チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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五章 探し求める少女

騒々しい朝の目覚め

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 翌朝……、昨日は胸が煩いほどにドキドキしてなかなか寝付けなかったけど、いつの間にか寝ていたようだ……。
 しかし、目が覚めて起きると目を疑う出来事が起きていた……。

 私のすぐ目の前にザクスの顔が近くにあり、目が合う……。
 そして、視線を下にさげるとパジャマ代わりに着ている部屋着ははだけさせられ、下着スポーツブラが見えている……。

 布団は脱がされていた……。
 え……?えぇ……っ!?

 突然のことで頭が付いていかない……。

 こ……この状況って……っ!!
 ま……まさか……っ!!

「き……!きゃあぁぁぁあぁぁぁぁーーーーーーー………っ!!!」

 私は悲鳴を上げながらベッドから起き上がるとザクスの顔面をぶん殴る……っ!!

「ぐは……っ!?」

 私のパンチを受けたザクスは後ろへと吹き飛んでいった。

「お……女の子の寝込みを襲うなんてサイテーーっ!!!」

 私は布団を持ち上げると、はだけて下着が見えてしまっている胸元を隠す。

 な……、何……っ!?この前は助けてくれたのに、今度は私を襲う訳……っ!?

 まさか……、何かされているのでは……っ!
 もしかして行為の後とか……っ!?

 私は色々身体を調べてみるがまだ何もされてはいないようで、ほっと胸を撫で下ろす……。

「いたたた……!いきなり殴ることないだろ……っ!?この暴力女っ!!」

「女の子の服を脱がそうとしていた男が何言ってるのよ……っ!!」

「違うって……!布団を脱いでいたから着せてやろうとしてたんだって……!」

「じゃあ、なんで私の胸元がはだけてるの……っ!?」

「知らねえよ……!お前の寝相が悪いんだろ……っ!?」

「と……兎に角着替えるから向こう向いててよね……っ!?」

「はいはい……、お前の貧相な身体に興味なんてねえよ……。そういうお前こそ俺の着替え見るなよな……」

「だ……誰が……!」

 私達はお互い後ろを向きながら着替えを行う。

 チラッとザクスの身体を見てみると、とても引き締まった筋肉質の身体……。

 とは言ってもゴリマッチョやフィジークでもなく、程よく引き締まり、無駄な筋肉のない細マッチョな身体だった。

「お前……、何見てんだよ……」

「み……見てないよ……っ!」

 ザクスに指摘され、私は慌てて目をそらした。

「あの……さ、ザクス……、さっきは殴ってごめんね……」

「ん……?」

「いきなり殴って痛かった……よね……?で……でも……!起きて急に目の前に顔があったら誰だってビックリするよ……っ!?」

「ま、俺も紛らわしいことをして悪かったな……」

「う……うん……。あの……、改めてよろしくね……」 

「ああ、俺の方こそよろしくな!」


 ◆◆◆


 着替えと食事、それに食料や水、矢などの消耗品の買い物も済ませた私とザクスはラウルの北門から抜けた平原へと来ていた。

 ザクスの装備はライトアーマーに身を包み、武器は背中に魔力弓なのだろうか、弦のない弓を装備していた。

 ここから北のレーテへ歩いて、ゴブリンがいた巣穴に到着するまでに丸1日……。

 あまりうかうかしているとディンさん達にアラクネを全て倒されてしまいかねない。

 いや、倒されるだけならいいのだけど、もし燃やされてしまったら糸袋を取れなくなってしまう……。
 そうならないために出来れば倒される前のアラクネを見つけたいところだ……。

「おい、カナ。ぼ~っとしてないで行くぞ……?」

「あ、待って……。歩いていかなくても良いものがあるの」

 私は魔法のポーチからマジックオーブを取り出した。

「何だその玉……?」

「これはマジックオーブっていうアイテムで行ったことがある場所ならどこでも行けるんだ。私の身体に掴まってて……。あ!変な所触らないでよ……っ!」

「分かってるよ……、お前に殴られるのも嫌だからな……」

 ザクスは私の肩を掴む。
 それを確認すると、私はレーテの……、さらに北にあるゴブリンの巣穴をイメージする。

 すると私とザクスの身体が光に包まれた……!


 ◆◆◆


 光が収まり、目を開けるとレーテの北の森にあるゴブリンの巣穴だった所へと到着した。

「ここは……?さっきまでラウルの北門にいたはずだが……っ!?」

 ザクスは驚いたように周囲を見渡す。
 まあ、最初はそんなものだよね……。

「ここはレーテから北に進んだ森の中よ。一瞬で来れたのは、このマジックオーブっていうアイテムのおかげで、これは行ったことがある場所ならどこでも行けるのよ」

「よく分からんが便利なアイテムを持ってるんだな……」

 私は無くさない内にマジックオーブを魔法のポーチへと仕舞い、代わりにランタンを取り出すと、中に照明魔法イルネートを入れ薄暗い洞穴の中へと進む。

「なんの気配もないな……」

「この洞穴はゴブリンが住んでいた洞穴なの。でも以前私とミリアさんとジェストさんの3人で倒したから今はもう何もいないとは思うけど……」

 洞穴の中を進んでいくと、ゴブリンの姿は見えず、中は前みたいな悪臭もしない。

 あの時倒したゴブリン達の死体はどうなったのかは知らないけど、少なくともこの辺りには魔物や猛獣の気配は無いようだ……。


 洞穴を進み、ホブゴブリンがいた大広間の更に奥へと進むと、以前見つけた埋め戻された穴を見つけた。

「あった、これだ」

「なんだこれは……?埋め戻された穴のようだが……」

「多分、この先はアラクネの洞窟につながっていると思うの。ゴブリン達が掘り当てたみたいなんだけど、大蜘蛛に襲われたか何かで慌てて埋め戻したみたいなのよ」

 私の説明にザクスはふ~ん、と答えていた。

 さて、この穴をどうやって掘るか……。
 まさか手で掘る訳にも行かない……。

 一度掘られた所なら簡単にまた穴を開けられるかも……?
ギガインパクトを撃ち込んでみるかな……?

「ザクス、危ないから離れてて……、この塞いでいるものを吹き飛ばすから!いくよ……!『ギガインパクト』っ!!」

 私は埋め戻された穴に手を当て、ギガインパクトを撃ち込むと塞いでいた岩や石を吹き飛ばし、通路が出来上がった。

 よし!うまく行ったっ!

「おお~、うまく行ったな……、と言いたい所だが早速大蜘蛛が出てきたぞ……っ!!」

 開通した通路から大蜘蛛がゾロゾロと迫ってきていた……!

 ザクスは弓を構えると、魔力で出来た青く光る弦が張られた。
 そして、その弦を引くと青く光る一本の魔力の矢が現れた。
 そして……。

「は……っ!!」

 ザクスが矢を放つと一本の魔力の矢がいくつにも別れ大蜘蛛の頭を撃ち抜いていく。
 頭を撃ち抜かれた大蜘蛛はそのまま倒れ、絶命していた……。

 驚いた……、ミリアさん以外にも魔力弓を扱える人がいたんだ……。

「どうだ?俺の魔力弓は?」

「いや……、ミリアさん以外にも持ってい人がいたことに驚いた……」

「ま、数は少ないようだが、一本だけじゃないみたいだからな。他に俺は魔法もある程度は使える。カナは何が出来る?」

「私は剣と、魔法が少しと……、あと弓かな……」

「なるほど……、カナはオールラウンダーと言ったところか……?まあいい、兎に角行くぞ……!」

「ああ……!待ってよ……っ!」

 私はザクスと共に再びアラクネの洞窟へと脚を踏み入れるのだった……。
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