無能と蔑まれた僕だけが知る世界の嘘。敵であるはずの怪物の少女に恋したので、人類を裏切り世界を滅ぼす。

Gaku

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第1部:養成所編

第27話:崩壊するセオリー

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梅雨明けの生暖かい空気が、演習場を囲む広大な森を濃密に満たしていた。無数の蝉の声が、まるで沸騰する湯のように周囲の空間を震わせ、訓練の緊張感を奇妙なほどに弛緩させている。演習という名の、安全が保証された茶番劇。そのぬるま湯にどっぷりと浸かりきっていた者たちの鼓膜を、突如として引き裂いたのは、そんな長閑な午後の空気を根底から覆す、異質な咆哮だった。

それはスピーカーから流れる、人間が調整し、加工を施した、牙を抜かれた電子音などでは断じてなかった。生き物の喉、その最も奥深い場所から絞り出され、大地を揺るがし、空気を震わせ、縄張りを主張し、獲物を威嚇し、そして何よりも、純粋な飢餓と、一切の慈悲を含まぬ殺戮の意志を剥き出しに乗せた、本物の、生の音だった。その一吠えは、物理的な衝撃波となって司令室の強化ガラスを震わせ、同時に、そこにいる全員の魂の芯を見えない手で鷲掴みにして捩じ上げるような、根源的な恐怖を呼び覚ました。

司令室の巨大メインスクリーンに、斥候班からの映像が最後の断末魔のように映し出されていた。激しい手ブレ、乱れ飛ぶノイズ、ヘルメットのバイザー越しに聞こえる隊員の引き攣った呼吸音、そして、緑の木々の向こうに一瞬だけ映り込んだ、黒く蠢く巨大な何か。それが最後の情報だった。映像は唐突にブラックアウトし、耳障りなノイズだけが虚しく響いた後、完全な沈黙が訪れた。

その静寂は、死そのものだった。空調の低い唸りだけが支配する空間で、誰もが息を止め、スクリーンに映し出された「NO SIGNAL」の無慈悲な文字列を、ただ瞬きもせずに見つめていた。数秒。それは永遠にも感じられる、濃密な沈黙だった。

そして次の瞬間、その沈黙は森そのものの絶叫によって破られた。

メインスクリーンが外部カメラの映像に切り替わると同時に、司令室にいた誰もが、その場で凍り付いた。森の木々が、まるで内側から仕掛けられた爆薬によって吹き飛ばされるかのように、轟音と共に爆ぜ、巨大な草刈り機に薙ぎ払われるかの如く、なぎ倒されていく。土煙が舞い上がり、無数の木の葉が蝶のように宙を舞う。その破壊の中心から、ゆっくりと姿を現した「それ」の姿に、誰もが呼吸という生命維持活動の基本さえ忘れていた。

訓練用の擬似怪物という、人間が安全という名の檻の中で作り上げた、制御された脅威ではない。それは、この世の悪意を煮詰めて形にしたような、冒涜的な生命体だった。

全長は十メートルを優に超えている。ぬらぬらと粘液に覆われ、湿った森の木漏れ日を鈍く反射する外皮は、まるで濡れた黒曜石のようだ。その巨躯を支える複数の節足が、一歩踏み出すごとに大地を抉り、低い地響きを立てる。そして、頭部と思しき部分には、昆虫を思わせる無数の複眼が不規則に並び、ただの一つの感情も映さず、冷たく赤黒い光を、まるで深海の生物のように、ゆらりゆらりと点滅させていた。

何よりも違うのは、その匂いだった。モニター越しにですら、鼻腔の奥を針で突き刺すような、強烈な刺激臭が漂ってくるようだった。死と腐敗が混じり合ったアンモニアの悪臭、そして、金属的な血の匂いと、圧倒的なまでの暴虐が放つ、言葉では形容しがたい圧。それらが混じり合った濃密な気配が、最新鋭の空調システムが管理する司令室の清浄な空気を、じわじわと汚染していくかのようだった。

しかも、悪夢は一体では終わらなかった。

最初の個体の左右から、まるで影から滲み出すように、寸分違わぬ姿の二体が音もなく現れた。高度に訓練された狩人の群れのように、あるいは一個の生命体が分裂したかのように、その三体の動きには寸分の狂いもない。彼らは演習という名の茶番劇の舞台に、そのおぞましい鉤爪を突き立てると、完璧に敷かれていたはずの前線部隊の陣形、その最も手薄であるとAIが弾き出していたはずの側面を、まるで最初からそこを狙いすしていたかのように、瞬く間に食い破り始めた。

「な、なんだあの動きは!? 斥候班は一体何をしていたんだ!」
「報告にない連携だ! 教科書と、シミュレーションと全く違うぞ!」

前線は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄へと変貌した。ついさっきまで、演習の雰囲気を盛り上げるために軽快に鳴り響いていた模擬戦の電子音は、本物の絶叫と、装甲が引き裂かれる甲高い金属音、そして肉が引き裂かれる、聞くに堪えない生々しい音にかき消された。火薬の乾いた匂い、焦げた土の匂い、そして風向きが変わるたびに鼻の奥にまとわりついて離れない、濃厚な血の生臭さ。それらが複雑に混じり合い、むせ返るような死の空気が、湿気を含んだ森全体を支配していく。

これまでの戦闘データ。AIが数万回、数億回と繰り返したシミュレーションの結果。そして、歴戦の教官たちが幾多の経験から練り上げた、完璧であるはずのセオリー。それら人間の叡智の結晶は、予測不能な「現実」という名の圧倒的な暴力の前で、あまりにも無力で、紙切れ同然に、音を立てて崩壊していく。

「陽葵、右翼を支えろ! 陣形を立て直すぞ!」

森の上空、突き抜けるような青空を背景に、太陽の光をその純白の機体に浴び、黄金の輝きを放ちながら、颯太の駆るヴァルキリーが宙を舞った。機体の背部から噴射される蒼い光が、空中に幾筋もの軌跡を描く。彼の両腕に装着された高エネルギーライフルが火を噴き、光の雨が一体の怪物の足元に降り注いだ。着弾の度に土が弾け、閃光が走り、怪物の進軍をわずかに、しかし確実に阻害する。しかし、その動きは、本物の脅威を前にして、あまりにも教科書通りで、甘すぎた。

まるで颯太の思考、その次の行動、弾道の予測、その全てを完全に読んでいたかのように、別の個体が彼の死角となる背後から、風の音に紛れて、音もなく襲いかかっていたのだ。巨大な影が、太陽を覆い隠す。

「颯太、上ッ!」

陽葵の悲鳴にも似た、切迫した警告が無線を通じて響き渡る。颯太が自機のセンサーの警告に気づき、回避行動を取るよりもコンマ数秒早く、同じく純白に塗装された陽葵の機体が、まるで自らの身を盾にするかのように、颯太と怪物の間に強引に割り込んだ。

刹那、時間が引き伸ばされたかのような錯覚の中、おぞましい鉤爪が振り下ろされるのが見えた。鋭利な先端が陽光を不気味に反射し、陽葵のヴァルキリーの左腕に深々と突き立てられる。ガギンッ、という耳を覆いたくなるような金属の断末魔。それは、熟れた果実をもぎ取るかのように、あまりにもあっさりと、無残にヴァルキリーの腕を引き裂いた。

火花が滝のように散り、無数の装甲の破片が青空を背景にキラキラと舞う。切断面から漏れ出した冷却液が白い蒸気となって噴出し、内部の配線がショートする青白い光が明滅した。コクピット内にけたたましく鳴り響く激しい警告音と、女性オペレーターの冷静さを失ったダメージ報告。陽葵のヴァルキリーは機体のバランスを完全に崩し、左腕を失った痛々しい姿で、地面に片膝をつくようにして墜落した。

アースの中でも、特に秀でた天才たちですら、この異常なまでの連携の前では、ただ翻弄され、傷ついていくしか術がなかった。彼らが今まで積み上げてきた自信とプライドが、装甲と共にごっそりと削り取られていく。

「くそっ……!」

森から数キロ離れた後方基地。薄暗い司令室で、譲は奥歯をギリリと音を立てて噛み締めた。壁一面に広がるモニター群。その一つに、無慈悲な赤い警告と共に、陽葵の機体の損傷データが点滅表示されている。火花を散らし、黒煙を上げる仲間たちの機体。飛び交う怒号と悲鳴。その全てが、彼の網膜に焼き付いて離れない。

自分の声が、あの時発した警告が、あと数分早く彼らに届いていれば。いや、そもそも、誰か一人でもいい、信じてさえもらえていれば、こんな一方的な蹂躙は避けられたはずだった。

「なぜだ……なぜ、僕の言うことを信じてくれなかったんだ……」

悔しさが、灼熱の鉄塊となって喉の奥にこみ上げてくる。声が震え、握りしめた拳が微かに震える。アースではないからか。輝かしい実績がないからか。一般枠という、生まれ持った、決して覆すことのできない不条理な現実。その出自が、自分の言葉から信憑性を奪った。その事実が、今、仲間たちの命をリアルタイムで危険に晒している。そのどうしようもない無力感が、彼の心をじりじりと、まるで低温の炎で炙るように苛んでいた。

司令室は、もはや司令室としての機能を完全に失っていた。教官たちの怒号が、混乱した空気の中で虚しく飛び交う。しかし、その指示は的を射ず、錯綜し、かえって前線の混乱を助長しているだけだった。彼らの声には、いつものような威厳はなく、焦りと、自分たちの理解を超えた事態に対する狼狽が色濃く滲んでいた。

「A班は何をしている! 状況を報告しろと言っているだろうが!」
「退くな! 陣形を維持しろ! 理論上は持ちこたえられるはずだ!」
「側面が崩れているぞ! B班、援護に向かえ! 聞こえているのか!」

アースの力こそが絶対であり、自分たちが積み上げてきた経験と理論こそが正義であるという、彼らが長年抱き続けてきた揺るぎない信念。それが今、モニターの向こう側で暴れ回る名もなき怪物によって、根底から覆されようとしていた。その結果、生み出されているのは、ただの醜く、無様なパニックだけだった。自分たちの理解を超えた現象を前にした時、プライドだけが高く、凝り固まった思考を持つ人間ほど、脆く崩れ去る。その典型が、今の司令室だった。

その時、数あるモニターの一つに、新たな絶望が映し出された。赤城剛の率いる分隊が、後退するタイミングを逸し、完全に孤立してしまったのだ。三方向から怪物の集中砲火を浴び、まるで袋の鼠だった。剛のヴァルキリーが獣のような咆哮を上げ、必死に応戦するが、多勢に無勢。エネルギー残量を示すゲージが、見る見るうちに赤く染まっていく。司令室の誰もが、彼らの全滅を覚悟し、唇を噛み、あるいは目を背けた、その瞬間。

譲の瞳が、カッと大きく見開かれた。

「パターンだ」

彼の唇から、乾いた、ほとんど囁きに近い声が漏れた。周囲の怒号にかき消されそうなほど小さな声だった。怪物の連携は、一見、混沌としていて、予測不能に見える。だが、違う。その混沌の奥深く、その核となる部分に、必ず法則性が隠されているはずだ。高度な連携であればあるほど、その根幹には、鳥の群れや魚の群れが描く美しい軌跡と同じ、ごくごくシンプルなルールが存在する。そうでなければ、これほど完璧な統率は、三体もの個体で取れるはずがない。

譲は、背もたれを激しく軋ませながら、椅子を蹴るようにして立ち上がった。キャスターが床を引っ掻く甲高い音が、一瞬だけ周囲の喧騒を切り裂いた。

「宮沢、どこへ行く! 持ち場を離れるな!」

背後から飛んでくる教官の制止の声を、彼は完全に無視した。振り向きもせず、彼は管制システムのメインコンソールへと、一直線に、迷いなく向かった。

「そこをどいてください!」

コンソールに座り、ただオロオロとモニターを見つめるだけだったオペレーターを、ほとんど突き飛ばすようにして席を奪う。オペレーターが何かを言う前に、譲の指はすでにキーボードの上を嵐のように舞っていた。彼は全てのモニターの表示を、自らの前のコンソールに集約させた。地形データ、リアルタイムの気象情報、各部隊の損耗率、味方の機体の弾薬とエネルギー残量、そして、スクリーンに無数に表示される敵の移動パターン。それだけではない。仲間たちのヘルメットに搭載されたセンサーから送られてくる、恐怖で乱れる心拍数や発汗量といった、通常は補助情報として扱われるはずの微細な生体データまで、全ての情報を並列に展開させる。

膨大な情報が、デジタルの濁流となって彼の脳内へと凄まじい勢いで流れ込んでいく。だが、不思議なことに、その濁流の中で、彼の思考はかつてないほどに冷静に、そして鋭く冴え渡っていた。恐怖も、焦りも、悔しさも、全てが思考の燃料に変わっていく。

もう、誰かの許可を待っている時間はない。信じてもらえなかった過去を嘆いている暇もない。自分の無力さを呪っている暇など、一秒たりともありはしないのだ。

「誰も……死なせるもんか」

譲は、正規の許可ルートを全て無視し、司令室の管制システムそのものへの強制アクセスを開始した。コンソールに、彼のアクセス権限レベルを超えていることを示す警告ウィンドウが、次々とポップアップ表示される。けたたましい警告音が鳴り響く。だが、彼はそれを全て無視し、システムのさらに奥深く、この戦場の全てを統括する中枢へと、指を止めずに侵入していく。

「僕が、僕のやり方で、この地獄を終わらせる」

彼の戦いが、今、この血の匂いのしない、硝煙の届かない、安全な場所で始まろうとしていた。その瞳には、先ほどまでの絶望の色はなく、ただ静かで、冷徹なほどの闘志の光が宿っていた。
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