秘密基地には妖精がいる。

塵芥ゴミ

文字の大きさ
1 / 4

秘密基地

しおりを挟む
 夏休み、終わった。まだ終わってないけど、終わった。

・馬鹿みたいにはしゃいで、窓ガラスを割ってしまった。
・罰として、ゲームをほとんど没収された。
・上級生に逆らい、ケンカで負けた。
・せっかくの花火大会は雨だった。
・せっかくの沖縄旅行も台風が接近してきたので雨だった。

 ……今、なんだか魚を捕りたい。メダカとかドジョウとかじゃなくて、もっとデカいやつがいい。コイやライギョとかなら、釣れたら面白いと思う。でも、もうすぐお盆なので近くの川は入っちゃダメだ、と言われた。
 夏休みだというのに……。 最近、なんだか不幸続きだ。
 風鈴が鳴る。アブラゼミがやけに騒がしい。カーテンが揺れる。その窓の外には入道雲がプカリ。

 夏、夏、夏なのに……。僕らにはたくさん時間はある。でも、なんて……つまらないんだろう。

「なんか、面白いことないの?山ちゃん」

 ハルトは毬栗のような頭に問いかけた。

「面白いこと?うーん……。あ、日焼けした皮をていねいに剥がすの面白いよ」
「……もうやったよ、他!」
「うーん……あ、そうだハルト! 明後日は、『ドラトレ5』の発売日だよ」

 ドラトレか……。ドラゴンの巣から宝を盗む、有名なゲーム。
 ハルトはため息をつく。

「お金ないよ。それにソフトだけじゃ、プレイは無理だって……」
「……何したら本体を没収されるんだよ~。ほんとバカだなぁ、ハルトは」

 カーテンが揺れ、風鈴がチリンと鳴る。ぴんぽーんと同時にチャイムも鳴った。

「……あ、よっしーじゃね?」
「たぶん。んじゃ、見てくる」

 ハルトは気怠げに玄関へ向かう。ガラス張りの向こうに見える、柔らかいシルエットで誰かわかった。

「よぉ、入れよ。よっしー」
「おっすー。おじゃましま~す」

 ガラガラと扉を開いて、入ってきたのはニコニコ顔のよっしーだ。サラサラの黒髪で、後ろから見ると女に見えるのが特徴であり……触れちゃダメなところだ。

「山ちゃんはもういるよ」
「さすが暇人」

 部屋に戻ると、山ちゃんは学習机の椅子でクルクルと回っていた。ピタリと止まると、よっしーに向かって手を上げた。

「……おう! よっしー!」
「どうしたの? 二人して辛気臭い顔して? ていうか、ハルちゃんなんか今にも死にそうな顔してる」

 よっしーは腰を下ろし、不思議そうに首を傾げた。……あいかわらず、空気を読むのがうまい。

「なんかさぁ、夏休みなのにつまんねぇよなぁ! ……って話してたの」
「旅行は行けそうにない。もうでかいイベントは、婆ちゃん家行って、そんで終わりだよ」
「……あ、そうだ。あそこ行かね~? ハルト」

 二人の視線が集まる。山ちゃんが人差し指を立てた。

「山」

 その言葉で、二人は固まった。恐らく……山と言えば、あの山のことだろう。国道のそばにある山。
 この辺の住人でさえ、あまり立ち入らない……というか立入禁止の山。あまりいい話を聞かない、昔からいろんな噂のある曰く付きの山。

「……マジで? 入っていいの?」
「開発? とか、不法投棄? だとで、いろいろ変な話があるね。普段から立ち入り禁止な分、誰も寄り付かないから。入れるとは思うけど……危険じゃない?」

 よっしーは弱気になる。そんな彼の肩に手を回す山ちゃん。

「もしかしてだけど。よっしーさぁ、ビビってる?」
「……んなことないよ。ただ、バレたらヤバくないかな? 学校にも連絡行くと思うよ?」

 山ちゃんは腕組みして唸った。そして、ニコリと笑う。

「……まぁ、ゲーム没収じゃ済まないかもな!」
「でもさ、人気がないんだから見つかりっこないだろ。そもそも山だし、林も茂みもあるだろ? 身を隠すのにもってこいだ! 自転車も隠しときゃ問題ない」
「で、でも……」
「それにさぁ、最悪逃げればよくね? 大人なんかに、足の速さで負けないっしょ? お前ら百メートル何秒?」

 山ちゃんはそう言うと、またニカッと笑った。山ちゃんはサッカー部なので足には自信がある。百メートル十四秒台らしい。

「……ま、気晴らしになるかもな」
「ハルちゃんまで!?」
「なら、決まり! 各自荷物を調達せよ!」

 三人は、解散する。ハルトはとりあえず、リュックにいろいろ詰めた。タオル、ライトに、折り畳みナイフ、ロープに、マンガに、虫除けスプレー、生物図鑑はちょっと重いか……。
 あれこれと悩んでいると、またチャイムが鳴った。どうやら二人が帰ってきたらしい。

「まだ悩んでるの!? 軽い荷物にしなきゃ、小さくても山登りなんだから大変だよ!?」

 よっしーは面倒くさそうに喚く。リュックには必要なものを入れられた。準備万端。三人は立ち上がる。

「……んじゃ、行くか。探検しに」
「そうだ、どうせならさぁ! お菓子持っていこーぜ。携帯食料は大事だよ。スタミナが減れば、逃げられなくなる」

 玄関をガラガラと開ける。そこには、じんわりと汗をかいた女子中学生の集団がいた。その中央に、ハルトの姉のハルカがいた。

「うはぁ。かぁわいーんだ!」
「ねぇ、ハルカ。どの子が弟?」
「弟? ……この一番目つきの悪いクソガキ」

 ケバい子、怖い子、大人びた子、多種多様の女たちに、頭をワシワシと掴まれた。ハルトは手を振り回して抵抗した。

「……うるせー。クソババア」
「ね? 野良猫みたいに態度悪いでしょ? ハルトって言うんだ」

 ドッと盛り上がる、女子中学生たち。

「やだ、鼻筋とか目元がハルカとそっくりだー! かわいー!」
「こんなクソババアと、一緒にすんな!」
「あはは! やだ! 怒った顔も可愛いんだけどぉ!」
「てかさぁ、どこ行くの? あ、お友達と冒険の旅にでも行くの~?」

 クスクス笑われた。でも、半ば当たっているのでビビる。やはり、女は侮れない。

「だ、駄菓子屋だよ! 公園とぉ! 駄菓子屋! 以上、それだけ!」

 おっとりとした女の子がやってきて、微笑む。

「……みんな、気を付けて行ってきてね? 暑いから、熱中症にならないように、ね?」

 さっきまでの空気がガラッと変わった。怒りが途端に冷めていく。

「……は、はーい」

 アカリさん。この女には、みんな弱い……。それは、俺もだ。この人は、なんか違うんだよな。周りのバカみたいに、悪ノリしないし、穏やかで気配り上手。
 女子集団から逃れるために、自転車にまたがった。

「……やっぱ気に食わねぇ。あのクソ女ども、いつかイジメるか?」
「でもさ、アカリさんっていいよなぁ……。優しいし、可愛いし、しかもさぁ、すんげぇいい匂いするし……。ウチの母ちゃんがアカリさんだったらなぁ……」

 山ちゃんはたまに気持ちの悪い顔をする。女の子の話をするときがそうだ。鼻の下伸ばして猿みたいな顔する。

「バーカ。山ちゃんは夢見過ぎなんだよ。……女はな、かなり臭いんだぞ。特に、屁と口が臭いんだ」
「マジで? ハルトの姉ちゃんも?」
「おう。だから、ウンコなんか絶対男より臭いぞ。……きっと、アカリさんも一緒!」
「あんな可愛いのに?」

 二人は押し黙る。そして、顔を見合わせて呟く。

「そうかなぁ……。アカリさんはきっと別だよ。たぶん、オナラはしないと思う」
「同感。たぶん、香水とか金平糖がポンポン出るんじゃね?」

 ハルトは呆れてブレーキを踏んだ。

「あのなぁ! お前らは夢見過ぎなんだよ! バーカ! ……てかさ、女よりさ、よっしーの方がいいだろ。面白いしぃ? かわいいしぃ? なんせ女より賢いんだからなぁ!」
「か、からかうなよ! 次はハルちゃんでも許さないからな!」

 よっしーはプンスカ怒り、ペダルを踏み込んだ。

「……褒めてるのになぁ?」
「んだんだ」

 俺たちは駄菓子屋に寄ってオヤツを買った。

「あ、ジュース買わなきゃ……」
「待て、ジュースは高いだろ」
「そうだよ! 水筒に麦茶をたんまり入れたの持ってるから、みんなで飲もう」

 よっしーは気が利く。だから、女にモテる。男にもモテる。

「さっすが、よっしー! いいこ、いいこ! かわいい子!」
「な、泣かす! ふたりとも、今から泣かす!」

 よっしーはポカリと二人を叩いた。笑いながら、目的地を目指す。心地よい、そよ風が3人の髪を揺らした。山がくっきりと見える。なんだか、そう、冒険の始まりって感じだ。

「さて、ここに停めようか。草陰で見つかりにくいだろうし」
「そうだな。じゃあ、虫除けスプレー振るぞ」
「オレにもよろしく」

 ハルトたちは山道をズンズン進んだ。山は空気が違う。木陰は涼しくて快適だ。

「お? みんな隠れろ! 車かも!」

 脇道に逸れると、車が横を通っていった。乗っているのは強面髭面の男たち。三人は息を殺し、汗を拭う。

「何の用があって、こんな山の中にいるんだろ?」
「オオクワガタでも捕りに来たんじゃね?」
「オオクワガタなら夜行性だろ? それなら、日中に来ないだろ? やっぱ……迂回ルートを探そう」

 山ちゃんは面倒臭そうに腕を組んだ。

「そんなのあるかぁ? ……なぁ、このまま行こーぜ? 隠れたら絶対にバレないって!」

 意見が割れる。よっしーが心配そうな顔をする。

「でも、万が一鉢合わせたら終わりだよ?」
「そう、万が一がある。ちゃんと気を付けなきゃ。とにかく……蛇がいるかもしんないから、俺が先に行く」
「ハルトは頼りになるね!」

 二対一。山ちゃんは頭を掻きむしり、諦めたようにため息を吐いた。

「……だりぃなぁ、もう。わーったよ! わかってるさ!」

 ハルトは足元の木の枝を拾う。1メートルくらいあって、なかなか丈夫そうな棒。

「よし。この棒を頼りに行こう」

 ガサガサと草をかき分け、獣道を進む。なるべく、人の使う道から離れないように、迷子にならないように。ずぶり。奇妙な感触が足元にあった。

「……た、助けて!」
「これ……ぬ、沼か!? 早く出ろ! 底なしかもしれない!」

 蔦を引っ張ってなんとか、這い上がる。腐葉土とヘドロが絡みついている。

「くっせぇ! マジで、ザリガニが死んだ水槽の臭いがする! おぇ!」
「お、おい! ここでゲロ吐くなよ!? 服にかかるし、つられるからさぁ!」
「そんなことより早く出ろ! ヒルがいるかもしんないぞ!」
「……まじかよ!」

 協力して、なんとか、沼地から抜け出すことができた。しばらく登るとちょろちょろと流れる小川があった。そこで泥を落とすことにした。

「あーあ……最悪だよ。完全に臭いが染み付いてる。こりゃ取れんぜ? 歩くたびにガポガポ鳴るし……」
「すぐ乾くさ。ほら、靴擦れに気をつけろよ?」

 しばらく歩くと、急に山ちゃんが駆け出した。

「お、おい! 見ろよ! これ、ヤバいって!!」

 山ちゃんは満面の笑みを浮かべている。

「うわぁ。……エロ本と、エロ漫画だけでなく週刊誌や新聞まであるよ。誰がこんなとこに捨てたんだろ?」
「見た感じ、あんまり湿ってないな。……まだ新しいから、人が出入りしてるってことだろうな。きっと」
「すっげぇ……。これ、見ろよ! この人、おっぱいデッカ! 見なよ、アイドルの写真集もある!」

 ガサガサと漁り始める山ちゃん。山ちゃんの女好きには呆れる。ハルトたちはゆっくり歩き出した。

「山ちゃん、早く行くぞ! 捨てとけ。そんな、ばっちいの!」
「そうだよ。……き、汚いよ? 誰が触ったかもわかんないし、そもそもいつからあるのかわかんないし」
「でも、もったいないっしょ~。こんなのガキのオレらには買えない代物だぞ? オッ! エロいDVDまであるぞ! これなんか、乳首まで写ってる!」
「……オレにはわからん。なぁ、よっしー」
「う、うん。まぁ。そうかも……」

 よっしーは顔を赤くしながら、モゴモゴと呟く。

「はぁ? おいおい、よっしー裏切んな!? よっしーは、女の子好きだよなぁ? ルリのこと好きなんだろ?」
「まぁ……好きっちゃ好きだけど、さぁ……」

 よっしーは照れ臭そうに頬を掻いた。山ちゃんはよっしーの肩をがしりと掴んだ。

「いいかい? みんな、いつかは交尾するんだ。交尾するから生まれるんだぞ。オレたちも親が交尾したから生まれた。つまり、エロは悪くねぇ!」
「……ならどうして、エッチなのは規制されてんの? つまり、悪だからだろ?」

 グラビアアイドルと目が合う。……こいつ、写真撮られてるのに目が笑ってない。好き好んでやってるわけじゃないんだろーな。仕事だって割り切ったつもり、でも、割り切れなくて心から笑えずにいるんだ。

 こういう大人ってけっこういる。そうだ。女は、フツーに嘘をつけるんだよな。それがスゴいと思う。そもそも、女は嫌いだ。

 ……女には、理解されないから。
 多くの女は、生き物を嫌うからな。生き物を嫌うような女は、嫌いだ。カエルやトカゲも、見せた瞬間に逃げていく。……こっちは善意で見せてやったのに。悲鳴を上げてる自分が可愛いと思ってるんだ。それがムカつくし、生き物たちにリスペクトが足りないと思う。
 ……可愛いのために、そこまでするか?

「こんなもの……森の土に還って養分になれ!」

 ハルトは写真集を足で踏みにじった。山ちゃんは顔を覆って悲しそうにした。

「なぁ……ハルト、一冊くらい持って帰っていいよな?」
「意地汚い。……山ちゃん、友達やめるぞ」
「冗談だよ! 冗談!」

 ふと顔を上げると、木陰に小屋があった。それは、朽ちていて、もう誰も使っていないような小屋。汚れた窓からそっと中を覗く。
 人気は……ない。どうやら、物置小屋らしい。

「やっべ、ここの扉開いてるぅ……」

 中に入ると、わかる。ホコリまみれだけど、ちゃんと利用できる。

「なんだここ? いい感じの雰囲気なんだけど」
「……やべぇ。ここ、めっちゃ隠れ家じゃね?」
「てか、秘密基地だよ。そうだ、秘密基地にしよう!」

 三人で協力して、中にあった物を動かす。そして、置いてあったホウキで掃除した。昼休み後の掃除の時間より有意義だった。

「綺麗になったな……」
「秘密基地の名前も決めなきゃね」
「お菓子も置いとこうぜ!」

 わいのわいのと秘密基地での会議は盛り上がった。そして、暗くなる前に、正規ルートで山を降りる。手応えのある満足感。

 ワクワクドキドキ。あー、これだ、夏休み中、ずっと足りなかったの! これこれ! これだよ!

「じゃあな!」
「また明日!」

 家に帰ると香ばしいソースの匂いがした。どうやら、夕飯は早めに食べたらしい。テーブルの上には、たこ焼きパーティーの残骸が残っていた。

 居間は占拠されていた、そこには苦手な女ばかりがいた。

「おえ……」

 吐き気がする。テレビには見たことのあるゲーム画面が表示されていた。

「おっ? 帰ってきたか!」
「あのさ、それ……俺のゲームなんだけど?」
「えー、でもさぁ、没収されたんでしょぉ? 少しくらい使ってもいいじゃな~い」
「そーだ、そーだ!」
「ハルトくん、こっちで遊ぼう? 可愛がってあげる!」

 ……げ、下品な女どもめ。アカリさんがやってきた。艷やかな長い髪が揺れる。お風呂に入ったからか、特段いい香りがする。これは石鹸の香り? アカリさんだけが、特段いい香りがしないか?

「ごめんね? ハルトくん。わたしたち、勝手に使っちゃって……。ハルトくんのだって、わたし知らなかった」
「う、うん……。アカリさんなら別にいいけど、一応没収されてるから元に戻しておいてね」
「……そうなんだ。可哀想に。そうだ、タコ焼き焼いてあげようか? わたし、上手に焼けるよ?」
「あ、ありがとう。でも自分で焼けるよ……」

 アカリさんの焼くタコ焼きは食いたいけど……。肩の向こうに、ニタニタと見つめてくる姉の姿があった。

「……ゲームは元に戻しておけよ? 陰湿クソババアども」
「へぇ……。アカリだけには優しいんだ? ハルトってさぁ、もしかして、もしかして……アカリのこと好きになっちゃった?」
「……ん、んなわけあるか! ブス! アカリさんは優しいから特別なんだよ!」

 そうだ。アカリさんは……神様の力作なんだ。あいつら下等生物とはワケが違う。

「照れてる! かわいいー! まぁ仕方ないよね! アカリって、告白されまくりなんだもんね!」

 ……な、何!?

「そ、そんなことないよぉ……」
「謙遜すな! 何度、恋愛相談に付き合わされたことか……。バスケ部のレンくんにも告られてたし!」

 バスケ部のレン? ……誰だそいつ、ぶっ飛ばす!!

「でも断ったよ? あまりタイプじゃないし……」

 ……ふん。ざまあみろ、レンめ。

「ハルトくーん! ねぇ、一緒に過ごそうよ!? ゲームしようよ!」
「さんせー! ハルトくんを捕まえろ!」

 わらわらと群がってきた。ぎゅっと抱かれた。や、柔らかい。もう誰が誰だかわからないけど、いい香りだ。動けない、圧倒的な力の差で。
 男として情けなくなってきた、涙が溢れそうになる。

「んあッ! もうッ! やめろ! お、お母さん! いじめられてる!」

 ジタバタと暴れてなんとか逃げ出した。涙がこぼれた。

「な~かした! な~かした! ハルカちゃんがな~かした!」
「ガキか!!」

 姉貴のツッコミで、リビングからドッと大きな笑い声が響いた。……悔しい。やつらは体が大きいからって、ああやって子供扱いしやがって……。

「あら、ハルト。頭にヘアピン3つ付いてるよ?」
「……ねぇ、あいつらいつまでいんの? 早く帰ってくんないかな?」

 ヘアピンを投げ捨て、たこ焼きを突きながら母に訊ねる。

「いいじゃないの、ちょっとくらい。夏休みなんだから……あの子達もうすぐ受験するから勉強会してるんだよ?」
「ほーん、そりゃ楽しみだね。どーせ、みんな、落ちるんだからさ」
「……ハルト、息抜きぐらいやらしてあげなさい。そんなことより、早く食べて、お風呂入って、歯を磨いて、寝なさいね?」

 母は姉の味方をする。いつもそうだ。男だからって、我慢をさせられる。

「俺が買ったばかりのゲームなのに、俺のなのに……」
「あ、そうだ。……後で、夏休みの宿題、どこまでやったか見せてね?」

 俺は風呂に逃げ、そして、自室にこもった。……やれやれ、我が家の女は、強い。この家で、男でいるのはとても辛いことだ。だから、父さんはいつも悲しそうな目をしている。哀愁漂う背中を何度見たろうか?

「……ふん! あのババア共、絶対に許さないからな!」


 目を瞑ると、しだいに怒りは冷めていった。……にしても、ワクワクが止まらん! 秘密基地のことが、頭から離れない!

 自由帳を取り出して、やりたいことリストを書き出した。
 あぁ、ドンドン夢が広がる。仲間を増やしてもいいかも。ご飯作ったり、野良猫飼ったり、野菜育てたり……。最後には、あそこに家を建てるんだ……。立派な……家を……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~

桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。 高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。 見知らずの後輩である自分になぜと思った。 でも、ふりならいいかと快諾する。 すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

処理中です...