無能と蔑まれた僕だけが知る世界の嘘。敵であるはずの怪物の少女に恋したので、人類を裏切り世界を滅ぼす。

Gaku

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第1部:養成所編

第29話:一つの勝利、多くの問い

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夜の帳が下りきった演習林は、本来ならば静寂と生命の気配に満ちているはずだった。だが今、その静寂は無数の絶叫と金属が引き裂かれる断末魔によって無残に蹂躙され、生命の気配は硝煙と血の鉄臭い匂いに塗り替えられていた。木々は燃え上がり、大地はえぐられ、空には曳光弾の軌跡が無数に交錯し、地獄の星座を描き出している。その混沌の戦場の中心で、玲奈はただ静かに、自身の駆る純白の機体のコックピットの中で息を潜めていた。

彼女の周囲だけ、時間の流れが歪んでいるかのようだった。モニターに映し出される友軍機の損耗率を示す赤い警告表示、インカムから絶え間なく流れ込んでくる悲鳴と怒号、機体を揺るがす近距離での爆発の衝撃。その全てが、まるで厚いガラスを一枚隔てた向こう側の出来事のように、ひどく現実感を欠いて彼女の意識を通り過ぎていく。彼女の神経は研ぎ澄まされ、感覚は常人のそれを遥かに超越した領域で、この戦場に渦巻く巨大な「流れ」そのものを捉えようとしていた。敵の意図、味方の恐怖、弾丸の軌道、風の呻き、その全てが情報として彼女の中に流れ込み、再構築されていく。

そんな彼女の集中を、司令室からの切迫した声が破った。譲の声だ。普段の彼からは想像もつかないほど張り詰めた、しかしどこか冷静さを失っていない声。

『玲奈、聞こえるか! リーダー格の位置は特定できている! だが、連中の連携が巧みすぎる。まるで一つの生き物のように動いている。このままでは前線が崩壊する!』

インカムの向こうで、誰かが「もうダメだ!」と叫ぶ声と、それに続くノイズが響く。譲は歯ぎしりする音を隠そうともせず、言葉を続けた。

『お前の力で、奴らの指揮系統を、ほんの一瞬でいい、麻痺させられないか!』

その言葉は、懇願であり、命令であり、そして玲奈という存在の根幹に触れる、禁忌の問いかけでもあった。彼女の力が、通常の兵士が持ちうるそれとは全く異質のものであることを、譲は知っていた。そして、その力を使うことが、彼女の心身にどれほどの負荷をかけるのかも。

玲奈は、譲の言葉に一切の迷いを見せなかった。彼女の周りだけ、時間の流れが歪んだかのような濃密な静寂が生まれる。コックピットを満たしていた喧騒が、すうっと遠ざかっていく。計器類の放つ無機質な青白い光が、彼女の白いノーマルスーツを照らし、その表情から一切の人間的な感情を削ぎ落として見せた。彼女はゆっくりと目を閉じる。そして再び開かれたその瞳が、夜の闇よりも深く、そしてどこまでも冷たい、人間離れした蒼色にきらめいた。その輝きは、まるで深海の底で自ら発光する生物のようでもあり、あるいは遠い銀河の星雲をそのまま封じ込めたかのようでもあった。

『――任せなさい』

凛とした、しかしどこか人間味のない、まるで合成音声のような平坦な声がインカムに響いた、その刹那。

戦場の中心で、圧倒的な巨躯と凶暴性をもって猛威を振るっていたリーダー格の怪物が、まるで目に見えない巨大な手に頭部を鷲掴みにされたかのように、甲高い苦悶の咆哮を上げた。それは物理的な衝撃によるものではない。その咆哮には、痛みよりも遥かに根源的な、理解不能な現象に対する恐怖と混乱が色濃く滲んでいた。空間そのものが軋むような異音と共に、怪物の精神の核、その指揮系統の中枢が、玲奈の放った純粋な意志の力によって直接握り潰されたのだ。

その巨体が、まるで送電を断たれた機械のように激しく痙攣を始める。大地を揺るがすほどの振動が周囲に広がり、関節がきしみ、装甲のような外皮の下で筋肉が異常な収縮を繰り返すのが見て取れた。そして、ほんの数秒間、全ての動きが完全に停止する。その瞳から知性の光が消え、ただ虚ろに宙を掻くだけの肉塊と化した。戦場全体を完璧に支配していた、あの忌まわしい連携の糸が、まるで蜘蛛の巣が風に吹き飛ばされるように、ぷつりと断ち切れたのだ。他の怪物たちは、突然の司令塔の沈黙に戸惑い、一瞬動きを止める。あるものは混乱して仲間を攻撃し始め、あるものはただ呆然とその場で立ち尽くす。完璧な統率下に置かれていた軍団は、一瞬にしてただの獣の群れへと成り下がった。

司令室の譲が、その一瞬の、しかし戦局を覆すには十分すぎるほどの空白を見逃すはずがなかった。彼の目の前のメインスクリーンに、リーダー格の怪物のバイタルサインが急激に乱れ、そして完全に沈黙したことを示すデータが表示される。彼の指が、凄まジい速度でコンソールを叩き、全軍への通信回線を開いた。彼の背後では、つい先ほどまで彼を無能だと罵っていた教官たちが、信じられないものを見るような目でスクリーンに釘付けになっている。

『今だ! 全軍、目標を中央個体に集中! 躊躇うな! 撃てぇぇぇっ!!』

彼の魂そのものが迸るような、喉が張り裂けんばかりの絶叫が、混乱と恐怖に満ちた戦場の、全ての兵士の引き金となった。それはもはや命令ではなく、呪詛であり、祈りだった。この一瞬に全てを懸けろ、という痛切な願いが、ノイズ混じりの音声となって全ての機体のコックピットに叩きつけられた。

そのコンマ数秒の好機を、朝倉颯太が見逃すはずもなかった。彼の駆るヴァルキリーは、僚機である陽葵の機体を庇うように前に出ていた。陽葵の機体は左腕を根元から引きちぎられ、夥しい火花と冷却液を撒き散らしながら、かろうじて立っているのがやっとの状態だった。その無残な姿が、颯太の心に憎悪の炎を燃え上がらせる。

「陽葵の……仇ぃぃぃっ!」

彼の感情に呼応するかのように、ヴァルキリーの右腕に装備された大出力ビームランチャーの砲身が蒼白い光を収束させていく。憎悪と、そして仲間を守りたいという切実な祈りを込めた光の槍が、大気を焦がす轟音と共に放たれる。一直線に伸びるその光条は、夜の闇を切り裂き、ただ一点、沈黙したリーダー格の巨体へと吸い込まれていった。

ほぼ同時に、赤城剛もまた、最後の力を振り絞っていた。彼の機体は度重なる戦闘で満身創痍だった。特に左腕のガントレットは完全に砕け散り、装甲の破片が彼の生身の腕に食い込み、おびただしい量の血が操縦桿を濡らしていた。だが、その顔に浮かぶのは痛みではなく、闘志の炎だけだった。

「これで……終わりだぁぁっ!!」

残された右腕で、機体の背部にマウントされていた巨大なヒートアックスを掴み取る。高熱によって刃が赤熱化し、周囲の空気を陽炎のように揺らめかせた。剛は全身のバネを使い、まるで砲丸を投げるかのように、その灼熱の塊を投げつけた。唸りを上げて回転するヒートアックスが、遠心力によってさらに加速し、死神の鎌となって怪物の胸部装甲目掛けて飛翔する。

そして、名も知らぬ兵士たちもまた、英雄だった。彼らの機体は旧式で、装甲はひび割れ、弾薬も尽きかけていた。コックピットの中で、彼らは恐怖に震え、家族の顔を思い浮かべ、神に祈っていたかもしれない。しかし、譲の絶叫が彼らの心を一つにした。恐怖を振り払い、震える指で引き金を引く。持てる全ての火力を、ミサイルを、ビームを、実体弾を、ただ一点へと叩き込んだ。無数の光の筋が、白煙の尾が、夜空を埋め尽くし、一つの目標へと収束していく光景は、壮絶でありながら、どこか神々しい美しさを湛えていた。

閃光が、夜を昼へと変えた。

一瞬、世界から音が消える。次に訪れたのは、大地そのものが裂けるかのような凄まじい轟音だった。衝撃波が嵐となって吹き荒れ、周囲の木々を根こそぎなぎ倒し、大地を叩いた。遅れて、網膜を焼き尽くすほどの強烈な光が戦場全体を白一色に染め上げた。誰もが目を固く閉じ、機体を衝撃に耐える姿勢で固定することしかできない。

やがて、光が収まり、耳を聾するような爆音が遠雷のように過ぎ去っていった時、兵士たちはおそるおそる目を開いた。そこには、信じがたい光景が広がっていた。先ほどまで戦場を支配していたリーダー格の怪物は、その巨体に無数の穴を穿たれ、内部から漏れ出すエネルギーの光で燐光を発していた。それはまるで、巨大な彫刻のようでもあったが、次の瞬間、その巨体は、まるで長い年月を経て風化した砂の城のように、何の音もなく、さらさらと塵となって崩れ落ちていった。風が吹き、その塵を夜の闇の中へと静かに運び去っていく。後には、巨大なクレーターだけが、その存在の証として残されていた。

「終わった……」

インカムの向こうで、誰かが力なく、しかし確かな安堵を込めて呟いた。その一言が、張り詰めていた緊張の糸を切った。司令塔を失った残りの怪物たちは、もはや統率を失った烏合の衆に過ぎなかった。彼らは本能的な恐怖に駆られ、あるものは一目散に森の奥深くへと逃走し、あるものは自暴自棄に暴れ回り、味方であったはずの機体に襲いかかったが、もはや脅威ではなかった。兵士たちは、疲弊しきった体に鞭打ち、残敵の掃討を開始する。夜が白み始め、東の空がゆっくりと乳白色に染まっていく。地平線の向こうから差し込み始めた朝の光が、戦場の惨状を少しずつ露わにしていく頃、ついに最後の怪物の断末魔が、立ち込める朝靄の中に静かに吸い込まれていった。

静寂が戻った。

いや、完全な静寂ではない。前線のあちこちから、疲労と安堵の入り混じった、獣のような歓声が上がり始めていた。ヘルメットを脱ぎ捨てて天を仰ぐ者、機体の装甲に額をこすりつけて嗚咽を漏らす者、ただ呆然と夜明けの空を見つめる者。誰もが、死の淵から生還したことを実感していた。しかし、それは手放しで喜べるような、輝かしい勝利ではなかった。夜明けの光が照らし出した演習林は、あまりにも多くの血を吸い込みすぎていた。大地は黒く変色し、無数の機体の残骸が、まるで戦没者のための墓標のように突き刺さっている。折れた腕、抉られた胴体、砕け散った頭部。そこから流れ出たオイルが虹色に光り、まだくすぶる煙が朝の冷たい空気の中を漂っている。その光景は、勝利の代償として支払われたものの大きさを、誰の目にも明らかにする、凄惨な傷跡そのものだった。

後方基地の司令室でも、戦闘の終結を示す最後の信号が灯っていた。譲は、全ての力を使い果たしたかのように、コンソール前の椅子に深く、深く沈み込んでいた。彼の背中は小さく、頼りなく見えた。だが、彼の周りでは、彼がたった一人でこの絶望的な戦況を分析し、勝利へと導いた無数のデータと分析結果が、まるで鎮魂歌を奏でるかのように、青白い光を静かに放ち続けている。少し前まで彼を怒鳴りつけ、その分析を机上の空論だと嘲笑していた教官たちも、共に司令室に詰めていた他の一般枠の生徒たちも、今はただ畏敬の念と、何か得体の知れないものを見るような、そんな複雑な視線で、その小柄な背中を遠巻きに見つめるだけだった。誰も、彼に声をかけることができなかった。司令室は、多くの人間がいるにもかかわらず、水を打ったように静まり返っていた。聞こえるのは、冷却ファンの回る低い唸りと、誰かが息を呑む微かな音だけだった。

前線では、颯太が自らの機体を降り、負傷した陽葵をコックピットから助け出していた。仲間たちと互いの無事を喜び合い、肩を叩き合う。その一方で、彼の心の中には、ずっとインカムから聞こえ続けていた声の主のことがあった。親友、宮沢譲。自分が手も足も出なかったこの地獄を、たった一人で、遠い安全な場所から完全に支配し、掌の上で転がしていた。その圧倒的な事実が、颯太の胸に重くのしかかる。仲間たちが生還したことへの純粋な安堵と、今まで感じたことのない、胸を鈍い刃物でゆっくりとかきむしられるような、嫉妬と焦燥、そしてわずかな恐怖が入り混じった複雑な感情。それは、同じパイロットとして、決して越えられない壁を目の前に突きつけられたような、そんな絶望感にも似ていた。

やがて、演習が正式に終了したことを告げるアナウンスが響き渡り、前線から戻ってきた教官たちが、精根尽き果てた様子の譲を取り囲んだ。彼らの顔には、死線を乗り越えた安堵よりも、疲労と、そして譲に対する拭いがたい疑念の色が濃く浮かんでいた。一人の恰幅のいい教官が、代表するように口を開いた。その声には、労いの響きは微塵もなかった。

「宮沢」

低く、押し殺したような声だった。

「なぜ、お前は怪物の侵攻ルートを、あれほど正確に予測できた? 第二波、第三波の出現位置と時刻まで、なぜピンポイントで言い当てられたんだ?」

その問いには、彼の類まれな能力への賞賛よりも、何かを訝しむような、まるでスパイを詰問するかのような鋭い響きがあった。他の教官たちも、腕を組み、厳しい視線で譲を射抜いている。この勝利は、この少年の異常なまでの先見性によってもたらされた。だが、その異常さは、常軌を逸していた。それはもはや分析や予測の範疇を超え、予知と呼ぶべき領域に達していたからだ。

譲は、椅子に沈み込んだまま、力なく顔を上げた。その瞳は、三日三晩眠っていないかのように赤く充血し、目の下には深い隈が刻まれていた。しかし、その奥にある光は、恐ろしいほどに冷静で、冷え切っていた。彼は、教官たちの猜疑に満ちた視線を一人一人順番に見つめ返すと、乾いた唇をゆっくりと開いた。

「数週間前に提出した、怪物の行動パターンに関するレポートに、全て書いたはずですが」

その声は、疲労でかすれてはいたが、揺るぎない事実を告げる響きを持っていた。

その言葉に、教官たちの間に、重く、気まずい沈黙が流れた。誰かが小さく咳払いをする音が、やけに大きく響く。彼らの視線が、まるで罪をなすりつけ合うかのように、互いの顔を行き交う。誰もが、あの分厚いレポートに一度も真剣に目を通していなかった。いや、それどころか、生意気な生徒の戯言だと一笑に付し、デスクの隅に追いやったか、ひどい者にあっては、シュレッダーにかけるまでもなく、そのままゴミ箱に捨てた者さえいるのだ。そのレポートには、今回の侵攻パターンだけでなく、組織の現行の防衛体制における致命的な欠陥までが、詳細なデータと共に指摘されていたはずだった。

この組織は、一体何を隠しているのか。

なぜ、これほどまでに重要で、多くの命を救うはずだった警告が、意図的と言ってもいいほど無下にされ、握りつぶされたのか。

鮮やかな、しかしあまりにも多くの犠牲の上に成り立った勝利の裏側で、譲の心に、そして彼の正しさを目の当たりにした玲奈たちの心に、この自分たちが所属する組織そのものへの、黒く、そして根深い不信感が、静かに、しかし確実に芽生え始めていた。それは、朝靄の中に静かに植え付けられた毒の種のように、これから彼らの運命を大きく蝕んでいくことになるであろう、不吉な予兆だった。
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