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陽芹孝介

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第一章 接触そして……

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  タクシーで九条のオフィスへ向かう途中、車内でアマツカの話を葵と歩はしている。
  葵は歩道橋の上で、子供に貰った封筒の中身を、歩に見せた。
  中には一枚の紙切れがはいっていた。
  葵は紙切れを歩に渡した。
  それを受け取った歩は、内容を確認した。
 「これは……」
  紙切れには……『今夜あなた達を、楽園にお連れします…』と、書いてあった。
  葵は言った。
 「実に興味深いです。そして先手を打たれています……。どうやら僕の行動は筒抜けです…」
  歩が言った。
 「この『あなた達を』って、ところかい?」
 「はい……それはすなわち、僕が歩さんと一緒にいる事を、把握しているという事を示してます……。それに……」
 「それに?」
 「封筒を僕に渡したタイミングです。あのタイミングで渡すには、僕を監視してなければ難しい……」
 「監視……」
 「ええ…どうやら、もう一人ストーカーさんがいたようです……」
 「後手後手だな」
  葵は開き直ったように言った。
 「それは仕方ない事です……。ステージは相手が用意するんですから……あと、紙の裏を見て下さい…」
  歩は紙の裏を見た。
 「Webアドレスと、23時00分……これって…」
 「『その時間に、そのアドレスを開け』と、指示しているのでしょう……」
  歩は不思議そうに言った。
 「しかし、これじゃあ…「罠ですよ」って、言ってるようなもんだぜ……」
  葵は髪をクルクル回しながら言った。
 「だから、九条さんと、有紀さんを『先に送った』のですよ」
  歩は不愉快な表情で言った。
 「チッ!やり方が汚い……」
 「アマツカはわかってるんですよ。僕はともかく、歩さんは仲間を見捨てないと……まぁ…僕も見捨てるつもりはありませんが……」
  後部座席の真ん中に座る羽目になった五月は、左右で飛び交う二人の会話に理解できずいた。
 「あの~、さっきから何を?九条さんって、あの九条司?それに有紀さんって、さっきの綺麗な女の人ですよね?送ったって、どういう事?ベッドで寝ていたし……そもそもアマツカって?」
  歩は言葉を濁している。
 「う~ん、説明すると長くなるね…」
  葵が言った。
 「到着しますよ」
  五月の疑問をうやむやにするように、タイミングよくタクシーは目的地に到着した。
  タクシーを降りた3人のまえには、綺麗なオフィスビルが並んでいる。
  歩は九条のオフィスがあるビルを目指した。
 「ここだ……」
  九条のオフィスを目の当たりにした、3人は思わず、たたずんだ。
 「以外としっそですねぇ…」
  葵が言うように、九条のオフィスビルは周りの豪華なビルと違い、シンプルな赤茶色のビルだった。
 「このビルの5階が九条のオフィスだ」
  歩はそう言うと、ビルの入口へ向かった。
  エレベーターに乗り込み、5階で降りると、正面に『Office-nine(オフィスナイン)』とかかれた表札が目に入った。
  歩が言った。
 「これが九条のオフィスだ。ここを拠点にして様々な事業を展開してるそうだ」
  歩はOffice-nineの黒い扉を開いた。
  開いた先は壮絶な光景だった。4~5人の社員らしき者が、バタバタとしている。
  電話対応に追われてる者や、棚から書類を引っ張り出し……それらを確認する者や、様々だ。
  そのバタバタした社員の中から、一人の女性がやって来た。  
  葵ら3人を怪しげな表情で見ている。
 「誰です?あなたたちは?」
  女性はチェックのシャツにジーンズと、ラフな格好をしている。
  歩が言った。
 「あの~、渡辺って言いますけど……山村さんから聞いてませんか?…」
  女性は強張らせてた表情を軟らかくして、笑顔で言った。
 「あぁ~、社長のご友人の…」
 「はい、九条の仕事部屋に用があって…」  
 「はいっ!聞いてます聞いてます……。ちょっと事務所、散らかってますけど……こっちです…」
  書類の山や、段ボールで散らかっている、事務所の通路を通り、九条の仕事部屋へ向かう。
  歩が言った。
 「随分…なんだ…壮絶な光景だね…」
  女性はげんなりした表情で答えた。
 「社長が急に休むことになって、社内はてんてこ舞いなんです。山村さんも社長に付きっきりだし…」
  女性は愚痴りながら、九条の仕事部屋まで案内してくれた。
 「ここです。鍵は持ってますよね?それでドア開けて、中に入って下さい。じゃあ…私忙しいんで……愛想無しですみません。ゆっくりしていって下さい…」
  そう言うと女性は戻って行った。
  葵が呟いた。
 「九条さんがいないと、ダメな会社のようですね…」
  扉を開いて九条の部屋に入った3人は、事務所と部屋のギャップに少し驚いた。
  五月が思わず言った。
 「違う会社みたい…」
  五月の言うように九条の部屋はキレイに片付いていた。
  黒をベースにした部屋に、棚や机、ソファーなど、どれもキレイに使われている。
  葵は言った。
 「さっそくPCを調べましょう…」
  葵はデスクに置いてあるPCへ向かった。
  葵はPCの電源をいれた。
  しばらくすると画面が明るくなりホーム画面へ写った。
  葵は手際よくPCを操作する。
  そんな葵を見て五月は言った。
 「勝手に……そんな弄くったら、まずいんじゃ?」
  葵は呆れて言った。
 「PCの前で九条さんは倒れていました。調べるのは当然でしょう?」
 「なんで、PCと昏睡が関係あんのっ?そんなのおかしいよっ?呪いのメールじゃあるまいし…」
  葵は口角を上げて言った。
 「呪いのメール……ふふ、確かにそうかも知れません…」
  五月は笑う葵を不気味に思った。
 「何が可笑しいの?」
 「怖いのですか?あなたはオカルトミステリーの美人代表でしょ?」
 「私が不気味なのは、あんたよっ!」
 「その不気味な人間を、ストーカーしてるのは……あなたでしょ?」
 「私はストーカーじゃないっ!」
  激昂している五月を宥めるように、歩は言った。
 「まぁまぁ、五月ちゃん……落ち着いて。葵君、何か気になるところある?」
 「アマツカから受け取った、アドレスの履歴が残っていますね…」
  歩は驚いて言った。
 「なんだってっ!?」
 「開こうと試みましたが……エラーですね…」
  焦った感じで歩が言った。
 「葵君、先々進むなよぉ……。心の準備ってのがあるんだから…」
  葵は言った。
 「ご安心を……最初から開くとは思ってませんよ……。アマツカがそんなミスをするとも思えませんし、念のため試しただけです」
  歩は言った。
 「じゃあ……この紙切れは?…」
 「時間が書いてあります。その時刻に開けるようになるのでしょう…」
 「11時ってわけか…」
 「とにかく、手懸かりを……何故九条さんを先に狙ったのか?」
 「そうだな小さな事でもいい…」
  すると葵は五月に言った。
 「ストーカーさん……その首にぶら下げているカメラで、部屋を一通り写して下さい…」
 「だ・か・らっ!ストーカーじゃないっ!でも、いいわ……撮影してあげる。やっと私に協力指せる気になったみたいだから…」
 「無理矢理ついてきたのですから……そのくらいの役に立ってもらわないと…困ります…」
 「いちいち一言多いわねっ!」
  そう文句を言いつつ、五月はデジカメで部屋を撮影し始めた。
  PCを操作する葵は何かを見つけたようだ。
 「うん?これは……」
 「どうした?葵君…」  
 「九条さんは、どうやらアマツカについて調べていたようです。これを……」
  そう言うと葵はPCの画面を見るよう、歩を促した。
 「これは?『A&M company(カンパニー)』?なんだこれ?」
  葵は髪をクルクルさせながら言った。
 「『島』へのチケットは、この『A&M company』から、ばらまかれたようです」
 「どういう事?」
 「これは九条さんがまとめた資料ですが……見て下さい……チケットの配分先です」
  九条の資料には、九条の会社Officenineから、チケットがいくつかの企業や団体、協会などに、渡っていることが記されている。
  その内容に歩は驚いた。
 「これは!星城商事、それに警視庁……財界に東鷹医大っ!これは…」
 「そうです……。あのチケットはここから、ばらまかれたのです…」
 「まさか、九条がアマツカに関与しているって事なのか?」
 「それはわかりませんが……利用された可能性は高いです…」
 「でもどうして…」
 「株主優待と偽って、九条の会社にチケットを送り、それを配分したって……ところですか…」
 「しかし、それではピンポイントで俺を狙えないぞ……。九条が何処に配るかはわからないんだ…」
 「確かに……では、このOfficenineにアマツカの内通者がいたら?」
  歩は目を見開き表情を固めた。
  葵は「ふう」と、ため息を一つついて言った。
 「僕たちは、アマツカの事を考え直さないといけませんね…」
 「どういう事だい?」
 「アマツカが一人ではないのは、わかってました……チームか何かは…」
 「じゃあなんなんだい?」
 「組織……しかも支援者のいる…これは、厄介です…」
 「支援者……そうか!アマツカのユーザーかっ!」
 「はい……アマツカはあの時、『富豪達』と、言っていました。多分それが支援者でしょう……賭博に参加する事により、多額の資金を提供しています」
 「やっぱ……普通じゃないよな…」
  話の大きさに歩はどこか乗り切れていないようだ。
  歩とは対照的に、葵は楽しそうに言った。
 「ただの愉快犯では無いのは、わかってましたが……最終的な目的は?興味深いです」
 「楽しんでる場合じゃないよ。どうやって2人を助けるの?」
 「とりあえず……むこうに行くしかありませんね。招待状も、貰った事ですから…」
  そう言うと葵は、例の紙切れをヒラヒラさせている。
  歩は頭を抱えて言った。
 「やっぱりな…」
 「おや?アマツカを追うと決めたのは歩さんですよ…」
 「いや、そうじゃなく……出来れば葵君には関わらないで欲しい…」
  葵は呆れて言った。
 「やれやれ……まだそんな甘い事を言ってるんですか?アマツカは僕もターゲットにしていますよ……。現にこの紙切れは僕の元に届けられたのですから…」
  歩は葵がこの状況を、楽しんでいる事に危惧していた。
 「上手くは言えないけど……葵君はアマツカに関わらないで欲しい…」
 「またですか?僕は、アマツカとは違います……ご心配なく…」
  歩はこれ以上言わなかった。
  葵に関わらないで欲しいのは、歩の本音だが、葵に頼らないといけない現実もある…。
  歩は葛藤し、思わず呟いた。
 「ほんと……情けない大人だよ……俺は…」
  そんな歩を見て葵は言った。
 「そんな事を言わないで下さい……。歩さん達がいたから、前回は勝てたのですよ…」
  歩は葵に返す言葉が見つからなかった。
  葵は言った。
 「資料の事は、向こうに行ってから……本人に聞きましょう…」
  歩は言った。
 「そうだな……。腹くくるか、葵君…」
 「なんです?」
 「皆を助けよう…」
  葵は髪をクルクルし口角を上げて言った。
 「もちろんです……。僕を誰だと思っているんですか?」
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