トリエステ王国の第三王女によるお転婆物語

ノン・タロー

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外遊する王女 ウォルフ王国編

対岸から見つめる人影

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 一旦町を出たあたしとセイラスは川沿いにある堤防へと登り再び町の方へと向かうと、そこには洪水により一部が大きく決壊してしまっている堤防が見えた。

 さらに、上流のほうでは未だに雨が降っているのか茶色く濁った水がどんどん町の方へと流れ込んでいる。

「ど……どうしましょうルーナさん……、思った以上に堤防が壊れていますよ……っ!?」

 決壊した堤防を前にアタフタするばかりのセイラスに対し、あたしは腕組みをしながらどうしたものかと頭を捻る……。

 あの水を止めるには壊れた堤防をどうにかしないといけない。

 しかし、どうにか止めようにもあの水の流れを止めるのは至難の業……。

 どうしたものか……。

「むむむむ……!」

「ルーナさん!ルーナさん……!聞いてますかルーナさん……っ!」

 あたしが必死に頭を悩ませているとセイラスがあたしの肩を掴んで揺さぶってくる。

「あーもーっ!うるさいわね……!今一生懸命考えているところでしょうがっ!あまりうるさいとぶん殴るわよ……っ!」

あたしはセイラスの手を振り払い一喝すると、あたしの言葉にセイラスはビクリと肩を震わせるとその場で硬直してしまう……。

「あ、あの……ルーナさん……?」

 怯えた表情であたしの様子を窺ってくるセイラスに対し、あたしは大きなため息を吐くと「まったく……」と呟く。

「そんなに怖がらなくても取って食べたりしないわよ……」

「べ、別に怖がってはいません!ただちょっと驚いただけで……っ!」

「はいはい……」

 あたしはセイラスへと背を向けると手をひらひらと振って適当にあしらう。

 ホント、セイラスは男なのに変にナヨナヨしているというか、頼りないと言うか……。

「それにしても、この水どうにかして止めれませんかね……?」

「それを今必死に考えているんでしょ……?」

「それはそうなんですけど、こう……地面が『ズモモモモ……ッ!』てせり上がったりしませんかね……?」

「そんな訳……」

 セイラスの訳の分からない発言にあたしは思わず呆れるも、思わずハッとした。

 地面がせり上がる……?

「それよ!セイラス……っ!」

「な……何がですか……っ!?」

 あたしは彼の手を持って興奮気味にそう叫ぶと、セイラスは意味が分からずただ困惑していた。

 確か、そんな魔法が地属性の中級魔法にあったはず!

「行くわよ……!『破岩槍アース・ジャベリン』っ!」

 あたしらセイラスから手を離すとそのまま地面へと手をつきアース・ジャベリンを唱えた!

 アース・ジャベリン、地属性の中級魔法で対象の地面へと魔力を送り岩石の槍を出現させる攻撃魔法。

 本来は決壊した堤防の応急処置として使われるものではないけど、うまく行けばアース・ジャベリンで堤防の代わりにできるかも知れない!

 あたしはそう思いながら決壊した堤防の真下をイメージしてそこへとアース・ジャベリンをかけ続ける。

 すると、水面から尖った岩が顔を出し、それが次々と現れついには巨大なアース・ジャベリンが決壊した堤防の代わりとして水をせき止めた!

「すごい……!凄いですよルーナさん……っ!やりましたよっ!現れた岩が堤防となって水をせき止めましたよ……!」

「そ……そう……、それは……良かったわ……」

「ちょ……!ルーナさん……っ!?」

 セイラスの驚きと歓喜に満ちた声を聞くも、精神力を全て使い果たしたあたしは彼に抱きとめられる形で気を失ったのだった……。


 ~サイドストーリー~

 ー???ー

「ラインハルト皇子、ご報告があります」

 私がモルガンの対岸に構えている砦の執務室でウォルフ王国侵攻の策を練っていると一人の兵士が私の所へとやって来た。
 
 私の名は「ラインハルト・フォン・ヴァルゼン」、ヴァルゼン帝国の第一皇子にしてこのモルガンの対岸に作られた複数ある砦の指揮官をしている。

 とは言っても、最初からここにいた訳ではなく、つい最近この砦へと赴任するように父であり、ヴァルゼン帝国の皇帝でもある「アレクサンドル・ウィル・ヴァルゼン」に命じられたのだ。

 最初こそ各地を巡り妃候補を探してこいと言ってみたり、そうかと思えばこの砦に赴任してウォルフ王国侵攻への足がかりの指揮をしろと言ってみたりと実に勝手だ。

 まあ、私のことは置いておいて今はこの兵士の報告を聞くのが先だな……。

「なんだ、どうした?」

「はい、たった今報告が入ったのですが、対岸のモルガンで異変が起こったそうです」

「異変……だと……?」

「はい。つい先程まで決壊した堤防の水がモルガンへと流れ込んでいたのですが、突然岩が現れたかと思ったら水をせき止めたのです!」

「ふむ……」

 私は兵士の話を聞きながら腕組みをする……。

 町の復旧のためにウォルフ王国が優秀な魔法使いでも派遣したのか……?
 それとも、それは見せかけでこちらへと攻撃する布石……?

「もしかして、こちらへと攻撃をする準備をするつもりなのでしょうか……?」

「分からんな……」

 私は机に置いてあった双眼鏡を手に取ると、モルガン側の堤防を見る。

 すると、そこには一人のウォルフの兵士と、気を失っているのかそれに抱きかかえられている見覚えのある女の姿があった。

「ラインハルト皇子、何か見えますか……?」

「そうだな、中々面白いものが見えたな……。よし!至急空戦部隊にワイバーンを一個大隊分持ってくるように伝えろっ!」

「ワイバーンをですか……?先手を打って侵攻なさるおつもりで?」

「いや、救助活動だ」

「救助活動……ですか……?」

「そうだ、モルガンへの救助活動。だが、これで私の思い通りに事を進められる筈だ」

 そう、ウォルフに対しても、それに……あの女・・・に対しても……。

 私は双眼鏡を下ろすとニヤリと不敵な笑みを浮かべたのだった……。
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