6 / 6
6.街にてⅱ
しおりを挟む
裏路地をてくてくと戻ると、グイッとまた手を引かれ口を押えられて強いデジャブを感じる。
「おい、さっきはよくもやってくれたな」
「んんーっ!?」
またしてもさっきの大男に捕まってしまい、壁に背中を強く打ち付けられる。同じ状況になってしまったが、騎士様はきっと来ない。自分でなんとかしなければ、幸い片手は押さえられてない。目眩しの魔法で一瞬の隙が出来れば……
「神々しい光を解き放て!ライト!」
「ぐわっ!」
手が緩んだその隙に、足元に蹴りを入れて体勢を崩させる。逃げなきゃ……!後ろから怒号と共にドスドスと走ってくる音が聞こえる。捕まったら今度こそ何をされるか分からない。
「オイ!コッチダ!」
「え?」
「ハヤクシロ!」
「はいっ」
酒場の入口から誰かの呼ぶ声がして、咄嗟に逃げ込む。人の多い酒場ならなんとか撒けるかも、なんて甘い考えはすぐに追いかけてきた大男の怒号でかき消される。
「おい!あのチビどこ行った!」
「ひっ……」
「しっ、ゆっくりこっちに来て……」
「召喚士様……!?」
さっきの声は召喚士様のものだったのか。でももっとしゃがれた声だったような気がするのだが……?
「ここから裏口に繋がってる。出よう……」
「はい……!」
「……お前、鈍臭いな」
外に出るといきなり罵倒された。ガクリと肩を落とすが、その通りだ。同じ状況になってしまって、あげく召喚士様に助けていただけなければどうなっていたか……
「ドンクサイヤツメ!カンシャシロ!」
「え?あ、さっきの……!」
「僕の召喚獣……」
「あ、じゃあ……そうか、ありがとうございました召喚獣様」
「ウム!クルシュウナイ!」
ふわりとどこからともなく現れた召喚獣様は、フワフワとした毛に包まれて犬とも狐ともいえない不思議な姿をして浮いていた。召喚士様にしっぽを巻き付けて、召喚士様も召喚獣様を撫でて可愛がっているようだった。
「お二人とも助けていただいて本当にありがとうございました。なにかお礼をしたいのですが」
「……別にいらない」
「イラン!」
「ええ……?でも、」
「……じゃあ、今度思いついたら頼むから」
「!わかりました!そのときは全力でお応えします」
そう言って召喚士様たちとわかれ、さっきの大男に見つからないようにコソコソと移動しながら街を散策した。日も傾いてきた頃、街の隅でひっそりと灯りの付いている風俗屋にやってきた。
「すみませんー、こんばんはー……」
「あらあらいらっしゃい、見ない顔だね」
受付の奥から出てきたのは少しお年を召した女性の方で、派手なメイクに露出の多い服を着ていた。もしかしてこの人も現役で風俗嬢を……!?
「指名はあるかい?」
「い、いえ……あ、でも、できれば人気の方がいいのですが……」
「人気の子だね、じゃあ6番の部屋だね」
番号札のついたリストバンドを渡されて、いつの間にか現れた扉の奥に案内される。そこは魔法で作られた空間のようで、室内とは思えない綺麗な夜景が広がっていた。少し廊下を歩くと、番号札がかかった扉がぽつぽつとあり、6番を探す。
「ここだ……」
6番の部屋をみつけるが、ドアノブがない。試しに押してみると、ドアがないかのようにスルリと壁をくぐりぬけてしまってそのままの勢いで床にぶつかった。
「わっ、大丈夫?」
「すみません……大丈夫です」
「初めてのお客さんかぁ、そんな緊張しないでいいよ。僕はウェダリー」
ウェダリーさんはスケスケの衣装を身にまとい、最低限の部分だけが隠された布に目のやり場に困る。
「あ、ノルンです」
「お客さんは冒険者?」
「はい、一応……性処理職で……」
「わっ!性処理職!?すごーい!僕らの憧れだよ!」
勇者御一行の性処理職に選ばれなかった候補生は、一般冒険者の性処理職となるか、こうして各地の風俗嬢になることがほとんどだ。キラキラとした目を向けられるが、まだその役目をほとんど果たせていない僕には眩しすぎる視線だった。
「まだ、駆け出しなんですけどね」
「そうなんだ、でもいいなぁ。性処理職」
「候補生だったんですか?」
「うん。でも成績悪くてどこにも貰ってもらえなくて」
「でも、ここで人気が出て凄いじゃないですか」
「えへへ、都会じゃ人気でなかっただろうけど……まあ、ここは人数も少ないしお客さんも仕方なく使う、みたいな感じだよ」
ウェダリーさんは少し落ち込んだ顔をして、話題選びを失敗してしまったと後悔する。風俗嬢として働くのも立派に候補生として学んだことを生かせる仕事なのに……
「ま、僕の話はいいんだよ!さ、ノルンさん、服脱いで脱いで~」
----------
お気に入り、しおり、感想、リクエストなど励みになります!
ありがとうございます!
「おい、さっきはよくもやってくれたな」
「んんーっ!?」
またしてもさっきの大男に捕まってしまい、壁に背中を強く打ち付けられる。同じ状況になってしまったが、騎士様はきっと来ない。自分でなんとかしなければ、幸い片手は押さえられてない。目眩しの魔法で一瞬の隙が出来れば……
「神々しい光を解き放て!ライト!」
「ぐわっ!」
手が緩んだその隙に、足元に蹴りを入れて体勢を崩させる。逃げなきゃ……!後ろから怒号と共にドスドスと走ってくる音が聞こえる。捕まったら今度こそ何をされるか分からない。
「オイ!コッチダ!」
「え?」
「ハヤクシロ!」
「はいっ」
酒場の入口から誰かの呼ぶ声がして、咄嗟に逃げ込む。人の多い酒場ならなんとか撒けるかも、なんて甘い考えはすぐに追いかけてきた大男の怒号でかき消される。
「おい!あのチビどこ行った!」
「ひっ……」
「しっ、ゆっくりこっちに来て……」
「召喚士様……!?」
さっきの声は召喚士様のものだったのか。でももっとしゃがれた声だったような気がするのだが……?
「ここから裏口に繋がってる。出よう……」
「はい……!」
「……お前、鈍臭いな」
外に出るといきなり罵倒された。ガクリと肩を落とすが、その通りだ。同じ状況になってしまって、あげく召喚士様に助けていただけなければどうなっていたか……
「ドンクサイヤツメ!カンシャシロ!」
「え?あ、さっきの……!」
「僕の召喚獣……」
「あ、じゃあ……そうか、ありがとうございました召喚獣様」
「ウム!クルシュウナイ!」
ふわりとどこからともなく現れた召喚獣様は、フワフワとした毛に包まれて犬とも狐ともいえない不思議な姿をして浮いていた。召喚士様にしっぽを巻き付けて、召喚士様も召喚獣様を撫でて可愛がっているようだった。
「お二人とも助けていただいて本当にありがとうございました。なにかお礼をしたいのですが」
「……別にいらない」
「イラン!」
「ええ……?でも、」
「……じゃあ、今度思いついたら頼むから」
「!わかりました!そのときは全力でお応えします」
そう言って召喚士様たちとわかれ、さっきの大男に見つからないようにコソコソと移動しながら街を散策した。日も傾いてきた頃、街の隅でひっそりと灯りの付いている風俗屋にやってきた。
「すみませんー、こんばんはー……」
「あらあらいらっしゃい、見ない顔だね」
受付の奥から出てきたのは少しお年を召した女性の方で、派手なメイクに露出の多い服を着ていた。もしかしてこの人も現役で風俗嬢を……!?
「指名はあるかい?」
「い、いえ……あ、でも、できれば人気の方がいいのですが……」
「人気の子だね、じゃあ6番の部屋だね」
番号札のついたリストバンドを渡されて、いつの間にか現れた扉の奥に案内される。そこは魔法で作られた空間のようで、室内とは思えない綺麗な夜景が広がっていた。少し廊下を歩くと、番号札がかかった扉がぽつぽつとあり、6番を探す。
「ここだ……」
6番の部屋をみつけるが、ドアノブがない。試しに押してみると、ドアがないかのようにスルリと壁をくぐりぬけてしまってそのままの勢いで床にぶつかった。
「わっ、大丈夫?」
「すみません……大丈夫です」
「初めてのお客さんかぁ、そんな緊張しないでいいよ。僕はウェダリー」
ウェダリーさんはスケスケの衣装を身にまとい、最低限の部分だけが隠された布に目のやり場に困る。
「あ、ノルンです」
「お客さんは冒険者?」
「はい、一応……性処理職で……」
「わっ!性処理職!?すごーい!僕らの憧れだよ!」
勇者御一行の性処理職に選ばれなかった候補生は、一般冒険者の性処理職となるか、こうして各地の風俗嬢になることがほとんどだ。キラキラとした目を向けられるが、まだその役目をほとんど果たせていない僕には眩しすぎる視線だった。
「まだ、駆け出しなんですけどね」
「そうなんだ、でもいいなぁ。性処理職」
「候補生だったんですか?」
「うん。でも成績悪くてどこにも貰ってもらえなくて」
「でも、ここで人気が出て凄いじゃないですか」
「えへへ、都会じゃ人気でなかっただろうけど……まあ、ここは人数も少ないしお客さんも仕方なく使う、みたいな感じだよ」
ウェダリーさんは少し落ち込んだ顔をして、話題選びを失敗してしまったと後悔する。風俗嬢として働くのも立派に候補生として学んだことを生かせる仕事なのに……
「ま、僕の話はいいんだよ!さ、ノルンさん、服脱いで脱いで~」
----------
お気に入り、しおり、感想、リクエストなど励みになります!
ありがとうございます!
15
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
作品好きです!!!