罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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柚葉の章 ロリっ子で不器用な生徒会長

心で繋がった二人

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 放課後……僕は屋上に向かうと、手すりに寄りかかり、金髪を風に揺らしながら背を向けて立つ、ひとりの女の子の姿があった。

「……先輩」

 僕は自分でも驚くような低い声で先輩を呼ぶと、彼女は体をビクっと震わせながら振り向く。

 そこには思い詰めたような表情をしている先輩の姿があった。

「わざわざ来てもらって悪かったな、彼方……」

「いえ……、それで話ってなんですか?僕が話がしたいと言ったときには断って……自分からは話がしたいと言ってきて……なんなんですか……っ!?」

 口をついて出たのは、抑えきれなかった怒りの言葉だった。
 止めたくても自分でもどうすることもできない……それは今まで溜めに溜めた僕の先輩に対する怒りそのものだった。

 先輩はただ顔を俯かせ、目には涙が溜まっていた。

「ごめん……でも……ミレイは彼方との時間を作ろうと必死に頑張ったんだ!生徒会の業務をあらかた終わらせられれば彼方との時間を作れる……!そう思っていた。でも……次々と案件が来て……彼方との時間が作れなかったんだ……」

「じゃあなんで僕に言ってくれなかったんですかっ!?言ってくれれば僕は先輩を手伝いましたっ!そりゃあまだ仮メンバーだから出来ることは少ないかもしれないけど……。それでも……僕は先輩に頼って欲しかったですっ!」

「彼方の気持ちは嬉しい……。でも、それじゃダメなんだ……」

「何がダメなんですかっ!?」

「彼方がいたら……ミレイは彼方に甘えてしまう。きっと生徒会の業務に支障が出る、そうなったら……律から彼方と別れてもらうと言われていたんだ……!だから……ミレイは彼方との関係を守るために……」

「どうして一人で全部抱え込もうとするんですかっ!?言ってくれれば……僕だってどうすればいいか一緒に考えることが出来たはずです!」

「ごめんなさい……、彼方……本当にごめんなさい……!ミレイは自分よがりだった……。自分のことしか考えてなかった……。彼方のこと……何も考えてなかった……。ごめんなさい……」

 柚葉先輩は肩を震わせ、堰を切ったように大粒の涙をこぼしていく。
 僕は先輩の涙を見てようやく冷静さを取り戻す。

 そして、先輩を泣かせてしまったことを激しく後悔した。

(僕は柚葉先輩を支えるんじゃなかったのか……!守るんじゃなかったのか……!)

 柚葉先輩だって僕とのことを真剣に考えてくれてたんだ、辛いのは柚葉先輩だって同じだった筈だ!

 なのに自分のことしか考えてなくて……先輩を傷つけて、泣かせて……。
 先輩を守るって言ったのに……。
 なのに、僕が一番傷つけていた。

 僕は……最低だ……!

 気がつけば僕も涙を流していた。
 先輩を傷つけてしまった自分が許せなくて……情けなくて……。

「彼方……、彼方は泣かなくていいんだ。悪いのはミレイだ」

 柚葉先輩は僕の頭へと手を伸ばすと、自分の胸元へと引き寄せる。
 先輩の温もりと、優しい香りに包まれて涙が止まらなくなった。

「柚葉先輩……、すみません……。僕……僕……!」

 言葉が続かなかった。
 喉が詰まって、何を言えばいいのか分からなくなっていた。

「彼方、もう何も言わなくていい。ミレイは、怖かったんだ。彼方に嫌われるのも、律に責められるのも……でも一番怖かったのは彼方に頼って、甘えて、何もできなくなってしまう自分が怖かった。ただ甘えるだけの自分になって、彼方に嫌われるのが怖かった。何もできない自分を、彼方が見限るんじゃないかって——それが一番怖かった」

「それでも……僕は、頼ってほしかったです。支えさせて欲しかったです。先輩がひとりで苦しんでるなんて、知らなかった……。 なのに僕は自分のことばかり言って……先輩を傷つけてしまいました……」

 先輩は小さく首を振る。

「違う。ミレイが勝手に背を向けてただけだ。彼方はずっと、ミレイの隣にいようとしてくれてたのに……」

 風が吹き抜ける。
 金髪が揺れて、涙の粒が頬を滑り落ちる。

 僕はそっと、柚葉先輩を抱きしめる。

「……僕、やっぱり柚葉先輩のことが好きです。だから、これからはちゃんと隣にいさせてください」

 柚葉先輩は驚いたように目を見開いたあと、少しだけ笑った。

「……ミレイも、彼方のことが好きだ。だから、これからは……ちゃんと頼る。そして甘えて、支えてもらう。……それでも、生徒会長として頑張る」

「はい。僕も、先輩を支えます。生徒会のことも、ふたりのことも一緒に考えていきたいです」

「もちろんだ。……彼方、実は急ぎの仕事があるんだ。手伝ってもらえるだろうか?」

「はい!もちろんですっ!」

 僕は柚葉先輩の言葉に頷くと、先輩の手を握ると生徒会室に向かう。
 ふたりの手は、もう離れなかった。
 夕焼けが屋上を優しく染める頃——僕たちはようやく、“心で繋がった恋人”になれた気がした。


 ◆◆◆


 生徒会室に入った僕は、柚葉先輩の指示に従って、与えられた業務を黙々とこなしていった。

 僕にできることは然程多くはないけど、それでも僕は先輩を支えるべく業務にあたる。

 そして、下校時刻に差し掛かろうとした頃……ようやく今日の仕事が終わり僕はぐぅ~っと背中を伸ばす。

「ふう~……、終わった……」

 今この生徒会室にいるのは僕一人。
 イオリや他の人はもう帰ってしまい、柚葉先輩は出来上がった書類を教頭先生に提出しに行った。

 久しぶりの生徒会業務はさすがに疲れた。
 でも、柚葉先輩のそばで過ごした時間が、心地よい疲労感に変えてくれていた。

「彼方、お待たせ!」

 後片付けをしていると、柚葉先輩が駆け寄ってきて、勢いよく僕の胸に飛び込んできた。

「うわ……!柚葉先輩っ!?」

 突然のことに驚きながらも僕は柚葉先輩を抱きとめる。
 先輩は僕の胸元に顔を寄せると、そっと息を吸い込むようにして僕の匂いを感じ取った。

「……彼方の匂いがする」

「いや……あの……、汗もかいてますし、臭いですよ……!」

 僕がそっと先輩を引き離すと、彼女は少し不満げに頬を膨らませた。

「彼方の匂い……もっと感じていたかったのに」

 少し拗ねながら頬を膨らませる柚葉先輩をどこか可愛く感じている自分がいた。

 僕はそっと柚葉先輩の手を取ると、彼女は少し驚いたように目を見開いたけど、すぐに安心したように微笑んでくれた。

 僕はそのまま、静かに彼女を抱きしめる。
 先輩の温もりが、僕の胸の奥まで染み込んでくるようだった。

「柚葉先輩……」

「彼方……」

 柚葉先輩が目を閉じる……誰もいない生徒会室で、僕たちは静かに唇を重ねた。
 その瞬間、ふたりの距離は、もう言葉では測れないほど近くなっていた。
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