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平野将大の波乱
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「お前と『マツケン』ってそういう関係なの?」
飲んでいた缶コーヒーを吹き出しそうになる。頑張って堪えたが一部は気道に入ってしまい、盛大にむせてしまった。自販機の前で息も絶え絶えだが、それよりも目の前の彼の言葉が気になってしまう。
この人は俺と高松が恋人同士だと言いたいんだろう。
ゲースタでの高松は、周りからマツケンと呼ばれている。出会った頃は馬鹿正直に本名(名字だけ)で名乗られたから、俺はユーザーネームの方を後で知ることになったのだが。
彼は辺りを確認し、小声で耳打ちした。
「ごめんて。……この前お前とマツケンが喫煙所でキスしてんの見ちゃってさ」
紙コップのカフェオレを片手にフリースペースで休憩する、おそらく俺より歳上だろう作業着の男性。週末の夜に現れる常連客『マサカド』さんだ。よく顔を会わせていても、本名は知らない。
「気にしてるなら、もうちょっと周り見た方がいいよ。見せつけてるなら話は別だけど」
確かについ最近、この店の喫煙所で高松から不意にキスをされたのだった。夜も更けていい時間だったから、まさかその一瞬を見られていたとは思いもしなかった。
「高松の奴……だからやめろって言ってんのに」
高松は知人に見られても気にならないらしい。俺もその場のノリで触りたくなることはあるけれど、できるだけ周りは気にしているつもりだ。
「ああ……『オオカミ』くんも大変だねえ」
他人事だと思ってマサカドさんはケタケタ笑っている。面白おかしく見られている気はするが、きっと嫌悪ではない。
「すいません。誰にも言わないでもらっていいですか?」
「それはもちろん」
この人は明るい人だけど、噂話をしているのは見たことがないし安心だろう。……たぶん。
見られたのがこの人で良かった。頭の固い爺さんやおしゃべり好きのおばちゃんに見られていたらと思うと、ゾッとする。尾ひれがついた変な噂が広まっていたに違いない。『あの二人はホモでなんちゃらかんちゃら』と、後ろ指を指されるのだろうか。随分と時代錯誤だけれど、田舎なんてまだまだそんなものか。
「あれ、尾上さんとマサカドさん?」
そんなことを話していると、丁度よく高松が近くを通りかかった。マサカドさんは手招きして高松を呼びつける。
「ちょっとお前もこっち来い」
「うん? なんですか」
マサカドさんは高松にも小声で耳うちした。
「あんま外でイチャつかない方がいいぞ」
「え? あー……この前の見てたんですね」
高松は一瞬バツの悪そうな顔をした。
「オオカミくんもボヤいてたぞ。こんなとこでやめろ~って」
マサカドさんの隣で、俺は首がもげるほど頷いていた。
高松は俺に隙があると思えば、何かしらのアクションを仕掛けてくる、しかも外で。死角になりそうな場所で手を繋ぐ、キスをするなど……油断も隙もあったものじゃない。
「まあ、いいじゃないですか。見られて減るもんじゃないし!」
「馬鹿。知ってる奴に見られたら嫌だろ」
「そうですか? 尾上さんだってたまに、そういうことするじゃないですか」
「それは……深夜で誰もいない時とか、広い駐車場の車の中とか、誰にも見られてないだろうし」
「見られなきゃいいってことですよね?」
「結局見られてるだろ! もっと慎重にだな……」
「俺はいいと思いますけどね。悪いことしてるわけじゃないし」
「だから、知ってる奴に見られたら……!」
「尾上さんは考えすぎなんですよ。みんな意外と気にしてないです」
「お前、またそんなこと言うのか!」
押し問答が続き埒が明かない。我慢していたわけではないが、あえて言わなかった言葉がついでとばかりに溢れてしまう。
「ストップ、ストップ! オレ挟んで痴話喧嘩しないでよ」
俺たちに挟まれ、マサカドさんは呆れた顔をしていた。そこでハッとする。勢いに任せて他人の前で余計なことを口走ってしまった。
「続きは帰って、やれ!」
俺たちの肩を勢いよく叩いて、彼はフラフラと去っていった。やっぱり人に見られるとロクなことにならない。
「もう家以外でイチャつくの禁止な」
「えー?」
「えー、じゃない。バレたらなんか気まずいんだって。ここは知り合いも多いんだから」
「もう見せつけちゃえばいいですよ。さっきも言ったけど、他人なんて思ったより自分のこと見てないんですから」
俺が言えたことじゃないが、あっけらかんとしすぎて度々適当になるのは高松の悪い癖だ。
他人なんて、俺と全然違う。悪い奴だっていっぱいいるのに。
「いい歳したおっさんだぞ。中高生じゃあるまいし」
「別におっさんでも関係ないと思いますよ」
「……そうだな。中高生でも見苦しい」
人前でイチャつくカップルなんて、俺は嫌いだ。
「うわあ……尾上さんって絶対モテないですよね」
「はぁ、余計なお世話だよ」
飲んでいた缶コーヒーを吹き出しそうになる。頑張って堪えたが一部は気道に入ってしまい、盛大にむせてしまった。自販機の前で息も絶え絶えだが、それよりも目の前の彼の言葉が気になってしまう。
この人は俺と高松が恋人同士だと言いたいんだろう。
ゲースタでの高松は、周りからマツケンと呼ばれている。出会った頃は馬鹿正直に本名(名字だけ)で名乗られたから、俺はユーザーネームの方を後で知ることになったのだが。
彼は辺りを確認し、小声で耳打ちした。
「ごめんて。……この前お前とマツケンが喫煙所でキスしてんの見ちゃってさ」
紙コップのカフェオレを片手にフリースペースで休憩する、おそらく俺より歳上だろう作業着の男性。週末の夜に現れる常連客『マサカド』さんだ。よく顔を会わせていても、本名は知らない。
「気にしてるなら、もうちょっと周り見た方がいいよ。見せつけてるなら話は別だけど」
確かについ最近、この店の喫煙所で高松から不意にキスをされたのだった。夜も更けていい時間だったから、まさかその一瞬を見られていたとは思いもしなかった。
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高松は知人に見られても気にならないらしい。俺もその場のノリで触りたくなることはあるけれど、できるだけ周りは気にしているつもりだ。
「ああ……『オオカミ』くんも大変だねえ」
他人事だと思ってマサカドさんはケタケタ笑っている。面白おかしく見られている気はするが、きっと嫌悪ではない。
「すいません。誰にも言わないでもらっていいですか?」
「それはもちろん」
この人は明るい人だけど、噂話をしているのは見たことがないし安心だろう。……たぶん。
見られたのがこの人で良かった。頭の固い爺さんやおしゃべり好きのおばちゃんに見られていたらと思うと、ゾッとする。尾ひれがついた変な噂が広まっていたに違いない。『あの二人はホモでなんちゃらかんちゃら』と、後ろ指を指されるのだろうか。随分と時代錯誤だけれど、田舎なんてまだまだそんなものか。
「あれ、尾上さんとマサカドさん?」
そんなことを話していると、丁度よく高松が近くを通りかかった。マサカドさんは手招きして高松を呼びつける。
「ちょっとお前もこっち来い」
「うん? なんですか」
マサカドさんは高松にも小声で耳うちした。
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高松は俺に隙があると思えば、何かしらのアクションを仕掛けてくる、しかも外で。死角になりそうな場所で手を繋ぐ、キスをするなど……油断も隙もあったものじゃない。
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