チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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六章 奴隷にされた少女

決勝

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 ワーウルフに勝利してから何回戦っただろうか……?
 私は勝ち進み、準決勝でエルフの女性と戦わされていた。

 彼女は弓を持って私へと矢を放ってくる……!
 私はそれをギリギリの所で避けながら相手との距離の詰め方を考えていた。

 エルフなので、魔法を使ってくるのかと思ったが、彼女もまた首輪が付けられているため、魔法は封じられているようだ……。

 この女性も元々は冒険者なのだろう……、私と同じく偽の護衛依頼を受けて人拐いに拐われて奴隷にされているのかもしれない……。


 私と彼女が戦う必要性は本来なら無い……。

 無いのだが、闘技場で戦わされているという理由だけでなく、優勝すればここから出られるかもしれないという思いだけを抱いて私達は死闘を繰り広げている。
 だが、実際放たれる矢のスピードは早く、心眼を使ったとしても避けるのは困難だ……。

(なら、放たれる前に近付くしか……っ!!)

 私はエルフの女性が弓を引き始めた瞬間に一気に距離を詰めるように走り出す……!

「それは見え見えよ……っ!!」

 それは相手もお見通しだったようで、私の心臓を目掛けて矢が放たれた……!
 私はそれをスライディングで避けると、一気に彼女の懐へと潜り込んだ。

「う……うそ……っ!?」

 彼女から明らかに動揺の声が漏れ出る……!

 そしてそのまま立ち上がると同時に体当たりをし、押し倒すと私は彼女の上に馬乗りとなり剣を喉元に突き付ける……!

「お願い……!決着はついたよ……。だから投降して……!」

 私は彼女に投降を勧める。
 大人しく投降してくれれば私はこの人を殺さずに済む……。

「……甘いわね。あなたがもし反対の立場なら大人しく投降するかしら?」

 彼女はそっと手を動かし、落ちていた矢を拾おうとする……。
 だが、その手を脚で押さえ付け、矢を拾うことを阻止した。

「お願い……、あなたを殺したくないの……!」

「優しいのね……。でも、女は負けたら殺されるよりも、もっと酷いことをされるのよ……。あなたとはもっと違う形で出会いたかった……っ!」

 彼女はそう言うと舌を噛み切り自殺してしまった……。

 勝つには勝ったが、どうしようもないやるせなさが私を襲う……。

『勝者!カナぁぁぁぁーーー……っ!!』

 アナウンスと共に歓声が湧き上がるが、私は胸くそ悪い気持ちを抱いたまま剣を鞘へと納め、ゲートへと戻って行く……。

 アッシュの言っていた通り、ここは地獄だ……。
 しかし、本当の地獄を私はまだ知らなかった……。


 ◆◆◆


 翌日、いよいよ決勝戦が行われようとしていた……。

 これに勝てば私はここから出られる……。
 だが、相手は生前アッシュが言っていた絶対王者のヴァインという獅子の獣人だ……。

 聞いた話では力もスピードも規格外に高いのだという……。
 おそらくはミーナよりも遥かに早く、ジェストさんよりも遥かに力が強いのだろう……。

 ヴァインはどんな武器で来るのか……、剣か、槍か、斧か……。
 相手の使う武器によって戦い方が変わっては来る……。
 私は思わず手を握りしめる……!

 後1勝……っ!

『それではお待たせしました!いよいよ決勝戦ですっ!これに勝てばこの闘技場の支配人タイタス様より望みの報酬が得られますっ!それでは剣闘士の入場ですっ!まずは無敵の絶対王者!ヴァインっ!!そして、破竹の勢いで決勝まで進んだ新人の女冒険者、カナっ!!』

 アナウンスが流れると、観客の割れんばかりの歓声が聞こえる。
 そしてヴァイン・コールが巻き起こっていた。

 彼は絶対王者というだけありかなり人気なようだ……。
 だからといって負けるわけには行かない……!

 私は気合を入れてゲートをくぐり、闘技場へと入った……。
 反対側のゲートには既にヴァインの姿があった。

 金色のたてがみに革の鎧を身に纏い、腕組みをして佇んでいる……。
 その風格は絶対王者の名に相応しいものだった。

 私はヴァインが手にしているものを確認すると武器は何も持っていない……、素手だ。
 元々素手で戦うタイプなのか、それとも余裕の現れなのか……。

 剣を握る手に力を込め、私はヴァインへと走り出す……!

 一方のヴァインは腕組みをしたまま佇んでいた。
 どう言うつもりなのだろうか……?

 何にしろ攻撃をして来ないというのなら……っ!!

「はあっ!!」

 ヴァインへと剣を薙ぎ払う……が、後ろへと避けられてしまう。

 く……!
 ならこれで……!

 連続で剣を振るうがヴァインに当てるどころか掠りもしない……。

「お前の力はそんなものか……?」

 ヴァインが失望したかのように呟く……。
 く……!ならば……っ!!
 私は目を瞑り、心眼を発動させたのだったっ!
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