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二章 冒険者の少女
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図書館で魔法の勉強をしたあと、私は街の外にある平原へと来ていた。
平原は街の東門から出た所に広がっており、見渡す限り草が緑色の絨毯のように広がっている。
身を隠すものがあまり無いためか、獣や魔物の姿は見当たらない。
「それにしても、魔法の練習はいいけど、的はどうしようかな……」
なにか無いかとあたりを探していると、どこかの冒険者が落としたのか捨てたのか、使い古された木の剣が落ちていた。
「これでいいか……」
木の剣を地面に突き刺すと、魔法のスペルを書き記したノートを開き、魔法の練習をすることにした。
「え~と……、火の精よ、我が声に聞き従いその力を示せ!『火球』っ!」
スペルを唱えると、掌に握り拳くらいの火の玉が現れ、木の剣に向かって飛んでいく。
私が放ったファイヤーバレットは木の剣を外れて飛んでいったが、ある程度飛んでいった所で燃え尽きて消えた。
「で……出た……っ!」
炎の初級攻撃魔法、ファイヤーバレットは外れはしたものの、出せたことに感動すら覚える。
私が魔法を使える日が来るとは夢にも思わなかった!
命中精度は練習して上げるしかないようだ。
この後、私は氷の初級攻撃魔法で氷柱を飛ばすアイスニードル、風の初級攻撃魔法で真空のつむじ風で切りつけるウインドカッター、雷の初級攻撃魔法で雷球を放つライトニングバレット、光の初級攻撃魔法で光の弾を撃ち出すマジックバレットの練習を行うことにした。
◆◆◆
その日の夜……。
「皆さんこんばんは。もし良ければご一緒させてもらってもいいですか?」
冒険者ギルドのホールで食事を済ませた私は、ディンさん達、4人を見かけたので声をかけることにした。
「よおカナ、こんばんは。いいぜ」
「あら、カナちゃんこんばんは。今日はどうしたのかしら?」
「はい、今日は魔法の魔法の勉強をして、それから練習をずっとしていました」
「へえ、カナちゃん魔法を覚えてみることにしたんだ。魔法を使えるようになると戦いの幅が広がるからな。ディンもカナちゃんを見習っていい加減魔法を覚えてみたらどうだ?」
「魔法は俺の性に合わねえんだよ!」
「でも、まだ初級の魔法だけですけどね」
「初級魔法だけでも使えるのと使えないのとではかなりの差があるわ」
「そうだね、昨日も一人でブルラビットを倒したんでしょ?本当にキミの成長の速さには驚かされるよ」
「いえ、そんな……」
この前も冒険者になって2日目でブルラビットを倒せた。
魔法も組み合わせていけば戦いの幅もぐっと広がるだろう。
(この調子なら私一人ででも狼にも余裕で勝てるかもしれない……)
グレンさんは狼には気を付けろと言ってたけど、今の私なら例え狼が束になって来ても余裕で勝てると思う。
「そうだな……。だが、そういう時期が一番危ないんだ……」
そんな私の心の中を見透かしてか、ディンさんは途端に険しい表情で私を見つめてくる。
「ああ、ディンの言う通りだ。何もかも順調なヤツが、自身の力を過信しすぎて命を落としたという話はよく聞くからな……」
「カナちゃん、上手く行ってるからって過信しすぎたらだめよ……?」
「はい、気を付けます」
まあ、多分命を落としたという人達はそう大したことが無かったのだろう。
皆さんは心配してくれているけど、私は大丈夫。命を落としたという他の人達とは違う。
きっと上手くやれる筈。
何たって、冒険者になって2日目でブルラビットを倒して、さらに魔法まで覚えた。
(そう、例え狼が束になって来ても私なら一人でも、うまく対処出来るはず)
この時の私は完全に自分の力に過信をしていた。
それが後に自分の命を危険に晒すことになるとも知らずに……。
平原は街の東門から出た所に広がっており、見渡す限り草が緑色の絨毯のように広がっている。
身を隠すものがあまり無いためか、獣や魔物の姿は見当たらない。
「それにしても、魔法の練習はいいけど、的はどうしようかな……」
なにか無いかとあたりを探していると、どこかの冒険者が落としたのか捨てたのか、使い古された木の剣が落ちていた。
「これでいいか……」
木の剣を地面に突き刺すと、魔法のスペルを書き記したノートを開き、魔法の練習をすることにした。
「え~と……、火の精よ、我が声に聞き従いその力を示せ!『火球』っ!」
スペルを唱えると、掌に握り拳くらいの火の玉が現れ、木の剣に向かって飛んでいく。
私が放ったファイヤーバレットは木の剣を外れて飛んでいったが、ある程度飛んでいった所で燃え尽きて消えた。
「で……出た……っ!」
炎の初級攻撃魔法、ファイヤーバレットは外れはしたものの、出せたことに感動すら覚える。
私が魔法を使える日が来るとは夢にも思わなかった!
命中精度は練習して上げるしかないようだ。
この後、私は氷の初級攻撃魔法で氷柱を飛ばすアイスニードル、風の初級攻撃魔法で真空のつむじ風で切りつけるウインドカッター、雷の初級攻撃魔法で雷球を放つライトニングバレット、光の初級攻撃魔法で光の弾を撃ち出すマジックバレットの練習を行うことにした。
◆◆◆
その日の夜……。
「皆さんこんばんは。もし良ければご一緒させてもらってもいいですか?」
冒険者ギルドのホールで食事を済ませた私は、ディンさん達、4人を見かけたので声をかけることにした。
「よおカナ、こんばんは。いいぜ」
「あら、カナちゃんこんばんは。今日はどうしたのかしら?」
「はい、今日は魔法の魔法の勉強をして、それから練習をずっとしていました」
「へえ、カナちゃん魔法を覚えてみることにしたんだ。魔法を使えるようになると戦いの幅が広がるからな。ディンもカナちゃんを見習っていい加減魔法を覚えてみたらどうだ?」
「魔法は俺の性に合わねえんだよ!」
「でも、まだ初級の魔法だけですけどね」
「初級魔法だけでも使えるのと使えないのとではかなりの差があるわ」
「そうだね、昨日も一人でブルラビットを倒したんでしょ?本当にキミの成長の速さには驚かされるよ」
「いえ、そんな……」
この前も冒険者になって2日目でブルラビットを倒せた。
魔法も組み合わせていけば戦いの幅もぐっと広がるだろう。
(この調子なら私一人ででも狼にも余裕で勝てるかもしれない……)
グレンさんは狼には気を付けろと言ってたけど、今の私なら例え狼が束になって来ても余裕で勝てると思う。
「そうだな……。だが、そういう時期が一番危ないんだ……」
そんな私の心の中を見透かしてか、ディンさんは途端に険しい表情で私を見つめてくる。
「ああ、ディンの言う通りだ。何もかも順調なヤツが、自身の力を過信しすぎて命を落としたという話はよく聞くからな……」
「カナちゃん、上手く行ってるからって過信しすぎたらだめよ……?」
「はい、気を付けます」
まあ、多分命を落としたという人達はそう大したことが無かったのだろう。
皆さんは心配してくれているけど、私は大丈夫。命を落としたという他の人達とは違う。
きっと上手くやれる筈。
何たって、冒険者になって2日目でブルラビットを倒して、さらに魔法まで覚えた。
(そう、例え狼が束になって来ても私なら一人でも、うまく対処出来るはず)
この時の私は完全に自分の力に過信をしていた。
それが後に自分の命を危険に晒すことになるとも知らずに……。
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