25 / 89
第二章
25
しおりを挟む室内の訓練場へ移動をした一行。
シルヴィが二メートルはあるゴリマッチョの大男ヴォルフガングを呼んだ。呼ばれた彼は陽気に笑っている。
「これから寝技を教えるね。武器が手元に無くって押さえ込まれた時の脱出方とか攻撃の技とか結構役立つから。あ、背負い投げは出来る?」
シルヴィの発言に騎士達は首を傾げた。
出来ると思うが実際に経験がない。
シルヴィがやり方をルークに教えた。
そしてルークはヴォルフガングの腕を掴み背負い投げをしようとするがビクともしない。
そもそも体格が違うんだ。こんな大柄な男相手には無理じゃないかと不満を抱いたルーク。
リリーが彼に代わりヴォルフガングの腕と胸ぐらを掴むと呆気なく背負い投げた。
「小は大を制すってね。力だけじゃダメなんだよ」
その後背負い投げや寝技を身につけるべく訓練を励む騎士達。彼らは向上心の塊だ。
リリーはエレンとペアになって彼に寝技を教えていた。
エレンがリリーに組み敷かれていて身動きが取れないでいる。自分よりも体が小さく、何よりもいつも自分が組み敷くはずの女性にまったく抵抗が出来ず、普段から余裕の笑顔をしている彼の表情が少しだけ歪む。
「脚を絡めて捻ってみて?」
グイッ
リリーに言われた通り動いたエレン。今度はすんなりとリリーを組み敷く事が出来た。上手く動いた褒美としてリリーは組み敷かれている状態のまま、下から手を伸ばし彼の頬を撫で、頭を撫でた。
「擽ったいな・・・」
先程の懸垂の時もそうだが、エレンは擽ったがりやさんなんだなと思ったリリー。楽しいことを思いついたリリーは無表情のままエレンに寝技をかけ脇腹をつついた。
「っやめ」
抵抗するエレンを押さえ脇腹など身体中擽った。
やめて欲しけりゃ技をかけろ。
必死に動きやっと自分の意思で技を掛ける事が出来たエレンは組み敷いたリリーを、顔を赤らめ荒い呼吸しながら見下ろした。
玩具のように弄ばれ悔しい気持ちになったエレンはリリーを押さえ込んでいる手に力を込め彼女の首筋に顔を埋めた。
チクッと痛みを感じたリリー。
顔を離したエレンは彼女の首筋に咲いた痕を見つめた。
心が満たされる感情が芽生え今度は違う場所に咲かせようかと再び顔を近づけたが、シルヴィが彼を蹴って退かした。
「ちょっと!なに痕つけてんのさ。任務に支障が出たらどうすんの、この顔だけ野郎が」
あーもー!と叫びながらリリーの首筋を袖で拭くシルヴィ。
(僕は・・・今なにを・・・?)
シルヴィの行動で自分が何をしていたのか理解したエレンは少し混乱した後、すぐにいつもの彼に戻った。
「おい、これはどうした」
リリーが次は誰に寝技を教えようか考えていたらルークがリリーの首筋に咲いている痕を指摘した。他の騎士達も集まる。
あきらかなキスマーク。
リリーは犯人であるエレンを指さした。
勢いよく彼を見た騎士達。
エレンは何食わぬ顔で笑っていた。
「どうやってコレ消すの?」
「内出血だから直ぐには無理だろう」
まじまじとキスマークを見つめながら考える騎士達。彼らは何故か嫌な気分になった。別に彼女が好きなわけでは無い。ただ白い肌に目立って不愉快なのだ。
「イタズラされたから仕返しただけだよ?」
仕返しだと?
彼らはエレンの首を見た。
どこにも痕がないではないか。
何かを察したリリーが手を叩いた。
「痕つければいい?」
「「「・・・・・・え?」」」
さっそくリリーがエレンの首を掴み彼を屈ませ吸血鬼のように首筋に噛み付こうとしたところで体が持ち上げられた。リヒャルトがリリーを抱え上げたのだ。
「何でそう発想が斜め上なの?エレンはほっといて俺と寝技やろ」
「えー、僕リリーとがよかったんだけどな」
リリーに痕をつけられるのかと驚いたエレンだったが、付けられないならそれはそれで少し残念に思ってしまった。
「貴様は私とやるぞ」
「うん。よろしくね」
結局エレンはルークと寝技の訓練をした。
こうして一日で寝技をマスターした騎士達であった。
***
ー翌日ー
今日も訓練開始時間より早くやって来た騎士達。室内の訓練場では影達が各自訓練をしたり自由に行動をしている。
その中で奥の端にピンクアメジストの髪と青みがかった銀髪が丸まって眠っているのを見つけた。
二人に近付こうとした騎士達だったが、素通りしようとしていたティアラが彼らを見つけた途端興奮した様子で話しかけてきた。
「丁度いいところに来たわね!今からリリーを尋問するわよ!」
尋問・・・?
黙ってティアラに続く騎士達。
眠っているリリーとシルヴィの前で仁王立ちをすると、大声を出した。
「起きなさーーい!」
うるさいティアラの声にもぞもぞと動き出した二人。
「・・・まだねむい・・・にゃあ・・・」
目を擦るリリーは寝惚けている。
「あら、まだ猫なの?ふふっ昨日のリリー凄い人気だったわよね。チップが物凄くて女の子達からの嫉妬が凄かったんだから」
「・・・変な客はいなかったの?」
ノエルが不安そうな顔で問うた。
「変態はいたけど上手くあしらってたわよ?」
(やっぱりいたんじゃないか・・・)
騎士達は面白くなさそうに眉を寄せた。
「それどころじゃないのよ!リリーが男を持ち帰ったんだから!」
「「「・・・は?」」」
57
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる