罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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おまけ

おまけエピソード ──澪──

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 クリスマス。
 僕は澪に呼ばれて、彼女の家を訪れた。

 玄関のチャイムを鳴らす。
 ……けれど、応答がない。

(あれ……? 留守? でも、12時に来てって言ってたはず……)

 スマホで時間を確認すると、まだ11時50分。少し早く着きすぎたかもしれない。

 もう一度チャイムを押そうとしたそのとき、スマホが震えた。

(メール……澪からだ)

『玄関は空いてるから入ってきて……』

「……ふむ」

 僕はそっと玄関を開け、中へ入る。
 リビングの方から、ふわりと美味しそうな匂いが漂ってきた。

 その香りに誘われるようにリビングへ向かうと——

「彼方くん、いらっしゃい……!」

「み、澪っ!?」

 突然、澪が僕に抱きついてきた。
 しかも、サンタの格好をしている。

「出られなくてごめん……。この服に着替えてたから……。今日のわたしは、彼方くんのサンタクロース。彼方くんのお願い、なんでも聞いてあげる……」

 そう言って、澪はそっとキスをしてきた。

(……お願い、か。本当に何でも?)

 頭の中に、ピンク色の妄想が広がっていく。
 ……って、何を考えてるんだ僕は!

 慌てて首を振って、妄想をかき消す。

「いや……サンタクロースって……。ていうか、お母さんは?」

 動揺しながら辺りを見渡すが、澪以外に人の気配はない。

「お母さんは、今日は仕事……。だから、リビングの料理も、わたしが朝からひとりで作った……。ほめて」

 澪が指さした先には、フライドチキン、スープ、ケーキが並んでいた。

「これ全部、ひとりで!? すごいよ澪!ありがとう!」

 僕は思わず彼女を抱きしめ、頭を優しく撫でる。
 澪は顔を赤らめながら、嬉しそうに目を細めた。

「ねえ、彼方くん……。早く、食べてみてほしい……。それとも……先に、わたしから食べる……?」

 再びキスをしてくる澪。
 正直、先に澪を“いただきたい”気持ちはある。
 でも、せっかく作ってくれた料理を冷ましたくない。
 彼女の気持ちを、ちゃんと受け取りたい。

「……先に、料理からいただくよ」

 僕は理性を総動員して、席についた。

「……わかった。じゃあ、わたしは……食後の"デザート"?」

(澪が……デザート……!?)

 チキンとケーキのあとに、澪を……って、だから何を考えてるんだ僕は!

 再び妄想を振り払って、料理に集中する。

「……うん、美味しいよ。澪、すごいな」

「ほんと……? よかった……」

 澪は僕の向かいにちょこんと座り、嬉しそうに微笑んだ。
 その笑顔が、料理よりもずっと甘くて、胸が温かくなる。

「このチキン、外はカリッとしてるのに中はジューシーで……。どうやって作ったの?」

「……秘密。でも、彼方くんのために、レシピ動画を何本も見た……」

「そっか。ありがとう、澪」

 僕は自然と手を伸ばし、澪の頭を撫でる。
 澪は目を細めて、猫みたいに気持ちよさそうにしていた。

「……ねえ、彼方くん」

「ん?」

「わたし、こうして彼方くんとクリスマスを過ごせて、すごく幸せ……。だから……来年も、再来年も……ずっと、こうしていたい……」

 その声は小さくて、でも真っ直ぐに僕の胸に届いた。

「うん。僕も、ずっと澪と一緒にいたいよ」

 澪はほんのり顔を赤らめながら、微笑んだ。

「……じゃあ、来年のクリスマスも、わたしがサンタさんしてあげる……。そのときは、もっと……大胆なお願いも、叶えてあげる……かも」

「……っ!」

 僕の理性が、またしても危うく揺らぐ。

(……澪、ほんとにずるいよ)

 でも今は、彼女の気持ちをちゃんと受け止めたい。
 僕はもう一度、彼女の手をぎゅっと握り返した。

 外では、粉雪が静かに舞い始めていた。
 この夜が、ずっと続けばいい。
 そう願いながら、僕たちは静かに寄り添い合っていた。

 ——そして、料理を食べ終えたあと、  
僕は“デザート”も、しっかり味わわせてもらったのだった。
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