ち尽くし、夕日が差し込む司令室の巨大な窓から、眼下に広がる訓練場をぼんやりと眺めていた。ペンキでカラフルに汚れた廃墟の街並みが、物悲しくオレンジ色に染まっている。自分たちが残した、あまりにも無様な戦いの痕跡だ。
彼は、かつてアカデミーに入る前に独学で読んだ、複雑系の科学の本の一節を思い出していた。
『個々の要素(エージェント)が、それ単体でいかに優れた能力を持っていたとしても、それらの間に適切な相互作用(インタラクション)を生み出すルールがなければ、システム全体として優れた機能は創発しない。全体は、部分の総和以上になることもあれば、総和以下になることもあるのだ』
今の自分たち、チームJは、まさに後者の典型例だった。
100の力を持つ猪(剛)と、おそらく120の力を持つ孤高の女王(玲奈)、そして1の力しか持たない臆病な兎(小林くん)と、同じく1の力しかない自分。単純に足し算すれば222になるはずのポテンシャルが、互いに反発し、足を引っ張り合い、憎しみ合い、マイナスのエネルギーしか生まないせいで、結果は限りなくゼロ、いや、今回の結果を見る限り、マイナス100にだってなりうるのだ。
どうすれば、この最悪な要素の集まりを、一つの「チーム」として機能させることができるのか。
どうすれば、この足し算にすらならない現状を、個々の力が掛け算となって爆発するような、奇跡の方程式を導き出すことができるのか。
その答えは、まだどこにも見つからない。
夕日が、ボロボロになった訓練場の機材と、そして、今日、音を立てて砕け散ったチームの心を、等しく、静かに照らしていた。
譲は、この絶望的な状況をひっくり返すための、最初の「ルール」、メンバー間に「適切な相互作用」を生み出すための、ほんの小さな最初のきっかけを見つけ出さなければならないと、燃えるような夕日の中で、静かに、そして固く、決意した。それは、あまりにも無謀で、途方もない挑戦の始まりだった。
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