罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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おまけ

おまけエピソード ──由奈──

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 元旦の朝——  
 僕はベッドで寝ていると、突然お腹に衝撃を受けて目を覚ました。

「彼方さん、おはよー!朝だよっ!」

 なんと、僕の上に由奈が跨っていた。

 眠い目をこすりながらスマホで時間を確認すると、まだ朝の6時。

(昨日、年末恒例の“笑ってはいけないTV”を最後まで見てたから眠い……)

「うう……由奈、まだ6時だよ……。もう少し寝かせて……」

「えぇ~っ!? 一年の計は元旦にあり、だよ彼方さん!ほら、起きて起きて~!あははっ!」

 由奈は笑いながら、僕の上でぴょんぴょん跳ねる。
 軽いとはいえ、彼女の体重がじわじわとお腹にのしかかってくる。

「うう……わかったよ……」

「彼方さん、新年あけましておめでとうございます♪」

 渋々体を起こした僕に、由奈がいきなりキスをしてきた。

「ちょ……!由奈っ!?」

「えへへ~♪ 今年初めてのキスだよ♡」

 寝起きには刺激が強すぎる……!
 しかも、寝起き特有の“相棒”の反応が……由奈には絶対バレたくない。

「初めてって言うけど……寝る前に散々キスしたじゃないか……」

 “笑ってはいけないTV”が終わったのは午前0時。
 つまり、正確にはそのときが“初キス”だったはずだ。

「まあまあ、細かいことはいいの!それより、今日の昼から商店街に行こうよ!」

「商店街? 何かあるの?」

「うんっ! 実はね、これに行きたいんだ~♪」

 由奈が見せてきたのは、商店街主催の“大声コンテスト”のチラシだった。

「……なにこれ?」

「そのまんま! 大声コンテスト!“日頃のストレスを叫んで発散しよう”って書いてあるの。あたし、これに出たいんだ~!」

(ストレス……? まさか、僕が気づかないうちに由奈に……?)

 胸がズキッと痛む。

「ねえ、彼方さん、いいでしょっ?」

「う、うん……わかったよ」

「やったぁー!彼方さん、ありがとうっ!」

 由奈は満面の笑みで僕に抱きつくと、そのまま布団の中に潜り込んできた。

「ちょ、由奈? なんで布団に……」

「あたしも寝るの遅かったから、もうちょっとだけ寝ようかなって。あぁ~、彼方さんの体温であったかい~。おやすみ、彼方さん♪」

(……新年早々、由奈は僕の理性を崩しにくるんだね)

 僕の胸元に顔をうずめて寝息を立てる彼女に、理性は早くもオーバーキルされつつあった。

 ◆◆◆


 午後。
 昼食を済ませた僕たちは、商店街へとやってきた。
 大声コンテスト目当てなのか、老若男女問わず多くの人で賑わっている。

 商店街の会長の挨拶もそこそこに、いよいよコンテストがスタート。
 特設ステージでは、参加者たちが思い思いの叫びを披露していた。

「お小遣いを増やしてくれー!」

「ウチの旦那!飲み歩いてないで早く帰ってこーい!」

 ……などなど、叫びの内容は実にバラエティ豊かだ。

 そして、いよいよ由奈の番がやってきた。

(由奈は……何を叫ぶんだ?)

 僕は固唾を飲んで見守る。
由奈は僕に視線を向け、にっこりと笑った。
 そして——

「彼方さん!大好きーーーーっ!!」

(ちょ……っ!?)

 由奈の大声が、商店街中に響き渡った。
僕はその場でフリーズする。

 周囲の視線が一斉に僕に集中し、顔が一気に熱くなる。
 由奈は、返事を待つように僕をじっと見つめていた。

(……返事、しなきゃダメなの?)

 なんだこの公開羞恥プレイは……!

 周囲の人たちから「返事してあげなよ~」と茶化され、気づけば僕はステージに引っ張り上げられていた。

(うう……新年早々、なんでこんな目に……)

 由奈は期待に満ちた目で僕を見つめている。
 くそ……もう、やるしかない!

「由奈ー!僕も大好きだよっ!絶対、幸せにするからねっ!」

 覚悟を決めて、僕も大声で叫んだ。


 コンテストが終わったあと、僕たちは商店街の裏手にある小さな公園へやってきた。
 人混みから離れたベンチに並んで座ると、ようやく静けさが戻ってきた。

 ……とはいえ、僕の心臓はまだバクバクしていた。

「ふふっ、彼方さん、顔真っ赤~」

「そりゃそうだよ……! あんな大勢の前で……!」

「でも、嬉しかったでしょ?」

「……まあ、うん。すごく」

 由奈は得意げに胸を張ると、僕の肩に頭をコテンと預けてきた。

「えへへ~、新年早々、彼方さんに“好き”って言ってもらえて、あたしも嬉しかった~」

「……由奈はずるいよ。あんなの、断れないじゃないか」

「だって、彼方さんの“好き”が聞きたかったんだもん」

 さっきの大声とは打って変わって、由奈の声は少しだけ震えていた。

 僕はそっと彼女の手を握る。

「……来年も、また一緒に叫ぶ?」

「うんっ! 来年は“結婚してくださいー!”って叫んでもらおうかな~♪」

「ちょっ……それはさすがに早いって!」

「え~? じゃあ“由奈のこと、世界で一番愛してるー!”でもいいよ?」

「ハードル上がってるってば……!」

 僕が苦笑すると、由奈はくすくすと笑いながら、僕の腕にぎゅっとしがみついてきた。

 冬の空気は冷たいのに、由奈の体温はやけにあたたかくて、僕の心までぽかぽかと温まっていくのを感じた。

 こうして、僕たちの新年は——笑って、照れて、叫んで、そして静かに寄り添いながら始まった。
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