罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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瀬玲奈の章 ギャル気質なガールフレンド

彼方の戸惑い

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 ──彼方──


 翌朝、早乙女さんを庇った時に痛めた肩に湿布を貼って学園に向かう。

 腕も脚も無事だったのに、なぜか肩だけがじんわり痛む。
 どうやら、あのとき無理な体勢で庇ったのが原因かもしれない。
 でも、そう大した怪我でも無かったため、特に支障はない。

 強いて言えば、父さんの再婚相手である真奈美さんに心配されたくらいだ。

「あ……あの、御堂君」

 学園に向かう途中、僕は声をかけられる。
 振り向くとそこには早乙女さんの姿があった。

「早乙女さん……?」

「えっと……、昨日なんだけど、マジ感謝!おかげでウチ助かったって感じ。それより、御堂君はケガとかない……?」

「僕は大丈夫だよ!ほらっ!」

 早乙女さんは申し訳なさそうな表情で見つめてくるため、僕は大丈夫だとアピールするように痛めてない方の肩を回してみせる。

「よかった!ウチのせいで御堂君にケガさせてたらマジヤバ!って感じだったからさ」

「そ……そうなんだ」

 僕は早乙女さんの喋り方に戸惑う。
 早乙女さんとはあまり話したことないけど、見た目からして僕とは違って陽キャって感じがする。

 僕の周りにはいないタイプだから……ちょっとどう接していいかわからない……。

 もっとも、僕の知り合いの女子と言えば真奈美さんの連れ子の亜希と由奈ちゃん、それとクラス委員長の柊さんぐらいだけど……。

 戸惑っている僕を見ると、早乙女さんは少し首を傾げ、「あれ?」という顔をする。
 通学路に立ち、朝の柔らかな光が彼女の側面を照らす中、ゆるふわな茶髪を指で軽くいじっていた。

「えっと……御堂君なんか固まってんだけど、ウチのこと怖い?そんなヤバい奴じゃないよ?」 

「ご……ごめん。こんな事言うと失礼かもしれないけど……、ちょっと接し方というか、そういうのがわからなくて……」

 僕は早乙女さんから目を逸らしながら説明する。
 すると早乙女さんは少し驚いたような表情を浮かべつつも、すぐに理解したような笑みに変わる。

 緩やかに吹く風が彼女の茶髪を優しく揺らし、カーディガンの裾が軽やかになびく。

「そっか~、御堂君ってもしかして女子が苦手な感じ?ならウチみたいなギャル系は特にかもね~。でもさ、昨日助けてもらった恩もあるし、これからはちょくちょく話しかけてもいい?」

「えっと……、う……うん。僕は構わないけど……」

 なんか……早乙女さんってグイグイ来る感じがして距離感が掴みにくいな……。

 早乙女さんの言葉は、テンポが速くて、どこで返せばいいのか迷う。
   僕の周りには、こんな風に“間”を急に詰めてくる人はいなかった。

 でも……相手のせっかくの好意を無下にするのも悪い気もするし……。

 僕は少し戸惑っていると、早乙女さんはそれを知ってか知らずか目を細めて見つめてくる。

「じゃあ遠慮なく話しかけちゃうね~。昨日はマジで危なかったよね、トラック来てるのに全然気づかなくてさ。スマホ見ながら歩いてたウチも悪いんだけど……。でも、御堂君がヒーローみたいに助けてくれて超カッコよかったんだけど!」

「いや、あのときは本当に無我夢中で……。早乙女さんがトラックにひかれそうになってるのを見たら、気がついたときには体が動いていたんだ」

「マジ超カッコいいじゃん!そんな風に助けてもらえるとか超感激なんだけど~。ウチ、正直ちょっと惚れちゃいそうなくらいかも♪」

「え……?」

 早乙女さんの言葉に僕の心臓がドキっと跳ねる。

 彼女は笑顔で頬を少し赤くしながらも、腰に巻いたカーディガンの端を指でくるくる巻きつけつつ、どこか瞳をキラキラさせている。

(……惚れちゃいそうって、冗談……だよね?)

 でも、あの笑顔を見たらなんか胸の奥がじんわり熱くなる。

 と、その時早乙女さんは何かを思い出したかのようにスカートのポケットからスマホを取り出すと、途端に驚きの表情へと変わった。

「げ……!もうこんな時間っ!?御堂君、早くガッコーに行かないと遅刻確定だし!走ろっ!」

「え……?ちょ……!」

 早乙女さんは僕の手を掴むと学園へと向かって走りだす。
 僕は走りながら少しだけ早乙女さんの横顔をみると、彼女はとても明るく、眩しい笑顔を浮かべていた。

 早乙女さんの笑顔が朝の光よりも眩しくて、僕は今日という日が少しだけ特別になる、そんな予感を覚えた。
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