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第1章 王家と公爵家
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しおりを挟む「マリア!なんで、どうしてここに!」
いつもサラサラでキラキラと光る髪が少し
汗と運動で乱れている姿のレオンがテラス下から
声をかけてきた
「レオン様が剣術の練習をなさってると
お聞きしたので見たくて‥ダメでしたか‥?」
眉をハの字にするマリアをみたレオンは
慌てて「ダメじゃないよ!」と否定した
「でも面白くはなかっただろ‥?」
するとマリアはパッと明るい声で
「すごくかっこよかったですよ、レオン様」
と満面の笑みでそう言い放った
レオンの顔が一瞬で真っ赤に染まった
「あ、照れてる殿下」
「ランス卿うるさいっ!」
照れた顔を上げれずに下を向いたレオンはマリアに
「ごめん!ちょっと着替えてくるから
そこで待ってて‥」
「あ、はい‥」
そうマリアが返事をすると
「カイル、服を。湯を浴びる」
そう言って足早にテラス下に消えた
「マリア様、少々お待ちくださいね。
レオン様のお着替えを手伝いに行って参りますので」
カイルもまたそう言って行ってしまった
"メアリー、私なにか変な事言ってしまった?"
"いいえ、素直なお言葉だったら何も変ではありません"
"なら良いのですけど‥"
こういうところはまだ11歳の年相応のマリアだった
ーーーーーーーーーー
「あの御令嬢が噂のベルナール公爵の愛娘かぁ」
練習場の更衣室でシャワーを浴びるレオン
「何が言いたい‥ランス」
レオンは2人の会話を聞きながら
キュッとシャワーの栓を回した
「カイル、だってあの子レオンの初恋相手でしょ?」
「余計な事言うんじゃないぞ
そういう所は油断も隙もない」
「言わねぇよ、レオンの味方だぞ?」
カイルの持っていたタオルを取り
頭をゴシゴシと拭くレオン
「‥‥」
「なんでさっきからだんまりなの?こいつ」
レオンに指を指すランス
その指をカイルに叩かれるランス
「レオン様に指を指さない」
いつの間にか体も拭き
着替えが用意されてる方に向かっていたレオン
「レオン様
昼食はあのテラスで召し上がられますか?」
「‥‥」
何も反応しないレオン
「レオン様‥?」
「やっぱ変じゃね?」
するとランスが あっ!と声を上げた
「さっきの言葉がぐるぐるしてたりして」
そう言い切る前にガンっと音がした
ロッカーに頭を押しつけているレオンがいた
「カイル‥どうしよ‥」
聞いた事のない声がした
「レオン様‥?」
にやにやとするランス
「マリアの顔が見れない、絶対」
再びランスの笑い声が更衣室の外にまで響いた
ーーーーーーーーー
「メアリー、レオン様まだかしら‥」
「女性の着替えとは違いますから
男性は男性なりの用意があるんですよ」
「そうね、、」
先程までレオン様がいた練習場の方に
目を向けた
(また機会があればあのレオン様をもう一度
見れるといいなぁ‥)
「マリア、待たせてしまったね」
後ろからレオンの声がした
振り返るとさっきまでレオンといた
ランスの姿もあった
一瞬、違う人かと見間違うほど
きちんとした騎士団の服を着ていた
「こちらはエドワード・ランス侯爵」
「王室第一騎士団団長を務める
エドワード・ランスと申します
先程はお見苦しい姿をお見せして
申し訳ありませんでした」
すごくきちんとした人だった
マリアも席を立ち、一礼をした
「ご丁寧にありがとうございます
私はロイド・ベルナール公爵の長女
マリア・ベルナールと申します
そしてこちらが私のお世話をしてくださっている
メアリー・ラクスです」
そばにいたメアリーを紹介した
「メアリー・ラクスと申します。」
メアリーが深く一礼をする
レオンが片手を軽く上げると
ランスの後ろに控えていたレオンの側近が
少しだけ前に出る
「本当は昨日紹介するつもりではいたんだが
なんせ仕事が多い側近なので遅れて申し訳ない」
「マリア様、ご挨拶が遅くなりました
レオン様のお世話をしております
カイル・ラクスと申します
私の事はカイルとお呼びください」
にこっと笑うカイルに釣られて
マリアも笑う
「あれ、カイル様もランス様も同じ‥」
「あぁ、カイルとランスは双子の兄弟なんだよ」
「そうだったんですね!
少し雰囲気が似てらっしゃるとは思ってま‥」
「マリア様、似てませんよ」
「え?」
カイルがマリアの言葉を遮る
「カイル」
レオンが呆れたようにカイルを制す
「これは失礼致しました」
にこっと笑うカイル
その笑顔にマリアは何も言うなと言われて
いるようで、もう言わないでおこうと思った
テラスに昼食用のテーブルがセッティングされ
目の前には美味しそうな料理が運ばれてきた
「わぁ、美味しそう‥」
「マリア、食べれない物は入ってない?」
「はい、全部好きな物ばかりです」
嬉しそうに笑うマリア
「そう、ならよかった。さぁ食べようか」
「はい、いただきます」
昨日の事など色んな話をして楽しく昼食を終えた
「マリア、今日は一緒に昼食をとってくれて
ありがとう。そろそろ公爵夫妻も帰る準備を
してる頃だと思うから、君も‥」
「はい、今日はありがとうございました
とても楽しかったです、また誘ってください」
そうマリアが微笑みながら言うと
バッとカイルの方を向いたレオン
「‥‥っ!」
でもすぐ向き直り
「‥またすぐ誘うね」
と言った
ーーーーーーーー
部屋まで送ってくれたレオンに
"また、後でね"と言われ、別れたレオンの背中を
横目に部屋に入ったマリア
「メアリー‥今日レオン様どうかしたのかな」
「‥どうか、とは?」
帰り用の服を着させてもらっている
メアリーにそう問いた
「昼食の時、ちょっと‥変?っていうのは
違うんだけど‥なんか目が合っているようで
合わないような感じがして‥」
「そうですか?私から見たら
いつものレオン様だったように思いますよ」
うーん‥とちょっと悩むマリア
メアリーは気づいていたマリアがそう感じた理由を
レオンはマリアを見てはいた
でも見ていたのはマリアの眉間
マリアは多分気づいていないと思っていたけど
やはり少しは気にしていたようで
「やっぱりおかしい‥‥あとでお会いした時に
聞いてみたほうがいいかな?」
「‥‥‥(心の中でふぅと息を吐くメアリー)」
「メアリー?」
メアリーは真っ直ぐマリアの目を見て
「あまり女性をジーっと見つめるものではないので
レオン様は遠慮気味にマリア様を
見ていたんではないですか?
レオン様はすごく紳士ですからね」
メアリーはそう言ってまた
「では今から私が言う事を
ちょっと想像してみてください」
「想像?」
「はい。レオン様のお顔を思い出してくださいね」
うん、と言うマリア
「マリアといつもの様に呼びながら
マリア様のお顔をあの目でジーっと
見つめられてください‥」
マリアの白い肌が見る見る薄く色付いて
いくのがわかる
「どうですか?マリア様、耐えれます?」
ブンブンと横に顔を振る
「レオン様はとてもお綺麗なお顔をして
優しいお言葉をいつもマリア様に
囁いてくれますから‥」
「‥メアリー、もうやめて‥わかったから」
薄く色付いた白い肌にうるうるとした
マリアの大きな薄緑色の瞳が揺れる
「レオン様のお顔が見れなくなっちゃう‥」
そう言って両手で顔を隠したマリア
"なんて純粋で可愛いんだろう"
とメアリーは思った
コンコン
しばらくして部屋のドアをノックする音が聞こえた
メアリーがドアを開けるとレオンとカイルがいた
「マリア、帰る用意は終わった?」
そう言ってゆっくりと近づいてくるレオンに
マリアは座っていたソファから勢い良く立ち上がり
「は、はい!も、もう終わってます!」
と顔を赤くしてレオンに答えた
レオンもカイルも不思議そうな顔をして
カイルが横にいたメアリーをみた
メアリーはちらっとカイルを見たけど
すぐ前を向いて
「マリア様、お父様とお母様がお待ちですよ」
と呟いた
「あ、はい!レオン様行きましょう!」
「あ、うん‥行こうか」
ーーーーーーーーー
前に並んで歩く2人を見ていたら横にいた
カイルが小さな声でメアリーに話しかけてきた
「メアリーさん、マリア様どうかしました?」
「どうもされてませんが」
真っ直ぐ前を見たまま、そう答えた
「先程からレオン様のお顔を見ておりませんが」
「気のせいではありませんか」
顔色一つ変えず、カイルに言った
「昼食時のレオン様の事気づいてますね」
「‥なんの事でしょう」
「マリア様に褒められてレオン様は
大変照れてましたから」
「マリア様は純粋な方ですから」
「えぇ、それはレオン様もですよ
純粋無垢な笑顔でストレートな言葉を言われ
お悩みになられてましたので
少しアドバイスをしただけですよ」
クスッと笑うカイル
「‥そうですか」
「レオン様をフォローしてくださって
ありがとうございます」
「少し同じ気持ちをマリア様に
して頂いただけで、特別な事はしておりません」
「まぁお2人とも会わない期間が少しあるので
次の機会にはいつもの様になるでしょう」
さすが王室の関係者だとメアリーは思った
「マリアさん、またいらして下さいね」
王妃がマリアに声をかけた
「はい、王妃様」
「レオンも待ってますよ」
王妃がレオンと名前を呼んだ時
マリアの顔がピクッと動いた
「あら‥、まぁ‥」
クスクスと笑う王妃
レオンは国王と一緒にマリアの父親の公爵と
話をしていた
するとレオンが視線に気付いて王妃を見た
マリアの顔が真っ赤に染まって
レオンを見ようとしない
小さくマリアに聞こえる声で
「マリアさん、レオンの事好き?」
と聞いてみた
王妃を見るマリアの目が揺れ
恥ずかしそうに小さな声で
「はい‥」
と言った
子供らしいと王妃は微笑んだ
「陛下、王妃様、レオン様
ありがとうございました」
「ロイド、堅いぞ」
「あなた、他の者もいるんですから」
「近くにいるのはカイルだけだろ」
「‥大丈夫ですよ、いつもの事ですから」
はぁと溜息を吐くロイド
「ヴィル、あまりシャーリー(王妃)に
気を遣わせるな、城の者への立場ってものがある」
「わかってる」
ロイドは隣にいる妻と娘に
「2人とも先に車へ乗ってなさい」
と言った
運転手がその言葉を聞いてドアを開けた
「マリア、行きますよ」
「はい、お母様」
2人は目の前にいる3人にお辞儀をして
車に乗った
それをみたロイドはレオンに向かって
「マリアの事、これから頼むね
少し厳しく育てたからか同い年の子達よりは
しっかりしてると思う
でもまだ11歳だ。たくさん我慢してきたから
これからはレオンが色んなものを
マリアに教えてあげて欲しい。」
「はい、公爵」
真っ直ぐな目をしたレオン
「いい目だ。レオンに安心して任せるとしよう」
じゃあと言ってロイドも車に乗り込んだ
車が動き出し、メアリー達が乗った車も
走り出した。去りゆく車を眺めながら
「レオン、これからはいつも以上に
もっとしっかりしろ。
ロイドの手から離れるマリアを守れるのは
1番近くにいるお前だけだからな」
「はい、わかってます」
「わかっているなら何も言わん
だがロイドは手強いぞ。
ロイドの息子でお前の友であるアレンもな」
フッとレオンに向かって笑った
「それは僕が1番知っています」
アレン・ベルナール
ベルナール公爵家嫡男、マリアの兄
同じ寄宿学校で6年間を一緒に過ごした
親友であり、将来的には今の国王と公爵と
同じ関係になる。
レオンにとって良い理解者でありライバル
でも性格がランスに似ているのが
ちょっと嫌だと思っているレオンだった
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