チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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六章 奴隷にされた少女

ゼービル大陸のドラゴス

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 奴隷として売られてしまった私は、檻ごと台車のようなものに載せられ、外は見えないよう布で覆われたまま何処とも知れない道を進んでいた。

 振動からして、この台車は馬が引いているらしく、どこか遠くへと連れて行かれるのかもしれない……。

 その後、止まったと思ったら今度は檻ごと船へと積まれ、私は船倉へと押し込まれる……。

 もはや完全に荷物扱いだった……。


 どこから船に乗せられ、どこへ向かっているのか分からないまま何日も船倉で過ごす……。

 その間食事は提供されたが、残飯にも似た物で酷いものだった……。
 一応船倉を汚されては困るからか、トイレ用の壺が置かれていたため、トイレはそこでさせられていた。


 檻に布が被せられているため、周りが見えないが周囲からはすすり泣くような声が幾つも聞こえてくる……。
 どうやら私以外にも同じ男に買われてしまった奴隷がいるようだ……。


 ◆◆◆


 船に乗せられ何日経っただろう……?
 私を入れた檻は船から降ろされ再び馬車みたいな物へと乗せられ、どこかへと進んでいく……。

 ここでも外が見えないようにされているためどこへと向かっているのか全くわからない……。
 おまけにこの数日お風呂にも入れていないので身体も結構臭い……。

 お風呂で綺麗にしたいところだが、奴隷である私にはお風呂なんて入れさせてはもらえないだろう……。

「おい!出ろ……っ!!」

 暫く走って今馬車が止まると、三人の兵士のような男がやって来て、私は檻から出される……。
 そして、目の前には大きなの建物がそびえ立っていた……。

「ここが今日からお前が暮らす闘技場だ。お前は見世物として死闘を繰り広げてもらうことになる」

 耳を澄ますと、中から人々の歓声のような物が聞こえてくる……。

 私を檻から出した兵士が死闘と言っていたので、木剣などを使ったも模擬戦などではなく、本物の剣を使った殺し合いが行われているのだろう……。

 そして、私も人々を満足させるためにここで殺し合いをさせられるということになる……。

「ボサッとしてないでさっさと来い……っ!!」

「分かったからそんなに引っ張らないでよ……!」

 三人の兵士のうちの一人の兵士が私の首輪に付いている鎖を引っ張ると、私は闘技場の裏口のような所へと引っ張られていく……。

 中へと入り、階段を降りていくと中は薄暗く、牢屋みたいな部屋が幾つも並んだ通路となっていた。

 その通路を進んでいくと、牢屋の中にはただ座っているもの、死を恐れて震えている者、腕を斬られたのか片腕だけのもの、牢屋の中で死んでしまった者、中には妊娠させられた女性までいた……。

 そして、牢屋が立ち並ぶ通路を進んでいると一つの牢屋の前で兵士達が立ち止まる。

「ここがお前の部屋だ、入れ!」

 私は石造りの牢屋へと押し込まれる……。

 そこは四畳ほどの細長い独居房みたいなところで、石で作られた簡単なベッドと、トイレ用の壺が置かれているだけのとても狭い部屋だった……。

 ベッドはシーツなど当然なく、誰が使っていたのかもわからないボロボロで汚らしい毛布が1枚置かれているだけだ……。

 トイレ用の壺は取り替えられているのか、中身は何も入っていない……。

「はあ……」

 私はため息を付くと石のベッドへと座り込む……。

 私はこれからどうなってしまうのだろうか……?
 あの護衛依頼さえ受けなければ……そのような後悔だけが頭をよぎる……。

「おい……、そこのお前」

 突然誰かに声をかけられる。
 誰だろうか……?よく見ると、正面の牢屋にいるリザードマンが声をかけてきている。

「お前、新人だろ?ここはゼービル大陸にあるドラゴスって街だ。お前もタイタスにグラディエーターとして買われたんだろ?」

「タイタス……?」

「あいつに買われたのなら見たはずだ。鎧を着た目の鋭い男だ……」

 目の鋭い……。
 あのオークション会場にいて私を買った男だろうか……?

「お前に忠告だけしてやる。タイタスには逆らうな……!逆らえば首が飛ぶ……!」

「く……首が……?」

 ゴクリ……。

 私は思わず息を呑む……。

「ここから出るヤツは大抵死体になってからだ……。タイタスに逆らって死ぬか、死合に負けて死ぬかの違いではあるがな……」

「ここから脱出する方法はないの……?」

「無い事はない……。死合で優勝すれば何でも望みを叶えてもらうは事ができるらしい……。優勝すればここから生きて出ることだって夢じゃない……」

 生きて出られる……!

 それを聞いた私に希望の光が差し込む……!
 つまり、戦って、戦って、戦い抜いて……、勝って優勝を掴み取れば奴隷からも開放されるということだ……っ!

「だが……、それはほぼ不可能だ……」

「どうして……?」

「ここには絶対王者がいる……。奴の名はヴァインという獅子の獣人だ……。奴に勝てた者は一人としていない……」

「そんな……」

「ヴァインはタイタスのお気に入りだ。噂では身体の強化魔術が施されているとも聞く……」

「おい!誰だ話をしているのはっ!?」

 見回りの兵士だろうか、リザードマンと話をしていると咎められてしまったため、私達は話を止めて石のベッドへと寝転がると石のベッドは硬くて冷たい……。

 冬が近づき、隙間風が吹き込むこの牢はとても寒く、居心地も寝心地も最悪なものだった……。
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