チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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三章 旅立つ少女

馬車での旅

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 馬車が進んで、どのくらい経っただろう……、馬車の速度は歩くよりは少し早い程度なのだが、今ではラウルの街はすっかり見えなくなってしまった。

 改めて馬車の中を見ると、乗客は私の他にカップルだろうか、若い一組の男女が2人、小さい子供を2人連れた4人の家族連れが一組と、猫の耳と猫の尻尾の生えた半獣人の女の子が1人、帽子を被って、大きな十字架を背負った若い僧侶みたいな男性が1人の合計9人が乗っている。

 小さい子供達はゆっくりと過ぎ去っていく風景や、街道の隅にいるホーンラビットを見つけては、かなりはしゃいでいた。

 私も両親の運転する車での移動はした事あるけど、馬車は初めてなので新鮮な気分だし、なによりこの道は通ったことがないので何もかもが目新しく見える。

 時折ガタガタと揺れる、車とは違う振動がどこか気持ちよく、先程まで沈んでいた心を和ませてくれる。

 さらに、馬車が進んだ頃、お腹が空いてきたので、ジェストさんから貰ったお弁当の包を開いてみると、バゲットみたいなパンをまるまる1本使った、大きなBLTサンドが入っていた。

(ジェストさん……、私こんなに食べられないよ……)

 苦笑しながらもサンドイッチを食べることにした。

「わ……、そんなに大きなサンドイッチ食べれるの……?君って見かえによらず大食いなんだね……」

 四苦八苦しながらサンドイッチを食べていると、唐突に声をかけられた。

 私は声のした方へと顔を向けると、そこには私と同じくらいの歳の茶色いショートヘアーの髪型をした、猫の半獣人の女の子が驚いたように目を丸くしていた。

「えっと、これは知人から貰ったものなの。決して私が自分で選んで買った訳じゃないんだよ」

大食いと間違われては困るので弁解はしておく。

「あ、そうなんだ……。人は見かけによらないなと思ってビックリしちゃったよ……。ボクの名前はミーナ。君は……?」

 ミーナは笑顔で握手を求めて手を差し出す。
 どうやらミーナはボクっ娘のようだ。

「私はカナ。よろしくね」

 私は自分の名前を言いながら握手を握り返した。

「ボクの方こそよろしくね。カナはラウルからリーツェに行くの?」

「うん、今までラウルに居たんだけど、リーツェに行ってみようと思って……。ミーナは……?」

「ボクは反対にラウルからリーツェに帰るところだよ。ボクはリーツェの冒険者ギルドに所属しているんだ。クラスは武道家だよ。カナは見たところ剣士かな……?」

 ミーナはこれが自分の武器だと言って、腕に着ける「鉄の鉤爪」というのを見せてくれた。
 2つあるところを見ると、両腕に着けるのだろう。

「うん、私は剣士だよ」

「あのさ、カナ。ここで合ったのもなにかの縁だし、ボクとパーティを組んでくれないかな?」

 ミーナはお願いと言わんばかりに手を合わせてせがんで来た。

「あ、うん……、いいよ。私も今誰ともパーティを組んでいないし……」

「ホント……っ!?やったー!カナありがとうっ!!」

 ミーナは本当に嬉しそうに抱きついてきた。
 なんか、テンション高めな子だな……。

 それは良いんだけど……、ミーナも胸が大きいようで、その大きな胸が私の腕に押し付けられる。

「ところで、カナはリーツェに行くのは初めて?」

「うん、初めてだよ」

「あ、そうなんだ。途中でラウルとリーツェの間にある町に止まって、そこで一泊してからリーツェに向かうんだよ」

 なるほど、中継地点があるのか……。
 てっきり夜は馬車の中で泊まるのかと思ったけど、そうではないようだ。

 それでミリアさんもジェストさんも食材はいらないって言っていたのか……。
 いつ頃着くのかは知らないけど、町なら宿屋や食堂くらいはあるだろう……。

 その中継地点の町につくまでの間、私はミリアさんやジェストさんの話から始まり、大蜘蛛やアラクネを倒した話しや、レーテの村でゴブリン達と戦った事を、ミーナはリーツェでの冒険の話をしてくれたりと、お互いの冒険の話をしていた。

 更にその後はラウルでの美味しいお店や、リーツェでの美味しいお店、さらに中継地点での美味しい料理などについても話をしていた。
 そして、日が暮れ始める頃、御者越しに町が見えてきた。

「カナ、あれがラウルとリーツェの中間の町、リムルだよ!」

 馬車に乗ること1日、私はリムルの町へと辿り着いたのだった。
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