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澪の章 寡黙なクラス委員長
デートの終わりと待ち受ける尋問
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楽しい時間ほど、あっという間に過ぎてしまう——。
僕と澪は夕日の差す電車の中で無言で手を繋いで座っていた。
「澪……今日は楽しかったね……」
「うん……」
「それに、昨日と今日と澪のお母さんにはとてもお世話になったからよろしく言っておいてよ」
「うん……」
澪は無表情のまま、ただ静かに頷いた。
その瞳の奥に、言葉にならない寂しさが滲んでいる気がした。
澪とはまた明日学園に行けば会える……。でも……今日という特別な時間が終わってしまう……。
それがとても悲しく、そして寂しかった。
澪も同じように思っているのか、僕の手を強く握ってくる。
「また明日学園であえるよ、それに同じクラスだし」
「うん……」
また明日学園であえる……、それ自分に向けた言葉でもあったけど、澪は無表情で頷くだけだった。
◆◆◆
電車とバスを乗り継ぎ、僕は澪と彼女のアパートの前まで帰ってきた。
「またね」と言えば、それで終わってしまう。
でも、その言葉がどうしても口にできなかった。
澪もまた無言で僕の手をギュッと握りしめる……。
「澪……」
「彼方くん……家に上がってほしい……。お母さんが帰ってくるまででいいから……」
「……分かった」
少しでも一緒にいたい……そう思った僕は澪の提案に頷く。
澪の家へと上がると、僕は彼女の部屋のベッドに並んで座っていた。
澪はベッドの隅で座っている僕の胸へと耳を当て、僕の心臓の音を聞いている……。
僕はそんな澪の頭を優しく撫でていた。
「彼方くんの心臓の音が聞こえる……。ずっと聞いていたい……」
「澪……」
それはさすがに無理だよ……僕はその言葉を飲み込むと彼女の髪の匂いを嗅ぐ……。
澪の髪は甘い匂いがしながらも少しだけ汗の匂いも混じっていたけど、少しも嫌な感じはしなかった。
むしろ、ずっと嗅いでいたいとさえ思う。
「彼方くんにわたしの頭の匂い嗅がれてる……。汗臭くない……?」
「ううん、澪の匂い好きだよ。ずっと嗅いでいたいくらい」
「じゃあ……一緒にここで暮らそ……?」
「澪……それは……」
澪の言葉に僕はドキッとする。
確かに澪と一緒に暮らしたいとは思う……。
でも、お互い未成年だし保護者がいる。
澪もそれが分からないほど子供じゃないはず……。
(でも……それだけ僕と一緒にいたいと思ってくれてるんだろうな……)
そう思うと僕の胸が少し締め付けられる。
「……澪、僕の成分どのくらい補給出来た?」
「……全然足りない」
僕は敢えて話題をそらす……が、その意図が分かったのか澪は僕にギュッと抱きついてくる。
「澪……」
「全然足りない……」
「僕もいつかは帰らないと……」
「全然……足りない……」
澪の体が震えていた……。
僕は抱きしめたくなる気持ちをぐっと堪える……。
今彼女を抱きしめたら僕は澪を離したくなくなるだろうから……。
「ただいま」
と、その時玄関から澪のお母さんの声が聞こえてきた。
「澪……お母さん帰ってきたよ……」
僕は澪に話しかけるも彼女は何も答えずにただギュッと僕に抱きつく。
「澪、彼方君いるの……?」
澪の部屋のドアが開けられるとお母さんが顔をのぞかせる。
「あ、ど……どうもおじゃましています……」
「あら、彼方君……、時間はいいの……?」
澪のお母さんに言われ窓の外を見ると少し薄暗くなり始めていた……。
「澪からお母さんが帰ってくるまで傍にいて欲しいって言われて……」
「あらそうだったの……。ごめんね彼方君……」
事情を聞いたお母さんは少し申し訳なさそうな笑みを浮かべていた。
「澪……、僕そろそろ帰るよ……」
「やだ……」
僕は立とうとするとそれを阻止するかのようにギュッ澪が抱きついてくる。
「澪……」
僕は彼女の肩にそっと手を置くと、澪の涙が僕の膝にぽつりと落ちた。
その一滴が、胸の奥にじんと染みていく。
「やだ……彼方くん帰っちゃやだ……!ずっとここにいてほしい……!」
「澪……!もう、いい加減にしなさい!彼方君困ってるでしょ……!」
見かねた澪のお母さんが澪を僕から引き離そうとする。
「やだ……!離して……!お母さん離してよ……!」
澪は引き離されまいと必死の抵抗を見せるも、ついに僕から引き離される。
「彼方君今のうちに……!澪は後で私が説得するから……!」
「……分かりました」
僕は立ち上がると澪にそっとキスをする。
その一瞬に、すべての想いを込めて。
「澪……また明日学園で会おうね……」
僕はそれだけを言い残すと後ろ髪を引かれる思いで彼女の家を後にした……。
◆◆◆
澪……、泣いていたな……。
僕は未だ体に残る彼女の温もりを感じながら薄暗い道を歩いて自分の家へと向かう……。
さみしくないと言えば嘘になる……。
できれば僕だってずっと澪といたい……。
でも……それは出来ない……。
耐えるしかない……、僕は手が痛くなるまで拳を握りしめると澪とまだいたかったとという未練を断ち切るかのように走りだした。
あの温もりが、まだ僕の胸に残っている……。
それを振り払うように、僕は夜道を駆け抜けるも、胸の奥にはまだ彼女の気配が残っていた……。
「ただいま……」
家に帰ると玄関には真奈美さんと亜希、それに由奈ちゃんの姿があった。
「おかえりなさい彼方くん。さて……約束通り色々と根掘り葉掘り聞かせて貰うわよ♪」
「こんな遅い時間になってる訳だし……説明してもらうわよ彼方……」
「お兄ちゃん……!あの彼女さんとはどこまで進んだのっ!?もちろんキスくらいはしてるよねっ!?それ以上は?それ以上も行ってるよね……っ!?だってお泊りだし……!何もないほうがおかしいよねっ!?」
我が家の女性陣三人が、まるで取り調べのように僕へと詰め寄ってくる。
(に……逃よう……!)
そう思った僕はくるりと後ろへと振り返る。
「あ……そうだ……、澪の家に忘れ物してきたよ……!」
「彼方……、柊さんとは同じクラスでしょ?忘れ物くらい明日持ってきてもらえばいいんじゃないの?」
「うぐ……!」
亜希の正論が僕の胸に突き刺さる……!
「逃げようたってそうはいかないわよ、彼方くん♪」
「お兄ちゃん、色々と教えて欲しいな……♡」
「あは……あははは……」
僕の口からは乾いた笑いしか出ない……。
……こんなことなら、澪の家にもう一泊しておけばよかった。
そう本気で思いながら、僕は三人から逃げ場のない尋問を受け続けた。
僕と澪は夕日の差す電車の中で無言で手を繋いで座っていた。
「澪……今日は楽しかったね……」
「うん……」
「それに、昨日と今日と澪のお母さんにはとてもお世話になったからよろしく言っておいてよ」
「うん……」
澪は無表情のまま、ただ静かに頷いた。
その瞳の奥に、言葉にならない寂しさが滲んでいる気がした。
澪とはまた明日学園に行けば会える……。でも……今日という特別な時間が終わってしまう……。
それがとても悲しく、そして寂しかった。
澪も同じように思っているのか、僕の手を強く握ってくる。
「また明日学園であえるよ、それに同じクラスだし」
「うん……」
また明日学園であえる……、それ自分に向けた言葉でもあったけど、澪は無表情で頷くだけだった。
◆◆◆
電車とバスを乗り継ぎ、僕は澪と彼女のアパートの前まで帰ってきた。
「またね」と言えば、それで終わってしまう。
でも、その言葉がどうしても口にできなかった。
澪もまた無言で僕の手をギュッと握りしめる……。
「澪……」
「彼方くん……家に上がってほしい……。お母さんが帰ってくるまででいいから……」
「……分かった」
少しでも一緒にいたい……そう思った僕は澪の提案に頷く。
澪の家へと上がると、僕は彼女の部屋のベッドに並んで座っていた。
澪はベッドの隅で座っている僕の胸へと耳を当て、僕の心臓の音を聞いている……。
僕はそんな澪の頭を優しく撫でていた。
「彼方くんの心臓の音が聞こえる……。ずっと聞いていたい……」
「澪……」
それはさすがに無理だよ……僕はその言葉を飲み込むと彼女の髪の匂いを嗅ぐ……。
澪の髪は甘い匂いがしながらも少しだけ汗の匂いも混じっていたけど、少しも嫌な感じはしなかった。
むしろ、ずっと嗅いでいたいとさえ思う。
「彼方くんにわたしの頭の匂い嗅がれてる……。汗臭くない……?」
「ううん、澪の匂い好きだよ。ずっと嗅いでいたいくらい」
「じゃあ……一緒にここで暮らそ……?」
「澪……それは……」
澪の言葉に僕はドキッとする。
確かに澪と一緒に暮らしたいとは思う……。
でも、お互い未成年だし保護者がいる。
澪もそれが分からないほど子供じゃないはず……。
(でも……それだけ僕と一緒にいたいと思ってくれてるんだろうな……)
そう思うと僕の胸が少し締め付けられる。
「……澪、僕の成分どのくらい補給出来た?」
「……全然足りない」
僕は敢えて話題をそらす……が、その意図が分かったのか澪は僕にギュッと抱きついてくる。
「澪……」
「全然足りない……」
「僕もいつかは帰らないと……」
「全然……足りない……」
澪の体が震えていた……。
僕は抱きしめたくなる気持ちをぐっと堪える……。
今彼女を抱きしめたら僕は澪を離したくなくなるだろうから……。
「ただいま」
と、その時玄関から澪のお母さんの声が聞こえてきた。
「澪……お母さん帰ってきたよ……」
僕は澪に話しかけるも彼女は何も答えずにただギュッと僕に抱きつく。
「澪、彼方君いるの……?」
澪の部屋のドアが開けられるとお母さんが顔をのぞかせる。
「あ、ど……どうもおじゃましています……」
「あら、彼方君……、時間はいいの……?」
澪のお母さんに言われ窓の外を見ると少し薄暗くなり始めていた……。
「澪からお母さんが帰ってくるまで傍にいて欲しいって言われて……」
「あらそうだったの……。ごめんね彼方君……」
事情を聞いたお母さんは少し申し訳なさそうな笑みを浮かべていた。
「澪……、僕そろそろ帰るよ……」
「やだ……」
僕は立とうとするとそれを阻止するかのようにギュッ澪が抱きついてくる。
「澪……」
僕は彼女の肩にそっと手を置くと、澪の涙が僕の膝にぽつりと落ちた。
その一滴が、胸の奥にじんと染みていく。
「やだ……彼方くん帰っちゃやだ……!ずっとここにいてほしい……!」
「澪……!もう、いい加減にしなさい!彼方君困ってるでしょ……!」
見かねた澪のお母さんが澪を僕から引き離そうとする。
「やだ……!離して……!お母さん離してよ……!」
澪は引き離されまいと必死の抵抗を見せるも、ついに僕から引き離される。
「彼方君今のうちに……!澪は後で私が説得するから……!」
「……分かりました」
僕は立ち上がると澪にそっとキスをする。
その一瞬に、すべての想いを込めて。
「澪……また明日学園で会おうね……」
僕はそれだけを言い残すと後ろ髪を引かれる思いで彼女の家を後にした……。
◆◆◆
澪……、泣いていたな……。
僕は未だ体に残る彼女の温もりを感じながら薄暗い道を歩いて自分の家へと向かう……。
さみしくないと言えば嘘になる……。
できれば僕だってずっと澪といたい……。
でも……それは出来ない……。
耐えるしかない……、僕は手が痛くなるまで拳を握りしめると澪とまだいたかったとという未練を断ち切るかのように走りだした。
あの温もりが、まだ僕の胸に残っている……。
それを振り払うように、僕は夜道を駆け抜けるも、胸の奥にはまだ彼女の気配が残っていた……。
「ただいま……」
家に帰ると玄関には真奈美さんと亜希、それに由奈ちゃんの姿があった。
「おかえりなさい彼方くん。さて……約束通り色々と根掘り葉掘り聞かせて貰うわよ♪」
「こんな遅い時間になってる訳だし……説明してもらうわよ彼方……」
「お兄ちゃん……!あの彼女さんとはどこまで進んだのっ!?もちろんキスくらいはしてるよねっ!?それ以上は?それ以上も行ってるよね……っ!?だってお泊りだし……!何もないほうがおかしいよねっ!?」
我が家の女性陣三人が、まるで取り調べのように僕へと詰め寄ってくる。
(に……逃よう……!)
そう思った僕はくるりと後ろへと振り返る。
「あ……そうだ……、澪の家に忘れ物してきたよ……!」
「彼方……、柊さんとは同じクラスでしょ?忘れ物くらい明日持ってきてもらえばいいんじゃないの?」
「うぐ……!」
亜希の正論が僕の胸に突き刺さる……!
「逃げようたってそうはいかないわよ、彼方くん♪」
「お兄ちゃん、色々と教えて欲しいな……♡」
「あは……あははは……」
僕の口からは乾いた笑いしか出ない……。
……こんなことなら、澪の家にもう一泊しておけばよかった。
そう本気で思いながら、僕は三人から逃げ場のない尋問を受け続けた。
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