罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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瀬玲奈の章 ギャル気質なガールフレンド

補習を受けるふたり

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 中間試験が終わって数日が経った10月の初め――。
 いよいよ迎えた修学旅行当日、案の定というかなんというか、赤点を取ってしまった僕と瀬玲奈は教室で補習を受けていた。

 と言っても、補習は今日1日だけで内容は試験を少し簡単にしたプリントに回答を書いて提出するだけ。
 教科書を見ながら答えを書けるから、内容自体は簡単だ。
 でも——修学旅行に行けなくなったという事実は、変わらない。

 試験の答案が返却された時――亜希からは「ほらみなさい」と言わんばかりの、冷たい視線が僕に向けられていた……。

 そして今……教室には僕と瀬玲奈、そして補習担当の先生だけ。  
 外からは、1年と3年の声が聞こえてくる。
 2年で残ってるのは補習を受けている僕と瀬玲奈くらいなものだと思う。

(……みんな、今ごろバスの中でワイワイ楽しんでるんだろうな)

 窓の外を見やると、校門の前に停まっていたバスの姿はもうなかった。
 今年の修学旅行は沖縄、あの時遊ばずにちゃんと勉強しておけばよかったという後悔の念がよぎるも、もう時すでに遅い。

「……行っちゃったね」

 瀬玲奈がぽつりと呟く。  
 その声には、少しだけ寂しさが滲んでいた。
 彼女もやっぱり修学旅行に行きたかったのかもしれない。

「うん……」

 僕も小さく頷く。  
 教室の中は静かで、シャーペンの走る音だけが響いていた。

「ねぇ、彼方」

「ん?」

「ウチ、やっぱりちょっと悔しいかも」

 瀬玲奈はプリントに視線を落としたまま、ぽつりと呟いた。

「みんなと一緒に行きたかったなぁ……。制服で写真撮ったり、お土産選んだり、夜に枕投げしたり……そういうの、ちょっと憧れてたんだ」

「……うん。僕も、行きたかったよ」

 僕は手を止めて、瀬玲奈の横顔を見つめる。  
 彼女の表情は、どこか遠くを見ているようだった。

「でもさ」

 瀬玲奈はふっと笑って、僕の方を向いた。

「彼方とふたりで補習受けてるのも、これはこれで悪くないかもって思ってきた」

「え……?」

「だって、ふたりきりで静かな教室で、こうして並んで座ってるんだよ? ある意味、修学旅行よりレアじゃない?」

 そう言って、瀬玲奈はいたずらっぽくウインクしてみせると、その仕草に僕の胸がドキンと跳ねた。

「……そっか。じゃあ、これは“ふたりだけの修学旅行”ってことで」

「うん♡ ウチらだけの、特別な思い出にしよっか」

 瀬玲奈はそう言って、再びプリントに向き直る。  
 その横顔は、さっきより少しだけ明るく見えた。

(……たしかに、これはこれで特別な時間かもしれない)

 僕もまた、シャーペンを手に取り、静かに問題を解き始めた。


 ◆◆◆


 プリントは午前中に終わったので、これで帰れる……と思っていたのだけど、午後からは瀬玲奈とふたりで、プールの女子更衣室の掃除を任されていた。

「もぅ~!プリント終わったら帰れるんじゃなかったのっ!?」

 瀬玲奈は頬をふくらませ、額の汗を腕でぬぐいながら、文句を言いつつ床をモップで拭いている。

「まあ……プール本体とかプールサイドよりはマシじゃない?エアコン効いてるし」

 僕は脚立に乗って、ロッカーの上を掃除していた。

「それはそうだけどさ~……。てか、彼方ってさ、女子更衣室に入るの初めてでしょ?どう?感想は?」

 瀬玲奈はモップに寄りかかりながら、ニヤニヤと僕を見上げてくる。

「感想って……今は誰もいないし、別に……って、ん?」

 苦笑しながら答えかけた僕の目に、ロッカーの上に置かれた何かが映る。  
手を伸ばして取ってみると、それは……エチィな漫画だった。

(な、なんで女子更衣室にこんなもんが……!?)

「彼方、何か見つけたの?あ~っ、それってもしかして……イヤらしい本~?♡」

「ち、ちがうってば!僕のじゃない!ロッカーの上に置いてあったんだよ!」

 からかうような笑みを浮かべる瀬玲奈に、僕は慌てて否定する。
 すると彼女はお腹を抱えて笑い出した。

「ぷっ……あははははっ!もぅ~、冗談だってば♡彼方ってば、マジでうろたえすぎ~!ほんと可愛い~♡」

「も、もう……からかわないでよ……。てか、なんでこんなとこにこんな本が……」

 僕は少し拗ねながら、その本をロッカーの上に戻す。
 まったく、変な汗かいた……。

「ごめんごめん♡そんなに拗ねないでよ彼方。……意外とね、こういうとこでTL本を回し読みしてる女子って、いるんだよ?」

「……TL?」

「ティーンズラブの略。女の子が主人公の恋愛ストーリーで、ちゃんとアッチの描写もあるやつ♡」

「そ、そうなんだ……」

 女子ってそういうの読まないと思ってたけど……意外だ。
 僕はもう一度さっきの本を手に取ってみる。
 確かに、主人公は女の子で、しかも描写が……けっこうリアル。

(これ……下手したら、男が読むエロ本よりエチィかも……)

「女の子だって、性欲くらいあるしね。もちろん……ウチも、ね♡」

 瀬玲奈は少し顔を赤らめながら、甘い笑みを浮かべると、脚立にいる僕にそっと抱きついてくる。

「せ、瀬玲奈……?」

「今は誰もいないよ?だから……ね、彼方♡」

「う、うん……」

 瀬玲奈は僕の手を取って、そっと脚立から引き寄せると、そのまま僕は彼女の唇に触れた——。
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