チート無しっ！？黒髪の少女の異世界冒険記

六章 奴隷にされた少女

カナ、売られる……

　奴隷にされて何時間位経っただろう……。
　もう涙は枯れ果て、ただ目には涙の跡だけが残っていた。

　脱出する方法もない……、助けに来てくれる望みもない……。
　私はただ無気力でその場に座り込んでいた……。

「おい！１１６５番出ろ！お前のオークションの時間だっ！」

　ガウインとは別の男がやって来る……。

　その男は檻に繋がれた私に付けられている首輪へと続く鎖を外し、閉じ込めている檻の鍵を開けると、その場から私を連れ出す。

「さっさと歩け！」

　そして、男は首輪へと繋がっている鎖を引っ張り、私はステージのようなところへと連れてこられた……。

　ステージには、マイクのようなものを持ったガウインがおり、このオークションを仕切っているようだ。

『さあ！次の商品ですっ！１１６５番の女奴隷ですっ！！胸は小さいですので売春宿には向かないかもしれませんが、この奴隷なんとＡランクの冒険者です！まだ小娘ですか、女ですので性奴隷にするもよし！冒険者としての実績を買ってグラディエーターにするもよしっ！全ては落札した方の自由ですっ！まずは１００万エントからスタートっ！』

「１１０万！」

「１２０万っ！」

　私にどんどん値段が付けられていく……。
　そこには人としての尊厳などまるで無く、私はただの物なのだと実感させられまた涙が滲んでくる……。

「３００万だ！」

『出ました！３００万っ！他にいないか……！いなければこれで決まりとなります……！』

　他に入札する者がいないのか、会場が静まり返る……。

『決まりました！１１６５番号！３００万で落札ですっ！！』

　私の値段が決まってしまった……。
　もう私は私のものではなく、買った人の所有物となってしまったのだ……。

「お前の名は何だ？」

　絶望に打ちひしがれていると私を買ったと思われる男がやって来る……。
　その人物は鎧を身に纏った屈強そうな人間の男で、鋭い目つきをしていた。

「カナ……です……」

「カナか……、今日からお前は我が闘技場で観客を喜ばせるための剣闘奴隷グラディエーターとなるのだ！」

　これからの私の人生は決まってしまったらしい……。

　私は手錠を付けられたまま再び檻へと入れられ、上から布のようなものを被せられると、どこかへと運び出されたのだった……。


　◆◆◆


～サイドストーリー～

　ーザクスー

　カナが拐われた……！

　最初はミーナに頼もうかと思ったのだが、弟や妹がいるため、遠出はできないと言われてしまった……。

　しかし、冒険者ギルドを通じてカナの捜索を要請してくれるよう動いてくれている……！

　一方の俺は、ある人物にカナを助けるための協力を要請するため馬車でラウルへと向かっていた……！

　そして、リーツェを出て二日後……、ラウルの南門へと着くと冒険者ギルドへと走る……！

　いつもなら南門から冒険者ギルドまではそこまでは遠くはないと思っていたのだが、今回ばかりは違った……！
　やけに遠く感じる……！

「ミリア……！ジェスト……！いるか……っ！？」

　そして、冒険者ギルドへとたどり着いた俺はミリアとジェストの名を呼ぶ……！
　しかし、二人の姿が見えない……！

「おい……！ミリアとジェストを知らないか……っ！？ディン達でもいいっ！！」

　目についたクエストの受付嬢へと詰め寄る……！

　頼む……！どうか近くにいてくれ……！
　俺は祈るような気持ちで受付嬢の返答を待つ……。しかし……。

「ミリアさんとジェストさんでしたら、しばらく仕事で街を離れるそうです。ディンさん達もまだアラクネの洞窟から戻ってませんけど……。」

「な……っ！？」

　俺の願いはいとも容易く打ち砕かれた……。

「ミリアとジェストがどこに言ったのか知らないか……っ！？」

「さ……、流石にそこまでは……」

　くそ……！なんてこった……！

　こんな時に限って……っ！！

　俺は力任せにギルドの受付カウンターを殴りつけたっ！

　結局俺がミリアとジェストにカナを助け出すための協力を頼めたのは２週間後の事だった……。