チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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終章 愛する人と生きる少女

おまけその3 酔っ払いの言うことは真に受けるな

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 ―ザクス―


 これはカナと結婚してすぐの事だった……。

「びえぇ~……!ザクス~!わらしをしゅて捨てないでぇ~……!ザクスにしゅてられたらわらし生きていけない~……!」

「カナっ!?どうしたんだ……っ!?グレンさん、これは一体……?」

 いつものように冒険から戻り、冒険者ギルドに入るとなぜかカナがカウンター席に座って号泣している。

 困惑しながら周囲を見渡すと、他の冒険者仲間達や、カナと同じウェイトレス達、それにギルドマスターのグレンさんまでもが困惑しながらカナが手に持っているグラスをじっと見つめていた。

「いや……それがだな……カナちゃんが水と間違えて酒を飲んでしまったみたいなんだ……」

「は……?」

 グレンさんの話を聞き、俺はカナが持っているグラスに顔を近付けると、確かに酒の匂いがする。
 しかもこれ……結構度の強いやつじゃないのか……?

「あはは……、ごめん。実はボクがいたずらでカナの水とお酒をすり替えちゃって……」

 すると、リーツェから遊びに来ていたネコの半獣人の女であるミーナが申し訳なさそうな顔で俺を見てくる。

「いや、でもまさか一口でここまでなるなんてボクだって思わなかったんだよっ!?」

 ミーナの弁解を聞きながら号泣するカナを見るも、俺もまさかカナがここまで酒に弱いとは知らなかった……。

 とはいえ、カナをこのままにしておくわけにもいかないか……。

「カナ、今日はもう帰るぞ」

 俺は未だ号泣しているカナに声を掛けると、彼女は俺に抱きついてきた。

「ザクスぅ……!うぇ~ん……!わらしのところに帰ってきてくれたぁ……!もう怒らないからぁ……しゅてないでぇ~……!」

 冒険者ギルドにいるみんなから生暖かい目で見られるも、頭の中でもう一人の俺が囁きかける。

(……これ、もしかしてチャンスなんじゃないのか?今ならきっとどんな無茶な要望でも通るぞ……!)

 俺の顔が思わずニヤけてくる。

「カナを捨てたりなんかしないって。でもそのなんだ……、俺だって少しは羽目を外したいこともある。だから門限の撤廃をしてほしい。あとスケベ通りくらい通ってもいいだろ?」

「いい!そんなの全然かまわないからずっとわらしの傍にいてぇ~……!」

(上手くいった!)

 あっさりと俺のだした条件を飲んでくれたカナに少し拍子抜けなりそうな気もしなくはないが、これで俺も少しは楽になりそうだ。

「……ザクス、流石にそれはどうかとボクは思うよ?」

 ミーナが白い目で俺を見てくるが、こればかりは譲るわけにはいかない!

 俺は酔って泣きじゃくるカナを連れて今日は早々に帰ることにした。


 そして翌日……カナの許可を得た俺はこの日の冒険が終わってから堂々と門限を過ぎてまで飲み歩き、スケベ通りに寄って結局家に帰り着いたのは日が昇ってからだった。

(カナの許可は得てある。怒られることもないだろう)

 そう高をくくっていたのだが……。

「ザクス……!朝帰りとはいい度胸ね……?」

 玄関を開けると、仁王立ちになっている俺の鬼嫁……もとい、カナの姿があった。
 彼女は魔神の如く怒りをあらわにして俺を睨みつける!

「ま……待ってくれ!カナはこの前門限を撤廃するって言っただろ……っ!?」

「私はそんなこと、一言も言ってないけど……? ふふ、覚悟はできてるよね……?」

「う……うわぁぁぁぁぁーーー……っ!?」

 早朝から俺の悲鳴が我が家に響き渡る。

 酒に酔った奴の言うことを安易に鵜呑みにしてはいけない……、俺は改めてその事を身を持って思い知ったのだった……。
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