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6.街にてⅱ
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裏路地をてくてくと戻ると、グイッとまた手を引かれ口を押えられて強いデジャブを感じる。
「おい、さっきはよくもやってくれたな」
「んんーっ!?」
またしてもさっきの大男に捕まってしまい、壁に背中を強く打ち付けられる。同じ状況になってしまったが、騎士様はきっと来ない。自分でなんとかしなければ、幸い片手は押さえられてない。目眩しの魔法で一瞬の隙が出来れば……
「神々しい光を解き放て!ライト!」
「ぐわっ!」
手が緩んだその隙に、足元に蹴りを入れて体勢を崩させる。逃げなきゃ……!後ろから怒号と共にドスドスと走ってくる音が聞こえる。捕まったら今度こそ何をされるか分からない。
「オイ!コッチダ!」
「え?」
「ハヤクシロ!」
「はいっ」
酒場の入口から誰かの呼ぶ声がして、咄嗟に逃げ込む。人の多い酒場ならなんとか撒けるかも、なんて甘い考えはすぐに追いかけてきた大男の怒号でかき消される。
「おい!あのチビどこ行った!」
「ひっ……」
「しっ、ゆっくりこっちに来て……」
「召喚士様……!?」
さっきの声は召喚士様のものだったのか。でももっとしゃがれた声だったような気がするのだが……?
「ここから裏口に繋がってる。出よう……」
「はい……!」
「……お前、鈍臭いな」
外に出るといきなり罵倒された。ガクリと肩を落とすが、その通りだ。同じ状況になってしまって、あげく召喚士様に助けていただけなければどうなっていたか……
「ドンクサイヤツメ!カンシャシロ!」
「え?あ、さっきの……!」
「僕の召喚獣……」
「あ、じゃあ……そうか、ありがとうございました召喚獣様」
「ウム!クルシュウナイ!」
ふわりとどこからともなく現れた召喚獣様は、フワフワとした毛に包まれて犬とも狐ともいえない不思議な姿をして浮いていた。召喚士様にしっぽを巻き付けて、召喚士様も召喚獣様を撫でて可愛がっているようだった。
「お二人とも助けていただいて本当にありがとうございました。なにかお礼をしたいのですが」
「……別にいらない」
「イラン!」
「ええ……?でも、」
「……じゃあ、今度思いついたら頼むから」
「!わかりました!そのときは全力でお応えします」
そう言って召喚士様たちとわかれ、さっきの大男に見つからないようにコソコソと移動しながら街を散策した。日も傾いてきた頃、街の隅でひっそりと灯りの付いている風俗屋にやってきた。
「すみませんー、こんばんはー……」
「あらあらいらっしゃい、見ない顔だね」
受付の奥から出てきたのは少しお年を召した女性の方で、派手なメイクに露出の多い服を着ていた。もしかしてこの人も現役で風俗嬢を……!?
「指名はあるかい?」
「い、いえ……あ、でも、できれば人気の方がいいのですが……」
「人気の子だね、じゃあ6番の部屋だね」
番号札のついたリストバンドを渡されて、いつの間にか現れた扉の奥に案内される。そこは魔法で作られた空間のようで、室内とは思えない綺麗な夜景が広がっていた。少し廊下を歩くと、番号札がかかった扉がぽつぽつとあり、6番を探す。
「ここだ……」
6番の部屋をみつけるが、ドアノブがない。試しに押してみると、ドアがないかのようにスルリと壁をくぐりぬけてしまってそのままの勢いで床にぶつかった。
「わっ、大丈夫?」
「すみません……大丈夫です」
「初めてのお客さんかぁ、そんな緊張しないでいいよ。僕はウェダリー」
ウェダリーさんはスケスケの衣装を身にまとい、最低限の部分だけが隠された布に目のやり場に困る。
「あ、ノルンです」
「お客さんは冒険者?」
「はい、一応……性処理職で……」
「わっ!性処理職!?すごーい!僕らの憧れだよ!」
勇者御一行の性処理職に選ばれなかった候補生は、一般冒険者の性処理職となるか、こうして各地の風俗嬢になることがほとんどだ。キラキラとした目を向けられるが、まだその役目をほとんど果たせていない僕には眩しすぎる視線だった。
「まだ、駆け出しなんですけどね」
「そうなんだ、でもいいなぁ。性処理職」
「候補生だったんですか?」
「うん。でも成績悪くてどこにも貰ってもらえなくて」
「でも、ここで人気が出て凄いじゃないですか」
「えへへ、都会じゃ人気でなかっただろうけど……まあ、ここは人数も少ないしお客さんも仕方なく使う、みたいな感じだよ」
ウェダリーさんは少し落ち込んだ顔をして、話題選びを失敗してしまったと後悔する。風俗嬢として働くのも立派に候補生として学んだことを生かせる仕事なのに……
「ま、僕の話はいいんだよ!さ、ノルンさん、服脱いで脱いで~」
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「おい、さっきはよくもやってくれたな」
「んんーっ!?」
またしてもさっきの大男に捕まってしまい、壁に背中を強く打ち付けられる。同じ状況になってしまったが、騎士様はきっと来ない。自分でなんとかしなければ、幸い片手は押さえられてない。目眩しの魔法で一瞬の隙が出来れば……
「神々しい光を解き放て!ライト!」
「ぐわっ!」
手が緩んだその隙に、足元に蹴りを入れて体勢を崩させる。逃げなきゃ……!後ろから怒号と共にドスドスと走ってくる音が聞こえる。捕まったら今度こそ何をされるか分からない。
「オイ!コッチダ!」
「え?」
「ハヤクシロ!」
「はいっ」
酒場の入口から誰かの呼ぶ声がして、咄嗟に逃げ込む。人の多い酒場ならなんとか撒けるかも、なんて甘い考えはすぐに追いかけてきた大男の怒号でかき消される。
「おい!あのチビどこ行った!」
「ひっ……」
「しっ、ゆっくりこっちに来て……」
「召喚士様……!?」
さっきの声は召喚士様のものだったのか。でももっとしゃがれた声だったような気がするのだが……?
「ここから裏口に繋がってる。出よう……」
「はい……!」
「……お前、鈍臭いな」
外に出るといきなり罵倒された。ガクリと肩を落とすが、その通りだ。同じ状況になってしまって、あげく召喚士様に助けていただけなければどうなっていたか……
「ドンクサイヤツメ!カンシャシロ!」
「え?あ、さっきの……!」
「僕の召喚獣……」
「あ、じゃあ……そうか、ありがとうございました召喚獣様」
「ウム!クルシュウナイ!」
ふわりとどこからともなく現れた召喚獣様は、フワフワとした毛に包まれて犬とも狐ともいえない不思議な姿をして浮いていた。召喚士様にしっぽを巻き付けて、召喚士様も召喚獣様を撫でて可愛がっているようだった。
「お二人とも助けていただいて本当にありがとうございました。なにかお礼をしたいのですが」
「……別にいらない」
「イラン!」
「ええ……?でも、」
「……じゃあ、今度思いついたら頼むから」
「!わかりました!そのときは全力でお応えします」
そう言って召喚士様たちとわかれ、さっきの大男に見つからないようにコソコソと移動しながら街を散策した。日も傾いてきた頃、街の隅でひっそりと灯りの付いている風俗屋にやってきた。
「すみませんー、こんばんはー……」
「あらあらいらっしゃい、見ない顔だね」
受付の奥から出てきたのは少しお年を召した女性の方で、派手なメイクに露出の多い服を着ていた。もしかしてこの人も現役で風俗嬢を……!?
「指名はあるかい?」
「い、いえ……あ、でも、できれば人気の方がいいのですが……」
「人気の子だね、じゃあ6番の部屋だね」
番号札のついたリストバンドを渡されて、いつの間にか現れた扉の奥に案内される。そこは魔法で作られた空間のようで、室内とは思えない綺麗な夜景が広がっていた。少し廊下を歩くと、番号札がかかった扉がぽつぽつとあり、6番を探す。
「ここだ……」
6番の部屋をみつけるが、ドアノブがない。試しに押してみると、ドアがないかのようにスルリと壁をくぐりぬけてしまってそのままの勢いで床にぶつかった。
「わっ、大丈夫?」
「すみません……大丈夫です」
「初めてのお客さんかぁ、そんな緊張しないでいいよ。僕はウェダリー」
ウェダリーさんはスケスケの衣装を身にまとい、最低限の部分だけが隠された布に目のやり場に困る。
「あ、ノルンです」
「お客さんは冒険者?」
「はい、一応……性処理職で……」
「わっ!性処理職!?すごーい!僕らの憧れだよ!」
勇者御一行の性処理職に選ばれなかった候補生は、一般冒険者の性処理職となるか、こうして各地の風俗嬢になることがほとんどだ。キラキラとした目を向けられるが、まだその役目をほとんど果たせていない僕には眩しすぎる視線だった。
「まだ、駆け出しなんですけどね」
「そうなんだ、でもいいなぁ。性処理職」
「候補生だったんですか?」
「うん。でも成績悪くてどこにも貰ってもらえなくて」
「でも、ここで人気が出て凄いじゃないですか」
「えへへ、都会じゃ人気でなかっただろうけど……まあ、ここは人数も少ないしお客さんも仕方なく使う、みたいな感じだよ」
ウェダリーさんは少し落ち込んだ顔をして、話題選びを失敗してしまったと後悔する。風俗嬢として働くのも立派に候補生として学んだことを生かせる仕事なのに……
「ま、僕の話はいいんだよ!さ、ノルンさん、服脱いで脱いで~」
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