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一章 〜雑魚魔物使い〜
三話 初めての依頼
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意識が戻った。
夢はまだ続いている。
……夢ならばいい加減目覚めてもいいはずだ。
ならば本当に、この世界は俺のいた場所とはまた違う現実、なのかもしれない。
まあともかくと起き上がると、それと同時に枕元にあった書き置きを見つけた。
そこには例の大会関係の書類をプチ男が食べてしまったようなので、コルリスが街に向かったと言う事と。
またそのせいで、彼女が受諾していた薬草集めの依頼を俺が代わりにやらなければならないらしいと言う事が記されていた。
アイツは何を食べているんだ……まあ、良い。
真実がどうであろうと、コルリスが不在となってしまったのには間違い無いのだ。
だとすれば俺もまた、それが不満だろうが何だろうが動かねばならないだろう。
という事で俺は脇で眠っていたトロールの少女と悪食の球体を揺すり起こし、皆でコルリスの用意してくれていた朝食だというゼリー状の物体を口に運んだ。
「う!!マ、マズ……」
味の感想は以上。マズかった。
もっと言うと、歯ごたえのある謎の物体であった。これで本当に以上。
俺は早々に食事を切り上げ、その依頼とやらを遂行するため身支度を整えた。
ご丁寧にも書き置きの裏に地図があったので迷う事は無いはず。コルリスのためにも彼女が帰って来る前までには依頼を済ませておきたい所だ。
そして出かけようとした矢先、足元にプチ男がいる事に気づいた。
「お!ついてきてくれるのか?」
俺がそういうとプチ男は縦方向にぷるぷると震え、定位置である頭の上に這い上がってきた。多分だが、これはYESだと捉えて良いと思う。
それならば皆で行こうかと、少女を呼ぼうとした俺は……そこで、彼女の名前がまだない事を今になってから漸く思い出した。
いやまあ、ある事にはあるのかもしれないが。
とは言え、言葉を持たない魔物であるトロールからそれを聞き出すのは不可能だろう。
という訳で、今命名する事にした。
(人間っぽい名前は呼ぶ時照れ臭くなるからやめといた方が良いな。
トロール、トロ、ロール……ル……)
「よし!君の名前はルーだ!分かったかい、ルー?」
だがしかし、そう呼びかけるも彼女は微動だにしない。まさか名前がお気に召さなかったのか……?
俺が心配になって、顔を覗き込んだ結果……彼女は再び眠りに入ろうとしているだけだと発覚した。この子は朝に弱い、一応覚えておこう。
仕方無く肩を軽く揺するとルーは目を覚ました。
そして、俺が命名したばかりの名で呼ぶと、現実と夢の狭間にいる事が大変わかりやすい顔で朗らかに笑う……どうやら、気に入ってくれたようだ。
とは言え、やっぱり眠そうである。
それを見ていると、まだ寝かせておいてやりたいような気分になってくるが、一人……いや一匹にさせておくのは少し心配だ……それなら。
「よい……しょ!!」
こうして、俺はプチスライムを頭に乗せたままそれに加えて少女をも背負い、薬草のある草原へと歩き出した。
ちなみに……女の子に言うのは失礼かもしれないが。
ルーはそれはそれはもう、物凄く重かった。
薬草集め……死ぬかと思った。
この依頼は叫喚地獄観光と呼称を訂正した方が良い。
薬草……あれは恐らくマンドラゴラだろう。
しかもファンタジーな小説や映画などでよく見かける、叫ぶタイプの奴だ。
最初、引き抜いた時にたまたま手が滑ってマンドラゴラを放り投げたので、奴らの叫びを至近距離で聞かされるのは免れたものの……
そこからルーと俺は、そのせいで耳を塞いだまま動けなくなった。
プチ男がいなければ今頃また気絶していたかもしれない……本当に助かった。コイツのお陰で予定通り五体のマンドラゴラを回収する事が出来た。
ちなみに、それは何故かと言うと……
プチ男には耳が無く、よって奴らがいくら叫んだ所でこのぷるぷるにはその一切が届く事は無いからだ。
だが、耳を持たない事によって本日のMVPを獲得したプチ男君は、腕もまた無い。
なので不恰好な人形のような根を持つ薬草は、全て俺が持つ羽目になった。
と、そんなこんなで今は帰途に就いている。
しかし、腕の中にいるコイツらがいつまた鳴き始めるか分からない。
俺は早く帰りたくて仕方がなかった。
「うわ~ん、クボタさ~ん」
だがそれでも、漸く自宅が見えてきた……かと思うとまさにその時。
コルリスが飛び出して来た。
そして彼女は猛ダッシュのまま俺に抱きつく。
「うぅ、クボタさぁん!
クボタさんごめんなさいぃ!!
耳栓、渡すの忘れてましたぁ!!
ごめんなさい!!……本当にごめんなさい!!」
……ああ、なるほど。
確かにそれがあれば、大分マシだったかもな。
とは言え、過ぎた事を責めるつもりは無い。
そう思った俺はコルリスを宥めたのだが。
いくらそうしても彼女はひたすらに顔をぐじゃぐしゃにして泣き続け、俺の胸とマンドラゴラ共をその涙で濡らした。
……そして、そんな彼女の泣き顔を一人と七匹で見つめながら、俺は二つ学んだ。
コルリスは多分、ドジっ子属性を有している。
また、それが可愛らしい部分であるのは間違いないが警戒は怠るべきではない、と。
皆が寝静まったのを確認した俺は寝床に潜り込んだ。
自分の意思で眠るというのがここに来て初だと思うと、何だか妙な気分になる。
あの後コルリスは、家に着いてからも俺達に説明不足だったと謝り続けた。
余程、罪悪感を感じていたのだろう。
俺とルーで彼女の頭を数十分撫で回し、漸く涙が収まった程だ……
ただし、俺は『これは場合によってはセクハラになってしまうのではないか』という考えが脳裏をよぎり、割とすぐに手を引っ込めたのだが。
落ち着いたコルリスは大会の手続きが完了し、明日初戦が行われると話してくれた。
しかし、それはあまりにも速断すぎると俺は驚いたが……Gランクの大会など人気も無く、また運営もテキトーなのでよくある事らしい。
そこで本日、練習するか、休養するか。
その選択を迫られた俺は、休養を選んだ。
正直不安で一杯だが、依頼を終えた俺達はくたくたであり、今は回復に努めるのが先決だと判断したからだ。
まあ、そう言う訳なのでそろそろ俺も寝るとしよう。
「久保田さん、寝ちゃいましたか?」
すると目をつぶって数秒後、何者かが俺に話し掛けてきた。
こんな辺鄙な場所にある家に、しかも夜中に来て主人に声を掛けるとは一体……律儀な泥棒だろうか。
いや待て。
その前に何故、俺の名前を知っているんだ。
「だっ!誰だ!」
驚いた俺がすぐさま飛び起きると、何と部屋の中空には。
輪郭のぼやけた、そこに浮かんでいる白い球体のような何かがあった……何だコレは、魔物なのか?
「久保田さん初めまして。起こしちゃってごめんなさい。こっちの世界はどうですか?慣れましたか?」
喋る球体……コイツは名前だけで無く。
これまた驚くべき事にも、俺がこの世界に迷い込んだ事までもを知っているようだ。
「……もしかして、お前がここに俺を連れてきた、魔物か神様的な何か……なのか?」
「そうです、僕が連れて来させて貰いました、今のところは神様的なものだと思っておいてください。」
そこで俺が尋ねてみると、その球体はやはりそうだとの返答を寄越した。
と言うか……口調は丁寧だが、所々言葉遣いがおかしいなコイツ。
多分、コイツは若い男だ。
昔勤めていた会社の新入社員が似たような話し方だったのを覚えている。
「あっ、そう。ていうか神様ならさぁ、もうちょっと早く説明しに来てくれても良かったんじゃない?」
「そうしたかったんですけど、久保田さん二日連続で気絶してたんで……」
「確かに」
だとすると、この家を来訪した彼は二度も気を失った俺の間抜け面を土産に帰宅したのだろうか。
そう思うと顔が少し、赤くなってしまった……
「ま、まあ、いいや。で?何か用なの?」
「はい。とりあえず最初の一日、久保田さんの様子を見させてもらいました。
それで大丈夫だと思ったので、貴方にお願いしたい事があるんです。というか、そのためにここに連れて来た訳でもありますし」
俺の顔がまだ赤みを帯びていると言うのにも関わらず、球体は次にまた何とも図々しいような発言をした。
だがそれにしても、俺に頼み事か……まさかとは思うが、異世界への進出と引き換えに魂を寄越せとでも言うつもりなのだろうか。
……と、冗談で言ってみたが。
コイツの見た目も一般的に想像される魂に似ている事だし……その可能性は低くは無いかもしれない。
「単刀直入に言うとですね、僕の魂と……」
……え、本当に!?
魂!?やっぱり魂を取られるのか!?
「はっ!今日はここらへんにしておきます!
僕の事は誰にも言わないで下さい!
それじゃあ、また来ますね久保田さん!」
かと思えば、自称神様はそう言うと電球の散り際のように一瞬で消え去ってしまい。
それと入れ違いで、コルリスが俺の部屋に入って来た。
「クボタさ~ん、どうしたんですか?
さっき『誰だぁ!』とか、聞こえましたけど?」
「い、いや……ね、寝ぼけてただけだよ!」
「……本当ですか?」
「本当本当、本当だって!」
まだ驚きは余韻とすらなっていないのだが……
まあとにかくと、そうやって俺は神との約束を守り、コルリスの尋問を掻い潜った。
そして彼女を自室に戻るよう促し、再び寝床で横になる……
(この世界には慣れましたか、だとさ)
気が付けばつい先程、自称神様に投げられた言葉を反芻している自分がいた。
まだ三日目だが、何とか俺は適応しつつある。
それに右も左も分からぬ世界に飛ばされたお陰で、死にたいと思っていた事など今の今まですっかり忘れていた。
もっと言えば明日には初戦を控えており、今は自殺など考える暇もないと言える。
いや、そんな事は正直どうでも良かった。
俺は、俺は……
俺は、コルリスとルーとプチ男、皆で生活している〝今〟が気に入った。だから自死など考えられないんだ。
それこそが、自称神様への返答となるだろう。
……と、誰にした訳でもない告白の後。
俺は明日を求め、現実と眠りの国境を眠りの方向へと進み始めた。
……!!
そういえばアイツ、前に何処かで見た事あるような気がするな。
まあ、良いか。寝よう。
夢はまだ続いている。
……夢ならばいい加減目覚めてもいいはずだ。
ならば本当に、この世界は俺のいた場所とはまた違う現実、なのかもしれない。
まあともかくと起き上がると、それと同時に枕元にあった書き置きを見つけた。
そこには例の大会関係の書類をプチ男が食べてしまったようなので、コルリスが街に向かったと言う事と。
またそのせいで、彼女が受諾していた薬草集めの依頼を俺が代わりにやらなければならないらしいと言う事が記されていた。
アイツは何を食べているんだ……まあ、良い。
真実がどうであろうと、コルリスが不在となってしまったのには間違い無いのだ。
だとすれば俺もまた、それが不満だろうが何だろうが動かねばならないだろう。
という事で俺は脇で眠っていたトロールの少女と悪食の球体を揺すり起こし、皆でコルリスの用意してくれていた朝食だというゼリー状の物体を口に運んだ。
「う!!マ、マズ……」
味の感想は以上。マズかった。
もっと言うと、歯ごたえのある謎の物体であった。これで本当に以上。
俺は早々に食事を切り上げ、その依頼とやらを遂行するため身支度を整えた。
ご丁寧にも書き置きの裏に地図があったので迷う事は無いはず。コルリスのためにも彼女が帰って来る前までには依頼を済ませておきたい所だ。
そして出かけようとした矢先、足元にプチ男がいる事に気づいた。
「お!ついてきてくれるのか?」
俺がそういうとプチ男は縦方向にぷるぷると震え、定位置である頭の上に這い上がってきた。多分だが、これはYESだと捉えて良いと思う。
それならば皆で行こうかと、少女を呼ぼうとした俺は……そこで、彼女の名前がまだない事を今になってから漸く思い出した。
いやまあ、ある事にはあるのかもしれないが。
とは言え、言葉を持たない魔物であるトロールからそれを聞き出すのは不可能だろう。
という訳で、今命名する事にした。
(人間っぽい名前は呼ぶ時照れ臭くなるからやめといた方が良いな。
トロール、トロ、ロール……ル……)
「よし!君の名前はルーだ!分かったかい、ルー?」
だがしかし、そう呼びかけるも彼女は微動だにしない。まさか名前がお気に召さなかったのか……?
俺が心配になって、顔を覗き込んだ結果……彼女は再び眠りに入ろうとしているだけだと発覚した。この子は朝に弱い、一応覚えておこう。
仕方無く肩を軽く揺するとルーは目を覚ました。
そして、俺が命名したばかりの名で呼ぶと、現実と夢の狭間にいる事が大変わかりやすい顔で朗らかに笑う……どうやら、気に入ってくれたようだ。
とは言え、やっぱり眠そうである。
それを見ていると、まだ寝かせておいてやりたいような気分になってくるが、一人……いや一匹にさせておくのは少し心配だ……それなら。
「よい……しょ!!」
こうして、俺はプチスライムを頭に乗せたままそれに加えて少女をも背負い、薬草のある草原へと歩き出した。
ちなみに……女の子に言うのは失礼かもしれないが。
ルーはそれはそれはもう、物凄く重かった。
薬草集め……死ぬかと思った。
この依頼は叫喚地獄観光と呼称を訂正した方が良い。
薬草……あれは恐らくマンドラゴラだろう。
しかもファンタジーな小説や映画などでよく見かける、叫ぶタイプの奴だ。
最初、引き抜いた時にたまたま手が滑ってマンドラゴラを放り投げたので、奴らの叫びを至近距離で聞かされるのは免れたものの……
そこからルーと俺は、そのせいで耳を塞いだまま動けなくなった。
プチ男がいなければ今頃また気絶していたかもしれない……本当に助かった。コイツのお陰で予定通り五体のマンドラゴラを回収する事が出来た。
ちなみに、それは何故かと言うと……
プチ男には耳が無く、よって奴らがいくら叫んだ所でこのぷるぷるにはその一切が届く事は無いからだ。
だが、耳を持たない事によって本日のMVPを獲得したプチ男君は、腕もまた無い。
なので不恰好な人形のような根を持つ薬草は、全て俺が持つ羽目になった。
と、そんなこんなで今は帰途に就いている。
しかし、腕の中にいるコイツらがいつまた鳴き始めるか分からない。
俺は早く帰りたくて仕方がなかった。
「うわ~ん、クボタさ~ん」
だがそれでも、漸く自宅が見えてきた……かと思うとまさにその時。
コルリスが飛び出して来た。
そして彼女は猛ダッシュのまま俺に抱きつく。
「うぅ、クボタさぁん!
クボタさんごめんなさいぃ!!
耳栓、渡すの忘れてましたぁ!!
ごめんなさい!!……本当にごめんなさい!!」
……ああ、なるほど。
確かにそれがあれば、大分マシだったかもな。
とは言え、過ぎた事を責めるつもりは無い。
そう思った俺はコルリスを宥めたのだが。
いくらそうしても彼女はひたすらに顔をぐじゃぐしゃにして泣き続け、俺の胸とマンドラゴラ共をその涙で濡らした。
……そして、そんな彼女の泣き顔を一人と七匹で見つめながら、俺は二つ学んだ。
コルリスは多分、ドジっ子属性を有している。
また、それが可愛らしい部分であるのは間違いないが警戒は怠るべきではない、と。
皆が寝静まったのを確認した俺は寝床に潜り込んだ。
自分の意思で眠るというのがここに来て初だと思うと、何だか妙な気分になる。
あの後コルリスは、家に着いてからも俺達に説明不足だったと謝り続けた。
余程、罪悪感を感じていたのだろう。
俺とルーで彼女の頭を数十分撫で回し、漸く涙が収まった程だ……
ただし、俺は『これは場合によってはセクハラになってしまうのではないか』という考えが脳裏をよぎり、割とすぐに手を引っ込めたのだが。
落ち着いたコルリスは大会の手続きが完了し、明日初戦が行われると話してくれた。
しかし、それはあまりにも速断すぎると俺は驚いたが……Gランクの大会など人気も無く、また運営もテキトーなのでよくある事らしい。
そこで本日、練習するか、休養するか。
その選択を迫られた俺は、休養を選んだ。
正直不安で一杯だが、依頼を終えた俺達はくたくたであり、今は回復に努めるのが先決だと判断したからだ。
まあ、そう言う訳なのでそろそろ俺も寝るとしよう。
「久保田さん、寝ちゃいましたか?」
すると目をつぶって数秒後、何者かが俺に話し掛けてきた。
こんな辺鄙な場所にある家に、しかも夜中に来て主人に声を掛けるとは一体……律儀な泥棒だろうか。
いや待て。
その前に何故、俺の名前を知っているんだ。
「だっ!誰だ!」
驚いた俺がすぐさま飛び起きると、何と部屋の中空には。
輪郭のぼやけた、そこに浮かんでいる白い球体のような何かがあった……何だコレは、魔物なのか?
「久保田さん初めまして。起こしちゃってごめんなさい。こっちの世界はどうですか?慣れましたか?」
喋る球体……コイツは名前だけで無く。
これまた驚くべき事にも、俺がこの世界に迷い込んだ事までもを知っているようだ。
「……もしかして、お前がここに俺を連れてきた、魔物か神様的な何か……なのか?」
「そうです、僕が連れて来させて貰いました、今のところは神様的なものだと思っておいてください。」
そこで俺が尋ねてみると、その球体はやはりそうだとの返答を寄越した。
と言うか……口調は丁寧だが、所々言葉遣いがおかしいなコイツ。
多分、コイツは若い男だ。
昔勤めていた会社の新入社員が似たような話し方だったのを覚えている。
「あっ、そう。ていうか神様ならさぁ、もうちょっと早く説明しに来てくれても良かったんじゃない?」
「そうしたかったんですけど、久保田さん二日連続で気絶してたんで……」
「確かに」
だとすると、この家を来訪した彼は二度も気を失った俺の間抜け面を土産に帰宅したのだろうか。
そう思うと顔が少し、赤くなってしまった……
「ま、まあ、いいや。で?何か用なの?」
「はい。とりあえず最初の一日、久保田さんの様子を見させてもらいました。
それで大丈夫だと思ったので、貴方にお願いしたい事があるんです。というか、そのためにここに連れて来た訳でもありますし」
俺の顔がまだ赤みを帯びていると言うのにも関わらず、球体は次にまた何とも図々しいような発言をした。
だがそれにしても、俺に頼み事か……まさかとは思うが、異世界への進出と引き換えに魂を寄越せとでも言うつもりなのだろうか。
……と、冗談で言ってみたが。
コイツの見た目も一般的に想像される魂に似ている事だし……その可能性は低くは無いかもしれない。
「単刀直入に言うとですね、僕の魂と……」
……え、本当に!?
魂!?やっぱり魂を取られるのか!?
「はっ!今日はここらへんにしておきます!
僕の事は誰にも言わないで下さい!
それじゃあ、また来ますね久保田さん!」
かと思えば、自称神様はそう言うと電球の散り際のように一瞬で消え去ってしまい。
それと入れ違いで、コルリスが俺の部屋に入って来た。
「クボタさ~ん、どうしたんですか?
さっき『誰だぁ!』とか、聞こえましたけど?」
「い、いや……ね、寝ぼけてただけだよ!」
「……本当ですか?」
「本当本当、本当だって!」
まだ驚きは余韻とすらなっていないのだが……
まあとにかくと、そうやって俺は神との約束を守り、コルリスの尋問を掻い潜った。
そして彼女を自室に戻るよう促し、再び寝床で横になる……
(この世界には慣れましたか、だとさ)
気が付けばつい先程、自称神様に投げられた言葉を反芻している自分がいた。
まだ三日目だが、何とか俺は適応しつつある。
それに右も左も分からぬ世界に飛ばされたお陰で、死にたいと思っていた事など今の今まですっかり忘れていた。
もっと言えば明日には初戦を控えており、今は自殺など考える暇もないと言える。
いや、そんな事は正直どうでも良かった。
俺は、俺は……
俺は、コルリスとルーとプチ男、皆で生活している〝今〟が気に入った。だから自死など考えられないんだ。
それこそが、自称神様への返答となるだろう。
……と、誰にした訳でもない告白の後。
俺は明日を求め、現実と眠りの国境を眠りの方向へと進み始めた。
……!!
そういえばアイツ、前に何処かで見た事あるような気がするな。
まあ、良いか。寝よう。
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