チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

文字の大きさ
19 / 214
二章 冒険者の少女

座学

しおりを挟む
 翌日、私は街の地図を見ながら、ペンケースとノートを抱えて街の図書館へとやって来た。

 ペンケースとノートはオーガベアーに襲われた際に奇跡的に残っていた物だ。

 図書館は居住区の辺りにある広場に建っていた。
 外観は白い石造りの建物で、見た目の高さからして3階分くらいの高さがある。

 この図書館の第一印象としては、高さも高いが、横幅が長く、奥行きもかなり広かった。
 中に入ると、館内はとても広く、本もかなりの数が収められている。

「……魔法の本はどこだろう?」

 しかし、こうも広いと目的の本がどこにあるのか全く見当が付かない。
 そもそも、初めて来たのでどのような本が収められているのかすら分からないのだけど……。

「あら……?あなたは……、こんな所でどうしたの?」

 本の多さに途方に暮れていると誰かに声をかけられた。

 誰だろう……?
 そう思いながら振り向くと、以前スケベ通りで出会った女性のエルフの姿があった。

「えっと……、あなたは……?」

「あぁ、突然ごめんなさいね。私はミリア。あなたは確かカナちゃん……だったわよね……?」

「そうですけど、どうして私の名前を……?」

「あなたの事はグレンから聞いていたからね。私は彼とは旧知の仲なの」

 グレンさんはギルマスだけあって顔が広いようだ。

「それで、カナちゃんは何か本を探しに来たのかしら?」

「あ、はい。実は……」

 私はミリアさんにここに来た経緯を説明した。

「なるほど、魔法の勉強をしに来たけど、どこに目的の本があるか分からないと……。いいわ、それなら私が知ってるから付いてらっしゃい」

 ミリアさんのお陰で、光、炎、氷、風、雷の初級魔法と回復魔法に生活魔法、そして女性用の魔法の本を見つけることができた。

「ミリアさん、この女性用魔法というのはなんですか?」

「ああ、これはね女性なら必ず覚えておいたほうが良い魔法よ。特に女性冒険者なら尚更ね」

「どういうことですか?」

 ミリアさんに理由を問うと、女性冒険者は冒険中に野党や同じ冒険者、更にはオークやゴブリンに襲われ犯されるという別の危険が付き纏うのだという。

 もしものときのために、避妊魔法を覚えておけば、例え事後であっても早めに避妊魔法を使えば望まない妊娠は避けられるのだという。

 更に言えば、レイプでなくても行為前に避妊魔法を唱えることで同じく望まない妊娠は避けられるらしい。
 元の世界で言う、ピルやアフターピルを魔術化したもののようだ。

「カナちゃんも、冒険者として活躍するのなら、これは必須と言っても過言じゃないわ。もしもの時に備えて覚えておいたほうがいいわ」

 ミリアさんは真剣な表情でこの魔法の必要性を訴えていた。
 逆に言えば、それだけ冒険中に性的被害にあった女性冒険者が多いという事を表しているのかもしれない。

「後はこの本で生理の痛みを和らげたり、遅らせたり、早まらせたり……。逆に妊娠率を上げる魔法も書いてあるわ。カナちゃんが好きな人の子供を産みたいときは妊娠率を上げると高確率で妊娠出来るわよ♡」

 先程までのミリアさんの真剣な表情とは打って変わって、今度は冗談めかした表情をしていた。

 生理の痛みを和らげてくれるのはありがたいけど、妊娠魔法はいらないかな……。
 好きな人とかいないし……。

「ああ、それと妊娠率を上げる魔法と、避妊魔法を同時にかけると避妊魔法のほうが優先させるわ。避妊魔法は避妊率100%だから」

「同時にかけることってあるんですか……?」

「質の悪い野党や冒険者は妊娠率を上げる魔法をかけてから犯して来たりするのよ……」

 ……なるほど、そういうケースもあるのか。

「後はそうね、照明魔法や物を軽くしたりする生活魔法、治癒や解毒等の回復魔法、各属性の初級の攻撃魔法を覚えておけば冒険はかなり楽になるはずよ。」

「でも、私でも使えるでしょうか……?」

「心配無いわ。"この世界は"魔素に満ちているから、魔法のスペルを唱えれば誰でも魔法は使えるわ。ただ、魔法の強弱は本人の魔力容量キャパシティ次第だけど」

「なるほど……、ミリアさん、色々教えて頂きありがとうございました」

「いいのよ別に。さて、私はそろそろ仕事があるからお店に行くわね」

 私が深々と頭を下げるとミリアさんは気にするなと言わんばかりに笑顔で手を降っていた。

「あ、そうそう。カナちゃんさえよければ私が働いているお店にいらっしゃい。い~っぱい気持ちよくしてあげちゃうから」

 ミリアさんはウインクをしながら胸の谷間から名刺を取り出して私へと差し出してきた。

「あは……、あははは……」

 私はとりあえず愛想笑いを浮かべながら名刺を受け取ることにした。

 名刺には「エルフの穴場♡」という店名とミリアさんの名前が書かれ、「またのご来店をお待ちしております♡」というメッセージとキスマークが付いていた。

「気が向いたらでいいから来てね~、じゃあね~」

 ミリアさんはヒラヒラと手を振りながら私の前から去っていった。

 何にしろ、ミリアさんのお陰で魔法の本を見つけることが出来た私は、各種魔法の本を広げると、ノートへとスペルを書き写していった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...