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第一章
もう後はないと思ってください(7/7)
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「よかった! 皆さんに会いたかったんですよ!」
話しかけてきたのは利発そうな少年だった。日焼けした肌にフォルと同じような軽装。背中には少年の体格に比して少々大振りな鞘に納まった両手剣。少し背伸びをしたいお年頃、といったところか。少年に振り向いたフォルは腸詰の刺さったフォークを掲げて声に応じた。
「おー、〈ポラリス〉のアレンじゃねぇか。無事戻ってきたみたいだな」
「名前、憶えててくれたんですか!?」
「当たり前だろ。それで後ろにいるのは……」
少年には三人の連れがいた。
「そっちの大男がオロルド、美人のねーちゃんがセリナ、ちっこいのがエリィ」
「どうも、どうも」
「あらぁ、一度会っただけなのに名前を憶えていてくれたんですね」
「……………」
三者三様の反応を示した彼女らはいずれもアレンという少年と同じ〈ポラリス〉という二ツ星冒険者パーティーに所属する冒険者である。
「こいつ、人の名前とか誕生日憶えるのだけは滅茶苦茶得意なのよねー」
呆れ半分、感心半分といったふうのミア。フォルのその記憶力はもはや特技と言っていいレベルにある。
「その様子だと無事依頼は達成できたみたいだな。じゃあまずは乾杯だ! おやっさーん! エール四つ追加で! 料金は俺持ちでー」
「いいんですか!?」
「依頼成功祝いだ。大人しく先輩からは奢られろ」
やったとガッツポーズしたアレンはいそいそと手近な椅子を引っ張ってきてフォルの側に腰掛けた。フォルを見るその眼差しはきらきらと輝いており、隠し切れない憧憬が見てとれる。背中の両手剣もフォルの星剣に影響されたものなのだろう。
「お取込み中だったようなのに、うちのアレンがすいません……」
大男、オロルドが申訳なさそうに頭を下げた。肩から下げた大きな麻袋がガシャガシャと大きな音を立てる。中に入っているのは彼の体格に合わせた大きさの金属甲冑だ。
「ま、焦っても仕方ないしね」
「うむ」
ミアの言葉に頷いたシャラが椅子から身を乗り出し、近くのテーブルを自分たちのテーブルに寄せた。
「ありがとうございます」
「……どうも」
アレン以外の三人も椅子を持ってきてテーブルを囲む。気づけば七人で酒を呑む形に。
〈フォーマルハウト〉の周りはいつも騒がしい。それは彼ら自身が騒がしいというのもあるが、それ以上にリーダーたるフォルが人を呼び寄せるからだ。
「今日は皆さんにお礼が言いたくて。会えてよかったです」
そう切り出したの美人のねーちゃんことセリナ。スタイルのよい肢体をゆったりとした白いローブで覆った神官の女性だ。まだほとんど汚れていない白いローブはまだ彼女が冒険者として新米であることを示している。
「お礼?」
フォルが首を傾げるとアレンがこくこくと頷く。
「そうです! 昨日まで俺たち、荷馬車の護衛で初めての遠征依頼に言ってたんですけど、そのルート決めをここで地図を見ながらしてたら、フォルさんたちが話しかけてくれて……」
「ああ、そういえば」
「西側のルートは翼竜の繁殖地が近くて危ないから、腕に自身がないならちょっと遠回りでも東側のルートの方がいいって教えてくれて」
セリナが話を引き継ぐ。
「目的地の街についてから、西側のルートを通っていた行商人が翼竜の群れに襲われて全滅したって聞いて……。私たちじゃ翼竜の群れになんて出くわしたらひとたまりもありません。皆さんのおかげで命拾いしました。本当にありがとうございます。ほら、エリィも」
セリナが横のちっこいの、もといエリィを促す。黒色のマントを羽織ったミアよりも小柄な少女はもごもごと居心地悪そうに口を動かしてから、
「……ありがとうございました」
と、小さな声で感謝した。どうにも人見知りらしい。アレンとオロルドもそれに続く。
「そんな気にしなくていいのに、ねぇ?」
「ああ。慣れた冒険者なら誰でも知ってることだ」
ミアとフォルはそう言うが、アレンはそんなそんなと首を振る。
「俺達まだまだ新米ですから! 基本的な知識でも教えていただけるのはありがたいです!!」
アレンの様子にセリナはクスクスと笑った。
「あらあら、いつもこれぐらい素直ならいいのにね」
「アレンは〈フォーマルハウト〉の皆さんに憧れてるからなぁ。無理もない」
オロルドもはっはっはっと豪快に笑う。
誰が見ても明らかだが、アレンは〈フォーマルハウト〉に憧れて冒険者となったのである。公言しているかどうかの違いはあれ、そういった冒険者は多い。イルゼの言った大看板という言葉は嘘偽りではないのだ。フォルたちとしても悪い気はしない。
ルッツが運んできたエールをそれぞれが手に取る。
「それじゃ、〈ポラリス〉の依頼成功を祝って!」
フォルの音頭で一同が杯を交わした。依頼が成功すればそれを祝って酒を呑み、失敗すれば生きて帰ってこれたことを祝って酒を呑む。冒険者とは、そういうものだ。
「ところでフォルさん。なんか、来るときイルゼさんとすれ違ったんですけど……」
「ああ、あれね……」
飲み干したジョッキをフォルはルッツに掲げて見せる。ほどなくして運ばれてきた二杯目を少し傾けてからテーブルに置く。
「実はちょっとやばくてさ……。次の依頼失敗したら四ツ星に降格だってよ」
ゴホンゴホンとアレンが咽せた。
「ちょ!? 一大事じゃないですか!!」
五ツ星冒険者パーティーは現状たった三組しか存在しない。その一組が降格の危機となればアレンでなくともこういう反応するだろう。
各地の依頼斡旋所に冒険者ギルドから割り振られる依頼はそこを拠点にしている冒険者の格を参考に選ばれている。当然、格の高い冒険者が多く利用している店ほどより高難度で割りのいい依頼が多く配分されるわけだが、〈フォーマルハウト〉が降格すればその査定に大きく響きかねない。
ハウラの所属する〈リゲル〉のように各店を転々としているパーティーもいるが、〈フォーマルハウト〉はほぼ〈瑠璃の兜亭〉専属だ。フォルたちの話に聞き耳を立てながら仕事をしている店主のルッツには胃が痛い問題だろう。
「で、それをどうしようかって話をしてたわけ」
小さな身体であるにも関わらずフォルとほぼ同じペースでエールを飲み終えたミアもルッツにおかわりを要求する。真水より酒の方が安いのでメイシスに暮す者は皆呑み慣れている。ジョッキ一杯程度呑んだうちに入らない。
「……やっぱり、メンバーが一人減ったから」
アレンが〈フォーマルハウト〉のメンバーを順に見るが、その数は三人。一般的なパーティーの人数である四人に一人足りない。もっとも、四人いた時分でさえ〈フォーマルハウト〉が全員で酒を呑んでいる場面を見たことのある者はいないだろうが。
「連携を見直したりもしたのだがな。今までと比べてできることが減ってしまったのが現実だ」
とうに空になっているジョッキの底にシャラは視線を落した。
〈フォーマルハウト〉にはエリクの他に神官はいないのだから、彼がいなくなった事で神官ができることができなくなるのは当然。もちろんそれを踏まえて大丈夫だと判断したからこそエリクをクビにしたわけだが、肉体強化然り索敵しかり、自分たちがどれほどエリクの力を常用していたのかに気付いていなかったのはフォルたちの落ち度と言えよう。
「だ、大丈夫ですよ! フォルさんたちなら例えエリクさんがいなくたって五ツ星を維持できますって! それに、エリクさんを抜けさせたのにはちゃんと理由があるんですよね?」
「まぁ……ただの仲違いだけどさ……」
「……自業自得」
そう言ってひっくとしゃっくりをしたのはエリィ。顔が赤らんで目が据わっている。
「あ……そういえばこの子お酒駄目なんだったわ……」
あらあらとセリナが店主に酒精の入っていない飲み物を注文しエリィからジョッキを取り上げようとする。その手からジョッキを守ったエリィは、ぐいっとさらに酒を煽る。
「おいおい大丈夫か?」
オロルドが心配する中、ふらふらと振り子のように身体を揺らしたエリィは、
「人が減ったなら、新しい仲間を増やせばいいじゃない……」
それだけ言ってテーブルに突っ伏した。慌ててセリナが介抱する。エリィはまだかなり若いが、メイシスの住人でここまで酒に弱いのも珍しい。
「それも……そうか……」
「人が減ったなら増やせばいい……なんでそんな当たり前のこと気付かなかったんだろ……」
「言われてみれば当然のことだったな……」
その後、〈ポラリス〉の面々はエリィを宿屋に連れていくために早々に離席した。アレンは少々名残惜しそうだったが、フォルたちに頑張ってください、応援してますと激励の言葉を残して去っていった。
「可愛いものね、後輩っていうのは」
「うむ。彼らのためにも某らが無様な背中を見せるわけにはいかんな」
「おっし!新メンバー募集すっぞ!!」
〈ポラリス〉のおかげで気合いを入れなおすことができた〈フォーマルハウト〉はさっそく新メンバーを募集する旨を店主のルッツに話した。冒険者の新規メンバー募集は依頼斡旋所で掲示板に張り出してもらうのが一般的なのである。
ただ、ルッツも交えて話し合った結果、メンバー募集にはいくつかの制限を設けることになった。
まず神官や星術師などの後衛であること。これは前衛過多であり、遠距離攻撃手段が射程も威力も心もとないミアの短弓だけであることを考えた結果である。
次に三ツ星以上のパーティーに所属経験があり、現在はいずれのパーティーにも所属していないこと。前者は五ツ星クラスの依頼に最低限ついてこれるだけの実力がある必要があるため。後者は五ツ星という名誉に眩んで既存のパーティーを抜けてほしくないという配慮である。
この条件をクリアしている応募者の中から面接を行い新メンバーを決定する。決して緩い応募要項ではないが、そこは天下の五ツ星。募集開始から数日で複数の希望者が現れた。
エリクという優秀な神官を自ら手放した〈フォーマルハウト〉。その進退を決める人材選び。
そして数日後、面接を経て三人での話し合い結果、〈フォーマルハウト〉の新たなメンバーが決定したのである。
話しかけてきたのは利発そうな少年だった。日焼けした肌にフォルと同じような軽装。背中には少年の体格に比して少々大振りな鞘に納まった両手剣。少し背伸びをしたいお年頃、といったところか。少年に振り向いたフォルは腸詰の刺さったフォークを掲げて声に応じた。
「おー、〈ポラリス〉のアレンじゃねぇか。無事戻ってきたみたいだな」
「名前、憶えててくれたんですか!?」
「当たり前だろ。それで後ろにいるのは……」
少年には三人の連れがいた。
「そっちの大男がオロルド、美人のねーちゃんがセリナ、ちっこいのがエリィ」
「どうも、どうも」
「あらぁ、一度会っただけなのに名前を憶えていてくれたんですね」
「……………」
三者三様の反応を示した彼女らはいずれもアレンという少年と同じ〈ポラリス〉という二ツ星冒険者パーティーに所属する冒険者である。
「こいつ、人の名前とか誕生日憶えるのだけは滅茶苦茶得意なのよねー」
呆れ半分、感心半分といったふうのミア。フォルのその記憶力はもはや特技と言っていいレベルにある。
「その様子だと無事依頼は達成できたみたいだな。じゃあまずは乾杯だ! おやっさーん! エール四つ追加で! 料金は俺持ちでー」
「いいんですか!?」
「依頼成功祝いだ。大人しく先輩からは奢られろ」
やったとガッツポーズしたアレンはいそいそと手近な椅子を引っ張ってきてフォルの側に腰掛けた。フォルを見るその眼差しはきらきらと輝いており、隠し切れない憧憬が見てとれる。背中の両手剣もフォルの星剣に影響されたものなのだろう。
「お取込み中だったようなのに、うちのアレンがすいません……」
大男、オロルドが申訳なさそうに頭を下げた。肩から下げた大きな麻袋がガシャガシャと大きな音を立てる。中に入っているのは彼の体格に合わせた大きさの金属甲冑だ。
「ま、焦っても仕方ないしね」
「うむ」
ミアの言葉に頷いたシャラが椅子から身を乗り出し、近くのテーブルを自分たちのテーブルに寄せた。
「ありがとうございます」
「……どうも」
アレン以外の三人も椅子を持ってきてテーブルを囲む。気づけば七人で酒を呑む形に。
〈フォーマルハウト〉の周りはいつも騒がしい。それは彼ら自身が騒がしいというのもあるが、それ以上にリーダーたるフォルが人を呼び寄せるからだ。
「今日は皆さんにお礼が言いたくて。会えてよかったです」
そう切り出したの美人のねーちゃんことセリナ。スタイルのよい肢体をゆったりとした白いローブで覆った神官の女性だ。まだほとんど汚れていない白いローブはまだ彼女が冒険者として新米であることを示している。
「お礼?」
フォルが首を傾げるとアレンがこくこくと頷く。
「そうです! 昨日まで俺たち、荷馬車の護衛で初めての遠征依頼に言ってたんですけど、そのルート決めをここで地図を見ながらしてたら、フォルさんたちが話しかけてくれて……」
「ああ、そういえば」
「西側のルートは翼竜の繁殖地が近くて危ないから、腕に自身がないならちょっと遠回りでも東側のルートの方がいいって教えてくれて」
セリナが話を引き継ぐ。
「目的地の街についてから、西側のルートを通っていた行商人が翼竜の群れに襲われて全滅したって聞いて……。私たちじゃ翼竜の群れになんて出くわしたらひとたまりもありません。皆さんのおかげで命拾いしました。本当にありがとうございます。ほら、エリィも」
セリナが横のちっこいの、もといエリィを促す。黒色のマントを羽織ったミアよりも小柄な少女はもごもごと居心地悪そうに口を動かしてから、
「……ありがとうございました」
と、小さな声で感謝した。どうにも人見知りらしい。アレンとオロルドもそれに続く。
「そんな気にしなくていいのに、ねぇ?」
「ああ。慣れた冒険者なら誰でも知ってることだ」
ミアとフォルはそう言うが、アレンはそんなそんなと首を振る。
「俺達まだまだ新米ですから! 基本的な知識でも教えていただけるのはありがたいです!!」
アレンの様子にセリナはクスクスと笑った。
「あらあら、いつもこれぐらい素直ならいいのにね」
「アレンは〈フォーマルハウト〉の皆さんに憧れてるからなぁ。無理もない」
オロルドもはっはっはっと豪快に笑う。
誰が見ても明らかだが、アレンは〈フォーマルハウト〉に憧れて冒険者となったのである。公言しているかどうかの違いはあれ、そういった冒険者は多い。イルゼの言った大看板という言葉は嘘偽りではないのだ。フォルたちとしても悪い気はしない。
ルッツが運んできたエールをそれぞれが手に取る。
「それじゃ、〈ポラリス〉の依頼成功を祝って!」
フォルの音頭で一同が杯を交わした。依頼が成功すればそれを祝って酒を呑み、失敗すれば生きて帰ってこれたことを祝って酒を呑む。冒険者とは、そういうものだ。
「ところでフォルさん。なんか、来るときイルゼさんとすれ違ったんですけど……」
「ああ、あれね……」
飲み干したジョッキをフォルはルッツに掲げて見せる。ほどなくして運ばれてきた二杯目を少し傾けてからテーブルに置く。
「実はちょっとやばくてさ……。次の依頼失敗したら四ツ星に降格だってよ」
ゴホンゴホンとアレンが咽せた。
「ちょ!? 一大事じゃないですか!!」
五ツ星冒険者パーティーは現状たった三組しか存在しない。その一組が降格の危機となればアレンでなくともこういう反応するだろう。
各地の依頼斡旋所に冒険者ギルドから割り振られる依頼はそこを拠点にしている冒険者の格を参考に選ばれている。当然、格の高い冒険者が多く利用している店ほどより高難度で割りのいい依頼が多く配分されるわけだが、〈フォーマルハウト〉が降格すればその査定に大きく響きかねない。
ハウラの所属する〈リゲル〉のように各店を転々としているパーティーもいるが、〈フォーマルハウト〉はほぼ〈瑠璃の兜亭〉専属だ。フォルたちの話に聞き耳を立てながら仕事をしている店主のルッツには胃が痛い問題だろう。
「で、それをどうしようかって話をしてたわけ」
小さな身体であるにも関わらずフォルとほぼ同じペースでエールを飲み終えたミアもルッツにおかわりを要求する。真水より酒の方が安いのでメイシスに暮す者は皆呑み慣れている。ジョッキ一杯程度呑んだうちに入らない。
「……やっぱり、メンバーが一人減ったから」
アレンが〈フォーマルハウト〉のメンバーを順に見るが、その数は三人。一般的なパーティーの人数である四人に一人足りない。もっとも、四人いた時分でさえ〈フォーマルハウト〉が全員で酒を呑んでいる場面を見たことのある者はいないだろうが。
「連携を見直したりもしたのだがな。今までと比べてできることが減ってしまったのが現実だ」
とうに空になっているジョッキの底にシャラは視線を落した。
〈フォーマルハウト〉にはエリクの他に神官はいないのだから、彼がいなくなった事で神官ができることができなくなるのは当然。もちろんそれを踏まえて大丈夫だと判断したからこそエリクをクビにしたわけだが、肉体強化然り索敵しかり、自分たちがどれほどエリクの力を常用していたのかに気付いていなかったのはフォルたちの落ち度と言えよう。
「だ、大丈夫ですよ! フォルさんたちなら例えエリクさんがいなくたって五ツ星を維持できますって! それに、エリクさんを抜けさせたのにはちゃんと理由があるんですよね?」
「まぁ……ただの仲違いだけどさ……」
「……自業自得」
そう言ってひっくとしゃっくりをしたのはエリィ。顔が赤らんで目が据わっている。
「あ……そういえばこの子お酒駄目なんだったわ……」
あらあらとセリナが店主に酒精の入っていない飲み物を注文しエリィからジョッキを取り上げようとする。その手からジョッキを守ったエリィは、ぐいっとさらに酒を煽る。
「おいおい大丈夫か?」
オロルドが心配する中、ふらふらと振り子のように身体を揺らしたエリィは、
「人が減ったなら、新しい仲間を増やせばいいじゃない……」
それだけ言ってテーブルに突っ伏した。慌ててセリナが介抱する。エリィはまだかなり若いが、メイシスの住人でここまで酒に弱いのも珍しい。
「それも……そうか……」
「人が減ったなら増やせばいい……なんでそんな当たり前のこと気付かなかったんだろ……」
「言われてみれば当然のことだったな……」
その後、〈ポラリス〉の面々はエリィを宿屋に連れていくために早々に離席した。アレンは少々名残惜しそうだったが、フォルたちに頑張ってください、応援してますと激励の言葉を残して去っていった。
「可愛いものね、後輩っていうのは」
「うむ。彼らのためにも某らが無様な背中を見せるわけにはいかんな」
「おっし!新メンバー募集すっぞ!!」
〈ポラリス〉のおかげで気合いを入れなおすことができた〈フォーマルハウト〉はさっそく新メンバーを募集する旨を店主のルッツに話した。冒険者の新規メンバー募集は依頼斡旋所で掲示板に張り出してもらうのが一般的なのである。
ただ、ルッツも交えて話し合った結果、メンバー募集にはいくつかの制限を設けることになった。
まず神官や星術師などの後衛であること。これは前衛過多であり、遠距離攻撃手段が射程も威力も心もとないミアの短弓だけであることを考えた結果である。
次に三ツ星以上のパーティーに所属経験があり、現在はいずれのパーティーにも所属していないこと。前者は五ツ星クラスの依頼に最低限ついてこれるだけの実力がある必要があるため。後者は五ツ星という名誉に眩んで既存のパーティーを抜けてほしくないという配慮である。
この条件をクリアしている応募者の中から面接を行い新メンバーを決定する。決して緩い応募要項ではないが、そこは天下の五ツ星。募集開始から数日で複数の希望者が現れた。
エリクという優秀な神官を自ら手放した〈フォーマルハウト〉。その進退を決める人材選び。
そして数日後、面接を経て三人での話し合い結果、〈フォーマルハウト〉の新たなメンバーが決定したのである。
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