罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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由奈の章 甘えたがりな義妹

好きだから……苦しくなる……

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 翌日……あたしは目を覚ますと部屋を出て一階にある洗面台へと向かうため階段を下りる。

(なんか昨日は中々寝れなかったよ……)

 頭の中で様々な考えが巡り、あたしはほとんど寝ることができなかった……。

(……やっぱり、あたしは“妹”でしかないのかな)

 彼方さんが昨日お姉ちゃんへと向けていた笑顔、ミオリネさんと楽しそうにしていたゲーム……。

(彼方さん……あたしって彼方さんの恋人じゃなかったの……?なんであたしにだけ笑顔を向けてくれないの……?)

 自分でもどんどん嫌な子になっていってるという自覚はある……。
 でも……彼方さんのことを思えば思うほど自分だけの彼方さんでいて欲しいという思いもまた大きくなっていた。

(あたし……ホントイヤな子になっちゃってる……)

 はぁ……。

 あたしは心の中でため息を付きながらリビングの入り口を通り過ぎようとすると彼方さんとお母さんの話し声が聞こえてくる。

「彼方くん、本当に料理上手ねぇ~……。私職場で自慢してもいいかしら?」

「やめてくださいよ、真奈美さん……」

 楽しそうに話している彼方さんとお母さんを見ているとまた胸がズキっと痛くなり心が何か真っ黒な雨雲のようなモヤモヤに覆われていくのがわかる……。

 "お母さん……!あたしの彼方さんから離れてよ……!"

 心の中でそんな声が聞こえてくると、あたしはハッとした。

(あたし……お母さんにまで嫌なこと考えちゃってる……)

 あたしは心の中の声をかき消すよに顔を洗った……。


 ◆◆◆


 朝食を食べ終えたあたしは彼方さんの腕に抱きつきながら上機嫌で登校していた。

「彼方さん♡」

 あたしは腕にしがみつかながら頬をスリスリとこすりつける。

 自分でも分かってる。
 これって、まるで動物が“自分のもの”って印をつけてるみたい。
 でも……それくらいしないと、彼方さんは誰かに取られちゃいそうで。

「ちょっと……由奈歩きにくいよ……」

 彼方さんは苦笑しながらも腕を無理に引き抜くことなくそのままでいてくれている。

(はあ……、やっぱり彼方さんはすっごく優しい……)

 朝の心のモヤモヤはどこへやら……。
 今のあたしの心は今日の天気のように晴れ渡っていた。

「ええ~、いいでしょ?だって放課後まで会えないんだもん……。今のうちにこうやって彼方さん成分を補充しておくの♪」

 あたしはさらに腕にしがみつくと、自分の胸を彼方さんの腕へと押し当てる。

「ちょ……!由奈……っ!?」

 彼方さんは顔を赤くしながらあたしを見る。

 たぶん、胸が当たってるって言いたいんだろうけど、もちろんこれはわざと当ててる。
 あたしは彼方さんが自分を見てくれていることに嬉しさを感じていた。

 しかし……別れの時はやって来る……。

「それじゃあ由奈、帰りに付属の方に迎えに行くね」

「……うん」

 付属中学と本校の分かれ道……。
 彼方さんは笑顔であたしへと手を降ってくれるも、あたしは少しさみしげに手を振り返す……。

(あ~あ……、付属中学が本校のすぐ隣にあればいいのに……)

 あたしは心の中でボヤきながら付属中学へと歩こうとすると一人の女の先輩とすれ違った。

 その先輩は黒い髪を揺らしながら彼方さんを見つけると、駆け寄っていく。

「おはよう、御堂君……、よかったら一緒に学校に行かない……?」

「おはよう、柊さん。まあいいよ、一緒に行こうか」

 え……?

 その瞬間、あたしと彼方さんの間に、深くて暗い崖ができた気がした。

「彼方さん……その人……だれ……?」

 あたしは一人ポツリと呟く……。

「そういえば……あのラノベの二巻全部読んだ……」

「読んだんだね、どうだった……?」

「新スキルを得るのはいいけど……あのやり方はどうかと思う……」

「……確かにそれは僕も思った」

 二人は楽しそうにラノベの話をしながら本校へと向かう。

 それを見たあたしは目の前が真っ暗になって、足元がふらついた。
 この世の終わりって、きっとこういう感じなんだと思った。

 でも……誰にも言えなかった。
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