罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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おまけ

おまけエピソード ──瀬玲奈──

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 12月の末——
 二学期の終業式を終えた僕は、瀬玲奈と手をつないで商店街を歩いていた。
 クリスマスが近いからか、通りはイルミネーションと音楽で彩られ、多くの人が行き交っている。

 そんな中、瀬玲奈が1軒のカラオケ店の前で立ち止まった。

「ねえねえ、彼方! 二学期を頑張ったご褒美にさ、カラオケ行かん?」

「カラオケ?」

「そそ、パァ~っとはしゃいじゃおうよ♡」

「うん、いいね」

 僕たちはそのままカラオケ店に入り、2時間の利用を伝えて案内された部屋に入った。


 部屋に入るなり、瀬玲奈がニヤッと笑う。

「彼方、せっかくだから勝負しない?」

「勝負?」

「そ! どっちが高得点を出せるか勝負♡ 負けたほうが、勝ったほうのお願いをひとつ聞くってルールで、どう?」

「望むところだ!」

 僕は即答した。
 勝てば、瀬玲奈にあ~んなことやこ~んなことまでお願いできる……これはもう、乗るしかない!

「彼方、絶対変なこと考えてるでしょ? やらしぃ~♡」

 頭の中でピンク色の妄想を繰り広げていた僕は、図星を突かれて押し黙る。

(……僕ってそんなに顔に出てるのかな)

「ていうか、ウチが勝つ可能性だってあるんだからね♡ウチが勝ったら、彼方に何してもらおっかな~♡」

 そう言って、瀬玲奈は僕の頬を指でつつきながら、曲を選び始めた。

 彼女が選んだのは、流行りのアイドルソング。
 画面に映る歌詞を追いながら、軽やかに踊り、透き通るような声で歌い上げる瀬玲奈。
 その姿はまさにアイドル顔負けで、僕は思わず見惚れてしまった。

 得点は——98点。文句なしの高得点。

(……やばい。これで負けたらお願いどころじゃないかも)

「えへへ~♡ ウチ、本気出しすぎたかも? これはもう、ウチの勝ちで決まりっしょ!」

 確かに、逆転は至難の業だ。
 でも——

「……まだ僕のターンが残ってるからね」

 僕は少し震える手でタブレットを操作し、曲を選ぶ。

(こうなったら、奥の手を使うしかない……!)

 曲が流れ始め、僕はマイクを握る。

「え……? ちょっと待って、彼方この曲って……」

「そう……アニソンだ!」

 僕が選んだのは、1970年代の某初代スーパーロボットの主題歌。
 その主題歌は、今もなお魂を震わせる——

(この曲なら……昔、テレビの歌番組とかで何度も聴いた。歌詞もメロディも全部覚えてる。今の僕にできる最高の一撃だ!)

「マジでそれ歌うの!? 昭和すぎるでしょっ!? でも……逆に見てみたいかも♡」

「この曲に、僕の魂を込めるっ!」

 僕は熱唱しながら拳を突き上げる。
 そして——

「――ゼェェェェーーットッ!!」

 最後にビシッと瀬玲奈に指を向けて、歌い終えた。
 瀬玲奈はポカンと口を開けたまま、僕は得点を見つめる。

 表示されたスコアは——97点。

(バカな……! 負けただと……!?)

 目の前が真っ暗になり、ピンク色の妄想が音を立てて崩れ落ちる。

「うわっ、惜しいっ! あと少しでウチに勝てたのに~♡ でも、ウチちょっと焦ったんだけど!」

「くっ……あと一歩届かなかったか……」

「でも、全力で歌ってる彼方、ちょっとズルかったよ♡……さて、約束通り、ウチのお願い聞いてもらうからね♡」

「……分かったよ」

 瀬玲奈はニコニコしながら、僕の隣にぴたりと座る。
 その距離が、さっきよりもほんの少しだけ近い気がした。

「じゃあ、ウチのお願い、発表しま~す♡」

 僕はごくりと唾を飲み込む。
 まさか、あんなことやこんなことを要求されるんじゃ……。

「彼方、目つぶって?」

「えっ……な、なんで?」

「いいから♡」

 言われるがままに目を閉じると、瀬玲奈の気配がすっと近づいてきた。
 そして——

 ふわりと、唇に柔らかな感触が触れた。

「……っ!?」

「はいっ、ウチのお願いは“彼方にチューする”でした~♡」

 目を開けると、瀬玲奈はいたずらっぽく笑っていた。
 その顔はほんのり赤くて、でもどこか誇らしげだった。

「な、なんだよ、それ……!」

「えへへ~、だってウチ、彼方が全力で歌ってるの見て、ちょっとドキッとしちゃったんだもん♡」

 僕の顔が一気に熱くなる。
 さっきまでの敗北感なんて、どこかへ吹き飛んでいた。

「……それ、勝ったからじゃなくても、してくれた?」

「さぁ? どうだろ~ね♡」

 瀬玲奈はそう言って、リモコンを手に取ると次の曲を選び始めた。

「じゃ、次はデュエットしよっか。ウチ、あの冬のバラード歌いたい気分なんだ~」

「……うん、いいよ」

 僕はまだ火照った頬を押さえながら、彼女の隣に座り直す。
 画面に映る歌詞が流れ始め、ふたりの声が重なっていく。

 外では、街のイルミネーションがきらめいていた。
 まるで、ふたりのこの時間を祝福するように。
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