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第1部:養成所編
第9話:不協和音のチーム
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前期中間試験の熱狂と、それに続く絶望が、まるで遠い夏の日の蜃気楼のように揺らめいては消えていく。八月の終わり、暦の上では秋の気配が近づいているというのに、アスファルトの照り返しは未だ衰えを知らず、養成所の巨大な大教室に流れ込む風は、熱気と湿気をたっぷりと含んで肌にまとわりついた。気怠い午後。しかし、その空気は奇妙なほどに張り詰めていた。生徒たちの無言の期待と不安、そして諦念が入り混じり、澱のように沈殿している。
教室の最前方に設置された巨大なスクリーン。そこに映し出された無機質なゴシック体の文字が、彼らの運命を宣告しようとしていた。
『第一学年次・最終生存試験:チーム編成発表』
壇上に立った教官――元アースであり、数多の戦場を潜り抜けてきた歴戦の猛者である彼の声は、マイクを通してもなお、鋼のような硬質さと冷徹さを保っていた。彼は、まるで天気予報でも読み上げるかのように、淡々と、しかし一言一句に重みを込めて試験内容を説明し始めた。
「――これより、第一学年次における最終評価試験の詳細を発表する。試験内容は、政府管轄下の孤島『エリア・ガンマ』を舞台とした、四日間のサバイバル。島の各所に配置された、最新鋭の技術によって生成された擬似生命体――通称『擬似怪物(ファントム)』を討伐し、その種類と数に応じて付与されるポイントを競い合ってもらう」
生徒たちの間に、緊張のさざ波が広がる。擬似怪物(ファントム)。それは、かつてこの世界を脅かした本物の『怪物(モンスター)』の戦闘データを元に、限りなく忠実に再現された戦闘シミュレーション用の兵器だ。危険度は本物より低く設定されているとはいえ、訓練生にとっては十分すぎるほどの脅威となる。
「そして、最も重要な点を伝える」
教官はそこで一度言葉を切り、教室全体を見渡した。彼の鋭い視線が、生徒一人ひとりの覚悟を試すかのように突き刺さる。
「今回の評価は、個人の戦果によって決定されるのではない。諸君らが編成する、チームの総合ポイントによって決定される。評価AからFまでのランクが付与され、これが後期課程におけるクラス編成、ひいては将来の配属先にまで大きな影響を及ぼすことを、肝に銘じておけ」
「チーム戦」――その言葉が発せられた瞬間、それまで辛うじて保たれていた教室の静寂は、まるで堰を切ったように崩壊した。ざわめきが、生き物のようにうねり、瞬く間に教室の隅々まで広がっていく。歓喜、不安、期待、絶望。様々な感情が渦を巻き、空気の密度を急激に高めていく。
誰と組むのか。
その運命の采配一つで、この過酷極まりない四日間のサバイバルが、栄光への飛躍台にも、あるいは再起不能の地獄にもなりうるのだ。誰もが、無意識のうちに視線を彷徨わせる。探すのは、優秀な『アース』。特に、朝倉颯太や橘陽葵、そして神楽院玲奈のような、常に実技成績でトップクラスに君臨するエリートたち。彼らと組めることを、神に、仏に、あるいは得体の知れない何かに祈っていた。
教室の中ほど、少し後ろの席で、宮沢譲もまた、その祈れる者の一人だった。彼は固く目を閉じ、爪が食い込むほどに両手をきつく握りしめる。彼の脳裏には、前期中間試験の悪夢が、色褪せることなく鮮明に焼き付いていた。
(どうか、どうか、まともなチームでありますように!)
譲の祈りは、他の生徒たちのそれとは少し、いや、かなり異質だった。
(突出して優秀じゃなくてもいい! いや、むしろ優秀すぎるメンバーは俺には不相応だ! ただ、ただどうか、話が通じて、協力という概念を脳のどこかに搭載していて、作戦という言葉の意味を理解できる、ごくごく普通の、常識的なメンバーでありますように!)
前期中間試験。それは、筆記試験と実技試験の二本立てで行われた。譲は、筆記試験において、その特異な記憶力と分析能力を遺憾なく発揮した。怪物の生態、弱点、過去の討伐事例、有効な戦術。あらゆるデータを網羅した彼の答案は、教官陣を唸らせ、前代未聞の「満点」という評価を叩き出した。
だが、実技試験の結果は、その栄光を嘲笑うかのように無惨だった。アースとしての根源的な能力、身体能力、戦闘センス。その全てが、譲には壊滅的に欠けていたのだ。結果は、当然の「零点」。そして、総合評価は、筆記の満点を以てしても覆すことのできない「学年最下位」。
教官から言い渡された評価は、彼の心に深い傷として刻まれた。
「宮沢、貴様の知識は確かに見事だ。だが、戦場で役に立たない知識など、ただの紙切れに過ぎん。貴様の満点は、無意味だ」
『無意味な満点』と『絶望的な最下位』。
この二つの烙印が、彼の祈りに悲痛なまでの切実さを与えていた。自分の実技能力がゼロに近いことは、もはや嫌というほど理解している。せめて、チームの足を引っ張るだけの存在ではなく、その「無意味」と断じられた知識で貢献できる余地のあるチームでなければ、彼の存在価値は本当にゼロになってしまう。この養成所にいる意味さえ、失ってしまうのだ。
壇上の教官が、無情にもマイクを握り直し、厳かな声でチーム名を一つずつ読み上げていく。スクリーンにメンバーの名前と顔写真が映し出されるたびに、教室のあちこちで小さな歓声が上がったり、あるいは深いため息が漏れたりした。歓喜と絶望が、残酷なまでに明暗を分けていく。
「――チームA!」
その名が呼ばれた瞬間、教室中の視線が、まるで磁石に引き寄せられる砂鉄のように、スクリーンの一点に集中した。どよめきが起こる。
スクリーンに映し出されたのは、まさにドリームチームと呼ぶにふさわしい、光り輝くような顔ぶれだった。
【リーダー:朝倉 颯太】
【メンバー:橘 陽葵】
そして、常に実技成績トップクラスに君臨する、男女二人のエリートアース。颯太の持つ圧倒的な攻撃力と、陽葵の鉄壁の防御能力。二人の連携は、既に学年トップレベルと誰もが認めるものだった。他のメンバーも、各分野で秀でた実力者ばかりが名を連ねている。
「うわ、最強じゃん……」
「これ、もう優勝決まりだろ。試験やる意味あんのかよ」
羨望と、早すぎる諦めが混じった声が、あちこちから囁きのように聞こえてくる。
その喧騒の中、渦中の人物である朝倉颯太は、悪びれる様子もなく、後ろの席に座る譲に向かって、にっと歯を見せて笑い、小さくガッツポーズをして見せた。その太陽のように屈託のない笑顔が、今の譲にはやけに眩しく、胸をちくりと刺す。その隣、橘陽葵は、対照的に、心配そうな、そしてどこか申し訳なさそうな顔でこちらを見ている。その優しい気遣いが、逆に彼の劣等感を刺激した。
(わかってるさ。お前たちがすごいのは。そして、俺がお前たちとは住む世界が違うってことも……)
譲は、無理矢理に口角を上げて、曖昧に笑い返した。
次々とチームが発表されていく。歓声とため息の波が、何度も教室を往復する。譲の心臓は、まるでカウントダウンタイマーのように、一刻一刻と鼓動を速めていった。
そして、ついに譲の運命が決まる瞬間が来た。
「――チームJ!」
譲は、息を飲んだ。背筋を冷たい汗が伝う。スクリーンに、チームJのメンバーが一人ずつ、スローモーションのように映し出されていく。彼の心臓が、まるで破裂して飛び出してしまいそうなほど、大きく、痛いほどに脈打った。
【リーダー:赤城 剛】
その名前と、まるで風化した岩石のようなゴツゴツとした顔面がスクリーンに大写しになった瞬間、譲は静かに天を仰いだ。彼の脳裏に、かつて哲学書で読んだ、たった一言だけが浮かんだ。
(神は、死んだ)
教室の反対側の席では、剛本人が「はぁぁ!? なんでこの俺様がリーダーなんだよ! 面倒くせぇ!」と、周囲の迷惑など一切意に介さない素っ頓狂な声を上げている。
だが、神が用意した悪夢は、まだほんの序章に過ぎなかった。
【メンバー:神楽院 玲奈】
先ほどチームAが発表された時とは全く質の違う、しかし、それ以上に大きなどよめきが、教室全体を揺るがした。
孤高のクールビューティー。誰とも馴れ合わず、その圧倒的な実力故に、他者を寄せ付けない氷の女王。あの神楽院玲奈。なぜ彼女が、あの猪武者の下につくというのか? 誰もが、そのありえない組み合わせに息を呑んだ。
玲奈本人は、教室の喧騒などまるで存在しないかのように、表情一つ変えず、ただスクリーンを冷たく、射抜くような瞳で見つめている。その横顔は、まるで精巧に作られたガラス細工のように美しく、そして同じくらいに冷ややかだった。
譲の背筋を、今度は氷水のような悪寒が駆け抜けた。
(まずい。まずすぎる。思考より先に筋肉が動く暴走する猪武者に、それを冷ややかに見下す絶対零度の氷の女王。この時点で、チームとして機能する確率が限りなくゼロに近い。いや、マイナスだ。お互いの存在がマイナスに作用する!)
そして、運命は、彼に残された僅かな、本当に僅かな希望の欠片さえも、無慈悲に踏み潰した。
【メンバー:宮沢 譲】
その瞬間、教室中の全ての視線が、剛と、玲奈と、そして譲の三点に、まるでレーザー光線のように突き刺さった。それは、同情でもなく、羨望でもない。ただ、世紀の珍獣を見るかのような、純粋な好奇と、隠しきれない憐憫の眼差しだった。
次の瞬間、譲と剛は、まるで磁石のS極とS極が反発しあうように、お互いを憎悪の目で見つめ、そして、示し合わせたかのように、相手をビシリと指さした。
「「なんでコイツと!!」」
声が、完璧にハモった。
その、絶望的な状況下における奇跡的とも言えるシンクロ率の高さに、譲はさらに深い絶望を覚えた。こんなところで、この忌まわしい男と息が合ってどうするのだ。
張り詰めていた教室の空気は、その一言で完全に崩壊した。
誰かが、こらえきれずに「ぶはっ!」と噴き出したのを皮切りに、それは伝染病のように広がっていく。
「やべえ、面白すぎるだろ、このチーム!」
「奇跡の組み合わせじゃん!」
「ある意味、チームAより注目度高いぞ!」
あちこちで堪えきれない笑い声が上がり、やがてそれは、ホール全体を揺るがす巨大な爆笑の渦へと変わっていった。
教官が「静かにしろ、貴様ら!」と怒鳴りつけるが、一度火がついてしまった嘲笑は、そう簡単には収まりそうにない。
譲は、顔から火が出るような羞恥と、底なしの絶望の中で、ただスクリーンに映し出された自分の情けない顔写真を見つめることしかできなかった。
教官は、わざとらしく咳払いを一つして、この地獄のカルテットの最後のメンバーを、まるで死刑宣告のように告げた。
【メンバー:小林 誠】
スクリーンに映し出されたのは、気弱そうで、いつもオドオドしている、小動物のような男子生徒の顔写真だった。彼もまた、譲と同じ一般枠からの入学で、実技の成績は常に下から数えた方が早いことで有名だった。
本物の小林くんは、教室の隅の席で、顔面蒼白になり、まるで木の葉のようにカタカタと小刻みに震えていた。今にも「ひぃっ!」と小さな悲鳴を上げて気絶してしまいそうだ。彼の視線は、恐怖に歪みながら、剛と玲奈、そして譲の間を行ったり来たりしている。
暴君リーダー、赤城剛。
孤高の女王、神楽院玲奈。
無力なガリ勉、宮沢譲。
そして、気絶寸前の一般人、小林誠。
役者は、揃った。
史上最悪のチームの誕生に、教室の爆笑は、もはや一周回って憐憫の響きさえ帯びていた。
***
放課後。
指定された小さなミーティングルームは、西日の差し込む窓から見える美しい茜色の夕焼けとは裏腹に、シベリアの永久凍土か、あるいは地獄の第九圏のような空気に支配されていた。
四人は、まるで互いの存在が致死性のウイルスであるかのように、それぞれが部屋の四隅に陣取って距離を置いていた。
赤城剛は、腕を組み、仁王立ちで窓の外を睨みつけている。その背中からは「俺に話しかけるな」というオーラが湯気のように立ち上っていた。
神楽院玲奈は、同じく窓の外を眺めているが、まるで壁の染みと同化しようとしているかのように気配を完全に消している。彼女の周囲だけ、空気が数度低いように感じられた。
小林誠は、椅子の本当に隅っこに、体育座りのようにちょこんと座り、今にも消えてしまいそうに全身を縮こまらせている。彼の視線は、怯えたように床の一点に固定されていた。
そして、宮沢譲は。この絶望的な状況をどう打開すべきか、いや、そもそも打開という概念はこの空間に存在するのかと、真剣に胃薬の必要性を検討していた。重すぎる沈黙が、まるで鉛のように部屋の空気を満たし、呼吸さえも困難にさせている。
最初にその沈黙という名の薄氷を、暴力的に、そして予想通りに叩き割ったのは、やはり赤城剛だった。
彼は、机を拳でドンと叩き、椅子が床を引っ掻くけたたましい音を立てて立ち上がる。
「やってられるか、こんなもん! なんでこの俺様が、こんな役立たずの雑魚どもが三人もいるチームのお守りをしなきゃなんねーんだよ! 教官どもは、俺に試験を諦めろって言ってんのか、あぁん!?」
その暴言の矛先は、まず、最も抵抗しそうにない、最も弱い獲物である小林くんに向けられた。
「おい、そこのチビ! テメー、試験が始まったら、俺の半径五メートル以内に近づくんじゃねーぞ! 怪物の前に、俺がお前をストレス解消に叩き潰すことになるからな!」
「は、はいぃぃぃ! す、すみません! ごめんなさい!」
小林くんが、裏返った悲鳴のような返事をしながら、椅子の上でさらに小さくなった。
次に、剛の憎悪に満ちた、血走った視線が、譲を射抜いた。
「特にテメーだ、ガリ勉! 前期試験で調子に乗ってんじゃねーぞ! テメーのその役立たずのウンチクはな、怪物の前じゃ屁のツッパリにもならねえんだよ! 実際に戦えねえ知識なんざ、ゴミ以下だ! 俺の足だけは絶対に引っ張んじゃねーぞ! いや、どうせ引っ張るに決まってるからな。最初から何もすんな! 物陰に隠れて震えてろ! 俺の言うことだけを黙って聞いてりゃいいんだ! 分かったか!」
前期試験のトラウマを、土足で、しかもスパイク付きのブーツで踏みにじるような言葉の暴力。譲は、奥歯を強く噛みしめ、言い返したい言葉を必死に飲み込んだ。ここで反論したところで、この男には火に油を注ぐだけだと、これまでの経験で嫌というほど知っていたからだ。
譲が黙っているのを、肯定と受け取ったのだろう。剛は勝ち誇ったように鼻を鳴らし、最後の標的である玲奈に向き直った。
「おい、お嬢様。テメーもだ。神楽院だか何だか知らねえが、どうせ、これまでぬくぬくとお上品に生きてきたんだろ? 戦場はな、お前のバレエの発表会じゃねえんだぞ。泣き言言うんじゃねーぞ。足手まといになったら、女だろうが容赦しねぇからな。俺の指示に、黙って従え」
それまで、まるで石像のように微動だにしなかった玲奈が、ゆっくりと、本当にゆっくりと、その冷たい視線を剛に向けた。その瞳は、絶対零度の氷。感情というものが一切介在しない、ただ純粋な侮蔑と分析の色だけを宿していた。
「忠告しておくけれど、私に命令するのはやめてちょうだい。私は、私の判断で動くわ。それから、あなたこそ、足手まといにならないことね。猪武者さん?」
「な、なんだと、テメー!」
剛の顔が、怒りで瞬時に赤黒く染まる。
「事実を言ったまでよ。あなたのその思考回路は、ゴリラか何かと同じ単細胞レベルに見えるけれど。ただ正面から突撃するだけで、状況判断も連携もできないのでは、ポイントを稼ぐどころか、無駄な消耗を招くだけ。評価の足を引っ張るのは、あなたの方かもしれないわね」
「このアマァ……!」
今にも殴りかからんばかりの剛と、それを冷たくあしらう玲奈。その間に挟まれた小林くんが「ひっ…」と小さな悲鳴を上げ、譲は、ついに観念して両手で頭を抱え込んだ。
「終わった。僕の養成所ライフ、完全に、完全に終わった……」
この状況こそ、かつて古典の授業で習った、あの言葉そのものではないか。
『怨憎会苦(おんぞうえく)』
怨み、憎むべき相手に、会わなければならない苦しみ。それは、個人の意志ではどうにもならない、この世界の理(ことわり)、避けられない「縁」という名の、錆びついた鎖なのだ。
剛も、玲奈も、小林も、そして自分自身も、誰もこのチームを望んでいなかった。だが、運命という名の、悪趣味な子供が気まぐれに振ったサイコロは、この相性最悪の四人を、一つの小さな箱の中に無造作に放り込んだのだ。そして、その箱には鍵がかけられている。逃げることは、できない。
結局、チームJの初日のミーティングは、剛と玲奈のハイレベル(?)な罵り合いと、小林くんの小さな悲鳴、そして譲の深いため息だけで、作戦も、役割分担も、集合時間すら、何一つ決まることなく終わった。
重い鉄の扉を開け、四人は一言も交わさない。それぞれが、まるで互いを汚物でも見るかのように避けながら、バラバラの方向へと歩き出す。誰一人、他のメンバーを振り返ろうとはしなかった。
譲は、寮への道を一人、とぼとぼと歩きながら、夕暮れの空を見上げた。西の空はまだ、燃えるようなオレンジ色のグラデーションを残して美しいのに、東の空からは、まるで巨大な獣が墨を吐き出したかのように、厚く、重い、灰色の雲が急速に空全体を覆い始めていた。夕立が来るのかもしれない。
いや、違う。
まるで、自分たちチームJの、暗雲立ち込める未来を暗示しているかのようだった。
このメンバーで、どうやってあの孤島を四日間も生き抜くというのか。
仲間を信じることもできず、協力することもできず、ただ互いにいがみ合うだけのこの四人で、どうやってポイントを獲得し、評価を得るというのか。
絶望的な問いだけが、夏の終わりの湿った空気と共に、彼の肩に重く、重くのしかかっていた。彼の長い、長い戦いが、今、史上最悪の形で、その幕を開けようとしていた。
教室の最前方に設置された巨大なスクリーン。そこに映し出された無機質なゴシック体の文字が、彼らの運命を宣告しようとしていた。
『第一学年次・最終生存試験:チーム編成発表』
壇上に立った教官――元アースであり、数多の戦場を潜り抜けてきた歴戦の猛者である彼の声は、マイクを通してもなお、鋼のような硬質さと冷徹さを保っていた。彼は、まるで天気予報でも読み上げるかのように、淡々と、しかし一言一句に重みを込めて試験内容を説明し始めた。
「――これより、第一学年次における最終評価試験の詳細を発表する。試験内容は、政府管轄下の孤島『エリア・ガンマ』を舞台とした、四日間のサバイバル。島の各所に配置された、最新鋭の技術によって生成された擬似生命体――通称『擬似怪物(ファントム)』を討伐し、その種類と数に応じて付与されるポイントを競い合ってもらう」
生徒たちの間に、緊張のさざ波が広がる。擬似怪物(ファントム)。それは、かつてこの世界を脅かした本物の『怪物(モンスター)』の戦闘データを元に、限りなく忠実に再現された戦闘シミュレーション用の兵器だ。危険度は本物より低く設定されているとはいえ、訓練生にとっては十分すぎるほどの脅威となる。
「そして、最も重要な点を伝える」
教官はそこで一度言葉を切り、教室全体を見渡した。彼の鋭い視線が、生徒一人ひとりの覚悟を試すかのように突き刺さる。
「今回の評価は、個人の戦果によって決定されるのではない。諸君らが編成する、チームの総合ポイントによって決定される。評価AからFまでのランクが付与され、これが後期課程におけるクラス編成、ひいては将来の配属先にまで大きな影響を及ぼすことを、肝に銘じておけ」
「チーム戦」――その言葉が発せられた瞬間、それまで辛うじて保たれていた教室の静寂は、まるで堰を切ったように崩壊した。ざわめきが、生き物のようにうねり、瞬く間に教室の隅々まで広がっていく。歓喜、不安、期待、絶望。様々な感情が渦を巻き、空気の密度を急激に高めていく。
誰と組むのか。
その運命の采配一つで、この過酷極まりない四日間のサバイバルが、栄光への飛躍台にも、あるいは再起不能の地獄にもなりうるのだ。誰もが、無意識のうちに視線を彷徨わせる。探すのは、優秀な『アース』。特に、朝倉颯太や橘陽葵、そして神楽院玲奈のような、常に実技成績でトップクラスに君臨するエリートたち。彼らと組めることを、神に、仏に、あるいは得体の知れない何かに祈っていた。
教室の中ほど、少し後ろの席で、宮沢譲もまた、その祈れる者の一人だった。彼は固く目を閉じ、爪が食い込むほどに両手をきつく握りしめる。彼の脳裏には、前期中間試験の悪夢が、色褪せることなく鮮明に焼き付いていた。
(どうか、どうか、まともなチームでありますように!)
譲の祈りは、他の生徒たちのそれとは少し、いや、かなり異質だった。
(突出して優秀じゃなくてもいい! いや、むしろ優秀すぎるメンバーは俺には不相応だ! ただ、ただどうか、話が通じて、協力という概念を脳のどこかに搭載していて、作戦という言葉の意味を理解できる、ごくごく普通の、常識的なメンバーでありますように!)
前期中間試験。それは、筆記試験と実技試験の二本立てで行われた。譲は、筆記試験において、その特異な記憶力と分析能力を遺憾なく発揮した。怪物の生態、弱点、過去の討伐事例、有効な戦術。あらゆるデータを網羅した彼の答案は、教官陣を唸らせ、前代未聞の「満点」という評価を叩き出した。
だが、実技試験の結果は、その栄光を嘲笑うかのように無惨だった。アースとしての根源的な能力、身体能力、戦闘センス。その全てが、譲には壊滅的に欠けていたのだ。結果は、当然の「零点」。そして、総合評価は、筆記の満点を以てしても覆すことのできない「学年最下位」。
教官から言い渡された評価は、彼の心に深い傷として刻まれた。
「宮沢、貴様の知識は確かに見事だ。だが、戦場で役に立たない知識など、ただの紙切れに過ぎん。貴様の満点は、無意味だ」
『無意味な満点』と『絶望的な最下位』。
この二つの烙印が、彼の祈りに悲痛なまでの切実さを与えていた。自分の実技能力がゼロに近いことは、もはや嫌というほど理解している。せめて、チームの足を引っ張るだけの存在ではなく、その「無意味」と断じられた知識で貢献できる余地のあるチームでなければ、彼の存在価値は本当にゼロになってしまう。この養成所にいる意味さえ、失ってしまうのだ。
壇上の教官が、無情にもマイクを握り直し、厳かな声でチーム名を一つずつ読み上げていく。スクリーンにメンバーの名前と顔写真が映し出されるたびに、教室のあちこちで小さな歓声が上がったり、あるいは深いため息が漏れたりした。歓喜と絶望が、残酷なまでに明暗を分けていく。
「――チームA!」
その名が呼ばれた瞬間、教室中の視線が、まるで磁石に引き寄せられる砂鉄のように、スクリーンの一点に集中した。どよめきが起こる。
スクリーンに映し出されたのは、まさにドリームチームと呼ぶにふさわしい、光り輝くような顔ぶれだった。
【リーダー:朝倉 颯太】
【メンバー:橘 陽葵】
そして、常に実技成績トップクラスに君臨する、男女二人のエリートアース。颯太の持つ圧倒的な攻撃力と、陽葵の鉄壁の防御能力。二人の連携は、既に学年トップレベルと誰もが認めるものだった。他のメンバーも、各分野で秀でた実力者ばかりが名を連ねている。
「うわ、最強じゃん……」
「これ、もう優勝決まりだろ。試験やる意味あんのかよ」
羨望と、早すぎる諦めが混じった声が、あちこちから囁きのように聞こえてくる。
その喧騒の中、渦中の人物である朝倉颯太は、悪びれる様子もなく、後ろの席に座る譲に向かって、にっと歯を見せて笑い、小さくガッツポーズをして見せた。その太陽のように屈託のない笑顔が、今の譲にはやけに眩しく、胸をちくりと刺す。その隣、橘陽葵は、対照的に、心配そうな、そしてどこか申し訳なさそうな顔でこちらを見ている。その優しい気遣いが、逆に彼の劣等感を刺激した。
(わかってるさ。お前たちがすごいのは。そして、俺がお前たちとは住む世界が違うってことも……)
譲は、無理矢理に口角を上げて、曖昧に笑い返した。
次々とチームが発表されていく。歓声とため息の波が、何度も教室を往復する。譲の心臓は、まるでカウントダウンタイマーのように、一刻一刻と鼓動を速めていった。
そして、ついに譲の運命が決まる瞬間が来た。
「――チームJ!」
譲は、息を飲んだ。背筋を冷たい汗が伝う。スクリーンに、チームJのメンバーが一人ずつ、スローモーションのように映し出されていく。彼の心臓が、まるで破裂して飛び出してしまいそうなほど、大きく、痛いほどに脈打った。
【リーダー:赤城 剛】
その名前と、まるで風化した岩石のようなゴツゴツとした顔面がスクリーンに大写しになった瞬間、譲は静かに天を仰いだ。彼の脳裏に、かつて哲学書で読んだ、たった一言だけが浮かんだ。
(神は、死んだ)
教室の反対側の席では、剛本人が「はぁぁ!? なんでこの俺様がリーダーなんだよ! 面倒くせぇ!」と、周囲の迷惑など一切意に介さない素っ頓狂な声を上げている。
だが、神が用意した悪夢は、まだほんの序章に過ぎなかった。
【メンバー:神楽院 玲奈】
先ほどチームAが発表された時とは全く質の違う、しかし、それ以上に大きなどよめきが、教室全体を揺るがした。
孤高のクールビューティー。誰とも馴れ合わず、その圧倒的な実力故に、他者を寄せ付けない氷の女王。あの神楽院玲奈。なぜ彼女が、あの猪武者の下につくというのか? 誰もが、そのありえない組み合わせに息を呑んだ。
玲奈本人は、教室の喧騒などまるで存在しないかのように、表情一つ変えず、ただスクリーンを冷たく、射抜くような瞳で見つめている。その横顔は、まるで精巧に作られたガラス細工のように美しく、そして同じくらいに冷ややかだった。
譲の背筋を、今度は氷水のような悪寒が駆け抜けた。
(まずい。まずすぎる。思考より先に筋肉が動く暴走する猪武者に、それを冷ややかに見下す絶対零度の氷の女王。この時点で、チームとして機能する確率が限りなくゼロに近い。いや、マイナスだ。お互いの存在がマイナスに作用する!)
そして、運命は、彼に残された僅かな、本当に僅かな希望の欠片さえも、無慈悲に踏み潰した。
【メンバー:宮沢 譲】
その瞬間、教室中の全ての視線が、剛と、玲奈と、そして譲の三点に、まるでレーザー光線のように突き刺さった。それは、同情でもなく、羨望でもない。ただ、世紀の珍獣を見るかのような、純粋な好奇と、隠しきれない憐憫の眼差しだった。
次の瞬間、譲と剛は、まるで磁石のS極とS極が反発しあうように、お互いを憎悪の目で見つめ、そして、示し合わせたかのように、相手をビシリと指さした。
「「なんでコイツと!!」」
声が、完璧にハモった。
その、絶望的な状況下における奇跡的とも言えるシンクロ率の高さに、譲はさらに深い絶望を覚えた。こんなところで、この忌まわしい男と息が合ってどうするのだ。
張り詰めていた教室の空気は、その一言で完全に崩壊した。
誰かが、こらえきれずに「ぶはっ!」と噴き出したのを皮切りに、それは伝染病のように広がっていく。
「やべえ、面白すぎるだろ、このチーム!」
「奇跡の組み合わせじゃん!」
「ある意味、チームAより注目度高いぞ!」
あちこちで堪えきれない笑い声が上がり、やがてそれは、ホール全体を揺るがす巨大な爆笑の渦へと変わっていった。
教官が「静かにしろ、貴様ら!」と怒鳴りつけるが、一度火がついてしまった嘲笑は、そう簡単には収まりそうにない。
譲は、顔から火が出るような羞恥と、底なしの絶望の中で、ただスクリーンに映し出された自分の情けない顔写真を見つめることしかできなかった。
教官は、わざとらしく咳払いを一つして、この地獄のカルテットの最後のメンバーを、まるで死刑宣告のように告げた。
【メンバー:小林 誠】
スクリーンに映し出されたのは、気弱そうで、いつもオドオドしている、小動物のような男子生徒の顔写真だった。彼もまた、譲と同じ一般枠からの入学で、実技の成績は常に下から数えた方が早いことで有名だった。
本物の小林くんは、教室の隅の席で、顔面蒼白になり、まるで木の葉のようにカタカタと小刻みに震えていた。今にも「ひぃっ!」と小さな悲鳴を上げて気絶してしまいそうだ。彼の視線は、恐怖に歪みながら、剛と玲奈、そして譲の間を行ったり来たりしている。
暴君リーダー、赤城剛。
孤高の女王、神楽院玲奈。
無力なガリ勉、宮沢譲。
そして、気絶寸前の一般人、小林誠。
役者は、揃った。
史上最悪のチームの誕生に、教室の爆笑は、もはや一周回って憐憫の響きさえ帯びていた。
***
放課後。
指定された小さなミーティングルームは、西日の差し込む窓から見える美しい茜色の夕焼けとは裏腹に、シベリアの永久凍土か、あるいは地獄の第九圏のような空気に支配されていた。
四人は、まるで互いの存在が致死性のウイルスであるかのように、それぞれが部屋の四隅に陣取って距離を置いていた。
赤城剛は、腕を組み、仁王立ちで窓の外を睨みつけている。その背中からは「俺に話しかけるな」というオーラが湯気のように立ち上っていた。
神楽院玲奈は、同じく窓の外を眺めているが、まるで壁の染みと同化しようとしているかのように気配を完全に消している。彼女の周囲だけ、空気が数度低いように感じられた。
小林誠は、椅子の本当に隅っこに、体育座りのようにちょこんと座り、今にも消えてしまいそうに全身を縮こまらせている。彼の視線は、怯えたように床の一点に固定されていた。
そして、宮沢譲は。この絶望的な状況をどう打開すべきか、いや、そもそも打開という概念はこの空間に存在するのかと、真剣に胃薬の必要性を検討していた。重すぎる沈黙が、まるで鉛のように部屋の空気を満たし、呼吸さえも困難にさせている。
最初にその沈黙という名の薄氷を、暴力的に、そして予想通りに叩き割ったのは、やはり赤城剛だった。
彼は、机を拳でドンと叩き、椅子が床を引っ掻くけたたましい音を立てて立ち上がる。
「やってられるか、こんなもん! なんでこの俺様が、こんな役立たずの雑魚どもが三人もいるチームのお守りをしなきゃなんねーんだよ! 教官どもは、俺に試験を諦めろって言ってんのか、あぁん!?」
その暴言の矛先は、まず、最も抵抗しそうにない、最も弱い獲物である小林くんに向けられた。
「おい、そこのチビ! テメー、試験が始まったら、俺の半径五メートル以内に近づくんじゃねーぞ! 怪物の前に、俺がお前をストレス解消に叩き潰すことになるからな!」
「は、はいぃぃぃ! す、すみません! ごめんなさい!」
小林くんが、裏返った悲鳴のような返事をしながら、椅子の上でさらに小さくなった。
次に、剛の憎悪に満ちた、血走った視線が、譲を射抜いた。
「特にテメーだ、ガリ勉! 前期試験で調子に乗ってんじゃねーぞ! テメーのその役立たずのウンチクはな、怪物の前じゃ屁のツッパリにもならねえんだよ! 実際に戦えねえ知識なんざ、ゴミ以下だ! 俺の足だけは絶対に引っ張んじゃねーぞ! いや、どうせ引っ張るに決まってるからな。最初から何もすんな! 物陰に隠れて震えてろ! 俺の言うことだけを黙って聞いてりゃいいんだ! 分かったか!」
前期試験のトラウマを、土足で、しかもスパイク付きのブーツで踏みにじるような言葉の暴力。譲は、奥歯を強く噛みしめ、言い返したい言葉を必死に飲み込んだ。ここで反論したところで、この男には火に油を注ぐだけだと、これまでの経験で嫌というほど知っていたからだ。
譲が黙っているのを、肯定と受け取ったのだろう。剛は勝ち誇ったように鼻を鳴らし、最後の標的である玲奈に向き直った。
「おい、お嬢様。テメーもだ。神楽院だか何だか知らねえが、どうせ、これまでぬくぬくとお上品に生きてきたんだろ? 戦場はな、お前のバレエの発表会じゃねえんだぞ。泣き言言うんじゃねーぞ。足手まといになったら、女だろうが容赦しねぇからな。俺の指示に、黙って従え」
それまで、まるで石像のように微動だにしなかった玲奈が、ゆっくりと、本当にゆっくりと、その冷たい視線を剛に向けた。その瞳は、絶対零度の氷。感情というものが一切介在しない、ただ純粋な侮蔑と分析の色だけを宿していた。
「忠告しておくけれど、私に命令するのはやめてちょうだい。私は、私の判断で動くわ。それから、あなたこそ、足手まといにならないことね。猪武者さん?」
「な、なんだと、テメー!」
剛の顔が、怒りで瞬時に赤黒く染まる。
「事実を言ったまでよ。あなたのその思考回路は、ゴリラか何かと同じ単細胞レベルに見えるけれど。ただ正面から突撃するだけで、状況判断も連携もできないのでは、ポイントを稼ぐどころか、無駄な消耗を招くだけ。評価の足を引っ張るのは、あなたの方かもしれないわね」
「このアマァ……!」
今にも殴りかからんばかりの剛と、それを冷たくあしらう玲奈。その間に挟まれた小林くんが「ひっ…」と小さな悲鳴を上げ、譲は、ついに観念して両手で頭を抱え込んだ。
「終わった。僕の養成所ライフ、完全に、完全に終わった……」
この状況こそ、かつて古典の授業で習った、あの言葉そのものではないか。
『怨憎会苦(おんぞうえく)』
怨み、憎むべき相手に、会わなければならない苦しみ。それは、個人の意志ではどうにもならない、この世界の理(ことわり)、避けられない「縁」という名の、錆びついた鎖なのだ。
剛も、玲奈も、小林も、そして自分自身も、誰もこのチームを望んでいなかった。だが、運命という名の、悪趣味な子供が気まぐれに振ったサイコロは、この相性最悪の四人を、一つの小さな箱の中に無造作に放り込んだのだ。そして、その箱には鍵がかけられている。逃げることは、できない。
結局、チームJの初日のミーティングは、剛と玲奈のハイレベル(?)な罵り合いと、小林くんの小さな悲鳴、そして譲の深いため息だけで、作戦も、役割分担も、集合時間すら、何一つ決まることなく終わった。
重い鉄の扉を開け、四人は一言も交わさない。それぞれが、まるで互いを汚物でも見るかのように避けながら、バラバラの方向へと歩き出す。誰一人、他のメンバーを振り返ろうとはしなかった。
譲は、寮への道を一人、とぼとぼと歩きながら、夕暮れの空を見上げた。西の空はまだ、燃えるようなオレンジ色のグラデーションを残して美しいのに、東の空からは、まるで巨大な獣が墨を吐き出したかのように、厚く、重い、灰色の雲が急速に空全体を覆い始めていた。夕立が来るのかもしれない。
いや、違う。
まるで、自分たちチームJの、暗雲立ち込める未来を暗示しているかのようだった。
このメンバーで、どうやってあの孤島を四日間も生き抜くというのか。
仲間を信じることもできず、協力することもできず、ただ互いにいがみ合うだけのこの四人で、どうやってポイントを獲得し、評価を得るというのか。
絶望的な問いだけが、夏の終わりの湿った空気と共に、彼の肩に重く、重くのしかかっていた。彼の長い、長い戦いが、今、史上最悪の形で、その幕を開けようとしていた。
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