クリスマスイブの今夜は

和久ツカサ

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クリスマスイブの今夜は

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 今日は12月24日。
 今僕は先ほどの話にあったクリスマスイブに公開すると告知をした小説を書いている。
 今日は朝から雨がパラパラと降っているので湿度が高く、ここ最近ではいつもより室温も暖かく感じる。
 久しぶりに作業机にノートパソコンを置いて執筆を行うと五分くらいでもう丸一日働いたような達成感に包まれてしまう。
 
 これが私小説と言えるのか、はたまたエッセイと呼ばれる物になるのか。僕には分からない。読者によっては全て作り事のフィクション小説を読んでいる感覚を抱いている方もいるだろう。
 世に残る私小説と呼ばれる小説は著者が経験した真実を基にしたものである。しかしその中に話を膨らませる過程で生まれた嘘もあるだろう。
 それを念頭に置いた上での心持ちででここに並べられた稚拙な文章を読んで頂けたら幸いである。
 
 この小説より先に公開した、この小説と同タイトルの曲の方は全くといっていいほど再生されておらず、一周回って僕を清々しい気持ちにさせてくれた。
「この超が付くような情報社会だ。ある日突然バズることだってありうる」
 僕はもう一度、蝉のしょんべんみたいな考えを頭の中で反芻させる。

 時間はとめどなく流れている。そして止まってもいる。
 僕が33歳になったということは同い年の奈央も今年で33歳になっているはずだ。

 僕は結局、奈央からのメッセージに何も返していない。

 僕は彼女からメッセージが届いたメッセージを見た時に33歳でガールズバーのキャストとして働いている彼女を少し痛い奴だと思ってしまった。
 ほとんど働きもせずに屁ぇこいては寝ているだけに自分のことを、とてつもなく高い棚の上に上げて。
 今の僕のいる世界には僕と日雇いバイト先の年齢不詳ジャガー横田系女子と3年振りにラインを送ってきた奈央しかいない。
 年齢不詳ジャガー横田系女子は僕より仕事ができる。それでいて優しい。とてもじゃないが頭が上がらない。
 自信が無いのにプライドの高い僕は、自分より下に見れる存在が欲しかったのかもしれない。
 もう会うことは無い彼女のことをどうにかして下に見て、自分を肯定したかったのだ。

 それに気付いた瞬間に僕は果てしない闇の中に落ちていくような感覚に陥った。

 彼女は年齢と少しギャップがある仕事を続けているが、きっと僕より遥かに優秀であり必要とされる歯車として社会の中で機能している。
 彼女に会ってそれをわざわざ目の当たりにして、自分の劣等感を膨張させる必要は無い。
 それに今の僕には過去の姿を知る人と会うということがとてつもなく怖いのだ。自分という容れ物だけでは感じ取れない時間の経過や自身の体感としての老いは、他人の容姿や状況の変化で激しく実感してしまうことがある。
 奈央とはもう3年近く会っていない。そんな彼女と会ってしまったら、彼女の体のパーツや服装から老いを感じてしまえば僕はその切なさでもう立ち直れなくなってしまうだろうから。
 
 彼女は、奈央はいい女性だった。
 笑うと覗く八重歯がとても可愛かった。
 それだけでいい。今はその記憶だけ大切にすればいいのだ。
 店に行かなくなって三年以上は経つ。どうして今になって営業メッセージを送ってきたのだろう。
 ふと気になって財布の中身を覗いてみる。
 滞納していた家賃を今朝払った財布の中にはそんな店で遊ぶ余力などもちろん無い。

 昔入れ込んだ水商売の女性を褒める小説ってこの世の中にあるのだろうか。題材としてはあるかもしれないがここまでの駄文はきっとないだろう。
 先ほど私小説と述べたが、とてつもなく恥ずかしい話なのでこれはやっぱりフィクションの小説だということにしよう。
 そう。これはフィクションなのだ。僕の事実を基にしたものではない。うん。そういうことにしよう。
 
 僕はキッチンに足を運び、インスタントコーヒーを淹れた。
 それを啜るように飲みながら僕は小説を公開時刻を予約する。
 今から夜勤のバイト。今日はジャガー横田系女子は休みだったはずだ。
 彼氏でもいて、一緒に過ごすのかな。
 死ねばいいのに。

 窓を覗くとパラついていた雨は完全に上がていたった。
 クリスマスイブの今夜は心とは裏腹にとても暖かな夜だった。
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