罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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瀬玲奈の章 ギャル気質なガールフレンド

ふたりだけの修学旅行

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 翌日。着替えなどを詰めたバッグを持って、僕は瀬玲奈と商店街の一角で待ち合わせた。
 そしてふたりで、温泉旅館のある街へ向かうバスに乗り込む。

 通勤、通学の時間帯を避けているため人はあまり乗っていない。

 バスの座席に並んで座ると、瀬玲奈は嬉しそうに窓の外を眺めていた。

「ねぇ彼方、こうしてふたりで旅行って……なんか、新婚旅行みたいじゃない?」

「し、新婚旅行って……!」

 僕は思わず声を上げそうになったけど、車内が静かだったので慌てて声を潜める。

「だってさ、ふたりでお泊まりでしょ?しかも温泉旅館♡」

 瀬玲奈はニヤニヤしながら僕の顔を覗き込んでくる。
 その無邪気な笑顔に、僕の心臓はまたしても跳ね上がった。

「でもさ、男女で旅館に泊まるはいいけど、部屋ってどうなるんだろ……?」

「え?もちろん一緒の部屋でしょ?」

「ええっ!?」

「だってペア宿泊券だよ?別々の部屋だったら意味ないじゃん♡」

 瀬玲奈はそう言って、僕の腕にそっと寄りかかってくる。  
 彼女の髪が肩に触れて、甘い香りがふわりと漂った。

(瀬玲奈と、同じ部屋……)

 ふたりで食事して、のんびりイチャイチャして……それも悪くない。
 さすがにお風呂は別だろうけど、夜は同じ部屋で寝るわけで——つまり……。

『彼方……来て……』

(……うん、それもアリかもしれない)

 僕の頭の中では、ピンク色の妄想がどんどん膨らんでいく。

「……彼方、今ちょっとエッチなこと考えてたでしょ?」

「……ノーコメントで」

「やらし~♡」

 妄想に浸っていた僕は、瀬玲奈に見事に見抜かれ、顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。


 その後も僕と瀬玲奈は雑談をしながらバスはゆっくりと街を抜け、山間の道へと入っていく。  
 窓の外には緑が広がり、時折、川のせせらぎが聞こえてくる。

「なんか、修学旅行よりも静かでいいね」

「うん。ふたりだけの旅って、特別な感じがする」

 瀬玲奈は僕の手をそっと握ると、指を絡めてきた。  
 その手は少しだけ汗ばんでいて、でもとてもあたたかかった。

「ねぇ彼方。今日の夜……一緒に星、見に行かない?」

「星?」

「うん。旅館から少し行ったところに海岸があるらしいんだ。そこから星がすごく綺麗に見えるって、口コミに書いてあったの」

「……いいね。行こう、ふたりで」

 瀬玲奈は嬉しそうに微笑むと、僕の肩に頭を預けた。  
 バスの揺れが心地よくて、僕はそのまま目を閉じる。

 こうして、僕たちの“ふたりだけの修学旅行”が、静かに始まった。


 ◆◆◆


 バスに揺られること約1時間ほど、バス終点である瀬山市の端っこにある小さな漁村で停まると、僕と瀬玲奈は荷物を持って降りる。
 そして、スマホの地図アプリを頼りに歩いていくと目的の温泉旅館である、「兎亜楼とある温泉旅館」というところにたどり着いた。


 兎亜楼温泉旅館は、木造三階建ての、どこか懐かしさを感じるこぢんまりとした宿だった。
 旅館から海が近いのか波の音とカモメの鳴き声が聞こえてくる。

「……思ったよりもこじんまりとしてるね」

「商店街の景品だからこんなもんっしょ♡」

 瀬玲奈はそう言いながらも、どこか嬉しそうに旅館の外観を見上げていた。
 木の柱や格子窓、白い暖簾に墨文字で書かれた「兎亜楼温泉旅館」の文字が、どこか懐かしい雰囲気を醸し出している。

「でも、こういうの……なんか落ち着くかも」

「でしょ?ウチ、こういうレトロな感じ、けっこう好きかも~♡」

 瀬玲奈はそう言って、僕の手を引きながら玄関へと向かう。  
 引き戸を開けると、カランコロンと鈴の音が鳴り、木の香りとほんのりとした潮の匂いが鼻をくすぐった。

「いらっしゃいませ~」

 カウンターの奥から、優しげな笑顔の女将さんが現れた。  
 年の頃は五十代くらいだろうか。落ち着いた雰囲気で、旅館の空気にぴったり合っている。

「ご予約の御堂様と早乙女様ですね。ようこそお越しくださいました。お部屋の準備はできておりますので、どうぞこちらへ」

 僕たちは靴を脱ぎ、案内されるままに廊下を進む。  
 廊下の窓からは、ちらりと海が見えた。波がきらきらと光を反射していて、まるで絵のようだった。

「わぁ……海、近いね」

「うん。波の音、ずっと聞こえてる」

 案内された部屋は二階の角部屋で、畳の香りが心地よい和室だった。
 窓を開けると、目の前には広がる水平線と、白い砂浜が見えた。

「わぁ~!オーシャンビューじゃん!ウチ、テンション爆上がりなんだけど~!」

 瀬玲奈は荷物を置くなり、窓辺に駆け寄って外を眺める。  
 その横顔は、まるで子どものように無邪気で、僕は思わず見とれてしまった。

「……彼方?」

「えっ、あ、ううん。なんでもない」

「ふふっ、見惚れてたでしょ~♡」

「ち、違うって……!」

 瀬玲奈はくすくすと笑いながら、僕の腕を軽くつついた。

「ねぇ、チェックインも済んだし、ちょっと海、見に行かない?」

「うん、いいよ。せっかくだし、少し散歩しようか」

 こうして僕たちは、旅館の浴衣に着替える前に、砂浜へと向かうことにした。
 波の音に誘われるように、ふたりだけの時間が、ゆっくりと始まっていく。
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