チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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四章 海を渡った少女

装備工房

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「キラーホーネットと、キラービートルを討伐してきました」

 サーミラの冒険者ギルドへと戻ってきた私達は、ギルドマスターのドレムさんに先程倒してきたキラービートルとキラーホーネット、さらに大きなクイーンホーネットと思われるやつと、同じく大きなキラービートルの残骸を見せる。

「お、ご苦労だったな……て、クイーンホーネットとキングビートルも倒したのか……っ!?こいつ等は中々姿を表さず困ってたんだ……!」

 ドレムさんはそれらの残骸を見て驚いていた。

 どうやらあの大きなキラーホーネットはクイーンホーネットで合っていたようだ。
 それに、あの大きなキラービートルはキングビートルって言うのか……、覚えておこう。

「これでしばらくはあの森も少しは安全になるだろう……。ほら、報酬だ。クイーンホーネットとキングビートルを倒した分も加算させてある」

 私はドレムさんから9万エントを受け取ると、バッシュと半分に分けた。

 玉藻は流石に何もしていないからと言うことで辞退していた。
 それに、船でバッシュから巻き上げたお金があるから平気なのだという……。

「他になにか用があるか?」

「あの、アルアナ教の聖地はどこにあるかご存知ですか……?」

「アルアナ教の聖地……?ああ、マーゼの事かい……?マーゼならこの街を出てずっと南西寄りに行ったところさ」

 ドレムさんは地図を広げてマーゼという所を指差す。
 サーミラがこの北東側の端だから……、マーゼはだいぶ南西の方になるのか……。

「なるほど……、あとこの大陸に魔導都市があると聞いたのですが……?」

「魔導都市……?さあ……、それは聞かないな……。他の街で聞けばなにか分かるかもな……」

「そうですか……、分かりました。わざわざありがとうございました」

 私はドレムさんに頭を下げて冒険者ギルドを後にする。

「ちょっと待ちな嬢ちゃん……、えっとカナ……だったか……?マーゼに行くはいいが、その装備では流石に自殺行為だ……。あんた、キラービートルとキングビートル、クイーンホーネットの残骸を持ってただろ?場所を教えてやるから、それを装備工房に持って行って装備を作ってもらうと良い」

 私はドレムさんに街の地図を貰い、場所を教えてもらうとその装備工房へと向かうことにした。


 ◆◆◆


「え~っと……、ここでいいのかな……?」

 冒険者ギルドを出て、地図を見ながら歩くこと十数分……。それらしき建物に辿り着いた。

 装備工房と思われる建物はかなり大きく、建物の外にいるにも関わらず、開かれた扉からかなりの熱気がはなたれていた。
 というか、実際熱い……。

「妾は熱いのは苦手なので外で待っておくのじゃ……」

「俺はカナと一緒に行くとしよう」

 中に入ろうとすると、玉藻は熱気がこない所へと避難していた。

 私はバッシュと共に工房の中へと入ると、外以上に熱気に包まれていた。
 それと言うのも、工房の奥に大きな窯があり、そこからは高温の炎があがっている。

「あの、ここで装備を作ってもらえると聞いたんですけど……」

 私は受付にいるドワーフの男性に声を掛ける。

「はあっ!?なんだってっ!?」

 聞こえなかったのか、大声で聞き返された……。
 どうやら周りの工房の作業スタッフと思われる人達が金属などを打ち付ける音のほうが大きいようだ。

「あのっ!装備を作って欲しいんですけどっ!!」

 私も周りの音にかき消されのようにドワーフのすぐ近くで大声を出して話しかける。

「なんの装備を作るんだいっ!?嬢ちゃんっ!!」

「このキラービートルとキングビートル、クイーンホーネットを使って作って欲しいんですけどっ!!」

 私は魔法のポーチからキラービートルとキングビートル、そしてクイーンホーネットの残骸を取り出す。

「ああ!いいともっ!それで何を作るんだいっ!?剣かっ!?鎧かっ!?盾かっ!?」

「剣と盾と鎧、三つ全部出来ますかっ!?」

「ああ!出来るともっ!!その代わり一つにつき一週間くらいかかるがいいかっ!!」

「い……一週間……っ!?」

「一から作るんだ!そのくらいかかるっ!!それとも何かベースとなる装備があれば早く出来るぜっ!!例えばその嬢ちゃんが持っている剣や盾をベースとして使えば一つにつき1日で出来るぞっ!!」

 な……なるほど……。

 と言うことは、剣や盾はこれていいとして、鎧も買って持ち込めばそれで作ってもらえるのか……。

「わかりましたっ!それでお願いしますっ!!鎧は買ってくるので待っていてくださいっ!!」

「別に買ってこんでもこの鉄の鎧でよければくれてやるっ!なあに、見た目はボロいが嬢ちゃんのその鉄の胸当ても使って加工すれば問題はないっ!!」

 工房のドワーフはその辺に放置されていたやや古びた鉄の鎧を取り出してきた。

 確かに見た目は少しボロい……、特に胸のあたりには大穴すら開いている。

 でも、ドワーフの加工技術は超1級品だと言う……。
そのドワーフが大丈夫だと言うのだから大丈夫なのだろう……。

「分かりました!ではそれでお願いしますっ!!」

「分かった!では代金は全部で40万エントだっ!!」

 私は配布から40万エントを支払う。

「では確かにっ!なら次はあいつに寸法を測ってもらってくれっ!!」

 工房のドワーフが指差す方を見ると、一人の女性のがいた。
 その女性は黒い三つ編みの髪に、薄手の服を着ている。
 時折見える肌は筋肉質な身体をしていた。

 私は工房のドワーフに剣と盾、鉄の胸当てを渡すと、その女性の方へと歩いていく。

「こちらへどうぞっ!!」

 私はその女性に更衣室なのだろうか、別室へと案内される。

「バッシュ!覗かないでよっ!!」

「そんなことしねえよ……っ!!」

 後ろにバッシュの視線を感じたので念の為釘を刺すと、バッシュは少し照れくさそうに横を向いていた。

 そして、更衣室みたいな所に入ると、とたんに周りが静かになった。

「ふう……、ごめんね。工房の中かなりうるさいでしょ……?あたしはフィーリエって言うんだ、よろしくね」

「は……はあ……。私はカナです……」

「カナか……、いい名前だね。ところで、カナは冒険者なんでしょ?いいなぁ、あたしも親父の手伝いするより、カナみたいに冒険したいなぁ~……」

 フィーリエは頭の後ろで手を組むと、退屈そうにため息を付いている。

「あの……、親父さんって……?」

「さっきカナが話してたのがあたしの親父」

「えぇーー……っ!?」

 私はフィーリエの言葉を聞いて驚いた……!

 あの工房のはドワーフだとすぐに分かったけど、フィーリエは見た目人間にしか見えない……!

 まあ、人間の女性にしてはかなり筋肉質ではあるが……。

「あたし、人間とドワーフのハーフなんだ。だから見た目は母親似、力が強いのは親父似かな?あと、胸は母さん似なんだっ!」

 フィーリエは笑いながらその大きな胸をゆさゆさと揺すっている。

「へ……へぇ~……、そ、そうなんだ……」

 対する私の胸は……ぺったんこ……。

「あ……、ご……ごめんね……。カナ胸小さかったんだ……」

 フィーリエは私の胸を見て気まずそうな顔をしていた。
 なんていうかその……、ほっといて欲しい……!

「そ……、それじゃあカナ、サイズ測るから服脱いで」

 私は服を脱ぐと下着姿になった。
 すると、フィーリエの顔が段々と気まずそうなものへと変わっていく。

「あ……、カナ胸は小さいけど、お尻は大きいんだ。カナって安産型?」

「……知らないよ」

 私は心の中で血の涙を流しながらフィーリエに寸法を測られるのであった……。
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