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第三章 休息
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葵は一人プールの中にいた。プールの中を潜水しては、水面に顔を出し……また潜水しては…顔を出しを繰り返していた。
水面から飛び出てくる葵は実に絵になっていた。
水面から顔を出して、濡れた髪をかきあげて……水を切るように首を振る仕草に、愛美と容子はつい見とれてしまった。
愛美が美夢に言った。
「美夢ちゃん……葵っちって、やっぱりいい男だよね…」
うっとりしている愛美に美夢は言った。
「どこが?ただの変人の愛想なしですよ?」
容子が言った。
「そこがミステリアスな感じでいいよねっ……イケメンだし……」
美夢は思わず笑いながら言った。
「フフフ……そんなもんかなぁ?小さい頃から一緒だから……」
女性陣が、ガールズトークに盛り上がっているのとは他所に、葵は潜水作業を終えて一人……プールサイドに座った。
すると後ろから葵にアイスカフェラテを差し出した人物がいた。九条だった。
葵は九条に「どうも」と、言い…アイスカフェラテを受け取った。
九条は葵の隣に座り……謝罪した。
「葵君……さっきは……すまなかった…」
九条は葵に対して申し訳なさそうな表情をしている。それに比べて葵はさほど気にしていないようだ。
葵はそんな九条に言った。
「気にしないで下さい九条さん……僕の言い方にも、問題があったと思います。僕の悪い癖です……いつも美夢に怒られてます」
九条は少し表情を緩めて言った。
「そうか……だったらいい。だが、君は本当に教授に似ている…」
「そうですか?僕には自覚はないですが…」
「君は……お父さんを意識するかい?」
「意識は……特にしていません。父は父で……僕は僕ですから……ただ、感謝はしています…」
「感謝?」
「ええ……九条さんもご存知だと思いますが、父はあの性格です、怨まれること多かったそうです……時には命の危険も……」
「だろうね……教授は、歯に着せぬ発言をテレビであろうが、雑誌であろうが、関係なしで発言していたからね」
「ええ……もちろん家族にも危険が及ぶ事も考えられますから、護身術を徹底的に叩き込まれました」
「なるほど……誘拐などの防犯のためか…」
「はい……おかげで僕は強くなる事が出来ました。まぁ……十年程前から父は、メディアに露出しなくなり、身の危険はなくなりましたが……」
「だから……武術を叩き込んだ教授に感謝か……」
「ええ……そんなところです。九条さんも父親は……有名人どころではないですが」
九条は少し間を取って言った。
「僕は、嫌いだった。いつも兄貴と比べられてね……。辛かったよ……学校でも『政治家の子』ってだけで腫れ物扱い……心底嫌いだったよ父が……」
「それに反発して……実業家ですか?」
「そうだなぁ……確かに最初は反発からだったけど、今は違うかな……いや、本当は最初から父に認めて欲しかったんだ、兄貴のように……」
葵は表情を柔らかくし言った。
「ふふ……お互い家族が有名だと苦労しますね」
「ああ……もっともだ」
葵と九条は和解した。些細な話だったが……少なからずお互いを理解した。
和解した葵と九条の元に、歩と有紀がやって来た。
「どうやら解決したようだな」
有紀がそう言うと、歩が二人の間に強引に入ってきて二人の肩を抱いた。
「んじゃあ……仲直りの乾杯しようぜっ!」
葵が歩に言った。
「また蹴られますよ。しかし今日は少しいただきましょうか…」
葵の反応に満足し他のメンバーにも言った。
「おーい!みんな!乾杯しようぜ!」
「歩……未成年の順平に飲ませたら……ただじゃおかないぞ」と、有紀が歩に忠告した事はいうまでもない。
そんな皆の様子を後ろの広場で見ていた堂島夫婦も穏やかな感じだ。
サキが言った。
「ふふふ……見ているだけで穏やかな気分になりますね」
光一が言った。
「そうだな……彼らを見ていると、日常を忘れられる」
「ええ……いつまでも、この夢みたいな場所にいたいくらい」
「ふっ、そうだな……確かに帰りたくなくなるな」
「だから私たちも、彼らに負けないくらい楽しまないと……」
だが、そんな彼らを嘲笑うように、夢から悪夢に突き落とす。
ある出来事によって……。
………三日目…午前八時………
ドンッドンッドンッ!
部屋に激しいノックが鳴り響く。
ドンッドンッドンッ!
まただ……まだ眠たいのに……。
昨日はあれから宴会になり、珍しく深酒してしまった。
まだ眠たい葵は、寝たふりをしようとしたが……まだノックは止まない。
ドンッドンッドンッ!
余りにもしつこい……。
何かあったな……。
葵はそう判断し、寝ぼけ眼のままドアへと向かう。
ドアを開けると、歩が血相をかえてそこに立っていた。
「葵君……よかった……無事か……」
葵は瞬時に察した。
「歩さん……誰に何があったのです?」
歩は言葉を濁している。
「とにかく行きましょう……ドアの隙間から人が集まっているのは……ここからでもわかります……美夢の事も心配です」
美夢の部屋は十時の方向……葵の隣の部屋だ。
ドアの隙間から見えるのは……五時の方角、おそらく、あの人の部屋……。
葵と歩はその場所へ向かう……。
近づくにつれ集まっている人が、はっきりしてきた……そして臭いも……。
葵はこの臭いをよく知っている……。
一度知ってしまったら、忘れる事は決してない、臭い……。
………死臭………。
有紀はその臭いの元にいて何かをしている。
美夢は?……容子と一緒に抱き合い涙を流している。
サキは二人を守るように、寄り添っている。まるで二人の娘を守るように……。
葵は臭いの、元に着いた。
有紀が言った。
「葵……わかると思うが……」
「ええ……最悪の事態です」
葵の足元にあったのは……。
瞳孔が開き、胸から大量の血を流して倒れている……。
………愛美だった………。
夢のような生活から……悪夢を見る。
この落差に、今は身を任せるしかできなかった……。
水面から飛び出てくる葵は実に絵になっていた。
水面から顔を出して、濡れた髪をかきあげて……水を切るように首を振る仕草に、愛美と容子はつい見とれてしまった。
愛美が美夢に言った。
「美夢ちゃん……葵っちって、やっぱりいい男だよね…」
うっとりしている愛美に美夢は言った。
「どこが?ただの変人の愛想なしですよ?」
容子が言った。
「そこがミステリアスな感じでいいよねっ……イケメンだし……」
美夢は思わず笑いながら言った。
「フフフ……そんなもんかなぁ?小さい頃から一緒だから……」
女性陣が、ガールズトークに盛り上がっているのとは他所に、葵は潜水作業を終えて一人……プールサイドに座った。
すると後ろから葵にアイスカフェラテを差し出した人物がいた。九条だった。
葵は九条に「どうも」と、言い…アイスカフェラテを受け取った。
九条は葵の隣に座り……謝罪した。
「葵君……さっきは……すまなかった…」
九条は葵に対して申し訳なさそうな表情をしている。それに比べて葵はさほど気にしていないようだ。
葵はそんな九条に言った。
「気にしないで下さい九条さん……僕の言い方にも、問題があったと思います。僕の悪い癖です……いつも美夢に怒られてます」
九条は少し表情を緩めて言った。
「そうか……だったらいい。だが、君は本当に教授に似ている…」
「そうですか?僕には自覚はないですが…」
「君は……お父さんを意識するかい?」
「意識は……特にしていません。父は父で……僕は僕ですから……ただ、感謝はしています…」
「感謝?」
「ええ……九条さんもご存知だと思いますが、父はあの性格です、怨まれること多かったそうです……時には命の危険も……」
「だろうね……教授は、歯に着せぬ発言をテレビであろうが、雑誌であろうが、関係なしで発言していたからね」
「ええ……もちろん家族にも危険が及ぶ事も考えられますから、護身術を徹底的に叩き込まれました」
「なるほど……誘拐などの防犯のためか…」
「はい……おかげで僕は強くなる事が出来ました。まぁ……十年程前から父は、メディアに露出しなくなり、身の危険はなくなりましたが……」
「だから……武術を叩き込んだ教授に感謝か……」
「ええ……そんなところです。九条さんも父親は……有名人どころではないですが」
九条は少し間を取って言った。
「僕は、嫌いだった。いつも兄貴と比べられてね……。辛かったよ……学校でも『政治家の子』ってだけで腫れ物扱い……心底嫌いだったよ父が……」
「それに反発して……実業家ですか?」
「そうだなぁ……確かに最初は反発からだったけど、今は違うかな……いや、本当は最初から父に認めて欲しかったんだ、兄貴のように……」
葵は表情を柔らかくし言った。
「ふふ……お互い家族が有名だと苦労しますね」
「ああ……もっともだ」
葵と九条は和解した。些細な話だったが……少なからずお互いを理解した。
和解した葵と九条の元に、歩と有紀がやって来た。
「どうやら解決したようだな」
有紀がそう言うと、歩が二人の間に強引に入ってきて二人の肩を抱いた。
「んじゃあ……仲直りの乾杯しようぜっ!」
葵が歩に言った。
「また蹴られますよ。しかし今日は少しいただきましょうか…」
葵の反応に満足し他のメンバーにも言った。
「おーい!みんな!乾杯しようぜ!」
「歩……未成年の順平に飲ませたら……ただじゃおかないぞ」と、有紀が歩に忠告した事はいうまでもない。
そんな皆の様子を後ろの広場で見ていた堂島夫婦も穏やかな感じだ。
サキが言った。
「ふふふ……見ているだけで穏やかな気分になりますね」
光一が言った。
「そうだな……彼らを見ていると、日常を忘れられる」
「ええ……いつまでも、この夢みたいな場所にいたいくらい」
「ふっ、そうだな……確かに帰りたくなくなるな」
「だから私たちも、彼らに負けないくらい楽しまないと……」
だが、そんな彼らを嘲笑うように、夢から悪夢に突き落とす。
ある出来事によって……。
………三日目…午前八時………
ドンッドンッドンッ!
部屋に激しいノックが鳴り響く。
ドンッドンッドンッ!
まただ……まだ眠たいのに……。
昨日はあれから宴会になり、珍しく深酒してしまった。
まだ眠たい葵は、寝たふりをしようとしたが……まだノックは止まない。
ドンッドンッドンッ!
余りにもしつこい……。
何かあったな……。
葵はそう判断し、寝ぼけ眼のままドアへと向かう。
ドアを開けると、歩が血相をかえてそこに立っていた。
「葵君……よかった……無事か……」
葵は瞬時に察した。
「歩さん……誰に何があったのです?」
歩は言葉を濁している。
「とにかく行きましょう……ドアの隙間から人が集まっているのは……ここからでもわかります……美夢の事も心配です」
美夢の部屋は十時の方向……葵の隣の部屋だ。
ドアの隙間から見えるのは……五時の方角、おそらく、あの人の部屋……。
葵と歩はその場所へ向かう……。
近づくにつれ集まっている人が、はっきりしてきた……そして臭いも……。
葵はこの臭いをよく知っている……。
一度知ってしまったら、忘れる事は決してない、臭い……。
………死臭………。
有紀はその臭いの元にいて何かをしている。
美夢は?……容子と一緒に抱き合い涙を流している。
サキは二人を守るように、寄り添っている。まるで二人の娘を守るように……。
葵は臭いの、元に着いた。
有紀が言った。
「葵……わかると思うが……」
「ええ……最悪の事態です」
葵の足元にあったのは……。
瞳孔が開き、胸から大量の血を流して倒れている……。
………愛美だった………。
夢のような生活から……悪夢を見る。
この落差に、今は身を任せるしかできなかった……。
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