無能と蔑まれた僕だけが知る世界の嘘。敵であるはずの怪物の少女に恋したので、人類を裏切り世界を滅ぼす。

Gaku

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第1部:養成所編

第20話:紙一重の勝利

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夜明け前。その時刻は、夜の底が最も深く、そして最も冷たくなる瞬間だった。昨夜、空の全てを洗い流すかのように猛威を振るった嵐は、地上から塵芥の一つひとつを薙ぎ払い、大気をガラス細工のように研ぎ澄ませていた。その冷たく澄み渡った大気は、天空に散りばめられた星々の瞬きさえも、一つ残らず凍てつかせてしまいそうなほどの鋭さで、古代遺跡の廃墟を支配していた。

風は完全にその息を殺している。ほんの数時間前まで、狂ったように木々を揺さぶり、石の隙間を呻くように吹き抜けていた風の音は、今や嘘のように消え失せていた。草木の葉が擦れ合う微かな囁きも、夜の帳に鳴り響いていた虫たちの声も、全てが深い静寂の底に沈んでいる。世界から一切の音が奪われ、真空の宇宙空間に放り出されたかのような、墓場にも似た絶対的な静寂。その静寂を支配していたのは、二つのものだけだった。一つは、硝煙と、高圧電流が大気を焼いた後に残るオゾンの匂いが入り混じった、鼻腔を刺す焦げ臭い匂い。そしてもう一つは、目の前に音もなくそびえ立つ、絶望という名の鉄の巨人――自律殺戮兵器『ガーディアン』が放つ、無機質で、冷酷な威圧感だった。

誰もが息を殺していた。いや、殺すことしかできなかった。死闘の果てに訪れた、絶望的な膠着状態。それはまるで、巨大な蜘蛛の巣に絡め取られた蝶のように、動けば動くほど死が近づいてくる、悪夢のような時間だった。

玲奈は、苔むした巨大な石の瓦礫に、その痩せた身を寄せていた。肩で、かろうじて浅く、荒い呼吸を繰り返している。ぜい、ぜい、と喉の奥で鳴る、錆びた鉄が擦れるような音だけが、彼女がまだ生きている証だった。極限まで酷使された精神は悲鳴を上げ、意識は明滅を繰り返すランプの光のように、何度も闇に吸い込まれそうになる。そのたびに、彼女は奥歯を強く噛みしめ、砕けた爪が食い込むほど固く握りしめた拳の痛みで、かろうじて意識の糸を現実へと繋ぎ止めていた。冷たい石の感触が、汗と泥で汚れた頬に、死人の肌のような冷たさを伝えてくる。

その隣では、剛が、まるで傷を負った猛獣のように、低い唸り声をあげていた。彼の誇りであった右腕の強化ガントレットは、ガーディアンのエネルギーシールドとの激しい衝突の末、見るも無惨に砕け散っている。剥き出しになった腕からは、だらりと力なく垂れ下がった指先から、血がぽた、ぽたと音を立てて石畳に滴り落ち、小さな黒い染みを作っていた。彼はその腕を、まるで我が子を庇うかのように左腕で抱え込み、燃えるような赤い瞳で、沈黙する鉄の巨人を睨みつけていた。その全身の筋肉は、次の一瞬に飛びかかるための力を極限まで溜め込んだ、圧縮されたバネのように、ぴくぴくと微かな痙攣を繰り返している。再起の機会。ただその一点だけを、彼は獣の執念で窺っていた。

少し離れた場所、崩れかけたアーチの影では、小林がいた。数分前、ガーディアンの放った衝撃波の余波を受け、哀れな人形のように吹き飛ばされて失神していた彼は、つい先ほど、ようやく呻き声を上げて意識を取り戻したばかりだった。しかし、彼の顔に浮かんでいるのは、生還の安堵ではなかった。虚ろな瞳は、ただ目の前の絶望の化身に向けられ、恐怖に引き攣った顔は蒼白を通り越して土気色をしていた。カタカタと鳴り止まない歯の根、小刻みに震える両膝。それでも彼は、砕けた眼鏡の奥で、必死に譲の指示を待っていた。この状況を打開できる人間がいるとすれば、それはもう、あの男しかいないと、本能が告げていたからだ。

その誰もが、己の骨の髄まで、どうしようもない無力さを噛み締めていた。個々の戦闘能力も、この極限状況の中で芽生えたばかりの、まだ脆い絆も、この絶対的な破壊と絶望の象徴の前では、あまりにも儚く、あまりにも無力だった。それは、神の御前にひれ伏す、矮小な人間そのものの姿だった。

その、死体のように張り詰めた沈黙を、まるで鋭利な刃物で切り裂いたのは、譲の絶叫だった。

「――今だッ! 剛さんッ!! 関節部、右から三番目のアクチュエーター! そこしかないッ!!」

それは、もはや人間の発する声ではなかった。喉の奥の粘膜を引き裂き、血の味と共に吐き出された、魂そのものの叫びだった。彼の脳内では、この膠着状態が続いていた数分間、常人には想像もつかないほどの超高速演算が、天文学的な回数、繰り返されていた。ガーディアンの装甲パターン、エネルギーの流れの微細な揺らぎ、昨夜の嵐による湿度と気温の変化、剛の負傷具合、玲奈の残存精神力、小林の恐怖心。ありとあらゆる変数を入力し、導き出されるシミュレーションの結果は、常に同じだった。

勝率、0.0001%。
生存確率、0.128%。

絶望的な数値の羅列。しかし、彼は諦めなかった。その数字の奔流の中から、まるで広大な砂漠の中からたった一粒の砂金を探し当てるように、あるいは、数億行に及ぶプログラムコードの中から、バグともエラーコードとも見紛うほどの、ほんの僅かな、しかし致命的な脆弱性の欠片を、彼はその執念で見つけ出していたのだ。

譲の絶叫が、幾世紀もの時を経て苔むした古代遺跡の石畳に、まるで槍のように鋭く突き刺さり、その音が周囲の石壁にこだまするよりも早く。いや、寸分の狂いもなく、ほとんど同時に、大地が爆ぜた。

剛が動いたのだ。

ゴッ、という地を蹴る鈍い音が、今まで死んでいた世界に、再び力強い生命の鼓動を打ち鳴らす。その音は、単なる足音ではなかった。石畳が彼の踏み込みに耐えきれず、蜘蛛の巣状の亀裂を走らせて砕け散る音だった。彼の巨体は、もはや人間のそれではなく、薬室から撃ち出された一発の徹甲榴弾と化していた。この一瞬のために強化された脚部の筋繊維が、ブチブチと断裂する悲鳴を上げた。全身の毛細血管が、過剰な負荷によって破れ、皮膚の下で無数の内出血を引き起こす。しかし、彼はその全てを無視した。全身に蓄えられていた最後のエネルギーを、ただ一点、砕け散った右腕の強化ガントレットの、その拳の先端へと、螺旋を描くように注ぎ込んでいく。瓦礫と化したガントレットの隙間から漏れ出すエネルギーが、夜明け前の薄闇の中で、まるで地獄の業火のような、不吉な赤い燐光を帯びていた。

その瞬間、世界は唐突にその速度を失った。時間は、極限まで引き伸ばされた蜂蜜のように、ゆっくりと、そして粘性を帯びて流れ始めた。

世界から、再び音が消える。

剛の踏み込みによって舞い上がった土埃の粒子一つ一つが、まだ空に残る星々の微かな光をプリズムのように反射して、きらめきながら、ゆっくりと宙を漂うのが見える。ガーディアンの巨体が、その脅威的な速度の接近をようやく感知し、昆虫の複眼のように無数に並んだ赤いセンサーを、一斉に彼へと向ける。その機械的な動きさえもが、まるで水深一万メートルの深海の水圧の中で行われているかのように、信じられないほど緩慢に見えた。

譲は、叫んだきりの姿勢で、石像のように硬直していた。その大きく見開かれた瞳は、ただ一点、剛の突撃の軌跡を、網膜に焼き付けるように見つめている。世界の音は消えたはずなのに、自分の心臓の鼓動だけが、ドッドッドッドッと、まるで巨大な警鐘のように、頭蓋の内側で大きく、そしてうるさく響き渡っていた。頼む、届け。間に合ってくれ。間に合ってくれ…!祈りにも似た思考が、彼の脳内で灼熱の渦を巻いていた。

玲奈は、薄れゆく意識の向こう側で、その光景を見ていた。剛の背中。それは、傍から見ればあまりにも無謀で、自殺行為以外の何物でもない、愚かな突撃だった。しかし、不思議なことに、その背中には、昨夜までの彼には決して見ることのできなかった何かが、確かに宿っているように見えた。それは、仲間を信じるという、彼が最も不得手とし、嘲笑さえしていたはずの感情の輝きだった。彼女は、最後の力を振り絞り、自身の精神波を極細の針のように収束させ、ガーディアンの照準システムに微細なノイズを送り込み続けていた。それは大海に小石を投げるような行為だったが、今は、その一石が奇跡を起こすと信じるしかなかった。

小林は、恐怖でガチガチと歯を鳴らし、全身から滝のような冷や汗を流しながらも、譲の指示を信じていた。彼は最後の力を振り絞り、震える指先をガーディアンの足元に向けていた。彼の念動力が、直径三十センチほどの瓦礫を数ミリだけ持ち上げ、ガーディアンの進行予測地点に、僅かな、しかし計算され尽くした凹凸を作り出していた。それが、剛の突撃をコンマ数秒だけ助ける、彼の命を賭した、精一杯の陽動だった。脳の血管が切れそうなほどの圧力が彼を襲い、鼻から、つうっと生温かい血が流れ落ちた。

そして、当の剛の視界には、譲が絶叫と共に指し示した、ただ一点だけが映っていた。ガーディアンの、巨大な蜘蛛を思わせる多脚型ボディを支える、右から三番目の巨大な関節部。そのアクチュエーターユニットだけが、網膜が焼き切れんばかりの閃光を放ちながら、異常なまでに拡大されて見えていた。他の全て――崩れた遺跡のシルエットも、夜明け前の空の色も、仲間たちの姿さえも、その意味を失い、色褪せた背景へと溶けていく。

剛の右腕から放たれた全エネルギーは、もはや単なる物理的な打撃という概念を超越していた。それは、譲が見出した一点の真理、玲奈が精神の全てを賭けてこじ開けた一瞬の隙、小林が命がけで作り出した僅かな好機、そして剛自身の、仲間と、自らの誇りを守るべきものへの執念――その全てが、この一瞬に、この一点に凝縮された、世界の因果律そのものへ叩きつけられた、渾身の一撃だった。

衝突の瞬間、凄まじい轟音は響かなかった。

パリン、と。

まるで、凍てつくような真冬の夜に、窓ガラスがひとりでに、その内部の歪みに耐えきれずに砕けるような。あるいは、教会のステンドグラスに一粒の小石が当たったかのような。そんな、この殺伐とした戦場にはあまりにも場違いな、どこまでも澄み切った、硬質で、そして恐ろしく美しい音が、静まり返った広場に凛と響き渡った。

その音の正体は、ガーディアンの関節部を覆っていた、あの絶望的に強固だった多層構造のエネルギーシールドだった。剛の拳が触れた、ただその一点から、まるで凍った湖面に走る亀裂のように、蜘蛛の巣状の青白い光の線が、目にも留まらぬ速さでシールド全体へと広がっていく。そして次の瞬間、それは一切の音もなく、泡のように霧散した。砕け散ったシールドは、数億、数兆もの光の粒子となり、夜明け前の薄明かりの中で、まるでダイヤモンドダストのようにキラキラと乱舞し、そして静かに闇の中へと吸い込まれるように消えていった。

絶対的と信じられていた守りを失い、夜明け前の冷気に、その無防備な素肌を晒すチタニウム合金の装甲。そこに、剛の砕けたガントレットが、もはや物理法則さえ無視したかのような精度で、寸分の狂いもなく深々と、深々とめり込んでいった。

ギャギィィィンッッッ!!!

今度こそ、鼓膜を突き破り、脳髄を直接揺さぶるほどの、おぞましい金属の悲鳴が上がった。数センチの厚さを誇る特殊合金の装甲が、まるで湿った紙のように捻じ曲がり、引き裂かれる。衝突点から、溶接作業の際に散る火花のように、オレンジ色の火花が滝となって降り注いだ。剛の拳は、その凄まじい運動エネルギーの勢いを微塵も殺すことなく、いともたやすく装甲を貫通し、ガーディアンの内部で、まるで生物の内臓のように複雑に絡み合っていた冷却パイプとエネルギー伝達ケーブルの束を、無慈悲に、そして完全に粉砕した。

ブシュウウウウウッッ!という、圧縮されていた超低温の冷却液が、沸騰しながら一気に噴き出すけたたましい音と、バチバチッ!バチチッ!と、切断された高圧ケーブルから青白いスパークが、内部で狂ったように乱れ飛ぶ音が、ほとんど同時に響き渡る。剛の腕に、摂氏数百度の沸騰した冷却液と、数万ボルトの高圧電流が、牙を剥いて襲いかかる。肉が焼け、神経が焼き切れる激痛。しかし、彼は歯を食いしばり、呻き声一つ上げなかった。ただ、目標を破壊するという、その一点の目的のためだけに。

そして、次の瞬間、先程までの静寂は、永遠に破られた。

ガーディアンの内部で、制御システムを完全に失い、暴走したエネルギーが、連鎖的な誘爆を開始したのだ。

ドゥン……ドゴォンッ!ドゥン!ドゴォォォンッ!

腹の底に直接響く、くぐもった、しかし重い爆発音が連続する。その巨体は、まるで毒矢を打ち込まれた巨大な昆虫のように、不自然で、醜い痙攣を始めた。大地がビリビリと激しく震え、周囲に散らばっていた瓦礫が、カタカタカタと乾いた音を立てて小刻みに揺れる。分厚い装甲の継ぎ目という継ぎ目からは、断続的に、粘り気のあるどす黒い煙と、脈打つようなオレンジ色の炎が噴き出した。昆虫の複眼のように、無数に並んで不気味な赤い光を放っていたセンサー群が、一つ、また一つと、まるで生命の灯火が消えるように、不規則に明滅を繰り返し、やがて、その全ての光を失っていった。

「ギ……ギギ……ギャ……ア……ギ……ィィィ……」

それは、死に行く巨獣が上げる、最後の断末魔だった。人間の可聴域を遥かに超えた高周波のノイズ、内部の圧力が臨界点を超えて噴き出す蒸気の絶叫、断線したケーブル同士が擦れ合って奏でる、聞く者の正気を削るような不協和音。それら全てが混沌と混じり合った、機械でありながら、どこか生物的な、深い苦悶を感じさせるおぞましい悲鳴が、白み始めた東の空に向かって、長く、長く響き渡った。

天を仰ぎ、最後の絶叫を上げたガーディアンは、やがて、その全ての動きをゆっくりと止めた。まるで、何世紀もの風雪に耐え、この地の歴史を見つめ続けてきた巨大な歴史的建造物が、ついにその役目を終えて静かに崩れ落ちるかのように。あるいは、深海で力尽きた巨大な鯨が、最後の潮を吹き上げた後、荘厳に、そして静かに、光の届かない海の底へと沈んでいくかのように。圧倒的な荘厳さと、しかし、それ以上に圧倒的な悲壮感を伴いながら、その巨体をゆっくりと、ゆっくりと、西の方角へと傾けていった。

ズウウウウウウウンンン…………ッッ!!

地軸が揺らぐほどの凄まじい地響きと共に、ガーディアンは完全に大地に横たわった。その衝撃で巻き起こった凄まじい土煙が、巨大な灰色のカーテンのように広場全体を覆い尽くし、一瞬、全ての視界を奪い去った。

どれほどの時間が経っただろうか。数秒か、あるいは数分か。やがて、その濃密な土煙が、どこからか吹き始めた夜明けの風に、ゆっくりと、そして優しく流されていく。煙の向こうから、徐々に、巨大なシルエットが再びその姿を現し始める。だが、そこには、先程までの、神のごとき威容と、悪魔のごとき威圧感はどこにもなかった。ただ、動かなくなった巨大な鉄の骸が、二度と目覚めることのない永遠の眠りにつきながら、静かに、本当に静かに横たわっているだけだった。燻る煙が、骸のあちこちの亀裂から、細く、頼りなげに立ち上り、まるで、誰かが手向けた弔いの線香のように見えた。

嘘のような静寂が、再び広場を支配した。

先程までの死闘、轟音、絶叫、その全てが、まるで悪夢でも見ていたのではないかと錯覚するほどの、深く、穏やかで、そしてどこか神聖ささえ感じさせる静けさ。遠くで、夜明けを告げる鳥のさえずりが、ちち、と、まるで世界に音が戻ってきたことを確かめるかのように、小さく、しかしはっきりと聞こえ始めた。

「……おわ、った……のか……?」

誰かが、か細い、掠れた声で呟いた。それが誰の声だったのか、もう誰にも分からなかった。譲も、剛も、玲奈も、小林も、心身ともにボロボロになった四人は、ただ呆然と、夜明けの光の中に横たわるガーディアンの骸を、夢でも見ているかのように見上げていた。

極度の緊張から解放された身体は、まるで鉛を隅々まで詰め込まれたかのように、信じられないほど重かった。脳内を駆け巡っていたアドレナリンが、まるで干潮の時の波のように、すうっと引いていく。すると、今まで麻痺していた全身の傷という傷が、打撲という打撲が、一斉に、ズキズキと、焼け付くような痛みを主張し始めた。もはや、指一本動かすことさえ億劫だった。

やがて、誰からともなく、ぷつり、と心の中で張り詰めていた最後の糸が切れた。安堵という名の、抗いがたい、甘美な脱力感が、津波のように全身を襲った。

最初に崩れ落ちたのは、小林だった。彼は、その場にへたり込み、ただ口をぱくぱくと、声にならない声を漏らしていた。次に、玲奈が、壁に寄りかかったまま、その身体を支える最後の力を失い、ずるずると音もなく地面に座り込む。譲もまた、膝からがくりと力が抜け、冷たい石畳の上に、どさりと尻もちをついた。最後に、あの剛でさえも、天に向かって大きく、そして深く息を吐きながら、その場に巨岩が転がるように、どさりと腰を下ろした。

四つの、深く、荒い呼吸の音だけが、彼らが生きて、ここに存在している唯一の証として、朝のどこまでも澄んだ空気の中に、静かに響いていた。

東の空が、ゆっくりと、しかし確実にその表情を変え始めていた。地平線に近い空は、まるで溶かした鉄のように燃えるようなオレンジ色に染まり、その上には、深い瑠璃色、そして頭上には、まだ夜の名残である深い藍色が広がっている。昨夜まで空の全てを覆っていた、絶望の色をした鉛色の雲は、いつの間にか跡形もなく消え去り、その向こうから、神々しいまでの朝日が、最初の光の矢となって、地上に差し込んできた。

その黄金色の一条の光は、まず、遺跡の中で最も高くそびえ立つ石柱の先端を、まばゆいばかりの金色に染め上げた。次に、動かなくなったガーディアンの骸を照らし、その傷だらけの装甲を、まるで戦士の勲章のように鈍く輝かせた。そして最後に、傷つき、疲れ果て、泥と油にまみれた彼ら四人の姿を、分け隔てなく、等しく、そして優しく照らし出した。その光は、彼らの顔に深く刻まれた疲労と苦痛の跡を残酷なまでに浮き彫りにしたが、同時に、その瞳の奥に、絶望の闇の中で再び宿り始めた、小さな、しかし確かな希望の灯も、確かに照らし出していた。

長い、長い沈黙。それを破ったのは、やはり剛だった。彼は、瓦礫のように座り込む譲の隣に、岩が転がるような鈍い音を立てて、どかりと腰を下ろした。その気配に、譲はびくりと肩を震わせる。

「……お前、やっぱ気持ち悪いな」

その声は、紛れもない悪態そのものだった。しかし、不思議なことに、その声にはいつものような侮蔑も、見下すような嘲笑も、全く含まれていなかった。ただ、自分には到底理解できない現象を目の当たりにした人間の、純粋な、そして少しばかりの戸惑いを孕んだ響きが、そこにはあった。

譲が、返すべき言葉を見つけられずに黙っていると、剛はガーディアンの骸に視線を向けたまま、ぽつりと、まるで独り言のように続けた。

「あんなもん、普通見えねえだろ。ミリ単位の亀裂だか、エネルギーの流れの歪みだか知らねえが……常人の目じゃねえ。化け物だ」

それは、彼が生まれてこの方、他者に向かって口にする、最大限の賛辞だった。どこまでも不器用で、捻くれていて、それでも、嘘偽りのない核心を突いた、彼らしい称賛の言葉だった。

譲は何も答えなかった。答える言葉が見つからなかったのだ。ただ、ずっと強張っていた口元が、ほんの少しだけ、本当に僅かだけ緩み、かすかな、乾いた笑みが漏れた。それは、疲労と安堵と、そしてほんの少しの誇らしさが複雑に入り混じった、彼自身も初めて浮かべる表情だった。

その時だった。ふわりと、酷使したせいで痺れの残る左腕に、柔らかな感触があった。驚いて視線をそちらに向けると、いつの間にか、玲奈が彼の隣に静かに膝をついていた。彼女は、血と泥で見る影もなく汚れた自分のスカーフを、慣れた手つきで静かに解くと、譲が瓦礫で深く擦りむいた腕の傷に、驚くほど手際よく、そして信じられないくらい優しく巻いてくれていた。彼女の、細く、しかし芯の強さを感じさせる指先が傷に触れるたび、ひんゆりとした心地よさと、確かな人間の温もりが、同時にじんと伝わってきた。

「ありがとう、譲」

彼女は、スカーフの結び目を作りながら、静かに、しかしはっきりとそう告げた。その声は、彼女特有の、凛とした響きを保ちながらも、どこか微かに、か細く震えているようにも聞こえた。

「あなたがいなければ、私たちは確実に死んでいたわ。あの時、あの場所を教えてくれなければ……」

譲は、思わず彼女の顔を見上げた。朝の柔らかな光を横から浴びた彼女の横顔は、これまで彼が見てきたどの表情よりも、穏やかで、優しかった。他者を拒絶し、世界そのものを睨みつけていた、あの分厚く冷たい氷の仮面は、もうどこにもなかった。そこにあったのは、朝日を映してキラキラと輝く、分厚い氷が溶けた後の、春の湖面のような、穏やかで、温かな光を宿した瞳だった。その瞳が、真っ直ぐに、吸い込まれそうなほど静かに、譲を見つめていた。

「う、うわあああああああん! よがっだあ……! ぼ、僕……僕、初めて……みんなの役に、立てましたああああ!」

その瞬間、それまでくぐもった嗚咽を漏らすだけだった小林が、ついに感情のダムを決壊させた。彼は、泥だらけの顔を両手で覆い、まるで幼い子供のように、声を上げて泣きじゃくった。しかし、それはもはや、恐怖や無力感からくる惨めな涙ではなかった。初めて仲間を守れたという歓喜、初めて自分の非力な力が誰かの役に立ったという、これまでの人生で流したどの涙よりも誇らしい、熱い、熱い涙だった。その涙が、彼の頬を覆っていた泥を洗い流し、幾筋もの清らかな軌跡を描いて、乾いた地面に落ちていった。

譲は、朝日に照らされた仲間たちの顔を、一人一人、ゆっくりと、記憶に刻みつけるように見つめた。

悪態をつきながらも、その横顔に紛れもない安堵と、そして新しい信頼の色を浮かべている剛。
氷の仮面を脱ぎ捨て、素直な感謝と、見たこともないほど穏やかな微笑みを向けてくれている玲奈。
人生で最も誇らしい涙を流し、過去の弱い自分と決別し、新しい自分へと今まさに生まれ変わろうとしている小林。

自分は、結局、兄の颯太のような英雄にはなれなかった。華麗に、力強く、たった一人で圧倒的な敵を薙ぎ倒していくような、誰もが憧れる物語のヒーローには、これからもきっとなれないだろう。

その事実が、もう、彼の心を少しも傷つけることはなかった。

英雄にはなれなかった。しかし、このチームにとって、自分は確かに「必要な存在」だったのだ。知識だけでもダメだ。力だけでもダメだ。精神力だけでも、自己犠牲の心だけでも、勝てなかった。バラバラで、欠陥だらけで、どうしようもないほど不器用な四つの要素が、互いを信じ、補い合い、ただ一つの目的に向かって結びついた時。その時初めて、1+1+1+1が4ではなく、100にも1000にもなる、誰にも予測不可能な奇跡の化学反応が起きるのだ。

――自分だけの戦い方を見つけろ。

父が遺した言葉の意味が、今、ようやく、腹の底から、魂で理解できた気がした。それは、誰よりも強く、誰よりも目立つ英雄になることではなかった。仲間という、それぞれが異なる特性を持つ個々の力を最大限に生かし、勝利という唯一無二の結果を導き出すために、戦場という複雑怪奇なシステム全体を最適化するための「脳」になること。誰の目にも見えない戦場の流れを読み、無数の敗北の未来の中から、たった一つの勝利への最短ルートを指し示す羅針盤になること。それこそが、自分だけの、誰にも真似のできない戦い方だったのだ。

その時、遠くの空から、ブォン、ブォン、ブォン……という、空気を規則正しく、力強く叩く音が聞こえてきた。最初は風の音かと思ったその重低音は、徐々に、しかし確実に大きくなり、それがヘリコプターのローター音であることを、四人全員が認識した。長く、過酷だった試験の終了を告げる、救助ヘリの音だった。

「……行くか」

剛が、重い身体に活を入れるように、ゆっくりと、しかし確かな足取りで立ち上がる。そして、まだその場で泣きじゃくって立てないでいる小林の腕を無造作に掴むと、まるで荷物でも引き上げるかのように、ぐいっと引き起こした。

「いつまで泣いてやがる、チビ。置いてくぞ」

その言葉は乱暴だったが、その手つきは、驚くほど優しかった。

玲奈も静かに立ち上がり、ふらつく譲の肩に、そっと自分の肩を寄せた。彼女の体温が、疲弊しきった譲の身体に、じんわりと温かく染み渡る。四人は、互いに肩を貸し合い、支え合いながら、ゆっくりと立ち上がった。

彼らの間にはもう、アースと一般枠、天才と落ちこぼれといった、これまで彼らを分厚く、そして透明な壁のように隔てていたものは、どこにも存在しなかった。ただ、同じ死線を潜り抜け、同じ朝日の光を見つめる、四人の仲間がいるだけだった。

譲は、澄み渡った空を見上げた。

嵐が過ぎ去った空は、一点の曇りもなく、吸い込まれそうなほどに、どこまでも深く、青い。

人生は、思い通りにならないこと(苦諦)ばかりだ。自分の無力さに打ちのめされ、他人の才能に嫉妬し、どうしようもない現実に絶望する。このガーディアンとの戦いそのものが、まさにその縮図だった。

でも、だからこそ。

だからこそ、仲間と力を合わせ、その絶望の淵から、死の瀬戸際から、紙一重で掴み取ったこの勝利が、この新しい世界の始まりを告げる朝が、どうしようもなく、涙が出るほど輝いて見えるのかもしれない。

ヘリのローター音が、もう、すぐそこまで近づいてきていた。その音が起こす力強い風が、広場に吹き込んでくる。

譲の顔には、もう苦悩でも、嫉妬でもない、生まれて初めて浮かべるような、全てを受け入れた、晴れやかな笑みが広がっていた。風が、彼の汗で濡れた髪を優しく撫で、その頬を、いつの間にか静かに流れていた涙の跡ごと、そっと乾かしていった。
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