チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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二章 冒険者の少女

座学

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 翌日、私は街の地図を見ながら、ペンケースとノートを抱えて街の図書館へとやって来た。

 ペンケースとノートはオーガベアーに襲われた際に奇跡的に残っていた物だ。

 図書館は居住区の辺りにある広場に建っていた。
 外観は白い石造りの建物で、見た目の高さからして3階分くらいの高さがある。

 この図書館の第一印象としては、高さも高いが、横幅が長く、奥行きもかなり広かった。
 中に入ると、館内はとても広く、本もかなりの数が収められている。

「……魔法の本はどこだろう?」

 しかし、こうも広いと目的の本がどこにあるのか全く見当が付かない。
 そもそも、初めて来たのでどのような本が収められているのかすら分からないのだけど……。

「あら……?あなたは……、こんな所でどうしたの?」

 本の多さに途方に暮れていると誰かに声をかけられた。

 誰だろう……?
 そう思いながら振り向くと、以前スケベ通りで出会った女性のエルフの姿があった。

「えっと……、あなたは……?」

「あぁ、突然ごめんなさいね。私はミリア。あなたは確かカナちゃん……だったわよね……?」

「そうですけど、どうして私の名前を……?」

「あなたの事はグレンから聞いていたからね。私は彼とは旧知の仲なの」

 グレンさんはギルマスだけあって顔が広いようだ。

「それで、カナちゃんは何か本を探しに来たのかしら?」

「あ、はい。実は……」

 私はミリアさんにここに来た経緯を説明した。

「なるほど、魔法の勉強をしに来たけど、どこに目的の本があるか分からないと……。いいわ、それなら私が知ってるから付いてらっしゃい」

 ミリアさんのお陰で、光、炎、氷、風、雷の初級魔法と回復魔法に生活魔法、そして女性用の魔法の本を見つけることができた。

「ミリアさん、この女性用魔法というのはなんですか?」

「ああ、これはね女性なら必ず覚えておいたほうが良い魔法よ。特に女性冒険者なら尚更ね」

「どういうことですか?」

 ミリアさんに理由を問うと、女性冒険者は冒険中に野党や同じ冒険者、更にはオークやゴブリンに襲われ犯されるという別の危険が付き纏うのだという。

 もしものときのために、避妊魔法を覚えておけば、例え事後であっても早めに避妊魔法を使えば望まない妊娠は避けられるのだという。

 更に言えば、レイプでなくても行為前に避妊魔法を唱えることで同じく望まない妊娠は避けられるらしい。
 元の世界で言う、ピルやアフターピルを魔術化したもののようだ。

「カナちゃんも、冒険者として活躍するのなら、これは必須と言っても過言じゃないわ。もしもの時に備えて覚えておいたほうがいいわ」

 ミリアさんは真剣な表情でこの魔法の必要性を訴えていた。
 逆に言えば、それだけ冒険中に性的被害にあった女性冒険者が多いという事を表しているのかもしれない。

「後はこの本で生理の痛みを和らげたり、遅らせたり、早まらせたり……。逆に妊娠率を上げる魔法も書いてあるわ。カナちゃんが好きな人の子供を産みたいときは妊娠率を上げると高確率で妊娠出来るわよ♡」

 先程までのミリアさんの真剣な表情とは打って変わって、今度は冗談めかした表情をしていた。

 生理の痛みを和らげてくれるのはありがたいけど、妊娠魔法はいらないかな……。
 好きな人とかいないし……。

「ああ、それと妊娠率を上げる魔法と、避妊魔法を同時にかけると避妊魔法のほうが優先させるわ。避妊魔法は避妊率100%だから」

「同時にかけることってあるんですか……?」

「質の悪い野党や冒険者は妊娠率を上げる魔法をかけてから犯して来たりするのよ……」

 ……なるほど、そういうケースもあるのか。

「後はそうね、照明魔法や物を軽くしたりする生活魔法、治癒や解毒等の回復魔法、各属性の初級の攻撃魔法を覚えておけば冒険はかなり楽になるはずよ。」

「でも、私でも使えるでしょうか……?」

「心配無いわ。"この世界は"魔素に満ちているから、魔法のスペルを唱えれば誰でも魔法は使えるわ。ただ、魔法の強弱は本人の魔力容量キャパシティ次第だけど」

「なるほど……、ミリアさん、色々教えて頂きありがとうございました」

「いいのよ別に。さて、私はそろそろ仕事があるからお店に行くわね」

 私が深々と頭を下げるとミリアさんは気にするなと言わんばかりに笑顔で手を降っていた。

「あ、そうそう。カナちゃんさえよければ私が働いているお店にいらっしゃい。い~っぱい気持ちよくしてあげちゃうから」

 ミリアさんはウインクをしながら胸の谷間から名刺を取り出して私へと差し出してきた。

「あは……、あははは……」

 私はとりあえず愛想笑いを浮かべながら名刺を受け取ることにした。

 名刺には「エルフの穴場♡」という店名とミリアさんの名前が書かれ、「またのご来店をお待ちしております♡」というメッセージとキスマークが付いていた。

「気が向いたらでいいから来てね~、じゃあね~」

 ミリアさんはヒラヒラと手を振りながら私の前から去っていった。

 何にしろ、ミリアさんのお陰で魔法の本を見つけることが出来た私は、各種魔法の本を広げると、ノートへとスペルを書き写していった。
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