トリエステ王国の第三王女によるお転婆物語

ノン・タロー

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外遊する王女 ラーデンブルク公国編

姉の家族

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 あたしはラーデンブルク城の使用人と共に謁見の間を出ると、一気に披露感を感じた。

(あぁ~……、緊張した~……!)

 何とか乗り切った、その緊張感から解放されたあたしは思わずその場にへたり込みそうになるのをぐっと我慢しながら城内を歩いていた。

「ステラ」

 その途中、後ろから名前を呼ばれたため振り返るとそこにはあたしの姉、ライラとその夫、エリック公子、そしてもう一人、七歳くらいのエリック公子と同じ茶色の髪をした男の子の姿があった。

「エリック公子様に姉上様、お久しぶりです。最後にお会いしたのがお二人の御婚礼の時以来でしょうか?お二人ともお元気そうで何よりです」

 あたしはお二人の前で再びカーテシーでお辞儀をする。

「ええ、あなたも元気そうで何よりだわ。それとステラ、私の前でそう堅苦しい挨拶はしなくてもいいわよ」

 そう言い笑う姉上の首には髪で少し隠れてはいるものの、十字架クロスの痣が見えた。

「そうだ、君は私の妻、ライラの妹だ。変に堅苦しいのは抜きにして普通の喋り方でも構わないさ」

「……分かったわ、エリック公子に姉上。それなら普通に普通に喋らせてもらうわ。ところで、さっきから気になっていたんだけど、そちらの男の子はもしかして……」

「ええ、そうよ。私とエリックの子供よ」

 やっぱりそうか、と言うことはこの子あたしの甥っ子と言うことになる訳ね。

 逆に言えば、この子から見ればあたしは「叔母さん」という立場になる訳だけど……。

「へえ~、エリック公子と姉上に似て賢そうな子ね。あたしの名前はステラ・ムーン・トリエステよ。あなたのお名前を教えていただけるかしら?」

 その男の子の背の高さになるようにしゃがむと、あたしはその男の子の目線に合わせるようにそう聞いた。

「はい、僕の名前は"ヴィクター・エリク・ラーデンブルク"です。父、エリック・ヴァン・ラーデンブルクと母、ライラ・クロス・ラーデンブルクとの間に産まれた長男です」

 しかしその男の子、ヴィクター君の丁寧な話し方にあたしは思わず度肝を抜かされそうになった。

「ヴィクター君ね、良いお名前ね。あたしがこの国に滞在している間よろしくね」

「はい、こちらこそよろしくお願い致します。父上や母上からステラ様は見聞を広げるためにこの国へと来られたとお聞き致しました。僕も将来ステラ様のような立派な人になれるよう努力したいと思っております」

 ヴィクター君はそう言うとあたしの手を取り軽く口付けをする。

「そ……そう、がんばってね」

 そう口にするヴィクター君にあたしは顔を引きつらせていた。

 な……何この子……、あたしより超しっかりしてるんですけど……っ!?

 多分、父上はこのヴィクター君みたいなのを見習って身の振り方を改めろと言いたいのかも知れない……。

「あの、ステラ様は幼少の頃はどのようにして過ごされていたのですか?ぜひとも教えてください」

「あ……あたしが幼少の頃……?」

「はいっ!」

 ヴィクター君の言葉に冷や汗を流していると、彼は期待に満ちた眼差しであたしを見つめ、あたしの言葉を待っていた。

 あたしの幼少期……、それは勉強や習い事などから兎に角城中を走って逃げ回っていた記憶しかない……。

 それをそのまま伝える……?
 いや、そもそもそれを伝えてもいいものなのかしら……?

 あたしは姉上の顔色を伺うも、その表情からはどう考えているのかは読み取れないけど、少なくともありのままを言ってはいけないような気もする。

「そ……そうね……、あたしの幼少期は元気に外で走ったりしていたわね……。べ……勉強も大事だけど、身体を動かすことも大切だとあたしは思うわよ」

「なるほど!流石はステラ様っ!とても参考になりますっ!」

 あたしは事実をそれとなくオブラートで隠しながらも尤もらしい言い方で伝えると、ヴィクター君は目を輝かせあたしを見つめていた。

 そして、あたしの言葉に姉上は苦笑し、アリアに至っては呆れたように首を横に振っていた。

「さて、ヴィクター。ステラ姫は長旅でお疲れだろうから私達はお部屋へと行こうか」

「はい、父様」

 ヴィクター君はエリック公子と姉上に手を引かれながらこの場を去った行くと、あたし達は使用人の人の案内のもと割り当てられた部屋へと向かったのだった。
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