罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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柚葉の章 ロリっ子で不器用な生徒会長

先輩からの贈り物と亜希の告白

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 柚葉先輩との甘い時間はあっという間に過ぎてしまう……。

 夕暮れの光が、窓の外をやわらかくオレンジ色に染めていた。
 僕の部屋にも柔らかな夕陽が差し込み、柚葉先輩のブロンドの髪を優しく染める。

 先輩は僕の腕の中で目を閉じたまま、静かに呼吸を整えていた。

「……そろそろ、帰らなきゃいけないな」

 ぽつりと呟いたその声に、僕の胸が少しだけ締めつけられる。

「もう少しだけ……」

 僕はそう言って、先輩の手をそっと握り返す。

 先輩は目を開けて、僕を見つめる。

「……彼方、今日は本当にありがとう。ミレイ、こんなに楽しかったの、久しぶりだった」

「僕もです。先輩が来てくれて、本当に嬉しかった」

 ふたりの間に、言葉よりも深い何かが流れていた。

 と、その時先輩のスマホが鳴り始める。

「もしもし?……分かった、すぐに行く……」

 柚葉先輩はスマホを切ると少し淋しげな笑みを浮かべる。

「お迎えですか……?」

「ああ、志乃さんが迎えに来てくれている。現実に戻る時間だな」

「玄関まで見送ります」

 僕は柚葉先輩と共に玄関から外に出ると1台の軽自動車と志乃さんの姿があった。

「ミレイ様、お迎えにあがりました。」

「うん、志乃さんありがとう」

「御堂様、本日はミレイ様が大変お世話になりました」

「あ、いえ……!僕の方こそ……!」

志乃さんが深々と頭を下げる。僕も慌てて、それに倣って頭を下げた。

「志乃さん、例のものは?」

「もちろんご用意しております。御堂様、こちらミレイ様よりの贈り物でございます」

 柚葉先輩の言葉に志乃さんは車のトランクから少し大きめな段ボールを降ろすと僕に手渡してくる。

(なんだこれ……?)

 僕は不思議に思いながら受け取るも、見た目の割にそこまで重くはないらしい。

「柚葉先輩、これは……?」

「彼方の部屋は少し殺風景だったからな、もしよかったら部屋の模様替えに使ってくれ!それじゃあ、またな彼方」

 柚葉先輩は僕にキスをすると、顔を真っ赤にして視線を逸らしながら、そそくさと車に乗り込んだ。

 僕はそれを少し呆然とした様子で見つめると、志乃さんは深く頭を下げ車を走らせて行った。


 部屋に戻った僕は早速段ボールを開けてみると、中には黄色のマウスパッド、黄色い厚手のカーテン、黄色のテーブルクロス、黄色の枕カバーが入っていた。

(……黄色尽くしだ)

 僕はそれらを見て苦笑する。

「そう言えば、柚葉先輩って今日は黄色のブラウスを着ていたな……」

 僕は先輩の着ていた服を思い出しながら一人呟く……。
 て言うか、柚葉先輩の私服って黄色の服が多かったような気がする。
 ……ついでに下着も。

 どうやら柚葉先輩は黄色が好きなのかもしれない。

「せっかくだから使ってみるか……」

 僕は先輩の贈り物をひとつずつ手に取りながら、部屋を少しずつ“柚葉先輩仕様”に変えていった。

 なんだか部屋が先輩色に染められたような気もするけど……まあいいか。

「ん……?これは……」

 段ボールから荷物を出し終えると、底の方に美少女フィギュアが入っていた。
 それはヴァリアント・ブレイドというアニメに出てくる「金剛」というキャラクターだった。

 黄色を基調にした、下半身がタンク型の砲撃戦仕様——なんだけど、なぜこんなモノが……?

「……まあいいか」

 僕は金剛を本棚に置くと、その小さな存在が、まるで先輩がそばにいるような気持ちにさせてくれた。


 ~サイドストーリー~


 ──亜希──


 如月先輩が帰ったあと、私は彼方の部屋の前に立っていた。
 彼方が如月先輩と付き合っているのは知ってる。
 ……でも、だからって、私にチャンスがないとは限らない。

 私が彼方に告白したら、もしかしかすると振り向いてくれる可能性だってある。

 私は意を決して彼方の部屋のドアをノックする。

「彼方……?私だけど入ってもいい?」

『亜希?うん、いいよ』

 私は彼方の許可を得てドアを開けると彼方の部屋に入る。
 すると、以前は白を基調にしたシンプルな部屋だったのに、今は黄色のアイテムがあちこちに並んでいた。

「……彼方部屋のデザインでも変えたの?」

「あ、うん。柚葉先輩から贈り物をもらったから模様替えしてみたんだ」

「そ……そう……」

 如月先輩の影が彼方の部屋にまで及んでいる……そう思った私はギュッと手を握りしめる。

「それより亜希、僕に何か用事?」

 彼方の言葉に私はさらに手を握りしめる。
 ここに何をしに来たのか……この想いを伝えなきゃ。
 じゃないと、ここに来た意味がなくなってしまう。

「彼方……私、あなたが好きなの。だから……私と付き合ってください!」

 私は思いを伝えると、目を閉じて右手を彼方に差し出す。
 この手を彼方が掴んでくれるか……それとも……。
 胸の鼓動がうるさいくらい響いて、息をするのも忘れそうだった。

「亜希……、亜希の気持ちは嬉しいよ。でも……僕には柚葉先輩がいる、だから亜希の気持ちには応えられない」

 彼方の返事は、優しさに包まれていた。
 でも、その優しさの奥にあったのは、揺るがない“答え”だった。

 私は目を閉じたまま、差し出した右手をそっと引っ込める。
 掴まれなかった右手が、まるで誰かのものみたいに冷たくて、遠く感じた。

「……そっか。やっぱり、そうだよね」

 声が震えないように、必死に笑顔を作る。  
 でも、うまく笑えていたかは、自分でもわからなかった。

「ごめん、亜希……」

「謝らないで。……私が勝手に言っただけだから」

 彼方は何か言いたげに口を開きかけたけれど、私はそれを制するように手を上げた。

「ねえ、彼方。ひとつだけ、お願いしてもいい?」

「……うん。何?」

「今のこと、なかったことにして。いつも通りに接して。……じゃないと、私、たぶん……すごく気まずくなるから」

 彼方は少し戸惑ったように眉をひそめたけれど、やがて静かに頷いた。

「わかった。……ありがとう、亜希」

「ううん、こっちこそ。……聞いてくれて、ありがとう」

 私はくるりと背を向けて、ドアノブに手をかける。  
 その瞬間、視界が滲む。
 涙が落ちる前に、ここを出なきゃ。

「じゃあ、またね。……おやすみ、彼方」

 そう言ってドアを閉めた瞬間、私はその場にしゃがみ込んだ。

 胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。

(……やっぱり、わかってたんだ。最初から、勝ち目なんてなかったって)

 でも、それでも——伝えたかった。  
 彼方の隣にいるのが、私じゃないとわかっていても。

 私はそっと涙を拭うと、立ち上がって歩き出した。  
 背筋を伸ばして、何もなかったかのように。

(……でも、諦めるって決めたわけじゃないから)

 心の奥に、まだ消えない小さな灯を抱えたまま——私は静かに、自分の部屋へと歩き出した。
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