チート無しっ！？黒髪の少女の異世界冒険記

六章 奴隷にされた少女

剣闘奴隷、カナ

「おい、食事だ……。」

　闘技場の牢屋に入れられてどのくらい経っただろう……。
　兵士が食事だと言ってお皿に入ったパンとスープを持ってくる。

　パンはコッペパンのようなもので、スープは中皿みたいなものに半分くらい入れられている。

　私はスープを一口飲むと吐き気がして来た……！
　それは何を入れて作ったのかはわからないが、ひどい味のスープで、冷めきっていた……。

　船倉で食べさせられた残飯のほうがまだマシに思える……。

　しかし、他に食べるものがないため、吐き気を覚えながらどうにか食べる……。
　その後に食べたコッペパンがとても美味しかった……。


「おい、お前」

「なに……？」

　食事を済ませて冷たくて硬い石のベッドで横になっていると、兵士から声をかけられた。
　見ると、３人の兵士の姿がある。

　食器を下げに来たのだろうか……？
　それとも、味の感想でも聞きに来たのかな……？
　それならクソまずいと言ってやろう……！

「出番だ、出ろ……」

「出番……？」

　なんの出番だろうと思ったが、よくよく考えれば私は剣闘奴隷にされてしまったのだった……。
　その出番と言えば死合と言うことになる……。

　兵士の一人が牢屋の鍵を開けると、私を外へと連れ出す。

　そして、首に付けられたままの鎖を引っ張られ、ここへ来たときとはまた別の階段を登っていく。

　すると、どこかへの控室のようなものへと通される。
　そして、そこには１０人の兵士達の姿もあった。

「これに着替えろ……！」

　兵士の一人に奴隷の服とはまた違うものを投げつけられる。
　その服は奴隷の服よりはマシだが、ボロボロの服とズボンだった。

「さっさと着替えろっ！」

　兵士の語尾が強まる。
　更衣室など無いため、私は兵士にジロジロと見られながら着替えを済ませる……。

　下着は一応つけてはいるが、元々私が付けていたものではなく、奴隷の服同様に誰が付けていたのかもわからない汚らしい下着だ……。

「着替えたらさっさとこれも持て。間違っても変な気を起こすなよ？」

　着替えを済ませた私に古びた剣と盾が渡される。

　これで兵士たちを殺してやろうかとも思ったが、兵士達の数が多いため、逆に殺されてしまうだけだろう……。

「武器を持ったらそこのゲートに立て。ゲートが開いたら死合の開始だ……！」

　剣と盾を持った私はゲートの前へと立たされる。

　ゲートの向こうからは多くの観客が入っているのか賑やかな声がたくさん聞こえる……！
　さらにアナウンスまで聞こえ、会場を盛り上げていた。

『みなさんお待たせしましたっ！！次のカードは歴戦のリザードマン、アッシュと今日入ったばかりの新人の女冒険者、カナだっ！！』

　アナウンスが終わるとゲートが開かれ、私は闘技場へと入場したのだった……。