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由奈の章 甘えたがりな義妹
由奈の章 エピローグ ──桜の舞う通学路で……──
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生徒会室を出た僕と由奈は夕日の差す屋上へと来ていた。
「彼方さん、今日は楽しかったね」
「……そうだね」
僕も途中までは楽しかったけど、最後の最後で高藤の弟を見た時にどっと疲れた気がする……。
「ところで、由奈は高藤の弟が生徒会長って知ってたの?」
「もちろん知ってたよ、だって自分の学校の生徒会長だもん。でも、生徒会長のお兄さんを彼方さんが知ってたなんて驚いたよ」
そう言えば由奈は高藤と会ったことないんだっけ……。
それにしても、今日は終始高藤に振り回されたような気がするよ……。
「ところでこのペアリングどうする?」
「もちろん付けるよ!」
由奈はそう言って、ペアリングをそっと指にはめると、夕日がリングに反射して由奈の横顔をそっと染める。
「彼方さんも、つけて?」
由奈が僕に手を差し出す。
その手は少し震えていたけど、指先には確かな意志が宿っていた。
「……うん」
僕もペアリングを指にはめる。
指先が触れた瞬間、空気がふたりの色に染まった気がした。
風が吹く……夕焼けが、少しだけ濃くなる。
言葉はないけど、ふたりの間に“何かが完成した”のが分かった。
「彼方さん左の薬指につけてくれないの?」
「なんで左の薬指につけないといけないのさ……」
それじゃ結婚指輪だよ……。
「えぇ~、残念……」
由奈は僕が断ると舌をペロッとだすとクスッと笑う。
「……そういうのは、ちゃんとした時に渡すよ」
僕がそう言うと、由奈は少し驚いたように目を丸くして、それから顔を赤く染めた。
「……それって、いつかってこと?」
「……うん。いつか、ちゃんと……」
僕の言葉に、由奈はしばらく黙ると静かにほほ笑んでいた。
由奈はそっと僕の腕に寄り添う。
夕焼けの光がふたりの影を長く伸ばして、屋上の床に並べてくれた。
「……ねえ、彼方さん」
「ん?」
「これからも、ずっと隣にいてくれる?」
「……由奈がイヤって言っても、僕はずっと隣にいるよ」
「えぇ~、それは困るなぁ~」
由奈は少し照れたように笑って、僕の肩にそっと頭を預けた。
僕は何も言わず、このまま由奈を見つめていると僕たち言葉の代わりに、そっと唇を重ねた。
ペアリングは、ただのアクセサリーじゃない。
ふたりの空気が、形になった証だ。
そして僕たちは、夕日の中でしばらく黙っていた。
言葉はいらなかった。
空気がすべてを語っていた。
◆◆◆
あれから月日が経った4月のある日……。
「彼方さん早く早く!」
下ろし立ての本校の制服に身を包んだ由奈が笑顔で僕の手を引く。
僕たちの指には今もあの時のペアリングが着けられている。
「ちょっと……!そんなに引っ張ったら転ぶよ……!それにそんなに急がなくても学園は逃げないよ……!」
「えぇ~!でも、今日から彼方さんと一緒に学園に行けるんだよっ!?あたしこの日を心待ちにしてしてたんだから!」
興奮冷めやまぬ由奈に僕は苦笑する一方で、亜希は由奈へと冷たい視線を向けていた。
「全く……由奈、そんなに慌てなくてもこれからは毎日、嫌と言うほど彼方と一緒に通学できるんだからそんなに慌てなくてもいいでしょ?」
「むう……!お姉ちゃんにはあたしの気持ちは分からないもん!」
「はいはい……と、由奈、彼方……悪いけど私は先に行くわよ……」
亜希はため息を付きながら一足先に学園へと向かう。
もしかしたら彼女なりに僕と由奈に気を遣ってくれたのかもしれない。
「それじゃあ、僕たちも行こうか」
「うんっ!」
僕は手を差し出すと由奈は笑顔で腕に抱きついてくる。
手を繋ぐために手を出したんだけど……まあいいか……。
「由奈、嬉しそうだね」
「嬉しそうじゃなくて、嬉しいの!それより彼方さんお願いがあるんだけど……」
「ん?お願いってなに?」
「あのさ……2回ほど留年してくれないかな……?」
由奈は上目遣いで僕を見るととんでもないことをサラッと言い放つ。
「イヤだよ……!」
「え~っ!彼方さんが2回留年したらあたしと同じ学年になれるのに……!そうしたら同じクラスになれる可能性だってあるんだよ……っ!?」
「"え~!"じゃないよ……!それに……そんなことしなくても僕はずっと由奈と一緒にいるよ」
「彼方さん……うんっ!」
僕は顔を赤くしながら由奈にそう言うと彼女は眩いばかりの笑顔を僕へと向けてくれる。
この先何があってもこの笑顔をずっと守っていこう……。
桜の舞う通学路を歩きながら僕は心の奥で静かに誓ったのだった……。
由奈の章 完
「彼方さん、今日は楽しかったね」
「……そうだね」
僕も途中までは楽しかったけど、最後の最後で高藤の弟を見た時にどっと疲れた気がする……。
「ところで、由奈は高藤の弟が生徒会長って知ってたの?」
「もちろん知ってたよ、だって自分の学校の生徒会長だもん。でも、生徒会長のお兄さんを彼方さんが知ってたなんて驚いたよ」
そう言えば由奈は高藤と会ったことないんだっけ……。
それにしても、今日は終始高藤に振り回されたような気がするよ……。
「ところでこのペアリングどうする?」
「もちろん付けるよ!」
由奈はそう言って、ペアリングをそっと指にはめると、夕日がリングに反射して由奈の横顔をそっと染める。
「彼方さんも、つけて?」
由奈が僕に手を差し出す。
その手は少し震えていたけど、指先には確かな意志が宿っていた。
「……うん」
僕もペアリングを指にはめる。
指先が触れた瞬間、空気がふたりの色に染まった気がした。
風が吹く……夕焼けが、少しだけ濃くなる。
言葉はないけど、ふたりの間に“何かが完成した”のが分かった。
「彼方さん左の薬指につけてくれないの?」
「なんで左の薬指につけないといけないのさ……」
それじゃ結婚指輪だよ……。
「えぇ~、残念……」
由奈は僕が断ると舌をペロッとだすとクスッと笑う。
「……そういうのは、ちゃんとした時に渡すよ」
僕がそう言うと、由奈は少し驚いたように目を丸くして、それから顔を赤く染めた。
「……それって、いつかってこと?」
「……うん。いつか、ちゃんと……」
僕の言葉に、由奈はしばらく黙ると静かにほほ笑んでいた。
由奈はそっと僕の腕に寄り添う。
夕焼けの光がふたりの影を長く伸ばして、屋上の床に並べてくれた。
「……ねえ、彼方さん」
「ん?」
「これからも、ずっと隣にいてくれる?」
「……由奈がイヤって言っても、僕はずっと隣にいるよ」
「えぇ~、それは困るなぁ~」
由奈は少し照れたように笑って、僕の肩にそっと頭を預けた。
僕は何も言わず、このまま由奈を見つめていると僕たち言葉の代わりに、そっと唇を重ねた。
ペアリングは、ただのアクセサリーじゃない。
ふたりの空気が、形になった証だ。
そして僕たちは、夕日の中でしばらく黙っていた。
言葉はいらなかった。
空気がすべてを語っていた。
◆◆◆
あれから月日が経った4月のある日……。
「彼方さん早く早く!」
下ろし立ての本校の制服に身を包んだ由奈が笑顔で僕の手を引く。
僕たちの指には今もあの時のペアリングが着けられている。
「ちょっと……!そんなに引っ張ったら転ぶよ……!それにそんなに急がなくても学園は逃げないよ……!」
「えぇ~!でも、今日から彼方さんと一緒に学園に行けるんだよっ!?あたしこの日を心待ちにしてしてたんだから!」
興奮冷めやまぬ由奈に僕は苦笑する一方で、亜希は由奈へと冷たい視線を向けていた。
「全く……由奈、そんなに慌てなくてもこれからは毎日、嫌と言うほど彼方と一緒に通学できるんだからそんなに慌てなくてもいいでしょ?」
「むう……!お姉ちゃんにはあたしの気持ちは分からないもん!」
「はいはい……と、由奈、彼方……悪いけど私は先に行くわよ……」
亜希はため息を付きながら一足先に学園へと向かう。
もしかしたら彼女なりに僕と由奈に気を遣ってくれたのかもしれない。
「それじゃあ、僕たちも行こうか」
「うんっ!」
僕は手を差し出すと由奈は笑顔で腕に抱きついてくる。
手を繋ぐために手を出したんだけど……まあいいか……。
「由奈、嬉しそうだね」
「嬉しそうじゃなくて、嬉しいの!それより彼方さんお願いがあるんだけど……」
「ん?お願いってなに?」
「あのさ……2回ほど留年してくれないかな……?」
由奈は上目遣いで僕を見るととんでもないことをサラッと言い放つ。
「イヤだよ……!」
「え~っ!彼方さんが2回留年したらあたしと同じ学年になれるのに……!そうしたら同じクラスになれる可能性だってあるんだよ……っ!?」
「"え~!"じゃないよ……!それに……そんなことしなくても僕はずっと由奈と一緒にいるよ」
「彼方さん……うんっ!」
僕は顔を赤くしながら由奈にそう言うと彼女は眩いばかりの笑顔を僕へと向けてくれる。
この先何があってもこの笑顔をずっと守っていこう……。
桜の舞う通学路を歩きながら僕は心の奥で静かに誓ったのだった……。
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