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第四話 海上攻防戦・前編
①
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……喫茶店風の声……
夏休みも後10日で終わり、新しい生活が始まる。
夏休みが終わるからといって、この暑苦しい日々がすぐに終わるわけではない。
外は相変わらずの猛暑だった。
縁はいつものカウンター席でいつものアイスカフェを飲んでいた。
時刻は午後2時を回ったところで、客は縁しかいない……。
暇そうにしている店主の巧が縁に言った。
「夏休みも……もう終るな……」
縁は方肘をついて、愛想無しに答えた。
「うん……そうだね……」
巧はニヤニヤしながら言った。
「で、縁君は……普通の高校生の夏休みを、満喫出来たのかな?」
巧の嫌味に縁は答えた。
「白々しい……」
「やはり君には普通の生活は出来ないんじゃないのかね?」
縁は頭を抱えた。
「こんなはずじゃなかったのに~!帰国して2年……。やっと事件だの、何だのに解放されたと思ったのに……」
巧は言った。
「ずっと聞きたかったんだけど……縁、お前……向こうでどういう生活してたの?」
縁はアイスカフェのグラスを睨み付けて言った。
「一つ言えるのは……普通の少年の生活では無かったよ……クソジジイのおかげで……」
「縁のじいさんって……何者だ?」
縁は顔を歪めて言った。
「ただの不良ジジイだよ……」
すると店の扉が開いて、客が一人来た。
縁は振り向かず言った。
「普通の生活を送れない、原因の一つが来た……」
縁の言う原因の一つとは……桃子だった。
桃子は縁の隣に座り、巧に言った。
「相変わらず暇そうだな……店、潰れるんじゃないのか?」
巧は苦笑いをして言った。
「ほっとけっ!……んで、注文は?」
「アイスカフェ……」
桃子は縁に言った。
「縁……暇そうだな……」
縁は嫌な予感がした。
「暇じゃないよっ!」
桃子は顔をしかめた。
「そうか?では何故ここにいる?」
「えっ?いや……忙しいから気分転換でここに……」
すると巧が桃子のアイスカフェを持ってきて、桃子に言った。
「先生……縁のやつ夏休みを満喫してないんだって……」
縁は焦った表情で言った。
「ちょっ……たっくんっ!」
桃子はそれを聞いてニヤリとした。
「何だ縁……それならそうと早く言えっ!良い物を持ってきたんだ……」
巧はゲラゲラ笑っているが、縁は頭を抱えている。
桃子は何かのチケットを1枚出した。
桃子は言った。
「健全な高校生が夏休みを満喫していないのは……不憫だ……」
縁はボソッと言った。
「あんたのせいでも、あるんだけど……」
桃子は構わず言った。
「それでだっ!そんな不憫な高校生……新井場縁にプレゼントを持ってきたのだ!これを見ろっ!」
桃子はチケットを縁に渡した。
縁はそれを見て言った。
「何だ……『Queensship(クイーンズシップ)日帰り豪華クルーズ』」
桃子は言った。
「日帰りの船旅だ……」
「それはわかってるよ……」
「縁には世話になってるからな……」
縁は言った。
「チケットって……1枚だけか?」
「そうだ……残念ながら1枚しか貰えなかったのだ……」
桃子は残念そうな表情をしている。
縁は思った。
桃子の表情からしてチケットは本当に1枚だけで、それを自分にくれると言っている……一人で行けと言うことか……。
しかし、チケットを1枚貰ったところで、一人でそんな所には……。
縁は言った。
「行きたいのは、やまやまなんだけど……いくらなんでも一人は……」
桃子は言った。
「どうして一人何だ?」
「えっ、何でって……チケットは1枚だろ?」
桃子は嬉しそうに言った。
「安心しろ縁……裏を見てみろ……」
「裏を?」
縁はチケットの裏を見て読み上げた。
「『このチケットは2人1組のペアでご利用頂けます』なるほど……って!?」
桃子はニコニコしながら言った。
「よかったな縁っ!夏休みの思い出が作れるぞっ!」
縁は顔をひきつらせた。
「は、はは……裏はあったのな……」
縁と桃子は夏休み最後のバカンスへ、行く事となったが……。
バカンスだけでは終わらないのが、この二人だ。
縁は悪い事が起こらなければいいと、思っていた。
……クルージング当日……
縁と桃子の二人は、桃子の車で目的地でもある太平洋側のとある港へ来ていた。
車を近くのパーキングに駐車し、歩いて港まで向かった。
空は快晴で、クルージングには絶好の天気だった。
港に近づくにつれ、人が増えてきた。おそらく縁と桃子と同じ目的の人達だろう。
広い港だったが、目的の船はすぐにわかった。
港に船はそれしかなかったからだ。港にはその船の前にだけに、大勢の人が集まっていた。
およそ40~50人程はいて、搭乗するのを今か今かと待ちわびている様子だった。
だだっ広い港に、1隻の巨大な船……あれが目的の船『queensship』だろう。
船に近づくにつれその全貌は明らかになってきた。
船は40~50人を軽く乗せれそうなくらい大きい。
全長はおよそ70~80mはあり、デッキは2層になっており、さらにラウンジも広い。
見た感じは、レストラン船といった感じだろうか……150人程は容易に乗れそうだ。
縁は思わず言った。
「でかいな……」
桃子も頷いた。
「ああ……予想以上の大きさだ……」
船の搭乗口を探していると、人が並んでいる所を発見した。おそらくそこで受付をし、船に搭乗するのだろう。
縁と桃子はその列の最後尾に並んだ。
家族連れやカップル、老夫婦、友達連れなど……様々な人が並んでいる。
夏休みも終わりかけなので、皆が遊び納めに来ているのだろう。
そして、受付の順番は縁と桃子に回ってきた。
桃子はチケットを受付の女性に渡すと、1枚のカードキーとパンフレットを手渡された。
カードキーに『2035』と記載されていた。おそらくこの番号が部屋番号だろう。
二人は船に繋がる即席の階段を登り船の搭乗口に入った。
中に入ると、女性スタッフがいて「矢印の方向にお進み下さい」と言った。
スタッフの言うように、通路には大きな矢印が書かれており、縁と桃子は先に入り、搭乗客の後を追うように進んだ。
しばらく進むと、1層目に繋がる階段が出てきて、それを上がった。
すると、上がった先の通路にまたもや矢印が書かれており、それに従い進む……すると、やがて広いホールに出た。
ホールはパーティー会場のように広く……中には入った搭乗客が40~50人程いて、それぞれ出港の時を待っていた。
縁が言った。
「凄い人の数だな……」
桃子が言った。
「一般運航は今日からのようだぞ……今日来ている客は、皆……裕福な者ばかりのようだ……」
「桃子さん……チケットどこで手に入れたんだ?」
「知り合いの作家の先生に貰った……」
すると、全ての客の搭乗が完了したのか、一人の男性スタッフがホールにやって来た。
男性スタッフはメガホンを手に、搭乗客全員に向かって言った。
「それでは皆様っ!船が出港するまでの間……お部屋の方での待機を、お願い致しますっ!」
ホールはざわざわしているが、男性スタッフは続けた。
「出港致しましたら、船内アナウンスでご案内致しますので……先程カードキーとお渡ししたパンフレットお読みになり、お待ちくださいっ!……なお、出港後は自由行動になります。ご不明な点がごさいましたら……部屋の内線にて、スタッフルームにお問い合わせ下さいっ!」
桃子は言った。
「自由行動か……それは良い……」
最後に男性スタッフは言った。
「それでは良い船旅を……」
ホールにいた乗客達は解散した。
別のスタッフが客室へ向かう通路を案内している……客室は船の2層目のようだ。
縁と桃子も客室に向かった。
……客室2035号室……
部屋に着いた二人は出港の時を待っていた。
日帰りなので、軽い手荷物しか持ってこなかったが、用意された部屋に置いておけるので、二人にはありがたかった。
桃子はパンフレットを見ながら言った。
「旅客船とレストラン船の兼用のようだな……客室が70ある……」
縁は部屋を見渡して言った。
「この部屋もたいがいでかいぜ……スイートルームか?」
桃子は言った。
「広さと設備的に、ミニスイートだな……スイートはもう少し広い50平方mはあるぞ」
見渡した感じ……広さはおよそ30平方mはありそうだ。
ベッドは2つ、テーブル、ソファーに冷蔵庫、クローゼットもある。
縁は言った。
「これでミニかよ……」
桃子は窓際に立って言った。
「景色も素晴らしい……天気も良いせいか、水平線がはっきり見えるぞ」
縁も窓際に立って景色を見てみた。
桃子の言うように、良い景色だった。これが雨だったら台無しになっていただろう。
縁は言った。
「俺らが出掛ける時は……天気には恵まれてるよな……」
桃子は言った。
「私は晴れ女だ……」
「桃子さん……パンフレット見せて」
桃子は縁にパンフレットを渡し、縁はそれを見て驚いた。
パンフレットには食事の写真が載っており、ステーキに中華、寿司などの美味しそうな写真が数多く載っていた。
そして、驚くことに……これらの飲食は全て、食べ放題の飲み放題だった。
「すっげぇーっ!これ全部食べ放題かよ……」
驚いている縁を見て桃子は言った。
「ふふん……凄いだろ?来てよかっただろ?」
縁は興奮気味だ。
「すげぇよっ!すげぇよっ!……早く出港しねぇかなぁ……」
縁は期待でいっぱいだった。
すると、部屋に船内アナウンスが響いた。
『まもなく出港致します……まもなく出港致します』
縁が言った。
「出港だってよ……」
『出港の際に少し船内が揺れますので、ご注意下さい』
するとしばらくして、汽笛が鳴り響いた。
かん高い汽笛合図と共に少し船が揺れた。
縁と桃子は体を足で支えながら、船が動くのを体感する……すると、船内アナウンスが鳴った。
『出港致しました……出港致しました。皆様楽しい船旅をお楽しみ下さい……』
乗客に、楽しみと癒しを与えるべく……船は出港した。
縁と桃子も自然と気持ちが踊った。
……警視庁……
険しい表情をした有村は、捜査会議室に集まった、大勢の刑事達に言った。
「皆っ!聞いてくれっ!」
有村の緊張感のある声に、刑事達は背筋を伸ばした。
有村は続けた。
「今朝……警視庁に、ある犯行声明が送られてきた……」
有村の隣に座っていた刑事が言った。
「犯行声明にはこうあった『客船に爆弾を仕掛けた』と……」
会議室はざわついた。
有村は言った。
「『船員乗客合わせて75人×1億……75億円を用意しなければ、船を爆破する』と……」
会議室はさらにざわついた。
「75億っ!?」
「そんな無茶な……」
「いったい誰が?」
「いや、組織ぐるみだろっ!」
有村は声を荒げた。
「静かにっ!……爆弾が仕掛けられた客船は……」
「queensship号だ……」
夏休みも後10日で終わり、新しい生活が始まる。
夏休みが終わるからといって、この暑苦しい日々がすぐに終わるわけではない。
外は相変わらずの猛暑だった。
縁はいつものカウンター席でいつものアイスカフェを飲んでいた。
時刻は午後2時を回ったところで、客は縁しかいない……。
暇そうにしている店主の巧が縁に言った。
「夏休みも……もう終るな……」
縁は方肘をついて、愛想無しに答えた。
「うん……そうだね……」
巧はニヤニヤしながら言った。
「で、縁君は……普通の高校生の夏休みを、満喫出来たのかな?」
巧の嫌味に縁は答えた。
「白々しい……」
「やはり君には普通の生活は出来ないんじゃないのかね?」
縁は頭を抱えた。
「こんなはずじゃなかったのに~!帰国して2年……。やっと事件だの、何だのに解放されたと思ったのに……」
巧は言った。
「ずっと聞きたかったんだけど……縁、お前……向こうでどういう生活してたの?」
縁はアイスカフェのグラスを睨み付けて言った。
「一つ言えるのは……普通の少年の生活では無かったよ……クソジジイのおかげで……」
「縁のじいさんって……何者だ?」
縁は顔を歪めて言った。
「ただの不良ジジイだよ……」
すると店の扉が開いて、客が一人来た。
縁は振り向かず言った。
「普通の生活を送れない、原因の一つが来た……」
縁の言う原因の一つとは……桃子だった。
桃子は縁の隣に座り、巧に言った。
「相変わらず暇そうだな……店、潰れるんじゃないのか?」
巧は苦笑いをして言った。
「ほっとけっ!……んで、注文は?」
「アイスカフェ……」
桃子は縁に言った。
「縁……暇そうだな……」
縁は嫌な予感がした。
「暇じゃないよっ!」
桃子は顔をしかめた。
「そうか?では何故ここにいる?」
「えっ?いや……忙しいから気分転換でここに……」
すると巧が桃子のアイスカフェを持ってきて、桃子に言った。
「先生……縁のやつ夏休みを満喫してないんだって……」
縁は焦った表情で言った。
「ちょっ……たっくんっ!」
桃子はそれを聞いてニヤリとした。
「何だ縁……それならそうと早く言えっ!良い物を持ってきたんだ……」
巧はゲラゲラ笑っているが、縁は頭を抱えている。
桃子は何かのチケットを1枚出した。
桃子は言った。
「健全な高校生が夏休みを満喫していないのは……不憫だ……」
縁はボソッと言った。
「あんたのせいでも、あるんだけど……」
桃子は構わず言った。
「それでだっ!そんな不憫な高校生……新井場縁にプレゼントを持ってきたのだ!これを見ろっ!」
桃子はチケットを縁に渡した。
縁はそれを見て言った。
「何だ……『Queensship(クイーンズシップ)日帰り豪華クルーズ』」
桃子は言った。
「日帰りの船旅だ……」
「それはわかってるよ……」
「縁には世話になってるからな……」
縁は言った。
「チケットって……1枚だけか?」
「そうだ……残念ながら1枚しか貰えなかったのだ……」
桃子は残念そうな表情をしている。
縁は思った。
桃子の表情からしてチケットは本当に1枚だけで、それを自分にくれると言っている……一人で行けと言うことか……。
しかし、チケットを1枚貰ったところで、一人でそんな所には……。
縁は言った。
「行きたいのは、やまやまなんだけど……いくらなんでも一人は……」
桃子は言った。
「どうして一人何だ?」
「えっ、何でって……チケットは1枚だろ?」
桃子は嬉しそうに言った。
「安心しろ縁……裏を見てみろ……」
「裏を?」
縁はチケットの裏を見て読み上げた。
「『このチケットは2人1組のペアでご利用頂けます』なるほど……って!?」
桃子はニコニコしながら言った。
「よかったな縁っ!夏休みの思い出が作れるぞっ!」
縁は顔をひきつらせた。
「は、はは……裏はあったのな……」
縁と桃子は夏休み最後のバカンスへ、行く事となったが……。
バカンスだけでは終わらないのが、この二人だ。
縁は悪い事が起こらなければいいと、思っていた。
……クルージング当日……
縁と桃子の二人は、桃子の車で目的地でもある太平洋側のとある港へ来ていた。
車を近くのパーキングに駐車し、歩いて港まで向かった。
空は快晴で、クルージングには絶好の天気だった。
港に近づくにつれ、人が増えてきた。おそらく縁と桃子と同じ目的の人達だろう。
広い港だったが、目的の船はすぐにわかった。
港に船はそれしかなかったからだ。港にはその船の前にだけに、大勢の人が集まっていた。
およそ40~50人程はいて、搭乗するのを今か今かと待ちわびている様子だった。
だだっ広い港に、1隻の巨大な船……あれが目的の船『queensship』だろう。
船に近づくにつれその全貌は明らかになってきた。
船は40~50人を軽く乗せれそうなくらい大きい。
全長はおよそ70~80mはあり、デッキは2層になっており、さらにラウンジも広い。
見た感じは、レストラン船といった感じだろうか……150人程は容易に乗れそうだ。
縁は思わず言った。
「でかいな……」
桃子も頷いた。
「ああ……予想以上の大きさだ……」
船の搭乗口を探していると、人が並んでいる所を発見した。おそらくそこで受付をし、船に搭乗するのだろう。
縁と桃子はその列の最後尾に並んだ。
家族連れやカップル、老夫婦、友達連れなど……様々な人が並んでいる。
夏休みも終わりかけなので、皆が遊び納めに来ているのだろう。
そして、受付の順番は縁と桃子に回ってきた。
桃子はチケットを受付の女性に渡すと、1枚のカードキーとパンフレットを手渡された。
カードキーに『2035』と記載されていた。おそらくこの番号が部屋番号だろう。
二人は船に繋がる即席の階段を登り船の搭乗口に入った。
中に入ると、女性スタッフがいて「矢印の方向にお進み下さい」と言った。
スタッフの言うように、通路には大きな矢印が書かれており、縁と桃子は先に入り、搭乗客の後を追うように進んだ。
しばらく進むと、1層目に繋がる階段が出てきて、それを上がった。
すると、上がった先の通路にまたもや矢印が書かれており、それに従い進む……すると、やがて広いホールに出た。
ホールはパーティー会場のように広く……中には入った搭乗客が40~50人程いて、それぞれ出港の時を待っていた。
縁が言った。
「凄い人の数だな……」
桃子が言った。
「一般運航は今日からのようだぞ……今日来ている客は、皆……裕福な者ばかりのようだ……」
「桃子さん……チケットどこで手に入れたんだ?」
「知り合いの作家の先生に貰った……」
すると、全ての客の搭乗が完了したのか、一人の男性スタッフがホールにやって来た。
男性スタッフはメガホンを手に、搭乗客全員に向かって言った。
「それでは皆様っ!船が出港するまでの間……お部屋の方での待機を、お願い致しますっ!」
ホールはざわざわしているが、男性スタッフは続けた。
「出港致しましたら、船内アナウンスでご案内致しますので……先程カードキーとお渡ししたパンフレットお読みになり、お待ちくださいっ!……なお、出港後は自由行動になります。ご不明な点がごさいましたら……部屋の内線にて、スタッフルームにお問い合わせ下さいっ!」
桃子は言った。
「自由行動か……それは良い……」
最後に男性スタッフは言った。
「それでは良い船旅を……」
ホールにいた乗客達は解散した。
別のスタッフが客室へ向かう通路を案内している……客室は船の2層目のようだ。
縁と桃子も客室に向かった。
……客室2035号室……
部屋に着いた二人は出港の時を待っていた。
日帰りなので、軽い手荷物しか持ってこなかったが、用意された部屋に置いておけるので、二人にはありがたかった。
桃子はパンフレットを見ながら言った。
「旅客船とレストラン船の兼用のようだな……客室が70ある……」
縁は部屋を見渡して言った。
「この部屋もたいがいでかいぜ……スイートルームか?」
桃子は言った。
「広さと設備的に、ミニスイートだな……スイートはもう少し広い50平方mはあるぞ」
見渡した感じ……広さはおよそ30平方mはありそうだ。
ベッドは2つ、テーブル、ソファーに冷蔵庫、クローゼットもある。
縁は言った。
「これでミニかよ……」
桃子は窓際に立って言った。
「景色も素晴らしい……天気も良いせいか、水平線がはっきり見えるぞ」
縁も窓際に立って景色を見てみた。
桃子の言うように、良い景色だった。これが雨だったら台無しになっていただろう。
縁は言った。
「俺らが出掛ける時は……天気には恵まれてるよな……」
桃子は言った。
「私は晴れ女だ……」
「桃子さん……パンフレット見せて」
桃子は縁にパンフレットを渡し、縁はそれを見て驚いた。
パンフレットには食事の写真が載っており、ステーキに中華、寿司などの美味しそうな写真が数多く載っていた。
そして、驚くことに……これらの飲食は全て、食べ放題の飲み放題だった。
「すっげぇーっ!これ全部食べ放題かよ……」
驚いている縁を見て桃子は言った。
「ふふん……凄いだろ?来てよかっただろ?」
縁は興奮気味だ。
「すげぇよっ!すげぇよっ!……早く出港しねぇかなぁ……」
縁は期待でいっぱいだった。
すると、部屋に船内アナウンスが響いた。
『まもなく出港致します……まもなく出港致します』
縁が言った。
「出港だってよ……」
『出港の際に少し船内が揺れますので、ご注意下さい』
するとしばらくして、汽笛が鳴り響いた。
かん高い汽笛合図と共に少し船が揺れた。
縁と桃子は体を足で支えながら、船が動くのを体感する……すると、船内アナウンスが鳴った。
『出港致しました……出港致しました。皆様楽しい船旅をお楽しみ下さい……』
乗客に、楽しみと癒しを与えるべく……船は出港した。
縁と桃子も自然と気持ちが踊った。
……警視庁……
険しい表情をした有村は、捜査会議室に集まった、大勢の刑事達に言った。
「皆っ!聞いてくれっ!」
有村の緊張感のある声に、刑事達は背筋を伸ばした。
有村は続けた。
「今朝……警視庁に、ある犯行声明が送られてきた……」
有村の隣に座っていた刑事が言った。
「犯行声明にはこうあった『客船に爆弾を仕掛けた』と……」
会議室はざわついた。
有村は言った。
「『船員乗客合わせて75人×1億……75億円を用意しなければ、船を爆破する』と……」
会議室はさらにざわついた。
「75億っ!?」
「そんな無茶な……」
「いったい誰が?」
「いや、組織ぐるみだろっ!」
有村は声を荒げた。
「静かにっ!……爆弾が仕掛けられた客船は……」
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